むらくも

四国の山歩き

秋葉山~焼堂峠周回…徳島県

2013-12-05 | その他<徳島の山>

秋葉山(三角点名)        あきばやま



山行日              2013年12月2日
標高               784.4m
取りつき地点           半田町折坂
駐車場              なし
トイレ              なし
水場               標高おおよそ660m廃屋傍の沢
メンバー             坊主さん、むらくも




阿讃山脈に今季二度目の冠雪。
上空5000mには-24度の寒気団が覆い被さっている。
雪やこんこ …犬は喜び 庭駈けまはり 
そんな童謡があるが、隣の犬は寒そうに庭の片隅で眼を細めている。
夏の夕方には、散歩に出かける人の姿を見かけると飛び起きてうるさいほど吠え立てていたが、ただジッと丸まっている。
元気なのは川で遊ぶ鴨などの冬鳥だけのようで、早朝と夕方にはガーガーと賑わしい。

坊主さんからメールが入った。
ネタ切れで行くところが思い浮かばん、どこかいいところないかしゃんとのこと。
後日に気づいたのですが、これはたぶん香川県内の里山に思いを巡らしての言葉で、坊主さんとしては県外は考慮に入ってなかったのでしょう。

坊主さんの考えは無視した形になったが、今年6月に歩いた徳島の火打山~白滝山の稜線から眺めた山並みが半田町の奥に聳えていたことを思い出した。
地図を広げて火打山から東へと目を移していくと、白滝山から土釜への稜線途中に焼堂峠がある。
どう読むんだろう?
峠名の由来は?興味が湧く。
この稜線を適当にどこかで区切って周回できないものか、坊主さんに西祖谷地区にある山も含めて提起してみた。

ぎょへー、帰ってきたプランは林道歩きが長い。
日谷尾(ひがお)から取りついて、1073.3m(志貴岳)に登り、焼堂峠を経て、1020.7m峰(三角点・折坂)へ抜けて、784.4m(三角点・秋葉山)、そして折坂と上蓮の途中にある神社へ下りるルート取り。
坊主さんはロングな林道歩きなどどもないらしい。
日谷尾は止めて、上蓮を起点にして小井野(こいの)へ下れば周回できる、これで行こう。

峠という言葉は人を引きつける魅力的な響きがある。
これは私だけではないようで、あちこちと峠巡りをするマニアックな方もおいでるようだ。
峠は昔の人たちが歩いて作った路、そこには生活の匂いと歴史的な匂いがぷんぷんする。
というわけで、焼堂峠、歩いてみよう。
日曜日には上空の寒気団は去って、暖かい日が戻ってきた。



道の駅「ゆうゆう館」で坊主さんと待ち合わせをして、半田川を遡るようにして県道256号線を走る。
早朝の気温は4度、前日より2度高い。
天気は上々、坊主さんの後を走るが、256号線はくねくねとややこしい。
半田素麺の製麺所があちこちにあって、思わず目がきょろきょろ、間違って、日谷尾へ入ってしまった。
引き返し、下尾尻の三叉路を上蓮製麺所の看板方向へと入る。

次の三叉路のところで高い法面の上に小さな鳥居があった。
右手へ入り、路肩の広いところで車を止める。
車から降りて、取りつき地点の様子を探ろうとしたところ、畑で作業をしていた男性と目が合ってしまった。
駐車のお断りがてらにご挨拶。

簡単に話が済み直ぐに出発できるものと思ってたところ、いきなり「あんたたちなに屋さん」ときた。
「はい、志貴岳へ登ろうと思ってきました」
「そんな山ここにはないで、聞いたことがない、どこにある山?」
「焼堂峠(やきどうとうげ)の東にある山なんですが」
「ああ、焼堂峠(やけどうとうげ)な、それやったら、そっちからは行けん、引き返して左の道から奥へ入って行ったところからじゃで」
「小井野(おいの)への道ですか?」
「小井野(こいの)や、そこからが一番近い、直ぐのところが峠じゃ」
「ところで車を道端に置かさせてもらってもいいですか?」
「う~、そこはいかん、もっと上の奥の広いところへ置け、そこから登るといいじゃろ」
あ~だこ~だとすったもんだの長い話のあとだったもんでガックリきた!
この方はその後もしきりに首を捻って、不審そうな顔をされていた。
道があろうがなかろうが、ヤブに取りついてどこからでも登るという香川からの怪しげな人間は理解できないし、しかも誰も歩かない山なので不審な思いは余計に募っただったろうに。
わたしがもしもこの方なら、けったいなやっちゃ、あほちゃうか、この言葉が頭を駆け巡って半日は離れないと思う。
以前にも「鳴滝はどこや」と訊ねてきた人がいたとか、辺鄙な山奥の滝巡りをする変わり者、変人はときたまひょこっと現れ土地の人を不審がらせるらしい。

地元の方には逆らえない。
お礼を言って、移動、しかし、どこにも広い路肩などない。
やがて、折坂の最終民家行き止まりちょい手前の電波塔があるところに広い路肩があったのでそこへ駐車。
計画の取りつき地点からは大きく離れてしまった。
すっかたなかんべや。
準備していると、町営のワンボックスの乗り合いバスがやってきて、「200円で乗れますよ」などとマイク放送しながら上にある集落のところで止まった。




計画変更、尾根にある571mの小さなコブは止めて、いきなり標高784.4mの秋葉山を目指すことにした。
8:26、適当なところから杉の植林帯へ入って行ったが、尾根が違った。
再び車道に下りて、北側へ下ったところから取りつく。
地図では分かり難い小さな谷が右手に現れたので、登りよい尾根を辿った。




景色が開けたところで後ろを振り返ってみた。
民家(折坂最終民家でのちの下山地点)が見え、そのちょい左下に駐車した電波塔が小さく写っている。




尾根には松の木が生え、松の落ち葉がふかふかに敷き詰められている。
8:59、猫の額ほどの尾根肩に出た、そこには小さな祠の石で組まれた土台があって、傍らには崩れてばらばらになった祠が朽ち落ちていた。
標高おおよそ615m。
古くはここで祭り事が行われていたのかもしれない、そんな雰囲気だった。

祠から4~5分登ったところで、お墓があった。
立派な女性のお墓で、行年23才、昭和32年5月とあった。
戒名は9文字、手厚く葬られたものと思える。
埋葬された遺骨などは他所に移され墓石だけがここに残されている。




お墓から5分と経たずに、廃屋に突き当たる。
標高おおよそ660m。
山奥のしかも中腹にある1軒屋にしては立派な構えの民家。
お墓の施主の方のお名前は時代劇に出てくる武士の名と同じものだった、どんな方のお屋敷だったのだろう。
それにしても、山奥過ぎる。
相当な酒豪だったのか、一升瓶が山積みになって転がっている。




廃屋の縁側は冬の日溜まり、たわわに実った大きな柿の木が2本、坊主さんと二人でしばし日向ぼっこ。
そこから眺める景色は折坂集落上の尾根を映していた。




30分近く休んだ後、光沢のある柿の実1個をいただいて、民家の右側から山水の流れる小さな沢を横切り、再び歩きだす。




大きな岩壁が右手に現れた。
左へ迂回したが、そこにも小さめの岩棚があり、それ以上迂回が難しくなってきた。
岩壁を這い上る。




ロープでセルフビレイをとればいいのですが、地図には岩場などあるようには見えなかったので持ってきていない。
岩は摑みやすくなおかつフリクションが効いたので助かりました。

おや、こんな岩場に鹿の糞、たぶん、カモシカのものでしょう。
ニホンカモシカは溜め糞をする。
シカは歩きながらするのでややパラパラに散らばる特徴があるので見分けやすいが、ただしカモシカも溜め糞ばかりではなくて歩きながらもするので、そのときはパラパラうんこなので見分けが難しいようです。




10:11、尾根に乗り北に向きを取る。
この尾根は最近は誰も歩いていないのでしょう、わずかに踏み跡らしきものが残っている程度でした。
テープも何もなく、自然そのまま、ところどころ大きな岩もあったりで、気持ちよすぎる尾根でした。

やがて北から西にかけて景色が開けてきた。
西には火打山の頂が松の木越しに覗いている。




北西の山の中腹には長野の集落、その左奥には白石、猿飼、三加茂町の毛田などなどの集落が広がる。




一旦鞍部に下った後日の差し込む尾根を登り詰めると、青々とした茂みの中から四等三角点の頭がひょっこり現れた。
点名が秋葉山なので、この山自体が秋葉山かどうかは定かでない。
一般的に三角点名は、近くの地名が点名に付けられたりするのですが、秋葉山という地名がこの近辺にはないことから、この山自体が秋葉山ではないかと推測した。




クロソヨゴの赤い実が青い空に映える。
ニホンリスがふさふさした尾っぽをこちらに向けて、ちょろちょろっと走り去った。
ところどころに葉を敷き詰めたような黒い穴が覗いている。
リスの巣だろうか。




引き返して1020.7m峰を目指す。
錆び付いたワイヤーがとぐろを巻いていた。




11:20、931m峰にもまだ達していなかったが、お腹が空いてきた。
景色のいいところでコーヒータイム。
南西方向に白滝山の頂が見え、その西には石堂神社からの尾根が派生し京女郎峠へと続いている。
石堂山と矢筈山は生憎白滝山の陰になっていてここからは見えない。

20分ほど休んだ後出発。
尾根にはアセビが生い茂っている。




坊主さんがシカもイノシシもいないのだろうか、動物の気配が少ない山だねと言ってた矢先に大きな黒々としたイノシシの糞が転がっていた。
11:48、931mピークを通過。
景色のいい岩場からは1020.7mのこんもりした山が見えている。




岩場から眺めた白滝山や石堂神社のある尾根方向。




東に景色が開けた。
1000m峰とその向こうには今日行く予定の1073.3mの志貴岳が遠くに霞んでいる。




痩せ尾根をよろけながら登り詰めて、やがて感じの良いやや平坦なところへ。




12:12、1020.7m、折坂の三角点が埋設されている頂に立つ。
ふ~っ!
お昼ご飯とした。

坊主さんに廃屋のところで一つだけ採ってきた柿の実を差し出し、デザートに食べてと親切心をご披露したが、軽くいなされてしまった。
やはりこういうのはダメか、渋柿はつやつやしていて美味しそうなのだがな。
侮蔑のまなざしが突き刺さってきた。
アイタタタ!

それにしても志貴岳がやけに遠くに見える。
大雑把な読みで、ここから2時間はかかると思った。
そこから小井野へ下る予定だが、破線の道がいまでも残ってるのかどうか不安だったし、なによりも取りつき地点が計画とはずれてしまっているので、駐車地点までかなり遠い。
廃道でヤブ化しているとしたら、下山時刻は日没後になってしまう。

折角だが志貴岳へは止めることにした。
焼堂峠から折坂へ下ろう。
山頂で40分余りのんびりして、出発。




尾根からは上蓮の細長い集落と、そのだいぶ手前に駐車地点傍の電波塔が見えている。
尾根が焼堂峠まで続くものと思っていたところ、突然に林道に飛び出る。




近くでは伐採しているのかチェーンソウのエンジン音が響く。
木材集積所を通り越し、林道から歩いてきた尾根を身を乗り出すようにしてジッと眺める。
秋葉山が見え、その左下には岩壁がやや茂った樹木に視界を邪魔されながらも確認出来た。




坊主さんが、あっ!と声を揚げた。
尾根の中腹には朝縁側で休息したあの廃屋の屋敷が見えている。
いまは杉の人工林が屋敷の周りを埋め尽くしているが、往時は見晴らしがよく畑も広がっていたものと思えた。
屋敷の右側がちょっとした谷になっていて、そこにはここからは見えないが山水が流れている。
深閑とした風景だ。




林道は行き止まりだったので引き返して、再び尾根を歩く。
林業関係の方たちが着けたテープが枝先で風で揺れていた。
ほどなく、標高961.5mの三角点・焼堂に到着、時刻は13:46。
北に派生する尾根にもピンクのテープが施されている。
折坂への破線の道に辿り着けるものと思ったが、予定どおりに右に取り、一旦焼堂峠へ出ることにした。




本日初めての赤テープに出合う。
急な斜面を滑り下りるようにして鞍部に出たが、峠らしいものはなにもない。
しばらく先へと進むがやはり交差する道はない。
引き返した。
先ほどの急峻な斜面の手前のところで、尾根ちょい北側に外れたところに小さな小さなお堂が見付かった。
中を覗くと小さなお地蔵さんが2体治納まっていた。

焼堂の由来はなんだろう?
昔々、それは立派な大きなお堂があった。
しかし、この峠で来る日も来る日も人やそこに棲む動物たちをたぶらかして悪戯する悪い天の邪鬼に業を煮やした山の神が、峠ごと焼き払ってしまった。
大きなお堂はみるまに焼け崩れてしまい、残されたのは小さなお地蔵さんだけ。
うん?地蔵だけ、地蔵岳、そんな山があるわな。

話がそびれた。
それからはみんなが焼堂峠のお地蔵さんとして小さな祠に納めて親しんだそうな。
ほんまかいな~!うそじゃろが、舌抜かれるぞ。




お地蔵さんのすぐ北側の緩斜面には落ち葉に埋もれた昔の道がうっすらと見えた。
これが破線の道のようでした。
辿った。
破線の道は尾根には着けられていないので、絶えず地図を広げて位置を確かめながら歩かないと難しい。
しばらくで消えてしまい、そこからは適当に獣道を追うが破線とはだいぶ外れて歩いてしまったようだ。
尾根をまわりこむようにして西に振ると再び掘れた踏み跡に出る。
しかし、それもしばらくで消えてしまい、大きく北へ外してしまった。
引き返すようにして南東に方向を変え、進んでいくと、なんとなく踏み跡らしい道にみたび乗る。




またまた踏み跡は分からなくなり、もう頼りは方向だけだ。
すると突然に前方に石垣の跡や小屋が見え、さらに前進すると、杉林から数軒の廃屋のある元集落に突き当たる。
半鐘の櫓が杉の木にもたれかかるようにして斜めに倒れ込んでいる。




石垣の間のかつての道と思しきところを歩き、やがて一軒のいまも住まわれている民家に辿り着き、ホッとしたが、そこは広い柿畑だった。
辺りには他に道はないようでした。
電流の流れる柵を開けさせてもらいながら、畑の中の道を歩き、ちょいと迷いはしたものの、畑を無事横切る。

後日に写真を整理していて気づいたのですが、この民家は秋葉山へ登る途中から眺めた民家だったのでした。




柵の扉を開いて畑道を少し歩いたところで、車道に飛び出る。
そこは朝、ワンボックスの乗り合いバスが止まっていたところのようでした。
下には電波塔の傍らに見覚えのある車が止まっていた。

時刻は15:18、やれやれ、坊主さんに感謝の気持ちを込めて、再び柿をおみやげにと手渡したが、あっさりと道端に捨てられてしまった。
そんなに冷たい仕打ちをするのはあなただけや。
うん?貴方岳、そんな山あったかな。
それでは、志貴岳、来年にリベンジや、まっとって~。
そうめんの町並みを眺めながら、帰路に着く。




取りつき地点8:26-9:10廃屋9:38-秋葉山10:28-931m峰11:48-12:12三角点・折坂12:55-林道出合13:05-三角点・焼堂13:46-集落跡の廃屋14:54-15:18駐車地点


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コメント (231)
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