八石山・クデイシ山・綱付山 やついしやま、くでいしやま、つなつけやま
山行日 2016年11月29日
標高 841.2m、756m、580m
登山口 井川町里川東
駐車場 なし(林道路肩)
トイレ なし
水場 里川東集落南標高650m付近沢
メンバー 単独
ひと月ほど前に、徳島自動車道・井川池田ICの裏の細い車道をくねくねと南へ遡って里川西の奥まった最終民家から五ノ丸山へ登った。
その民家の傍の登山口から東側に眺めた景色は、吉野川に架かる三好大橋の少し東側あたりから南に派生する嫋やかな尾根が開けており、稜線にはいくつもの鉄塔が並んでいた。
その鉄塔に向かって民家が点在し、車道が走っている。
吉野川に向かって緩やかに下っているこんもりした尾根端に標高580mの綱付山があって、そこから南に辿って里川東集落の真上辺りに標高756mの三角点・堀部があって、さらに南にはこの尾根で一番高い標高841.2mの八石山が聳えていた。
五ノ丸山から下山し帰宅したその日にPCを立ち上げカシミール3Dの地図で確かめてみた。
里川東へと登る車道は峠を越え、東側の井内へと続いている。
井内には腕山や井川スキー場へ行く車道があるが、それと繋がっているようだった。
綱付山から八石山間の尾根には三本の四国電力の送電線が尾根を跨いで走っていて、北から順番に松尾線、三島東線、新改幹線があって、一本はJR辻駅の対岸で消え、二本は吉野川ハイウェイオアシスの対岸にある電力施設に合流している。
この尾根を一艘の船としてみたてたときに、綱付山はロープを岸壁に繋ぐ艫の位置だろうか、里川東集落の真上にある三角点・堀部はマストの位置、そして最南の八石山は船首になる。
その八石山は東に20分ほど下ったところに八ッ石城跡がある。
南北朝時代の城で、城主は北朝方に攻められ1380年8月23日、自害した新田義治氏。
巨石や神社があって、展望のよい景勝地であるらしい。
このことは後日に知った。
7時半、気温6度の猪鼻トンネルを抜け、三好大橋を渡り右折、即急な坂道の細い車道へと左折。
JR徳島線の踏切を越え、徳島自動車道の下をくぐり、くねくねと里川東へと走る。
道は次第に細くなり、軽四だったが運転がへたくそなのか、カーブを曲がるにも切り返しが必要だった。
里川東最奥民家
標高おおよそ630m、最奥民家には人の気配はなく静かだったが、道は荒れてはおらず、お茶畑の手入れも行き届いていた。
五ノ丸山登山口方面(里川西)
車道からは一か月ほど前に登った五ノ丸山の登山口のある里川西集落の屋根が、中腹を走る道沿いにポツリポツリと見えている。
登山口は真ん中上に白く光って見えている左斜め上の屋根二つ並んでいるところだ。
駐車地点 植林
最奥民家を少し過ぎたところが左カーブになっていて、舗装された車道はまだ上へと続いているが、未舗装の林道がカーブから右手へと延びている。
上空には送電線があった。
これが国土地理院の地図に描かれている破線の道の入り口だ。
8:25、屋根が落ち込んでしまっている廃小屋の前に車を停め、破線の道へ入ってゆく。
沢 複雑な道
道はすぐに三叉路に差し掛かった。
一方は左手上へ向かっており、もう一方は直進で水平だ。
迷ったが水平の直進道を選んで進んだ。(左上方向の先は標高756mの三角点・堀部があるので、ひょっとするとその山頂へ向かう道だったのかもしれない)
道端には四国電力巡視路28番29番を示すアングルがあった。
水の流れる小さな沢が二つ現れた。
地図では沢を遡るようにして破線の道が続いているのだが、どちらの沢も道があるようには見えなかった。
巡視路を直進した。
道は途中で別れているところもあり、やや下り気味だ。
地図に描かれた破線の道は上っているので、違う道を歩いていると思った。
松尾線28番鉄塔 斜面をよじ登る
ほどなく松尾線28番鉄塔にたどり着いた。
道はその先も下っている。
少し引き返して、地図に載っている716m地点の尾根を目指し、直登することにした。
林道 登山道
9:03、林道に飛び出たが、横切るようにしてなおも上へと登ったところ、破線の踏み跡に復帰することができた。
地籍調査テープ 三島東線84番鉄塔
落ち葉が積もり道は隠されてはいたが明瞭な踏み跡で、地籍調査のピンクのテープが導いてくれた。
9:14、三島東線84番鉄塔に着く。
Y字分岐 新改幹線14-15番杭
ところどころイノシシに掘り起こされた林道を進むと林道は再び三叉路になっていた。
どっちに進むか迷う。
エイヤー、右に進んだ。
左に進むのが正解だったようで、間違えてしまった。
いつもの悪い癖で、地図で確かめもせず、ええ加減な気持ちで歩いている。
林道歩きのルーファイはおもしろくもなんともなくて、やってられない。
支尾根を西に回り込むようにして破線の道に復帰。
吉野川遠望
9:34、新改幹線15番鉄塔の真下に出た。
送電線が下に向かって這うようにして延びているやや左先には吉野川が霞んで見えているが、辻町辺りだろうか。
クルクルクル-、チャチャチャッ。
シロハラがこの冬も元気な鳴き声を林の中から届けてくれる。
尾根 八石山(鷹指場)
八石山への尾根ははっきりした踏み跡ではなかったが、林の中に隙間があり、ところどころに赤テープがあったりしたので迷うことはなかった。
9:50、三等三角点・鷹指が埋設されている東西に平たく伸びた八石山に到着した。
点石の傍には一本の白い小さな杭が立っていて、それには「和田学校、2010.4.11、鷹指場841.2m」と記されていた。
展望はまったくない。
鳴門岳友会が発行した「徳島250山」のガイドブックによれば、この山の東側10分弱下ったところに鷹指場越という峠があって、さらに10分強下ると南北朝時代の八ッ石城跡とトイレや駐車場があると書かれている。
後日にネットで調べたところによると、この地には様々な伝説があって、その一つに椀貸し伝説というのがヒットした。
「昔、祭りなどのときに、明日の客用の膳椀を借りたいと言っておくと、翌日にはきちんと並んでいた。しかし、ある日、誰かが借りておいて、かたおにして返してからは、貸してくれなくなったそうな」
「かたお」とは、たぶん膳椀の一部が欠けたり壊れたりしたものだろう。
西外れ 新改幹線15番鉄塔
山頂から続く尾根を少しだけ西方向に歩いてみたが、松や杉などが伐採されている以外にはなにもなかった。
歩いてきた尾根を引き返し、再び新改幹線15番鉄塔に寄る。
三角点・堀場への尾根 地籍調査と杭
三島東線84番鉄塔をちょい過ぎたところで、往路と離れ北方向の尾根を進むが、入り口は踏み跡なく地図とコンパスなしでは難しい。
しかし、ほどなく地籍調査のピンクテープがうんざりするくらいの賑やかさ、難なく案内してくれる。
気のせいだろうか、人の話し声が右隣の尾根方向から聞こえてきた。
左の谷からはベキバキッと枯れ枝を踏みしだく獣らしき足音が聞こえてくる。
ほどなく右の谷筋からもバキバキッと音がした。
ちょっとー、これって何よ、怖いがな、ビビってしまう。
不自然な石積跡 イノシシの踏み荒らした跡
10:45、ピーク756m(三角点・堀部)の手前でした、ほんのちょっとした窪地に石がゴロゴロと重なるように転がっていた。
井戸跡にしては石数が少なく、のろし台跡にしては石が焼けてなくて、ひょっとして墓跡なのかもしれない。
どちらにしても自然のものではなさそうな印象だった。
前方でドタドタ足音がした。
いまのいままでそこにいたと思われる踏み荒らした跡があった。
クデイシ丸
行き過ぎたので少し戻り気味に進む方向を修正。
10:55、三角点・堀部は尾根直進方向ではなく右へ寄り道するような位置にあった。
標高756mの無名峰とばかりに思い込んでいたが、八石山と同じく和田学校の登頂記念杭があって、それにはクデイシ丸と記されている。
地名や名前などに意味のないものは何一つないと思っているが、クデイシというカナ語は調べてもわからなかった。
山頂の様子
八石山と同じく、山頂は展望もなく、松の木や杉が茂った山だった。
林道 松尾線30番鉄塔
隣の尾根に乗り移ろうと思って谷へと下ったら、思いがけず林道に出合ったので、それを追う。
11:11、里川東集落から井内へ延びる車道に飛び出し、松尾線30番鉄塔に。
舗装された林道 NTTドコモ
舗装された車道から未舗装の林道へと入り、尾根筋を追っていくと電波塔に辿り着いた。
尾根道① 尾根道②
前方からグググーッというくぐもった声が聞こえてきた。
イノシシだろうか?
声だけで、正体がわからないというのはなんとなく気味が悪くて落ち着かない。
こんな山、おらもう嫌だ。
一人で来るんじゃあなかった。
ババアと一緒に来るんだった。
一応誘ったのだが、妻の実家でお寺のおじゅっさんを迎えないかんので来れなかった。
一緒に来ておれば、もしも獣に襲われたとき、ババアを人身御供に差し出して、わしゃあ、その間にすことんで逃げられるのじゃが。
くそっ!こんな大事な時に、お寺はんは何をするんじゃ、邪魔するな。
綱付山
ブツブツ呟きながら歩いてると、突然に綱付山山頂に飛び出した。
時刻は11:35、この山も展望はまったくない。
徳島250山のガイドブックには少し東に開けた場所があると書いていたので、ウロウロ探してみたが、見つからなかった。
桜が丘公園への登山道 車道
JR佃駅の南側にある桜が丘公園への掘れ込んだ登山道をちょっとばかし歩いてみた。
鬱そうとして歩きにくい。
昼食をこのあたりでとるのを止め、早々に下山開始。
おらもうこんな山、嫌だ。
早く帰るだ。
一人じゃ寂しいだ。
松尾線29番鉄塔 イノシシ捕獲檻
誰かさんが里山山中で、イノシシの罠を仕掛けようとしたとき、シャレコウベを見つけたという話を思い出した。
そこには頭蓋骨だけで、体の他の部位はなかったという。
その里山では行方不明になってるものが過去何人かいて、そのうちの一人じゃろうという話だった。
こんな寂しい気持ちのときにかぎってシャレにもならんことを思い出してしまう。
わーおー!
駐車地点廃小屋 廃屋
車道に出て、しばらくで駐車している廃小屋の屋根がうっとう暗い林の向こうに見えた。
最奥民家を背にして
山全体がほぼ植林なので、また展望もないことからつい「こんな山」と書き込んでしまったが、一人で歩き、あちこちとうろつく楽しさは格別なものがある。
今回の山歩きで一つだけ心残りなことがある。
それは、八石山について、十分な情報を得ないままでかけたことだ。
もしも、八ッ石城や巨石や鷹指場越のことが事前情報で把握できていたら、山頂から東に下って景色を楽しむことをしたのにと思った。
グデイシ丸、君の名は忘れないぞ。
山にはロマンが付き物ですね。
帰路、財田にある環の湯に浸かって、汗を流した。
駐車地点8:25-小さな沢8:30-八石山(鷹指場)9:50ークデイシ山10:55-11:35綱付山11:50-12:25駐車地点
グーグルマップ(登山口などの位置がわかる地図)→こちら
ルートラボ(距離や時間がわかる地図)→こちら