石墨山・法師山(法師権現山)・白猪山 いしずみさん・ほうしやま・しらいやま
標高 1456m、1310m、1201.1m
登山日 2011年7月9日
登山口 東温市河之内「唐岬ノ滝駐車場」
駐車場 あり
トイレ 駐車場にあり
水場 滝上の沢、もしくは白猪峠から下って分岐を右折し10分ほどの沢
メンバー ピオーネ、むらくも
最近、行きたいと思う山がない。
夏になり、気温が上がって、身体がついていけないのか、毎日、ぐうたらちん。
こんなときは、エイヤッとかけ声を出して、無理矢理にでも出かけないとますますチンタラな生活を延々と繰り返してしまいそうになる。
そうなればそうなったでもういいか~、と思ってしまう自分がいるので怖い。
取りあえず、この土曜日は思いきり体が空いている。
ヒマ~!
奴は休みの日には絶対にどこかの山へ出かけるに決まっている。
休日は山、平日はスーパー経由で会社と家と実家の往復、行動パターンは単純明快、此の二つのみ。
夫が知らない行動はいまのところない、たぶんこれからもない。内緒だとか秘密という言葉は彼女の辞書には載ってない。
理由は簡単、隠すほどのことが身の上に起きないし、隠してもすぐにばれてしまう。
その妻に投げかけてみた。
即返があった。
「石墨山」
「ササユリが咲いとる」
誰かのレポートを見て、行く気満々になってるわい。
聞いてみた。
「はるちゃん、それに仙ちゃんも行ってる」
ササユリで思い出す山は皿ヶ峰と堂山~二ノ森間、他にもたくさんありそうだが、貧相なノンコにはこの二つしか記憶にない。
妻に丸投げして、明日は宜しくとペコペコ頭を下げることにした。
「ルートはどうなるの?」
「はるちゃんと仙ちゃんが歩いたルートをそのまんま東にするわ」
「都知事選でパッとせんかったけど、その後、どないしよんやろな?」
「さあ~???」
「ひょっとして、かとうかず子さんと縒りを戻したのかな?」
「さあ~?}
行く先は石墨山の肩から北東に聳える「法師山、別名法師権現山」そしてその先に三角点のある「白猪山」があって、白猪峠から右折して白猪ノ滝方面へ下る途中の分岐で右折して唐岬ノ滝登山口へと周回するようだ。
法師、耳慣れない言葉で現代ではほとんど使われていない。
一寸法師の出てくる童話はわたしたちの小さい頃にはよく聞かされたが、今の子どもは知らないかもしれない。
影法師、忍者と共に時代劇に出てきそうなもしくは江戸川乱歩さんの探偵小説に出てきそうな、もう死語に近い。
つくつくぼうし、これなら知っている。
西川のりおさん、元気?
一番の有名どころは三蔵法師かな。
石墨山よりもこの法師権現山に興味が湧いた。
どんな山だろう、昔の僧侶たちの荒修行の山だろうか?
ルートも地図もなにもかも彼女におんぶにだっこ、朝4時半に眼を覚まして、ちょこちょこっと準備して車に乗るだけ、こんなに楽なことはない。
これからも此の手を使おう。
上限1000円乗り放題高速は6月19日でもって終了した。
しかし、休日50%割引は継続実施。
大野原ICから川内ICまでだと走行距離100km以内、従前と変わらない料金で済んだ。
通行車輌の数はガタ減り、観光地・温泉地などはどこも閑古鳥が鳴いているらしい。
川内ICを降りて、国道を少し東に後戻りして、路肩の清掃が終わって綺麗に整備された国道494号線を面河ダム方面へと走る。
朝の眩しい光を受けて、棚田が美しく輝いている。
何年か前に石墨山に登ったときも此の道を通ったが、季節は秋だった。
棚田は緑の絨毯を敷き詰めたようにコトンコトンと折り重なって見える。
道から見えた白猪ノ滝駐車場ではすでに何台か車が止まり、登山姿の人がちらほら。
ここから登ってもいいかなと思ったが、思いつきの計画変更は止めとこう、これをやると妻の機嫌が悪くなる。
今日の目的はあくまでもササユリ。
7時50分、唐岬ノ滝駐車場着、滝の音が聞こえてくる、車はすでに5台駐車。
準備をしているともう一台来られたが、上の登山口前にある駐車場へ止められ、降りると直ぐに登って行かれた。
山頂方面を見上げると、ぴょこんと飛び出た特徴のある山が稜線に見えている。
どうやらあれが法師権現山のようだ。
8:05、いくつかの杖の立てかけてある登山口からスタート。
いきなりの急な斜面、植林の道にはギンバイソウやヤマアジサイが咲き誇っていたが、道が以前と比べて、重機で広げられたような、もう少し自然がいっぱいの山道だったような気がしたが、思い違いかな?
左斜面から冷たい風が吹いてくる。
ペットボトル4本持ってきた。
そのうち2本は氷らせているが、この気温だと常温のスポドリ1本で済みそうだ。
トチバニンジンが杉の木の幹元で長い花茎をこれでもかとばかりに伸ばしている。
まだ蕾だ。
エンレイソウが実をつけていたので指でつまんでみた。
意外と柔らかくて、ポニャポニャ、白花の実かな?
30分ほどで割石峠に着いたが、地図上の峠はまだ300mほど先にあるそうだ。
右折して肩を目指すが、急登だ。
古いロープがところどころに施されている。
前を歩く人、腰が曲がり杖を頼りに歩く姿は間違いなく初老のおばあちゃんだ。
汗が一気に噴き出る。
塩、しお、シオ~、塩飴を口に放り込む。
真っ白なササユリがぽつぽつと笹の中から姿を現し、妻はその都度カメラを向ける。
稜線に出れば、たくさんのササユリが現れるはずなのだが、そのことを伝えても彼女はまったく聞く耳を持たず。
「これはこれ、折角だから撮っておかなくちゃ、ササユリにもそれぞれに百合格があるのよ」
「 … … 」(わたしは貝になりたい)
梢の上ではミソサザイが小さな体に似合わない賑やかな囀りで、代わりに返事をしてくれる。
「ぴーちーぴちぴちぴーちく」
通訳がいる、たぶん、「そうよわたしたち鳥にも鳥格があるのよ」とでもいってるのかも。
肩に着いた。
倉敷からこられたご夫婦が休まれていた。
昨日、東赤石山に登って、夜、車中泊しての山行。
高速1000円が廃止になるとやっぱり日帰りよりは泊まりたくなるよね。
北西には1334m峰の向こうに法師権現山が聳えている。
法師権現山は標高わずかに1310mだが、山容からも高く見える。
麓から見てもおっぱい型だが、ここから見てもおっぱいだ。
ご夫婦とお別れして、南の稜線を辿ると、鮮やかなピンクが目に飛び込んできた。
少し、時期が過ぎてて、花弁に痛みが目立つが、今年初めて見る分には十分。
山毛欅が心を癒してくれる。
西方面がグッと開けており、眼下は直瀬川上流の集落だろうか、その向こうには生憎のガスだが皿ヶ峰の山並。
そよ風を胸いっぱいに吸い込んでみる。
なんとかショウマと麓の段々畑。
岩場にやってきた。
へっぴり腰で先っちょに立って、下を覗いてみると、一面に真っ白。
ヤマボウシが満開でした。
イワキンバイはもう終わったモノもあり、だいぶ咲き進んでました。
オトギリソウ。
この手もたくさん種類があって、葉や花が微妙に異なるようですが、見分がでけしません。
面河ダムがちらりと見えています。
紅白饅頭ならぬ、ササユリ。
10:00石墨山山頂着、早速、運転手控えて大きめの缶ビールで乾杯。
お腹は出てないのですが、最近お腹の皮がプルプルで、とりあえず糖質ゼロの新商品を飲んでちょっとでも引き締め作戦。
相棒はおにぎり1個と味噌スープ。
お一人の男性が登ってこられた。
地元の方のようで、わたしたちと同じルートを下られるようでした。
例年ササユリの数が減っており今年は特に少ないとのこと、盗掘に遭っているのでしょうか。
単独の方とお別れして、法師山へ。
すると、前方の岩場からニョキッとご夫婦が現れた。
あれま、どこかでお見かけした方だと思ったら、以前に笹蔵湿原でお会いしたストーンリバーさんでした。
先月にも八巻山へ登られている後ろ姿を遠くから見かけてはいたのですが、間近でお会いしたのはもうあれから二年ぶりのことでした。
懐かしさのあまりしばらく引き留めてしまいました。
お別れして、さてもう一度イワキンバイをじっくり撮影しましょうと思って岩に近寄ると、足元にニョロッ…!
ドヒャー、蛇や、マムシや~!
なんと、逃げてくれません。
すると山頂へ向かってたストーンリバーさんが振り返り、その蛇、さっき、蹴飛ばした奴じゃとのたまわる。
ヒョー!なんとおとろしいことを!
しかし、ヘビはそんなことなかったかのように、ゆっくり堂々としている。
このヘビ、ヘビ格ができている。
マムシはくるりときびすを返した。
つぶらな瞳が可愛い。
一瞬吸い込まれそうになった。
う~ん、よしよしをしたくなったが、よした。
いくらかわゆくとも奴の牙は猛毒。
ゆっくりと岩陰に入り、もう一度お昼寝、そこはお日さんが当たっていてふかふかと、いい按配に見えた。
岩陰に、マムシスヤスヤ、イワキンバイ。
目の前を歩く妻が突然視界から消えた。
下を見ると、すってんころりん、滑っている。
必死で笹を掴んで立ち上がろうとする。
笹も迷惑だわい。
もう一度肩に。
白猪方面から登ってこられた単独男性の方が、少し法師山へと下るとササアユリがたくさん咲いてますよと教えてくれた。
下っていくとヒヨドリソウ(ヨツバヒヨドリかも)が群生。
辺りを見回したが、アサギマダラは飛んでいない。
法師山が目の前に見えだした。
鞍部から一登りで法師山山頂に。
ピッケルを持った単独男性が山頂標識の直ぐ根っこでお昼ご飯の真っ最中。
失礼して、標識だけを頭ごしに撮らせて頂いた。
お弁当を見ると、昔の竹駕籠弁当、う~む、山師だ。
お話を伺うと、相当に山へ入っているようで、法師山から北への直登ルートを教えてくれました。
おそらく、北尾根を辿って、1152m峰、そして947m峰へと降りていくヤブルートであろうと思われた。
相当な急斜面のようで、木を手づかみしながらの下りになるようだ。
思わず足がそちらへ踏み出しそうになったが、妻がドンとわたしの胸を突いて、登山道の方へと押し返した。
はい、分かってます。
登山道を下って少し先では林道が尾根の脇を走っているのが見えた。
無視して尾根の踏み跡を登っていくと、三角点のある白猪山山頂。
もう一度下って、笹の中に文化7年に建てられたお地蔵さん、なんと丁度200年前のものだ。
直ぐに白猪峠の分岐に到着。
ここでどっかり腰を落としてお昼ご飯とした。
カジカとヒグラシの鳴き声がしきりと聞こえてくる。
朝曇っていた空はじわりと晴れて、暑そうな日差しが容赦なく降り注ぐ。
妻が叫んだ。
何かの花を見つけると必ず「ヒャー遇った~」と奇声を上げる。
幸せの瞬間だ。
イチヤクソウ
ゆるやかに下って、やがて白猪ノ滝(1.9km)と唐岬ノ滝(1.6km)との分岐に出る。
標識の指す唐岬ノ滝へと右折する。
踏み跡はあるがヤブっぽい。
小さな沢を渉って。
林道へ。
ここで間違った、林道右カーブのところで直進方向に山道があったので、そちらへ踏み込む。
オカトラノオ
ラッキー、今年初めて見るアサギマダラに出会いました。
しばらく歩いたがどうもおかしい。
開けたところに出たので地形を確かめると、まったく違う方向に歩いている。
引き返して、再度林道に出て、そのまま広い林道を辿っていく。
林道はいくつもに別れていたり、登り返したりでややこしい。
ちょっこしうんざりした頃にまた道が分かれており、直進すると小さな滝に出た。
道が途絶えた。
引き返し林道を歩くとやっとこさ494号線の駐車場に飛び出た。
で、結局唐岬ノ滝には今回も寄らず終いで帰路に着く。
のんびりした一日でしたが、結構下りでの暑さにやられてしまいました。
これからはもう少し高い山でないと、ちょっと辛いですね。
車中で麦茶をペットボトル丸々一本がぶ飲み。
キツリフネ、サワギク。
登山口8:05-割石峠8:32-肩9:20-10:00石墨山10:35-肩11:25-11:45法師山11:50-12:25白猪峠12:43-分岐13:09-13:37登山口
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