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10代のメンタルヘルス4『パニック障害』

2012-12-29 22:28:20 | 
10代のメンタルヘルス4『パニック障害』(大月書店)
ナンシー M.キャンベル/著 上田勢子/訳 汐見稔幸・田中千穂子/監修

図書館巡り中に「ヤングアダルト」コーナーで見つけた貴重なシリーズ。
10代の若者向けなため、とても噛み砕いて書かれていて、分かりやすいから、
パニ障の当人はもちろん、様々な不安を抱えた人たちや、
また、周りに不安を抱えた友人・知人・家族がいる人たちに理解してもらいやすい1冊。

そういった意味で、長くなるけれども、内容の抜粋メモを以下に書き出した。

【内容の抜粋メモ】

不安とは
「なにか悪いことがおきるかもしれない」と心配になること。
どこにあるのか分からない危険を苦痛に感じる状態。
緊張、張り詰めた気分、神経がピリピリする、心配な気持ちなど。

恐怖とは
はっきりとした危険にであったときに感じるもの。
恐怖感は、人間の「立ち向かうか、それとも逃げるか」という本能を呼び起こす。

ホルモン
体の様々な機能を管理する化学物質。アドレナリンや他のホルモンがすばやく体を動かせる態勢にする
鼓動と呼吸が速くなり、血圧が上がり、筋肉が緊張して危険への準備が完了する

パニックとは
恐怖感が極端な不安感になること。鼓動や血圧が急上昇し、体が過剰に反応することで、
怯えて話すことも動くことも出来なくなってしまう。
パニックの最中は思考も論理も崩れ去り、まったくの混乱状態になる。

パニックの語源
ギリシャ神話に出てくる「パン」。寂しい場所で旅人に恐怖感を与えたという。

パニック発作
不安感が最も極端になったもの。「不安発作」とも呼ばれる。
現実には危険がないため、発作を起こした人は途方に暮れて恥ずかしい思いをする。

発作の例
・息切れする
・鼓動が早くなって動悸がする
・息苦しくて、窒息しそうになる
・胸が痛む
・フラフラして、眩暈や失神しそうになる
・体がふるえる
・体の感覚がなくなったり、ヒリヒリする
・汗をかく
・体が熱くなったり、冷たくなったりする
・吐き気や腹痛を起こす
・現実が遠くに見える感じがする
・自己コントロールが出来なくなったり、「気が狂うのではないか」という恐怖を感じる
・死ぬのではないかと恐くなる

本格的なパニック発作の場合、上記のような症状が同時に4つ以上起きる(うん、起きる

パニック障害とは
・パニック発作を2度以上起こした場合
・パニック発作が限定ではなく、4つ以上の場合
・発作の後、また起こさないかという心配が1ヶ月以上続いたことが1度以上ある場合
・パニック発作が他の病気や薬の副作用でない場合

※パニック障害は世界中で75人に1人の割合で起こる。アメリカでは心臓発作やてんかん、エイズよりも多い。


パニック障害自体は他の病気を伴わないが、「予期不安」「回避行動」「広場恐怖」などを併発することがある。

予期不安とは
恐怖をおそれる恐怖。また発作が起きるのではないかとひどく心配になる。

回避行動とは
発作が起きた場所を原因と考え、特定の場所や状況を避けるようになること。
用心深くなるほど発作を起こしやすくなり「恐怖症」になるという悪循環。
恐怖症は、理由のない強烈な恐怖が続く状態。
回避行動は発作を防ぐことにはならない。

※パニック障害の75~90%が回避行動を起こす。

広場恐怖(PDA)とは
発作が起きた時に閉じ込められたり、助けを求められない狭い場所、
逃げるのが困難な広い場所に行くことが恐くなる。
人に見られたくないという思いから公共の場や、人で混雑した場所を避ける。

例:エレベーター、トンネル、交通機関、レストラン、商店街、イベント。
  家から遠く離れることを恐れ重症の場合、家にひきこもってしまううつの併発自殺の恐れ

※早期発見によって合併症は少なくなる。パニック障害の9割は治療で回復する。


パニック障害の原因とは
生物学的+心理的要因の2つがある。パニック障害はどんな国でも同じようにある病気。
女性がかかる確率は男性の2倍。

生物学的原因とは
遺伝する傾向がある。人の特性は、遺伝子を通して親から子どもへ受け継がれる。
親か兄弟姉妹にパニック障害の人がいる場合、パニック障害になる確率は4~8倍になる。

脳の化学物質のバランスが崩れるのが要因とも考えられている。
最も効果のある薬は「抗うつ薬」で、脳の化学物質の値を変える働きをする。
発作自体で窒息したり、発狂したり、死んだりはしないが、薬物依存、うつ病に進行する危険はある。

心理的原因とは
生活からくるストレスに関連。
子どもの頃の不幸せな体験や、心の傷として残るようなショックな経験をしていることが多い
否定的で批判的な親のもとで育った場合も強い不安感をもたらす

生活になにか大きな変化が起きた時。
突然注目を浴びたりすることも原因になりうる/驚
ストレスが繰り返されたり、長引いたりするとパニック障害になりやすい


うつ病
うつになってからパニック発作を起こす人、パニック発作が定期的に起きてからうつになる人もいる。
併発すると治療が困難で、回復に時間がかかる。

パニック障害の診断方法
他の病気と似ているため簡単ではない。例:低血糖、甲状腺障害(これある
まずは、健康診断が必要。パニック障害を分かっている医師を選ぶのがポイント。

診断する資格
精神科医、心理学者、資格を持つソーシャル・ワーカー

生活に及ぼす影響
・集中力が落ちて学校・職場などでの成績が下がる
・「自尊感情」が低下する
・周囲と距離感ができて孤立する
・用事を覚えることが困難になる

自尊感情の喪失とは
発作を止められないと、自信を失う。意志の力や決断力が弱いと思いこみ、
原因が思い当たらないと自分のせいだと思う、自分が悪いと決めつけるのは間違い。
パニック障害は、自分で引き起こすことは出来ない。
勇気がなかったり、性格に問題があるから起きるわけではない。


パニック障害の治療
認知行動療法(CBT)+投薬。

認知行動療法とは
2ステップで進める治療法。
1.不安感の原因となっている間違った考え方を本人が知り、認める間違いを訂正する
2.不安感を軽くするために、精神の緊張をほぐしてリラックスする方法を学ぶ

認知行動療法の主な5つの要素は、学び、観察し、リラックスし、考え直し、気持ちを吐き出すこと。
発作を日記につけることも認知行動療法のひとつ。

パニック障害の治療の成功率は高い。75~90%が回復し、元の生活に戻れる。
「パニック発作はもう起きない」「パニックになっても大丈夫」と思えたら発作は徐々になくなる。
通常6週間以内で効果が出る。約12週間続ける(とっくに過ぎたけど

認知療法とは
自分自身をどう思っているか、世界をどう捉えているか、将来についてどう考えているか、
自分が信じていることなどを認知原因となる誤った考え方を発見訂正する。

よく見られる考え方
1.自分に対して不安や否定の気持ちを持つ
2.論理的でない間違った考えや信念を持つ

例1:「もし・・・したら」といつも悪いほうを予想してしまう「破滅的思考」。
例2:パニック障害の人は、とてもうたぐり深いことがある。
否定的なひとり言を意識の深いところまでたどると、筋の通らない考え方を理由もなく信じこんでいるという事実にたどりつく。
自信や自尊心をなくす原因となる。

認知の目的は、考え方を変えて、気持ちを落ち着かせること。


ディープ・リラクセーション
行動療法のひとつで効果的な予防法。
鼓動数・呼吸数を減らし、血圧を下げ、筋肉の緊張をほぐし、新陳代謝や思考をゆるやかにする。
新陳代謝=食べ物をエネルギーに変える作業

【効果のあるリラックス法】
・深呼吸(やってる
・筋肉弛緩(ストレッチとかはやる
・ヨガ
・太極拳
・平和な光景を想像する(ホラーなんて観てじゃダメ?
・自分について肯定的に語る
・マッサージ(これは苦手
・リラクセーション・ミュージックを聴く(毎日聴いてます
・瞑想

(もうちょっと詳しく書いてある本が必要だな。。

ライフスタイルの改善
・運動は緊張と不安感をやわらげ、うつにも効果がある
・禁煙。吸う人のほうが吸わない人より不安感を持ち、眠りも浅い
・刺激物(カフェイン・チョコレート・砂糖類・鼻づまり薬・かぜ薬)は神経を刺激し、不安をつのらせる
・新鮮な果物、野菜、たんぱく質、玄米・麦などを食べ、水も多めに飲む。添加物・保存剤などの加工品は避ける(缶詰めはいい?
・パニックを避けるのに役立つことをカードに書いて、いつもそばに置くのも効果あり

※パニック障害の3人に1人しか適切な治療を受けていないのが現状。

セラピストの種類
臨床心理士、心理学者、メンタルヘルス・カウンセラー、医療ソーシャル・ワーカー

治療を受ける前に質問してみる
・パニック障害患者を何人くらい治療してきたか?
・パニック障害を治療するための特別なトレーニングを受けているか?
・治療方法はなにか?
・治療期間は通常どのくらいか?
・費用は?

(全部聞いて回ったけどなぁ

薬物治療
抗うつ薬の効果がしっかり出るには4~8週間かかる。習慣性はなく、副作用もあまりない。
薬を使うかどうかは大きな決断。薬だけの場合もあるが、セラピーで心の治療も行うといっそう効果的。


初期症状がはじまったら
「あ」慌てないで症状を受け入れる。不安感をムリに押さえ込まない。
「い」息を整えて深呼吸。
「う」うろたえないで、具体的な対応策を試してみる。

【具体的な対応策例】
・動き回る
・歌をうたう
・周囲を見て、物や地面に触ることで現実感を保つ
・手を使う(料理や、ガーデニングなど
・「数分間で発作は終わる」など効果的な言葉を繰り返し言ってみる(やってみたけどなぁ
・症状と自分を切り離せることならなんでもやってみよう

【周囲のサポート例】
・押しつけでなく、本人が回復の中心になるように助ける。
・パニック障害の人のために生活のすべてを投げ出さない。
などなど


【あとがきの抜粋】
本書はアメリカで出版された『Perspectives on Mental Health』シリーズ10冊の中から5冊を翻訳した。
それだけアメリカでは、若者のメンタルヘルス問題が深刻化しているということを表している。
10代はむしろ、社会のさまざまな矛盾や桎梏のもっとも近くで、問題と隣り合わせだということ。

「君がしっかりしなきゃ」と迫るだけでは、単なる精神主義になる。それは苦しむ人をもっと苦境に追いやりかねない。
それより「君の苦しみがどうして生じているのかをよく理解しよう。そこから脱却する方法をよく学ぼう」
「君が一人で解決しようとすることはいけないことだ」と呼びかけている。
勇気を出して人に頼ることが大事なのだと。

自己主張の習慣の弱い日本には「ひきこもり」など特有の問題もある。
10代の問題行動も根っこをたどると、どこかでメンタルヘルスを損なった事実があり、
その時の周囲の理解の不十分が問題を拡大したと思われることが多い。
これからは、メンタルヘルスへの理解と共感が不可欠

もっと低年齢層に向けた『トレボー・ロメイン こころの救急箱』シリーズもある。


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