元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

ちょっとお散歩に・・・

2012年02月23日 | My Works −個性派たち−
           『 ちょっとお散歩に・・・ 』


今回ご紹介するこの『ちょっとお散歩に・・・』、思わぬことからつい最近開いた聖路加個展で初めて公に展示することになった。

この作品を描いたのは、画像をよ〜く見ていただければお分かりの通りの1999年・・・。
当時は、今まさに銀座のボザール・ミューで開催中の“黒猫展”に初めて出品させていただいたばかりの頃で、まだそれから先のことは海の物とも山の物ともつかない状況だった。
赤い首輪をつけているように飼い猫がモデル。 しかし肖像画として依頼されたというわけではなく、たまたまいただいた写真をもとに、あくまで私自身の勉強として描いたものだった。
だから・・・というわけではないが、展示会に出品するきっかけのないまま、つい最近まで作品置き場の中に埋もれたままになっていた。


聖路加個展の時は搬入直前までいつもバタバタ・・・。 展示を予定していた作品を慌ててかき集めてトラックに積み込んだ。
ギャラリーで開梱し始めた時、タイトルを記した紙が貼っていない箱を見つけて、「あれっ???」
その箱の中にあったのが、この『ちょっとお散歩・・・』だった。
いや、正確に言うと、その時点ではまだこのタイトルはついていなかった。
練習のつもりで描き、とりあえず額に入れたものの、タイトルどころか展示するための紐さえ付けていない状態だったのだ。
「なんでここに居るの?」
予想外のコの登場に呆気にとられながら、思わず心の中で呟いた。
特別な理由など無いのは分かっている。 ただ単にバタバタの中で間違えてしまっただけ・・・。
一瞬そのまま箱のふたを閉めようとした・・・が、(まぁいいか、せっかくここに来たのだから)と、小品群を並べた長机の奥の壁に立てかけて置くことにした。
個展がスタートしてから、何もないのもおかしいから・・・と、直感で思いついたタイトルを付けた。
「ちょっとお散歩に・・・」
絵の中から、その柄には珍しいオッドアイで、私に向かってそう語りかけているように思えた。

そうだよね・・・、たまには散歩ぐらいしたかったんだね。
せっかく絵のモデルになったのだから、みんなに見てもらいたかったんだね。
長い間箱の中にしまったままで、ごめんね・・・。


けっして目立つ場所に展示したあったわけではなかったが、不思議に人気を集めていた。ついには最終日になって、T さんという新しい飼い主さんの元でお世話になることに・・・。
「このコには名前がついているのですか?」
T さんから訊かれた私は、こう答えた。
「新しい名前を付けてあげてください」
ニコッと笑顔を浮かべて頷いたT さんのやさしい表情が、私をホッとさせてくれた。
その瞬間、私は今まで何度となく味わってきた素敵な出逢いの喜びと一抹の寂しさと共に、これまでには感じたことなない不思議な気持ちに包まれた。

ふと思った・・・。
私が間違えたんじゃない。
私がバタバタしている隙を見て、このコが自分から紛れ込んだのだ。
待つのではなく、自ら動いて未来を切り開くために・・・。
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あれから一年

2012年02月17日 | 日記


元さんが天国へ旅立ってから、今日でちょうど一年が経った。

つい昨日のことのような・・・、それでいてもう何年も前のことのような・・・、そんな不思議な一年・・・。


2011年2月17日の早朝4時過ぎだった。
「また明日ね・・・」
そう言って私が寝るのを待っていたかのように、そして5時近くに起きた妻を待つことなく、元さんは独りで旅立つことを決めた。

その瞬間を誰も知らない。
既に息をしていない元さんに気付いた妻が私を起こした時、もちろん元さんはいつもと同じように温かく、そして柔らかいままだった。
その顔は、私がオヤスミを言った時と何も変わらない穏やかな表情をしていた。
そう、まるで寝ているかのように・・・。

「きっと何も苦しまないで、眠るように逝っちゃったんだね」

家族の誰もが、何の疑いもなくそう思った。
その瞬間を知らないから、そう信じることができた。
その瞬間を見せなかった元さんが、そう信じさせてくれた。
元さんがほんの一時間にも満たないあのタイミングを選んだのは、最期の姿を誰にも見せないという彼の中に流れ続けていた野生のプライドと同時に、私たちを少しでも悲しませまいとする元さんなりの思いやりだったに違いない。


確かに元さんの姿を見ることはできなくなった。 しかし、私の心の中に・・・、家族みんなの心の中に・・・、そして絵を通じて元さんを知っているたくさんの人たちの心の中に・・・、元さんは確実に存在して、今でも光を放ち続けている。

すごいヤツだな・・・と思う。
その凄さを、もっとちゃんと伝えなければと改めて思う。

それなのに・・・。
「これからもずぅっと元さんを描き続けるからね」
元さんとそう約束したのに、この一年間で描いた元さんの絵の数は、情けないかな片手でも余るほどだけ。
自分でも気づかない何かがあったのかな・・・???

今年もまた4月に、銀座ボザール・ミューで個展を予定している。
例年ならノラ猫個展なのだが・・・。

よ〜〜〜し、決めた!
今年のミュー個展は、元さんを思いきり描く!
ノラ猫たちにはちょっとお休みを願うことにする。
昨年は悲しみのどん底で、ただ無我夢中になって、絵の中で元さんを戸外に出してあげた。
でも、今年はもう悲しみはいらない。
愛おしさゆえに決して消えることのない寂しさを最大限の力に替えて、元さんが私にくれたたくさんの宝物を絵にしよう!

さあ、先ずはどっぷりと想い出に浸ってから・・・。


そうそう、元さん、今夜は君の大好物だったブリの照り焼きをドカンっと一切れあげるからね。
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桜 道

2012年02月16日 | My Works −黒猫−
                  『 桜 道 』


“黒猫展”出品作が続きます。
3点目の最後にご紹介するのがこの『 桜 道 』(さくらみち)。

前回に続いてタイトルに“さくら”が付いていますが、『 桜 道 』は2004年の春に描いた作品です。
その年のノラ猫個展のうちの一作で、ここ数年は展示する機会がありませんでした。
DMに掲載された『 どすこい まかせとけ!』もノラ猫をモデルに描いた作品なので、今回は戸外の黒猫作品で揃えようと決め、桜の花びらの上を歩く黒にも再登場してもらうことにしました。


改めて額装しようと久し振りに目の前にかざしてみた時、ふと何かが心の中で動きました。
そして次の瞬間には、ほとんど無意識のうちに加筆を・・・。
それは、何か気に入らないところがあるとか、目先を変えるためとかいうことでは決してなく、最初に描いたときから経過した8年間という月日がそうさせたのだと思います。

敢えて言わなければ、以前に見たことがある方でも加筆したことに気付くことはないかもしれません。 
その程度のほんの僅かなことなのですが、それが8年という月日を経た私自身の変化の表れなのです。 
ただ手元に残っているからということだけで展示するのではなく、最初に描いたときの気持ちを大切にしながらも、そこに今の自分の思いも加えた作品を見ていただきたいと思うから・・・。

もしかしたら・・・、作品が描き手である私の元にある間は、実はまだ完成したとは言えないのかも・・・???
たとえば個展とか企画展とかをきっかけにその時点の作品に共感し、気に入ってくださった方が現れた瞬間が、ある意味で“完成”の一つの形なのかもしれません。
今も私の手元にある作品すべてがそうだというのではありません。
ただ、時にそんなことを感じて、思わず手が動き出してしまうこともあるのです。


様々な展示の機会を前にして、いつも、何よりも大切にしなくてはいけないこと・・・。
それは・・・、皆さんに見ていただこうと決めたからには、制作年が古いとか新しいとかに関係なく、どの作品でも精一杯心を込めて描いたという揺るぎない自信と共に、変わりない愛着の気持ちを抱き続けること・・・。

久し振りに対面した黒猫が、のっそのっそとこちらに向かって桜道を歩きながら、そんなことを私に思い出させてくれました。



“黒猫展”は、2月15日(水)から29日(水)まで(会期中無休)、銀座ボザール・ミューにて開催されています。 
  詳しくはブックマーク欄の“ボザール・ミュー”をクリックしてください。
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さくら風

2012年02月15日 | My Works −黒猫−
                  『 さくら風 』


今日から銀座ボザール・ミューで “黒猫展” が始まりました。
初日のオープンと同時に、まだ湯気が出ているのではないかというほど出来立てほやほやの新作『 さくら風 』を納品してきました。

今年は3点出品しています。
既に前回ご紹介してある、DMでも使っていただいた『 どすこい まかせとけ!』ともう一作は先週のうちに納品してありましたが、何とか一作だけでも新作を・・・と思ってギリギリまで描いていた『 さくら風 』だけが、初日搬入になってしまいました。
いや〜〜〜、間に合ってよかったぁ〜〜〜!

入り口の正面で『 どすこい まかせとけ!』が皆さんをお迎えし、3作並んで展示されています。 
もちろん奥の方も、いろいろな作家たちによって生み出された様々な黒猫たちでいっぱいです。
黒猫ファンのみなさん、ぜひお出かけください!
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もうすぐ “黒猫展”

2012年02月11日 | 展示会


毎年二月恒例の銀座ボザール・ミュー“黒猫展”が今年も始まります。

一年前の今ごろのブログにも書いた通り、13年前の“黒猫展”に初めて出品させていただいたことが、私の絵描きとしてのスタートになりました。

光栄なことに、毎年“黒猫展”のDMに私の作品を載せていただいています。
今年はこの『 どすこい まかせとけ!』(↑)
深川の富岡八幡宮のわきを通っている遊歩道を根城にしているノラ猫がモデルです。
思わずこんなタイトルをつけてしまったほど、なかなか迫力のあるブー猫でしょ!
よく聞く“黒猫独特の神秘性”は何処へやら・・・。
まあ、親しみを感じさせるブーが私の描く猫の魅力だから、しょうがないかな。
昨年春のノラ猫個展で初登場して以来いくつかの展示会に出品したのですが、引き取り手が見つからないままでいたのは、この“黒猫展”に出たかったからなのかもしれません。

それにしても、DMでご一緒している絵描き仲間の畑尾洋子さんが描く優雅な黒猫と比べると、いやはや何とも・・・・・???
このように、10人を超える作家たちがそれぞれ独自の“黒猫”を表現しています。
平面作品だけでなく、立体からアクセサリーまで、さまざまな黒猫の魅力を楽しんでいただけると思います。
ぜひお立ち寄りください。

詳細はブックマーク欄の“ボザール・ミュー”をクリックしてください。
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ぼくの大好きな箱

2012年02月10日 | My Works −我が家の元さん−
          『 ぼくの大好きな箱 』


我が家の廊下の壁際に今も置かれた段ボール箱。
そこは元さんのお気に入りの場所の一つだった・・・。

元さんはその箱の上でよくダラ〜っと伸びて寝ていた。
その横を誰が通り過ぎてもお構いなし。
まったく意に介さずと言った様子で、そのまま ダラ〜〜〜。
たまに私がいじわる心を起こして、通りすがりにお腹をチョンと突いたりすると、「うるさいなぁ・・・」とでもいうようにわずかに耳を動かすだけで、さらに ダラ〜〜〜〜〜。
傍から見ていると、ちょっと動いただけで落ちてしまいそうなその箱の上が、元さんにとってはきっと実に居心地の良い場所だったのだろう。


あるとき、急にムクっと頭をもたげた箱の上の元さんと偶然目が合った。
鼻の頭をペロッと舐めたその舌の先が出たままになった。
猫を飼っている方には珍しいことではないはず・・・。 そしてご存知の通り、その時のご本人、いやご本猫はそのことに気付いていない。
笑いそうになるのを堪えるが、思わず肩が震える。 元さんにはその様子が気に入らないらしい。
「何わらってるの?」と言わんばかりに、じっとこちらを見続ける。
その真剣な眼差しと、その下にチラッと覗いて見えるピンク色とのギャップが実に可笑しかった。
しばしその状況を楽しんだ後に、舌の先をチョンとつついてやる。
すると元さんは慌てて(?)舌を口の中にしまってムニャムニャ・・・。 そして何事も無かったかのように、再び夢の中へ戻ってしまった。
けっしてその箱から降りようとはせずに・・・。


元さんが天国に旅立って、もうすぐ一年が経とうとしている。
そういう時期だから尚更なのだろうか。
聖路加の個展が終り、またいつもの日常に戻って家に居ることが多くなると、心なしかこれまで以上に部屋のあちこちに元さんのいる気配を感じることがある。
普段はほとんど気にすることが無くなっていた元さんお気に入りの段ボール箱・・・。
今改めて目を向けると、その上でちょこっと舌を出したままの元さんがこちらを見ているような気がする。

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聖路加個展 終了しました

2012年02月06日 | 日記
今日の雨模様の空・・・、そして明日の天気予報を見ると、先週は本当にいい天気が続いてくれたのだなぁと改めて思ってしまいます。
しかし・・・、それにしても寒い寒い6日間でした。
26年ぶりの寒さだとか・・・。
そんな中をお出かけいただきました皆様、本当にありがとうございました。
予定通り4日の土曜日に無事会期を終えることができました。

すぐにでも、終了のお知らせと共にお礼のコメントをアップしたかったのですが・・・。
寄る年波(?)は回復力に現れるようで、最終日の夜はもちろんこと、昨日もほとんど何もできないままダラ〜〜〜っと。
今日になってようやく動き出した次第です。 トホホ・・・。

今回も例年と変わらずたくさんの方々からエネルギーをいただきました。
ご覧くださる方々の心のぬくもりとなる絵を描き続けたい!
改めて強くそう思いました。 
また今日から、次に向かって新作の制作はもちろん、ブログの方も精力的にアップしていきたいと思います。
まだまだご紹介したい作品がいっぱいあるし、展示会のお知らせも・・・。
ぜひまた覘いてみてください。

ありがとうございました。
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様々な白の頃

2012年01月21日 | My Works −ノラ猫たち−


この冬初めて降る雪をみていたら、この作品を思い出した。

2008年12月に開いたボザール・ミューの個展では、それまでとは少し趣を変え、縦横に長〜い作品ばかりに挑戦してみた。
その中で“ 春夏秋冬 ”それぞれの季節をテーマにしたノラ猫4部作を描き、“ 冬 ”をイメージした作品が今回ご紹介する『 様々な白の頃 』。


色で言えば、冬を連想させるのは何といっても“白”。
しかし、ただ白のパステルを塗り重ねるだけ・・・という訳にはいかない。
真っ白な雪に覆われたその下からは、春の訪れを待つ様々な新しい命の息吹が聞こえてくるはず・・・。
私はその命の息吹を種々様々な色に替え、寒さにも怯むことなく凛とした姿のノラ猫を包み込んでいった。
そして最後に、激しく降る雪のように、力を込めて白のパステルを重ねた。
うっすらと透けて見える様々な色たちのせいか、冷たいはずの雪が温かく感じられて嬉しかった。


この作品、確かまだ手元にあるはず・・・。
しばらく展示会に出していなかったが、今だからこそ、次の聖路加個展に出品しよう。

やがて春が来た時に、雪に覆われた悲しみが、苦しみが、悔しさが、雪解けとともに少しずつ流れてゆき、新たな希望の芽を育てる糧となりますように・・・!

そんな思いを込めて・・・。
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聖路加個展のご案内

2012年01月18日 | 展示会
    


築地 聖路加国際病院内の第一画廊で毎年続けている個展も、今回で18回目になりました。
昨年から新設された第二画廊を含めると19回目・・・。 

第一画廊も今年からリニューアルされました。
場所はこれまでと同じレストラン前の通路ですが、壁紙が新しくなり、さらにダウンライトの数がかなり増えてとても明るくなりました。

ただ今回から会期が6日間となって、日曜日の展示ができなくなってしまったのが残念です。 
日曜日しか行けない・・・という方には、本当に申し訳ございません。 今後、また日曜展示ができるように努力していくつもりです。

毎回寒い1月〜2月の開催で、ごめんなさい!
たまたま始めたこの時期が、私自身だけでなく、楽しみにしてくださっている方々にとっても、聖路加個展の季節として定着してしまったようです。
インフルエンザが流行り始めたとか心配なニュースが聞かれますが、どうかしっかりと予防していただき、お互いに元気でお会いできることを願っております。

もちろん今回も、会期中はずっと在廊しております。
作品やグッズの展示販売だけでなく、肖像画のご相談、ご依頼も承ります。
DMのコメントにも書いた通り(↑)、心がぽかぽかと温かくなるような空間を作りたいと思っております。
ぜひお出かけください。
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大掃除

2012年01月14日 | My Works −我が家の元さん−
              『 まるまるイ 』


昨年暮れの最後の数日間は、私も人並みに大掃除・・・らしきことをしていた。
とにかく一年間の汚れが目に付くところを拭きまくった。
その手がある場所で一瞬止まった。
それはダイニングを兼ねたリビングの一角にある食器棚の前・・・。

そこは元さんの寝床が置かれていた場所。 
中にふわふわのクッションらしき物が入った、15センチほどの高さの淵で囲まれた円形の寝床の中で、元さんはよくこんなふうに(↑)に丸くなっていた。
そしてそれは彼が天国へ旅立つその時まで・・・。

一年前の今ごろも、まだその寝床の中に元さんがいた。
ただ一昨年夏からは、口の中にできた病気のせいで口から食べることのできない状態が続いていた。
それでも消えることのなかった食欲のせいか、あるいは自ら病気を治そうとする表れなのか、口の中には始終唾液が溜まっていた。
時折その溜まった唾液をうまく飲み込むことができずに、顔を左右に激しく振って周りにまき散らすことも・・・。
それは床だけでなく食器棚のガラス戸にも飛び散り、すぐに拭き取れなかったものは、やがて乾燥して硬く固まったままになっていた。


元さんが天国へ旅立ったのは、2月17日・・・。
それから10ヶ月余りが経った年の暮れまで、食器棚に残された元さんのよだれの跡を拭き取ることができなかった。
もちろん気が付かなかったわけではない。 むしろ幾度となく目に入っても、あえて自分自身に対して気が付かないふりをしていたような気がする。
それはけっして単なる汚れなどではなく、元さんが必死に生き続けた“ 証 ”のように思えたから・・・。
それを拭き取ってしまったら、元さんと共に病気と闘い続けた半年間の、あの何にも代えがたい毎日が消えてしまいそうな気がしたから・・・。

しかし暮れの大掃除では、一瞬の戸惑いを振り払ってその“ 証 ”を拭き取った。
今までどうしてもできなかったことを、なぜ急に・・・?
自分でもはっきりわからないが、けっして“急”ではないと思う。
一年の終わりという一つの大きな区切りが、いつまでもこのままではいけない・・・という思いをずっと抱き続けてきた私の背中をポンと押してくれたのかもしれない。

きっと例外なく、人は誰でも一生のうちに何回もの悲しい別れを経験する。
その時は二度と立ち上がれないほどに打ちのめされたとしても、時が経つにしたがって、少しずつ、少しずつ、前を向き、自らの人生を歩き始める。
例えば宗教上の、また地域ごとの慣習の中の、あるいは遙か昔から伝えられてきた暦の上の様々な特別な日がある。 そういう時の流れの中の節目の一つ一つをきっかけにして、人は悲しみを乗り越えていくのかな・・・。

寂しさがなくなることはけっしてない。 
むしろ寂しいと感じる気持ちを失くしてはいけない。
失った大切な存在は、想い出すから寂しいのではなく、寂しいと思う気持ちがあるからこそ想い出すことができるのだから・・・。
でも、悲しみは自分の心の持ちようで、生きる力に変えることができるのかもしれない。
そしてそれにはそれなりの時間が必要で、とてつもなく長い年月が掛かることもあれば、あっと言う間だったり・・・。 常識的とか平均的ということがまったく通用しない、まさに人それぞれで、その人にしか判らないものなのだと思う。


今、食器棚のガラス戸はきれいになり、元さんの生きた“証”と思っていた跡はすっかり消えてなくなっている。
しかし、私がずっと恐れていたような、元さんとの想い出が薄れたり消えたりすることはなかった。
目に見える形あるものに自分の心と手で限をつけることができたことで、私が無意識のうちに作った悲しみの囲い中でじっとしていた元さんが、想い出の草原に飛び出して生き生きと動き始めたようだ。


昨年末の大掃除は、思いがけず私自身の心の大掃除になった。
新年の始まりと共に、心の中の元さんとの新しい付き合いが始まったような気がしている。

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5年越し

2012年01月10日 | My Works −肖像画−

『 いつも そばに いるよ 』
                            
                           『 しあわせの瞳 』


昨年の暮れ、10日余りを残すのみとなった頃、私は完成した2点の肖像画をようやく依頼主のWさんに届けることができた。

ミニチュアダックスの2匹。
胡蝶蘭がバックのアリスちゃんは、何年か前に天国へ旅立ってしまっている。 そしてその後に新たなW家の一員となったのが、星空をバックにしている銀河君。 今も元気にお茶目をしているらしい。

この二つの絵・・・。 肖像画ご依頼のお話を初めていただいてからお届けするまで、何と5年越し・・・。
何十枚もの写真を繰り返し見ながら、何度も打ち合わせを重ねていた結果、振り返ってみたら5年という月日が過ぎていた。

きっとこの2点の作品が完成するためには、5年間という時間が必要だったのだと思う。
お話をいただいてから一ト月後には完成している絵もあれば、この2点のようなことも・・・。
もちろん時間の長短に関係なく、絵に向かい合っているときの私の気持ちはいつも同じ。 ただそれぞれの絵には、それが生まれるために必要な時間とタイミングがあるのだと思う。
私はその絵が生まれるべき瞬間の来た時に、何か不思議な力によって描かされているのだと思っている。
今回のこの2点は、どんなに時間がかかっても、最初に絵にしたいと思ったWさんのお気持ちが変わることなく、こうして実現できたということが何よりも素晴らしいことだと思う。
それにしても・・・、長らくお待たせをしました。


これまで300点近い肖像画を描かせてもらってきた。
自分でもよく分からないが、依頼を受けてから完成まで掛かった時間はまったくのバラバラ・・・。
ただ、完成したそれぞれの絵を依頼主に届けた時のことを思い出してみると、ふとこんな思いが浮かんでくる。
「愛するこのコを絵にしたい」という依頼主の気持ちが熟した時に合わせて、その絵が完成 = 生まれてくるのではないか・・・と。
その素晴らしい瞬間に、一番近くで関わることができる自分は幸せ者だと思う。
これからも、少しでも多くその瞬間に立ち会っていきたい。


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祥雲龍翔

2012年01月06日 | 日記
                      『 絆 』           


めでたい雲が浮かぶ空を、龍のごとく飛翔する

今年の年賀状のデザインを考えていたとき、ネットの賀詞集の中で見つけたこの言葉が気に入って使うことにした。
干支の“龍”=“辰”と共に、自分の名前の中の一字も入っているからかもしれない。


今年の年賀状は“おめでとう”という言葉が例年と比べてずいぶん少ないと聞いた。
昨年が、3月の大震災を始めとして多くの災害に襲われた一年であったことからなのだろう。 誰もがそれまで当たり前と思っていた多くのことをもう一度考え、見つめ直した一年・・・。
その結果、これまで当然のように使ってきた“おめでとう”というもっともシンプルでストレートな表現を、同じように軽々に使うことが躊躇われたのかもしれない。

新年を迎え、それを愛でることが間違っているわけではない。
むしろ、千年に一度という大きな大きな悲しみを経験しながらも、こうして新たな年を迎えることができた・・・ということに感謝しなければ。
“おめでとう”の文字が減った代わりに、“ありがとう”という言葉が多くの年賀状に見られたというのも納得・・・。
もちろん年が変わったことで何もかもがリセットされたわけではなく、むしろこれからが本当の意味での始まりなのだと思う。
元旦早々に起きた比較的大きな地震は、どこか麻痺しかかっていた私の気持ちに「忘れるなっ!」と喝を入れてくれた。
犠牲になった多くの方々、そして今もなお大変な毎日を余儀なくされている被災者の方々のことをしっかりと思いながら、またこうして前に進むための新たな一年を迎えられたことに感謝しつつ、改めて声に出して伝えたい。

明けまして おめでとうございます


今回アップした『 絆 』は、“祥雲龍翔”の賀詞と共に年賀状で使った作品。
水槽の中のタツノオトシゴ親子にじゃれる猫・・・という構図の中に、いろいろな思いを込めてみた。
この小さい画像では解り難いかもしれないが、タツノオトシゴの視線を意識しながら描くのが、難しくもあり楽しかった。
年末にご案内した“わをん あい展”に出品している2点のうちの1点でもあるので、ぜひ原画を・・・。
同展の新年の部は16日〜20日の5日間です。

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新年のご挨拶

2012年01月01日 | 日記


2012年が始まりました。

今年がどうか良い年になりますように!

ただシンプルに、心の底からそう願います。

新しい年に替わったからと言って昨年のことを忘れてしまうのではなく、新しい年に替わった時だからこそ絶対に忘れてしまってはいけないことをもう一度思い出し、しっかりと心に刻みつけてこの一年を過ごしていきたいと思います。


皆さんにとって、今年が素敵な出来事で満ち溢れた一年となりますように・・・!
笑顔でいっぱいの忘れ得ぬ一年でありますように・・・!
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“ わをん あい展 ”のご案内

2011年12月25日 | 展示会
                      『 初対面 』


昨年に引き続き、今年の暮れもギャラリーSTAGE-1の年跨ぎ企画展“ わをん・あい展 ”に参加します。

行く年来る年を描いた作品・・・ということで、私は来る年を意識して“辰”ならぬ“タツノオトシゴ”と、お馴染みの元さんふう猫を絡ませてみました。

出品作は2点だけですが、どちらもこの企画展のために描いた新作です。
今回ご紹介した『 初対面 』は、その1点。 10cm ×25cmの小さ目なサイズです。
もう1点の方は20cm×50cmと大き目・・・。 こちらは年が明けたらまた改めてご紹介させていただきます。

私も含めて11人の作家それぞれの年跨ぎ作品が展示されます。
ぜひお立ち寄りください。


詳細は・・・・・ ↓

             
          
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瞳とじて…

2011年12月23日 | My Works −我が家の元さん−


毎年クリスマスの頃になると、この『 瞳とじて・・・ 』が頭に浮かんでくる。
この絵を初出品した時、「わぁ、クリスマスの元さんだ!」と声を上げる方が一週間の会期中に何人もいた。
確かに元さんのバックの赤と白は、クリスマスを連想させるサンタクロース・カラーなのだが・・・。


2006年秋のボザール・ミュー個展のテーマは“色彩の中の猫たち”。 様々な猫たちの表情や姿を、私がイメージした色の中に描いてみた。
我が家の元さんをモデルにしたこの『 瞳とじて・・・ 』を描くとき、バックをどのような色にするか随分と考えた。
目を瞑ってはいても、寝顔とは違った不思議な力を感じる横顔の元さん・・・。
最終的に選んだイメージカラーは・・・、“赤”だった。
それは、とじられた瞳の奥に秘められた静かな情熱。 そしてその中には、きっと彼なりの夢や希望みたいなものがあるのでは・・・と、その象徴として綿雪のような“白”を描き入れた。
つまり・・・、この絵を描いている間、私の頭の中に、“クリスマス”という意識はまったくと言っていいほど無かった。
だから個展会場で数多く聞こえてきた声には、驚きと同時にちょっとした戸惑いも感じていた。


あれから5年・・・。
毎年この『 瞳とじて・・・ 』を思い浮かべる時期が巡ってくるたびに、制作中には無かったはずのクリスマスのイメージが段々強くなっていった。
私はキリスト教信者ではないけれど、宗教とは関係なく、クリスマスになるとどこか神聖な気持ちになる。
あまりにもいろいろな事が起きた今年は、特に・・・。

考えてみれば、元さんがいなくなってから初めてのクリスマスになる。
そのせいだろうか・・・、今年は絵の中の元さんが今までとはちょっと違って見える。
まるで空の上からじっと地上に思いを馳せているかのように・・・。
大震災の被災地に・・・、日本中に・・・、世界中に・・・、地球そのものに・・・、そしてきっと私たち家族にも・・・。

 天国へ旅立ったたくさんの命が、地上のどこかに・・・、誰かに・・・、それぞれの思いを馳せています。
 命ある者たちがその思いを感じ、心の糧にして毎日を精一杯生きてくれますように・・・!
 新しく結ばれた心の絆が、さらに強く大きく広がっていきますように・・・!
 そして、もっともっとたくさんの愛が生まれますように・・・!

元さんと同じように瞳をとじてみると、彼のそんな心の声が聞こえてくるような気がする。
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