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BL小説・風のゆくえには~片恋1-1(慶視点)

2016年01月08日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 片恋

 高校一年の春。
 運命的な出会いをしたおれと浩介。
 一緒にいると楽しくて楽しくて、すぐにお互いの空いている時間には必ず一緒に過ごすくらい仲良くなった。

 そして、出会いから約半年後。
 しばらく会えなかったことがきっかけだったのか、他の奴への嫉妬心がきっかけだったのか………とにかくある日突然、おれは浩介への特別な感情を自覚した。

 恋。だと思う。

 思う、というのは、自分でもイマイチよくわからないからだ。その『恋』というやつが。でも総合的に判断して、おれはこの感情を『恋』と位置付けた。

 そう判断するまでには、そりゃ色々と考えた。

 一緒にいてすごく楽しい。というのは、友達に対する感情でもある。
 一緒にいて心が安らぐ。というのは、家族に対する感情と同じだ。

 でも………

『いつでもそばにいたい』
『全部知りたい』
『見つめられるだけでドキドキする』

 そういう感情は友達や家族に対してはありえないと思う。

 そして、これを『恋』と位置付けた最たる理由は………

『触れたい』

 いつでも触れていたい。背中でも腕でも。いつでもくっついていたい。くっついていると、体の中も心の中も温かくなって………

『触れてほしい』

 触れられると愛おしさで気持ちが溢れ出そうになる。幸せすぎて気が遠くなる……

 こんな感情、今だかつて誰にも抱いたことがない。
 だからこれは『恋』。しかも『初恋』。

(初恋の相手が男って……)

と、戸惑いがなかったわけではない。

 何しろおれは、小さい頃から、背が低いことやこの顔のせいで、女みたいだとからかわれてきた。その度に、からかってきた奴にはそれ相応の仕返しをしてきたから、そのうち誰も直接は言わなくなったけど……

 そのおれが、男を好きになるなんて……嘘から出たまこと?って感じがして余計に抵抗があった。

 でも、一つ確かなことは、おれは女になりたいわけではないということだ。そして、浩介を女の代わりにしたいわけでもない。

 じゃあ何なんだと言われると………やっぱり自分でもよくわからない。
 言えることは、ただ一つ。

『浩介のそばにいたい』

 それだけだ。


***


 初詣で、二人合わせて千円もお賽銭を入れたおかげか、おれ達は2年生から晴れて同じクラスになれた。

 しかも、神様も良くわかってくれていて、出席番号も11、12と前後!
 おかげで、体育の班も、そうじの班も、物理の実験の班もみんな一緒!(11、12というのは、二人組も三人組も四人組も五人組も同じになるという運命にあるのだ!)

 あまりに一緒にいすぎて飽きられてしまうのではないか、とか色々思うこともあったけれど、そんな心配は杞憂だった。むしろ「もっと一緒にいたい」と思ってくれているようで、部活の帰りとかほんの少しの時間でもうちに顔をだしてくれたり、1年生の時よりも更に更に距離は縮まったように思う。

 でも、友達なんだから変な期待はしないように、と自制はしている。今の距離感は本当に心地が良い。今の関係を崩したくない。この『恋心』は絶対に気づかれてはならない。


 そんな風に過ごしながら、2年生になって3週間近くたった木曜日の放課後のことだった。

 木曜はバスケ部の練習がないので、いつもはおれのうちの近くの公園で練習するんだけど、今日は朝からあいにくの雨。「これからどうする?」なんていいながらウダウダと教室に残っていたら、

「お兄ちゃーん」
「南?」

 妹の南がドアからひょっこりと顔をだした。
 南もこの春から同じ高校に通っている。友達と同じ女子高に行くとか言ってロクに勉強していなかったくせに、昨年秋に急遽志望校を変えたんだ。よく受験勉強間に合ったもんだと感心してしまう。

 浩介と一緒に廊下まで出ていったのだが、
「何……、え?」
 南の後ろにいた女の子の姿にびっくりして言葉を止めてしまった。

(……似てる)
 おれの8歳上の姉に、少し似てる。身長が姉と同じくらいだから余計にそう思うのかもしれない。こうして南と並んでいると、姉と南が一緒にいるんじゃないかと錯覚してしまうくらいだ。
 
「南ちゃん、どうしたの?」
「あ」

 浩介が南に呼びかけた声で我に返る。

「お兄ちゃん達にお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「はい」

 首を傾げると、南の隣にいた女の子がいきなり深々と頭をさげてきた。
 
「お二人、写真部に入部してくださいませんか?」
「え」

 声も少し椿姉に似てる……かな。

 言葉の内容よりもそちらに気を取られてしまった。顔が似てると声も似るっていうもんな……。
 いやでも、よくよく見ると顔はそんなに似ていない。真理子ちゃんの方が目がデカイ。身長が同じくらいなのと、色白なところと、高校時代の姉と同じような髪型……肩までつく髪をおろして、両サイドをピンでとめている……をしているせいで、何となく似てみえるだけなのかもしれない

「慶?」

 浩介の声に再び我に返る。いかんいかん……

「あ、えと? 何部だって?」
「写真部、です」

 その南の友達、橘真理子ちゃんの説明によると、真理子ちゃんの兄、3年の橘先輩が部長をつとめる写真部が、現在、橘先輩しか部員がいないため廃部の危機なのだそうだ。
 連休明けの部活総会までに5人部員が必要なのに、新入部員の入る気配もないため、おれ達に声をかけてきたらしい。

「活動日はバスケ部のない木曜なんだって。だから二人とも空いてるでしょ?」
「でも、木曜は………」

 せっかくの浩介とのバスケ自主練の日なのに………、というおれの心を読んだかのように、南がケロリと言った。

「お兄ちゃん知らなかった? 五月からうちの前の公園のバスケットコート、子供会主催のバスケ教室で使うことになったんだよ、木曜日」
「え!?」
「えええ!?」

 浩介も一緒に驚きの声をあげた。

「それは困る!やだ!」
「…………」

 浩介、「やだ」だって。かわいい。内心にやにやしてしまう。
 ………いやいやいや、それは置いておいて。何とか普通の顔をして南に聞く。

「その教室、何時までなんだ?」
「そうそう、6時までらしいからさ、それから練習すればいいじゃん? 5時半まではこっちに出て」
「…………」

 顔を見合わせてしまう。
 そこへ真理子ちゃんが、にっこりと提案してきた。

「とりあえず、見学にいらっしゃいませんか?」

 そのふんわりと笑う感じ、やっぱり椿姉に似てるかもしれない。



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お読みくださりありがとうございました!

慶の『理想の女子』である姉・椿に似ている、橘真理子ちゃん初登場。
せっかく理想的な女の子が目の前に現れたということに、慶君、気が付いてません^^;
思い込むと一直線の慶君の頭の中には、もう浩介の存在しかありませんので……

この回、まだ続いているのですが、長いし書き終わらないので、ここで切ることにしました。
続きももうすぐ書き終わるので、明日更新できればと思っております。
また明日、よろしくお願いいたします!

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