瓶ヶ森ヒュッテ、瓶壷(山頂を踏まない山旅記)
山行日 2013年6月25日
標高 おおよそ1730m、1660m
登山口 西条市東之川
下山口 西之川名古瀬
駐車場 なし(広い路肩)
トイレ なし
水場 瓶壷、十郎アレ(常住下)
メンバー 坊主さんとむらくも
石堂山の尾根歩きであのグロテスクなマダニに食いつかれて以来、ダニ・アレルギーになってしまった。
このジトッとしたクソ暑い時期は、ヤブ歩きはしばらく控えよう。
西之川から登って御塔石を眺めながら石鎚山へ登ろう。
古いが立派な登山道がある。
ここなら草むらへ入らない限りはダニは大丈夫。
ロングコースだが、しんどいようであれば、夜明峠までにして、八丁から周回下山、それでもしんどいようならロープウェイを利用すれば楽勝だ。
そう思って、二日前から準備をし、当日になればチャチャッと出かけるだけにしていた。
そんなところに坊主さんからメールが着いた。
わたしったら読まずにゴミ箱へ捨てた
仕方がないのでメールを書いた
さっきのメールのご用事なあに♪
なんのこっちゃ?
東之川から登って瓶ヶ森へ行き、西之川へ下ろうというお誘いだった。
西之川ルートはまだ歩いたことがない。
初体験だ、そういうのに弱い。
浮気心の虫が眼を覚ました。
目の前を綺麗なねーちゃんが、ツンと澄ました顔で歩かれると、たちまちに心が動いてしまう。
オヤジ譲りの生まれ持った病気だ。
二度とするまいと誓っても、ねーちゃんのあの誘惑の目にはまったく通用しない。
わたしはこれで仕事を辞めた。
嘘のような本当のような、小指を立てて、こんなコマーシャル昔にあったよな。
わたしは行く気満々でそわそわしてた石鎚山をこれで止めた。
と言うわけで、梅雨空のどんよりした早朝に、ヤブ山スタイルの色気もへったくれもない坊主さんと待ち合わせをして、自宅を出発。
なんの因果で坊主とこうなるのか、前世から手繰ってみないと分からない。
西条市のとあるコンビニでぬくぬくおにぎり弁当を買った。
早朝に買うといっつもあったかい。
爆弾おにぎりもあるでよ。
ヨーグルトも買った、腸に優しいビフィズス菌入り、ピロリ菌に勝て!
カルシウムたっぷり、骨粗鬆症にも勝つ!
加茂川を遡って、石鎚登山ロープウェイ山麓下谷駅という長ったらしい石鎚登山駅を通り過ぎて、石鎚西之川登山口の三叉路を右に入る。
くねくねと走り、やがて前日の雨でぬかるんだダート道に入る。
前方から古びた大きなダンプカーがやってきた。
交わすところがない。
ダンプには大きな岩をゴロゴロ積んでた。
バックバック、バックオーライ。
どっちが、もち、わたしたちが。
ウンちゃんが窓から首を突きだして、意外とキリッとした男だった。
「この先行き止まりじゃで~」
「瓶が森へ登るんじゃて、通しておくんなまし」
「そっかそっか、わしゃ、東之川で住んどった人間じゃ、ここをこう行って、あ~行って、ここに車を止めて上がるといい」
猿には見えんかったので信用したが、聞き手側は人間かにわとりか分からない、ノンコがいまひとつ薄くて理解できないまま引っ返す。
しばらくダンプの後ろについて走ってると、ウンちゃんが、堪りかねてダンプを止め、降りてきて、おみゃーたち馬鹿か、とは言わなかったが、あー行って、こー行って、ここだよ。
親切な方でした。
8:20、西之川瓶ヶ森下登山口(林道沿いに上と下と登山口が二つある、このときは知らなかったのだが)傍の教えてもらった貯水場傍に車を止めて、大きな水たまりに浸りながら自転車で元来た道を引き返す。
平組の小学校跡地の柱に自転車を括りつけて、8:41、東之川登山口へ向けてスタート。
通行止めの看板を横目に入っていくと、すぐに道が寸断されていた。
左下は復旧工事のためのダート道が出来、その先で人といくつかの重機が動いている。
アスファルトの道を進むと、おとろしげな大岩が前方に立ちふさがり、道は崩れている。
昨年の9月のゲリラ豪雨のときに崩れ、当時の姿のまま残っている。
あきまへん、とっとと引き返す。
復旧工事は道の上に被さった大岩を取り除くことを諦めている様子。
新しく迂回路を造成していた。
崩落したところを見ると、なるほど、100mに及んで崩れた崖は、修復しても再び崩落を繰り返すだろうと思った。
橋脚らしいものが造成されているそのすぐ横の道を歩いて、右に曲がるようにして奥へと進むと、林道へと繋ぐ応急的踏み跡があった。
トラロープを張ってあり、すぐに林道と合流する。
林道から後ろを振り返ってみると、崩落した崖の上部が見えていた。
普段はしっかりして落ち着いている山の斜面だが、ひとたび豪雨に曝されるといとも簡単に斜面が爪で引っ掻いたように剥ぎ取られる。
あなおとろしや。
当時、崩落上部の集落に住んでた方は一時的に避難されているのだろうか、アスファルトの小さなひび割れからは雑草がちょこちょこ生え、畑地も雑草が繁っている。
当時、一世帯だけ住んでた集落だったが、親切な方で、あれやこれや山の状態や駐車場所を教えてくれたりしたことを思い出す。
9:11、その集落のすぐ下にある小さな橋を渡って、山道に入っていく。
橋の山側入口にはイノシシやシカが人家に入り込めないように小さな鉄の門扉で閉じられていた。
塩ビの針金で括っただけのものなので、簡単に開け閉めができる。
整備の行き届いた植林地を縫うように登山道は続いているが、最近草刈りが行われたのか、刈られた下草がまだ青かった。
青い甲羅のサワガニが健気にもハサミを振りかざして威嚇する。
山の神じゃ敬えよ!
やがて伐採地になり、そこからは東向かいの李ノ高や高森、菖蒲峠が見え、蔭地の林道も一本の線のように山陰を瓶ヶ森方向に伸びている。
早朝は一面ガスだったが、この時刻には山頂辺りを被っている程度に退いた。
まだ木の匂いがするような真新しい小さな橋。
この後もいくつも掛け替えられていた。
遠くでカッコーの鳴く声を耳にしながらゆっくりと歩く。
10:56、東之川新道の分岐に着いたが、この新道はいまは廃道になっていて崩壊ヶ所もあり歩くことができない。
道標の指す方向の尾根筋を確かめたが、踏み跡は消えているようだ。
ここから瓶ヶ森まではまだ3kmあって、エアリアマップでは2時間20分と記載されている。
西之川からここまですでに2時間15分経過しているので、ほぼエアリアマップのタイムと同じペース。
東之川からの登山者が結構多いのか、道はかなり整備されている。
やがて植林帯を抜け、自然林に入ったが、ここから急斜面が続き息が切れ出す。
ヒーッ!足が上がらず何度も立ち止まり、坊主さんに先に行ってもらう。
その都度時計を確認した。
お昼ご飯はまだかっ!
12:09、やっとこさ台ヶ森の鞍部に到着。
右100m先は山頂だが、坊主さんは行かないと言う。
なんでなんもないサンチョーにわざわざ行かないかんのや。
そこまで言う。
仕舞いにサンチョだのポンチョだのと言って、人を小パカにするあるよ。
わたしゃも行くの止めた。
めしやめしっ!ハラへったが。
辺りはカジカとエゾハルゼミ(たぶん)の大合唱。
うるへ~っ!
休憩はたっぷり取った。
むすびも食った。
12:45、再び腰を上げる。
上がらんかった足が調子よく上がりだした。
日本人はやっぱ米や、ごはんをターンと食わなあかん。
お陰で銅長やけどな、アハハ
たっぷりと降った雨で小さな沢も水がターンと流れとるわい。
下界は雲海だ。
氷見二千石原に到着。
登山道足下には白、黄色入り混じってニガナの花。
雌山、雄山はガスの中。
たっぷりメシのお陰で、山頂に行く元気はあったが、坊主さんは行く気がないのでわたしも声を掛けないことにした。
声を掛けるとまたまたサンチョだのポンチョだのと言い出すに決まってる。
わけわからんわ。
まあ、登ってもなんも見えんし、わたしもサンチョに拘りはないほうだし。
ただ、オオヤマレンゲが咲いてるかどうかが少し気になった。
白石小屋。
サンチョへ行かないとなったら、あとは下るのみ、こりゃ楽ちん。
澄んだ水を湛える瓶壷を眺めて、笹原から林の中へ。
おや、シカの鳴き声、石鎚山系にも居るとは聞いていたが、間違いなく居ますね。
緑一色ですよ。
ここはお花畑かな?
オヨヨ、小さな道標が向きは合ってるがサカサマだ。
苔蒸した岩場が次々と現れる。
イワタバコの葉などがびっしりと着いてるものも。
秋はどうなんでしょうね。
いい感じですよ。
渓の景色にうっとり。
ときおり、小鳥の綺麗な鳴き声が聞こえてくる。
語りかけるような鳴き方をする。
足下でカエルがピョン。
14:59、鳥越に到着。
変な形の岩ですね。
別の方向から…鳥に見立ててるのかな?
見えなくもない。
深い谷にはどなたが作ったのかケルンがあちこちに。
大きな岩がオロンゴロン。
やがて人工の石垣が現れた。
長さおおよそ15mほど、ここには昔、住居があったのだろうか、畑やもしくは炭焼き窯などではないような気がしたが、よくは分からない。
東之川と同様に、この道も綺麗に整備されている。
登りに差し掛かった。
ここで初めて地図で位置を確認する。
南側の渓谷はシロジ谷、かすかに沢水の流れる音が聞こえているような、気のせいかもしれない。
上から手を振るオヤジ。
これまでの道中でポツンと一つだけあったお地蔵さん。
三月という字だけが読めたが、あとは不明。
15:48、常住に到着。
成就ではない。
何か繋がりでもあるのだろうか、それとも、他に意味がこめられているのだろうか、気になるが分からないものは分からない。
雨が降り出し、雨具を着用。
ここからは十郎アレと呼ばれているらしい。
16:40、林道に飛び出した。
朝見た登山口とは違う。
どういうこと???
坊主さんも頭の中はクエスチョンだらけ。
とりあえず林道を下ることにした。
やがて見覚えのある登山口に着いた。
どうやら登山道をあとから造成した林道がぶった切ったために、上と下とに別れたものらしかった。
16:59、駐車地点に辿り着き、雨具を脱いで、濡れたシャツも着替え、車に乗り込む。
よく整備された古の道、自然がいっぱいで、特に瓶壷から下った釜床谷、そして常住手前までの谷筋は素晴らしいの一言でした。
体力があればの話ですが、秋に紅葉を見にもう一度行きたい気持でいっぱいでした。
思いを抱くだけなら、いくらでも出来ますっていうことで、今回の山歩きはチャンチャン。
いつかまたの日に。
珍しい花、ショウキラン。
西之川下登山口8:20-<自転車>-小学校跡地8:41-東之川登山口9:11-12:09台ヶ森鞍部12:45-白石小屋13:49-瓶壷13:56-鳥越岩14:59-常住15:48-西之川上登山口16:40-16:59西之川下登山口
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