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BL小説・風のゆくえには~巡合4(浩介視点)

2016年02月29日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 巡合

 理想の女の子。

 真理子ちゃんが、慶の理想の女の子。

 慶の友達の安倍が言っていた言葉がずっとずっと頭の中をグルグル回っている。


 それから一週間と少し、慶とは挨拶くらいしかしない日々が続いた。慶も文化祭実行委員長の仕事が忙しくて、おれもクラスの文化祭委員で忙しかったからだ。

 ………というのは言い訳で、本当は話そうと思えばいくらでも話す時間は作れた。

 ただ、慶と話すのがこわくて避けていた。

 自分でもよく分からない。
 真理子ちゃんのことを問い詰めてしまいそうなのがこわいのか……問い詰めて、肯定されることがこわいのか……。肯定されることの何がこわいのかも分からない。

 いや、嘘だ。分かってる。

 おれは、慶の一番が自分でなくなることがこわいんだ。百人を越える聴衆の中からおれだけを見てくれていた慶が、おれ以外の人間を見て笑顔になったということがどうしても受け入れられない。

 理想の女の子……

 友情と恋愛は別物であって、同じ土俵にのせてはいけないのだろうけど………でも、おれとの友情を「一番」に………いや、「唯一」にしてほしい、と願ってしまうおれは、どうしようもなく醜い。


 クラスの文化祭の準備でトラブルが起きた。
 衣装担当の女子達が予算を千円も上回る生地を購入してしまったのだ。

「ごめんなさい……足し算間違えちゃって」

 女子達は一生懸命謝ってくれたけど、おそらく分かっていて購入したのだと思う。でもそれを追求して白状させたところで何の解決にもならない。

(…………慶)

 慶だったらどうするだろう……
 やはり一番に浮かんだのは慶の存在だった。

(会いたいな………)

 とりあえず、この件は持ち帰らせてほしい、と同じ委員の浜野さんに言って教室を出た。浜野さんも所属している美術部に顔を出すというので、おれも写真部の部室に向かう。

(慶……いるかな……)

 実行委員長の仕事が忙しくて部活どころではないだろうけど、一縷の望みをかけて部室のドアを静かに開け………

(………!)

 目の前の光景に息を飲んだ。

(…………慶)

 慶が……真理子ちゃんの頭を撫でてる……

(理想の女の子……)

 二人、確かにお似合いだ。慶の真理子ちゃんを見る瞳は優しさに満ちていて………

「浩介?」
「………っ」

 振り返った慶の眩しい瞳、涼やかな声に泣きそうになる。
 優しく名前を呼んでくれる。おれの頭だっていつも撫でてくれる。そんなことは分かってる。
 でも、その声はおれだけのものではない。その瞳はおれだけのものではない。その手はおれだけのものではない。

 でも、それでも、おれには慶が必要で、おれには慶しかいなくて………

 醜い。おれの心は醜い。


**


 日曜日、浜野さんのうちにお邪魔して、文化祭で出すお団子の試食会を行った。
 メンバーはメニュー班リーダーの鈴木さん、小松さん、山崎、皆川。それに慶。慶は実行委員長の仕事があるため、どこにも所属していなかったのだけれども、「一人だけ蚊帳の外でさみしい」というので、メニュー班に入ってもらうことにしたのだ。

 みたらしとアンコは決定していて、後一つを黒ごま、きな粉、醤油のうちのどれにするか、みんなでさんざん悩んだあげく、黒ごまに決定した。

「じゃ、渋谷君。約束通り、お願いします」

 すべて終わった時点で、浜野さんが若干頬を紅潮させていった。いつも冷静な浜野さんが珍しい。

「え、何々? 何すんの?」
 鈴木さんに興味津々に聞かれ、慶が苦笑する。

「絵のモデル?らしい。なんかよくわかんねーんだけど、おれ、なにすりゃいいの?」
「そこに座っててくれればいいの」

 浜野さん、もうスケッチブック持っている。

「なるべく顔動かさないで」
「えー………」
「うわー面白そう!見てっていい!?」

 結局、山崎と皆川は帰り、鈴木さんと小松さんとおれだけ残って、見学会になった。
 シーンとした中で鉛筆の音だけが響いている。

(………綺麗だな)

 慶は本当に綺麗な顔をしている。
 完璧に作られた人形のようだ。陶器のような白い肌……

(………触れたい)

 先週、我慢ができなくて、その綺麗な顔を辿った人指し指が疼きだす。 
 触れながら思った。「このままおれだけのものにできたらいいのに……」と。

 慶に触れるだけで、おれを纏う醜い空気までもが清涼なものに変わっていく。
 でも、こんな醜いおれが触れていいのだろうか。おれには慶が必要だけど、慶にとってはそうではない。本当は触れてはいけないのではないだろうか……

(このまま遠くから見つめていたほうが……)

 容姿も魂も綺麗な慶………

(ずっと見つめていたい………)

 鉛筆の音だけが響く静かな空間……神聖な空間……ずっとこうしていたい……


 ………と、思っていたのに、5分もたたないうちに、慶が文句をいいだした。

「あーもー暇。浩介、何か喋って」
「え!?」 

 みとれさせてくれないところが、何だか慶らしくて笑ってしまう。

「あー、じゃあ、来週から中間だし、勉強でもする?」
「おお頼む」
「えーーー」

 女子達の非難の声をバックに、浜野さんから教科書一色お借りする。

「何する?」
「古典。土曜日の四時間目、何も聞いてなかった」
「ん」

 おれなりの注釈をつけながら、土曜日の授業の再現をしていくと、

「桜井君、先生みたーい」
「先生より分かりやすい!」

 鈴木さんと小松さんが誉めてくれて、照れてしまう。

 そうこうしているうちに、浜野さんのスケッチが終わった。この場では見せてくれず、「文化祭に出すから見にきて」と言われた。楽しみだ。


**

 みんなで駅に向かって歩く中、鈴木さんと小松さんが、きゃっきゃっとはしゃぎながら言ってきた。

「桜井くーん、勉強また教えてー」
「すっごい分かりやすかったよー!」
「う……え?」

 うん、とうなずく前に、慶がぐいっとおれと鈴木さんの間に入ってきた。そして、しっしっと鈴木さんを追い払う仕草をすると、

「やなこった!」
 べーっと、あっかんべー。

 え、慶?

「なんで渋谷君が断ってんのーっ」
 ぶうっとした鈴木さんに、慶は当然のように言ってのけた。

「こいつはおれ専用だから貸出し不可!」
「!」

 専用……って、慶……

「なにそれ~!」
「ずるーい!」

 二人がぶーぶー言う中、おれは途方にくれていた。

 おれ専用って………

 慶…………

「ん? お前なんか文句あるか?」

 振り返った慶に首をふってみせる。

「…………ない」
「よし」

 ニッと笑った慶。

 おれ専用。おれは、慶の専用。
 嬉しすぎて、途方にくれてしまう。

 慶……おれ、慶のそばにいていい……?
 もし、真理子ちゃんが慶の隣に並ぶことになっても、おれ、慶の専用でいられる……?


 そんなフワフワした気持ちでいられたのは、ほんの一時のことだった。
 これから、おれの心の中は、嫉妬と独占欲の嵐が吹きあれて、息もできなくなる。



----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
浩介君、浮き沈み激しすぎです。
また明後日、よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~巡合3(慶視点)

2016年02月27日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 巡合


「あーー………」
 生徒会室の一角に用意された文化祭実行委員用のテーブルに突っ伏していると、バサバサと頭を書類で叩かれた。

「渋谷、大丈夫?」
「ダメです……」

 昨年、実行委員長を務めていて、今年は副委員長を引き受けてくれた鈴木真弓先輩に正直に答えると、真弓先輩はカラカラと笑い、

「まあ、あたしも去年そうだったから分かるよ。どうしても委員長に仕事集まっちゃうからね」
「一日36時間欲しいです……」
「残念ながら24時間しかないので。はい、これ目、通して」
「鬼だ……」

 ブツブツいいながら、新たに提出されてきた企画書に目を通しはじめる。
 実は、仕事自体は苦痛ではない。むしろ結構好きだ。ただ……

(浩介に会いたい)

 重症な浩介欠乏症だ……。
 いや、正確には、浩介には会えているのだ。同じクラスなのだから当たり前だ。
 そう考えると、昨年よりはマシなのかもしれない。思えば昨年の今ごろはまったく会えていなかった。

(でも、全然話してない)

 おれもおれで実行委員長の仕事に忙殺されているけれども、浩介も浩介でクラスの文化祭の準備で忙しいのだ。おれが学校に着くと、浩介の周りにはすでに誰かしらいて、挨拶すらできないことも多い。


 浩介は、企画が決まってすぐに、かなり詳細な計画表と役割分担を打ち出してきた。一緒に委員をやっている浜野さんも、大人しいけれども冷静で頭の良い女子なので、二人は仕事のパートナーとして相性は良さそうだった。

 喫茶店、ということだったけれども、結局はお団子屋さん、になった。
 メニューの選定・仕入れを担当するメニュー班、食事に使用する小物を担当する小物班、衣装を担当する衣装班、部屋のレイアウト・飾り付けを担当するする飾り付け班、ポスターを担当する広報班。以上5班にわかれてそれぞれ期日までに与えられた仕事をこなすことになっている。

 はじめは遠慮がちだった浩介も、日が経つにつれ、だいぶハッキリと意見を言うようになったきた。それでも、絶対に押しつけるような言い方はしないし、相手の意見をきちんと受け止めてくれるので、リーダーとしての信頼度は確実に上がってきている。

(おれも一緒にやりたいなあ……)

 でも、本部の仕事があって、クラスの方も写真部の方も何もできないのが現状だ。


「あれ、渋谷、今日写真部の活動日だろ?」
「あー……うん……」

 入ってくるなり、言ってきた安倍康彦、通称ヤスにおざなりに返事をする。
 写真部……行きたいけれど、今日中にやらなくてはならないことが山のようにあって……

「え、そうなの? 気晴らしに顔だしてくれば?」
「でも……」

 真弓先輩の言葉に心がぐらつく。写真部……浩介いるかな……

「行ってこいよ! 渋谷! 会いたいだろ~?」
「え?!」

 能天気なヤスの言葉にぎょっとする。な、なんで……
 あわあわとしてしまったおれに、真弓先輩がキョトンとする。

「え、なに、渋谷、写真部に彼女でもいるの?」
「えっいやそのっ」
「いるんですよーすっごい可愛い子が!」
「は?!」

 可愛い子? 今度はおれがキョトンとしてしまう。

「可愛い子って?」
「またまた~~。あの一年の子! お前狙ってんだろ~?」

 一年は、妹の南と真理子ちゃんしかいないので、自動的に真理子ちゃんのことになる。
 で、え? おれが真理子ちゃんを狙ってるって、なんだそりゃ。

「いや、あの子は……」
 否定しようとしたところを、ヤスが更にニヤニヤと、

「すっごい小さくて女の子らしくて可愛い子なんですよ~渋谷のタイプのドストライク!」
「え……」

 あ、そういうことか。
 昨年、おれがまだ浩介への恋心を自覚する前に、ヤスとそんな話をしたことがある。おれのタイプは、おれより身長が10センチ以上低い、女の子らしい子だ、と。考えてみたら、真理子ちゃんは、その条件をバッチリ満たしている。今まで気が付かなかった……

「へー渋谷、小さい子が好みなんだ? じゃ、あたしなんかまったく眼中ないって感じだね」
「え?! いやいやいや……」

 真弓先輩のムッとしたような声に慌てて首をふる。真弓先輩、おれより10センチ以上身長高いから……

「そんなこと言ってたのは去年までで、おれ、今は、身長とか全然気にしてない……」
「ああ、いいいい。とっとと行って、元気になって、また帰ってきなさい。仕事はそれから!」
「わっ」

 ひょいっと脇を掴まれて立たされてしまった。さすが元バレーボール部のエース。まるで子供扱いだ。
 それからヤスがおれの背中をドーンと押してきた。

「じゃ、渋谷、楽しんでこいよ~」
「その間に、安倍、今出てきてる請求書のチェックするから」
「昨日もしたじゃないですか?!」
「また新しいの出てきてんの!」

 二人がワアワア騒いでる間にそっと生徒会室を抜け出す。

(浩介……)

 久しぶりに、ちゃんと話せる……かな。


***


 写真部の部室に入ってみると、ビックリするくらいの量の写真がテーブルの上にしきつめられていた。

「うわ……すげえな」
「あれ、お兄ちゃん」

 南がおれに気がつき、手を止めた。

「本部は大丈夫なの?」
「いや……ちょっとしたら戻る」
「そう。大変だね」

 言いながら、ニヤッと笑うと、

「浩介さんならまだ来てないよ」
「…………。聞いてねえよ」

 前々からずっと思ってたんだけど……こいつ、おれの気持ちに気が付いてるよな……。

 南は中学に入る前から、本の趣味がおかしな方向に行ってしまい、今では友達と一緒におれと父には見せられないような本を作ったりしている。作った本は見せてくれないけど、その他のことは隠す気はないらしく、うちのリビングには男同士がイチャイチャしているような表紙の本が普通に置かれていて……

(思えば……浩介への気持ちを、悩みつつも受け入れることができたのは、そういう下地があったからなんだろうなあ……)

 南が気が付いているかどうかは、怖いから確認したくない。
 でも時々、さりげなくおれと浩介を二人きりになるように仕向けたりするところをみると……


「あ、渋谷先輩!」
 もう一人の一年生、橘真理子ちゃんが暗室から出てきた。
 あらためて真理子ちゃんを見てみる。確かに、おれよりおそらく10センチ以上小さい。そして可愛い。でも、実は腹黒いことをおれは知っている。

「これ、見ましたー? すごい良い写真なんですよ」
「うわ!」

 差し出された写真をみて思わず叫んでしまう。合宿の時の朝日の写真。素晴らしい色彩だ。

「こんな写真あったっけ?」
「お兄ちゃんが別のカメラで撮ってたらしくて、こないだ現像したんです」
「へええ………」

 めくっていき……

「!!」

 息を飲んでしまった。これは……

「これ、すごくいいですよね~。あーずるいなあ……」
「………」

 真理子ちゃんのつぶやきも耳に入らない。
 だって……この写真!

「浩介……」

 柔らかい、でも、うちに強さを秘めたような瞳。少し笑っている口元……
 なんていい表情してるんだ。なんて……

 見惚れてしまう。っていうか、この写真欲しい……。

「あーあ。これでお兄ちゃんに撮ってもらってないの私だけですよ!」
「え」

 真理子ちゃんの大きなため息に我に返る。真理子ちゃんのお兄さん、橘先輩は真理子ちゃんのことだけは頑なに撮ってあげないのだ。

 真理子ちゃんは、実兄である橘先輩に本気で恋をしている。それは人には知られてはいけない思い………おれと同じだ。そのせいか、真理子ちゃんには勝手に親近感を感じている。

「渋谷先輩なんて何枚あるんだ!ってくらい撮られてて、ホントにずるい!」
「まあまあ」

 ぶーっと膨れた顔が可愛くて、思わず頭をポンポンとする。

「橘先輩におれからも頼んでみるよ」
「そうしてください! 絶対ですよ!」
「わかったわかった」

 真理子ちゃん可愛いなあ。南もこのくらい可愛げがあったらいいのに……

 と、そこへ。

「あれ? 浩介さん?」
「え?」

 南の声に振り返ると、浩介が入り口近くに突っ立っていた。何か、ぼんやりとした表情をしている。 

「浩介?」
 呼びかけると、浩介はゆっくりと微笑んだ。切ないほど悲しい瞳をしているように見えるのは気のせいだろうか……


***


 最高に気が利くおれの妹・南様が「ジュース買いにいこ~」と真理子ちゃんを外に連れ出してくれたので、浩介と部室で二人きりになれた。

(南……さっきは『真理子ちゃんくらい可愛げがあったらいいのに』なんて思って悪かったっ)

 心の中で南に平身低頭で謝って、浩介と隣の席に座り、写真の振り分け作業をし始めてみる。この大量の写真を部活ごとにまとめているらしい。


 やっぱり元気のない浩介……何かあったんだろうか。

「どうした? なんかトラブル?」
「うん……」

 大きく息をつく浩介。やっぱりな……。

「おれでよければ相談のるぞ? つーか、たぶんおれが一番相談役に適任だぞ? クラスのことに関わってないから公平なジャッジができるし、実行委員長として何かアドバイスできることもあるかもしれないし」
「慶……」

 頭を優しく撫でてやると、浩介はふにゃっとした顔になり、ぽつぽつと話しだした。


 トラブルの内容は、「衣装班が予算を千円もオーバーしてしまった」という単純だけれども、頭の痛い問題だった。
 もう生地を切ってしまったため返品も不可能。よってどこかで千円も削らなくてはならない。一応予備費として500円とってあったので実質は500円でもいい。でもこれから何かあるかもしれないから、やはり千円削りたい。

「飾りつけとポスターは本当にギリギリの予算だから無理。となると、団子の仕入れ本数を減らすか、紙皿とかをもっと安いものにするか……でも……」

 浩介は、再び大きく息を吐いた。

「仕入れ本数減らしたら、すぐ店じまいになっちゃうし、紙皿もあんまり安っぽいのは嫌だよねっていって、浜野さん達とアチコチ探し回って、ようやくいいもの探しだしたのに……」

 浩介は日曜日も浜野さん達小物班と一緒に店回りしていたらしい。

「自腹切りたくなっちゃうよ」
「自腹切るのは禁止だからな?」
「うん……」

 はああ……とまたため息……。
 何か良い方法は……

「ちょっと予算書見せてくれ」
「うん」

 見せてくれた予算書に目を通す。かなり細かく予算が組まれているので、逆に何も動かせない事態に陥っているともいえる。でも、どこにも無駄のない適切な予算が当てられていると思う。さすがだ。

「これ……やっぱり小物班の予算を削るしかないな」
「だよね……」

 やはり浩介も思うところはここなのだろう。でも、一緒に探し回っただけに諦めきれない、といったところか。

「ああ、もう、自腹切ってあの紙皿買いたい。ホントに本物みたいにみえるお皿なんだよ」
「本物みたいに……」

 本物みたいに……

「なあ……」
 ふと閃いた。

「本物使うっていうのはどうだ?」
「え?」

 目をパチパチさせた浩介に畳みかける。

「あのな、自腹切ることは禁止だけど、今持っているものを使うのはOKなんだよ」
「今持ってるって……」
「一人2枚、家から皿を持ってくるだけで80枚になる」
「あ」

 はっとしたように浩介が口に手をあてた。

「なるほど……家で余ってるお皿とか湯呑とか集めるだけで何とかなるかも……?」
「ただ、食器に統一性がなくなるのが問題だな」
「あ……でも」

 浩介がピッと人差し指を立てた。

「テーブルごとに合っていれば問題ないよね。種類ごとに振り分けておいて、同じテーブルには同じ感じのお皿と湯のみで出すようにすれば……」
「ああ、なるほど!いけるな」
「うん。いける……」

 うなずき合い、拳をこつんと合わせる。 

「家庭科室のシンク使用の申請もまだ間に合うしな」
「いつまで?」
「明後日の朝」

 バッと浩介が立ち上がった。

「おれ、ちょっと美術部いってくる。浜野さん今日部活出るって言ってたから」
「おれも行く!」

 パズルが合わさるような感覚。二人でいれば何でもできる!っていう充実感がたまらなく気持ちいい。


 暗室にいる橘先輩に声をかけてから、2人で美術室に向かう。

「なあなあ、おれにも何かやらせてくれよ。一人蚊帳の外って感じでさみしいんだけど」
「え、でも本部の仕事……」

 心配げに振り返った浩介に、軽く手を振る。

「明後日が申請書類の最終締め切りだから、その処理が終わったらちょっとの間だけ時間が空くらしいんだよ」
「そうなんだ……あ!」
「え?」

 もう美術室の前まで来ていたのに、急に腕を捕まれ廊下の端まで連れていかれた。久しぶりの体の密着に、余計にドキドキしてしまう。

「な、何………」
「じゃ、モデルできる?」
「は?」

 モデル? 何の話だ。

「浜野さんが慶に絵のモデルをお願いしたいんだって」
「は? なんで? 意味分かんねーんだけど」

 眉を寄せると………ふいに、浩介が真顔になった。

「本当に、分からない……?」
「え?」
 ドキッと心臓が跳ね上がる。

「浩介……?」

 また、さっきのような、切ない、悲しい色になった瞳がこちらをジッと見つめながら……

「!」
 冷たい人差し指が、おれの額から眉間、鼻筋と辿りながらツーッとおりてきて、唇で止まった。

(うわ……っ)

 何……何だよ……っ

 体中の血が頭にのぼったんじゃないかというくらい、顔が熱い。動悸が早くなりすぎて倒れそうだ。

(浩介………っ)

 そんなおれの内心なんか全然気が付いた様子もなく、浩介は手を離してふっと笑うと、

「慶は本当に綺麗な顔してるもん。描いてみたくもなるでしょ」
「……なんだそりゃ」

 意味がわからない。描いてみたくなるって意味も、今、顔を触られた意味も……

 浩介は少し肩をすくめて言葉を継いだ。

「慶がダメだったらおれがやるんだよ」
「え」
「おれは完璧な平均的な顔だから、それもそれでいいらしくて」
「…………」

 浩介がモデル……?

 モデルってことは、ジーッと見られるってことだよな……
 浩介と浜野さんが二人きりで……浜野さんが浩介のことをジッと見つめ続ける……

(………冗談じゃない)

 そんなこと、許せるわけがない。

「おれがやる」
「え、いいの?」
「やる」
「………ありがと」

 強く言いきると、浩介がホッとしたように息をついだ。それから「あ、そうだ」とポンと手を打った。

「お団子の試食、一緒にしない? メニュー班と浜野さんで日曜日集まるんだけど空いてる?」
「空いてる! やる!」

 ようやくクラスの企画に初参加だ!
 せっかく浩介と同じクラスなんだから、少しでも一緒に活動したい。

 浩介はふんわりとした笑顔を浮かべると、

「良かった。慶がいてくれたら心強い」
「そうか?」
「うん」

 そして、優しい手がおれの頬に少しだけ触れた。

「やっぱり、どうしても、おれには慶が必要」
「…………え」

 それはどういう意味……

 聞く前に、浩介はふいっと背を向けて美術室に向かって歩いていってしまった。

 さっきせっかく感じたパズルが合わさるような感覚がバラバラと散っていく……

(慶が必要……)

 そう言いながら、背を向けるお前の心はどこにあるんだ? その悲しい瞳は何なんだ……?




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お読みくださりありがとうございました!
時間がない二人……もどかしい……
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BL小説・風のゆくえには~巡合2-2(浩介視点)

2016年02月25日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 巡合


 おれたち2年10組の文化祭の企画希望は、第一希望:喫茶店、第二希望:縁日、第三希望:双六ゲーム、で提出することになった。おそらく喫茶店はくじ引きになるので、そこが一番緊張しそうだ。


 文化祭実行委員長となった慶は、しょっぱなからずっと忙しそうだった。昼休みも放課後も集まりがあり、授業中も何か内職をしているらしくて、5分休みになると、

「さっきの授業のノート見せて」

と、言ってくる。そういうわけで、ここ3日で慶と話した内容といえば、ノートで分からないことがあった場合の説明、だけだった。

(さみしい……)

 けれども我慢我慢……
 おれも文化祭の準備がはじまれば忙しくなって気が紛れるんだろうけど、企画が決定するまでは動くこともできない。
 でもそれも今日で決まる。

 放課後、文化祭クラス委員2名及び、文化祭に参加する部活の代表者が、体育館に集められた。
 うちの学校は、1学年12クラス。参加部活は30以上あるはずなので、少なくともこの場に100人以上はいる計算になる。そんな大掛かりな会議を仕切るんだから、準備も大変だっただろう……


 一緒に文化祭委員をやることになったのは、浜野ちひろさんという、今までほとんど話をしたことがない女子だ。
 浜野さんは、小柄で色白で大人しそうで、とてもこんな委員をやるイメージはない。でも今回、彼女は委員に自ら立候補したのだ。

「浜野さんは、どうして委員になりたかったの?」
「え……ああ」

 会議が始まるまで隣で黙っているのも何なので話しかけてみると、驚くべき答えが返ってきた。

「渋谷慶と仲良くなりたかったから」
「え?!」

 び、びっくり。
 そうか、先に男子の委員が慶に決定して(他薦で半ば強引に決められたんだけど)、その後女子を決めたんだった……。
 は、浜野さんって、慶のことが好き……とかそういうこと?

「あ……じゃ、ごめんね。おれに変わっちゃって……」
「ううん。この際、桜井君でもいいんだけど」
「へ?」

 どういうことだ??
 っていうか、考えてみたら「渋谷慶と仲良くなりたい」って変な言い方だな……

「あの……どういう………」
「私、美術部なのね」
「う、うん……」

 話が飛んだ。浜野さん、なんか独特の間があるというか………。

「渋谷君にモデルをお願いしたかったの。でも話かけるタイミングもなく今まで来ちゃってて、委員会でも一緒にやれば頼みやすくなるかなって思ったの」
「ああ……なるほど」

 ほっと思わずため息をついてしまう。

「びっくりした。慶のことが好きとかそういう話かと思った」
「好き? ありえない」

 浜野さんはピクリと眉を寄せた。

「渋谷慶は観賞物であって、恋愛対象にはなりえない。そもそも私、現実の男に興味ないし」
「…………」

 現実じゃない男には興味があるっていうことだろうか……
 というか、その前に、

「慶が、観賞物?」
「あんなに綺麗で完璧な美しい顔、めったにないでしょ。描いてみたい」
「…………」

 なるほど……。

「だから、桜井君から頼んでもらえると助かるんだけど?」
「わ、わかった……けど、慶、最近忙しそうだからなあ……」
「もし、渋谷君がダメだったら桜井君がモデルになってくれる?」
「は?!」

 慶がダメだったらおれってどんだけランク下げてんの?!

「それはまずいでしょ、おれなんか……」
「桜井君も桜井君で興味深いの。完璧なまでの平均的な顔……」
「…………」

 それは褒められてるんでしょうか。馬鹿にされてるんでしょうか……

 うーん……と唸っていたところで、「はじめまーす」との声が聞こえてきた。背筋を正して正面をみる。


 舞台中央に颯爽と現れたのは、おれの親友・渋谷慶。しゃんとした背筋。綺麗な歩き方。ハッと目を引くオーラがある。ざわざわざわっとなったのは当然の結果だろう。

「誰あれ?!」
「二年生? すっごいカッコいい!!」

 あちこちで声が上がったけれども、慶が会場を見渡していくと、水を打ったように静かになった。

「この度、文化祭実行委員長を務めることになりました2年10組渋谷慶です」

 涼やかな声。聞き取りやすい癒されるような波長。思わずウットリとしてしまう。
 こんな人が、おれの親友。みんなが憧れるこの人は、おれの親友なんだ。

「……皆様の協力の元、文化祭の成功に向けて……」

(………あ)
 慶、こっちみた。絶対おれのこと見てる!
 手を振りたいのを我慢して、ジーッと見ていたら、慶の目元が和らいだ。

(慶………)
 すごい優越感。こんな100人以上いる中から、慶はおれだけを見てくれてる。
 ドキドキするのを抑えるために、心臓のあたりをギュッと掴む。それでも鼓動は速いままだ。

(慶……慶。おれの親友)

 慶の完璧な挨拶が終わり、大きな拍手が起こった。
 慶は頭を下げ、ゆっくりと上げたのだが、

(え?)
 慶、左前方の席の何かに気がついて「あ」という顔をした。
 そしてそちらに向かってニッコリと笑った。

(え……何? 何見たの?)
 ギュッと、さっきとは違った意味で心臓が痛くなる。なんだろう……誰がいたんだろう……

 答えは分からないまま、プログラムは進んでいく。

「続きまして、委員の紹介をさせていただきます」
 ステージ脇から壇上に上がってきたのは、女子二人と男子一人。

「副委員長を務めさせていただきます、3年2組鈴木真弓です」
「同じく、2年5組石川直子です」
「会計担当の2年6組安倍康彦です」

 あ。安倍……。慶と一年の時に同じクラスで、一番仲が良かった奴だ。いまだに慶と安倍はバイトを一緒にしたり、時々学校帰りにどっかに行ったりしてるみたいだけど………本部委員まで一緒にやるんだ……。

(ふーん………)

 でも、親友はおれだし。慶はいつも、おれと遊ぶのが一番楽しいって言ってくれてるし。
 でも、でも、だから……

(慶……おれのことだけ見ててくれればいいのに……)

 おれだけを見て。おれだけに笑って………

(……って!)
 そこまで思って、愕然とする。

(何言ってんだ……おれ)

 なんて醜い……
 『憧れの渋谷』とだけ思っていた時は、遠慮みたいなものがあって、そこまで思えなかった気がする。でも今は……

(慶……おれ、慶の隣に並べる男になるから……だから)

 ……………。

 でも、それでも、友達を独占しようとするのは間違っている。こんな醜い気持ちはダメだ。


「……以上で概要の説明を終わります。次に、飲食店、お化け屋敷の抽選を行います。その後、場所の抽選になります」

 慶の淀みのない説明の声が聞こえてくる。

「以下の団体は、出店内容、希望場所に問題がなかったため、帰っていただいて結構です。1年1組、1年4組……」

 慶、大人っぽいな……。仕切ることに慣れたカリスマ性。
 でも、おれと二人の時の慶は、子供っぽいところもあって、甘えてくれるときもあって、すっごく可愛くて、それで「お前と遊ぶのが一番楽しい」っていてくれてて、親友だっていってくれてて、「慶」って名前で呼ぶのはおれにだけ許されていて、それで、それで……

「……………」

 何言ってんだ。おれ……

 ……頭を切り替えよう。これからくじ引きだ。
 モヤモヤしたまま、浜野さんと一緒にくじ引きの場所に向かうと、

「安倍……」
「あ、桜井」

 屋内飲食の抽選は安倍が担当らしい。
 勝手に気まずい気持ちになっているおれには気付くことなく、安倍は、おれを見るなりちょいちょいちょいっと言いながら手招きしてきた。

「な、なに?」
「今、渋谷と一緒にいる子、知ってる?」
「え?」

 言われて安倍の顎が指した方を見てみると、慶と、写真部の真理子ちゃんが喋っていた。抽選、部長の橘先輩じゃなくて、真理子ちゃんが来たらしい。写真部は中央棟3階の第二会議室を狙っているのだ。

「写真部の一年生だけど、それがどうかした?」
「あーそうなんだ。それで渋谷、急に写真部なんか入ったわけか……」
「え?」

 聞き返すと、安倍はニヤニヤとおれの腕を肘で押してきた。

「またまた~誤魔化すなよっ」
「??」

 意味が分からない。

「渋谷が写真部入ったのって、あの子のせいだろ?」
「え………あ、そう……だね」

 元々おれ達は、廃部を逃れるための人数集めとして、真理子ちゃんに頼まれて写真部に入部したのだ。
 そんなことを知らない安倍はニヤニヤしながら言葉を続けた。

「だよなあ~だってあの子、渋谷の『理想の女の子』そのものだもんな~」
「え」

 理想の女の子?

「渋谷より背が10センチ以上低くて、女の子らしい子、だろ? そんなんいるか!ってさんざん言ってきたけど、ホントにいたんだなあ~」
「…………」

 理想の……女の子……
 真理子ちゃん……小さくて華奢で女の子らしくて可愛らしくて……

 慶の、真理子ちゃんを見下ろす優しい眼差し……

「お、全員集まった~?」
 安倍が明るい声で集まったメンバーを見渡した。

「じゃ、あみだクジ選んで~」
「桜井君?」
 浜野さんにツンツンとつつかれて我に返る。

「どれにする?」
「あ……、えと……」
 戸惑っているうちにみんな埋まってしまい、しょうがなく余った一つに『2-10』と書き込む。
 希望団体は10団体。5団体のみ当選だ。

「じゃ、恨みっこなしで! まずはじめの当選団体は……」
 安倍の能天気な声が頭の上の方を滑っていく。
 慶と話し終わったらしい真理子ちゃんが、席に戻っていくのを目で追いかけていたら……

「…………あ」
 足元からすっと血の気が引いたのがわかった。

 真理子ちゃん、左手前方に座った。
 さっきの、壇上からの慶の「ニッコリ」は………

(真理子ちゃんへの笑顔だったんだ……)

 理想の……女の子……

(そういえば……)

 一学期、慶と真理子ちゃんの様子が少しおかしかった時があった。
 その時、慶は真理子ちゃんとの恋愛関係を否定していたけれど、考えてみたら、その時以降、慶は更に真理子ちゃんに対して優しく接するようになった気がする。年下の子に対するやさしさなのかな、とたいして気にとめていなかったけれど……というか、正直にいうと、当時おれはバスケ部の美幸さんに片思いをしていて、周りが見えていなかったところがある。だから気がついた時には、優しく接する慶がスタンダードになっていたんだけど……慶のあの優しい笑顔は……


「桜井君。当選だって」
「え……あ」

 浜野さんに再びつつかれて、再び我に返る。2分の1の確立に勝ったらしい。残り物には福がある、だ。

「次は場所の抽選だね。第一会議室、競争率高そうだけど」
「うん………」

 浜野さんの冷静な声になんとか肯く。
 
(慶………)

 忙しそうに本部委員で集まって作業をしている慶を遠くから見つめる。

(慶、慶……)

 でも、慶がこちらを見てくれることはなかった。




----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
これは持論ですが、嫉妬、独占欲、性欲、を相手に感じたらそれは恋かなと。
浩介さん、性欲はまだですが、嫉妬心と独占欲には、今までとは違った火がついたようです。
また明後日、よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~巡合2-1(浩介視点)

2016年02月23日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 巡合

 体育祭が終わると、今度は文化祭の準備がはじまる。

 おれの親友・渋谷慶は、体育祭が終わった翌週月曜日のホームルームで文化祭クラス委員に選出された。昼休みの文化祭委員の集まりに行った慶が、ようやく戻ってきたのは5時間目の学活が始まってからで………

 なんだか、どよーん、とした表情をした慶………

「渋谷、お前まさか………。……浜野」
「…………」

 同じく文化祭委員で、慶と一緒に遅れて戻ってきた浜野さんが、学級委員の長谷川にコクリとうなずいてみせた。

「マジか」
「悪い………やっぱり断り切れなかった……」

 深々と頭を下げた慶に、みんながワアワア言い始める。

「だから言ったんだよ!渋谷は狙いうちされるって!」
「でも渋谷以外で出来る奴いないんだからしょうがなかっただろ!」
「結局誰か出すことになるんじゃ一緒だったじゃねえかよ!」
「だからそれは渋谷が逃げ切れば良かっただけの話だろ!」

 ???

 みんなが騒いでいる内容が分からなくて、後ろの席の山崎を振り返る。

「どういうこと?」
「渋谷、たぶん委員長とか副委員長とかになっちゃったんだよ。そうすると、本部の仕事をしなくちゃならなくなるから、クラス委員の方は別の人間を選び直し………」

「桜井やれよ!」
「え?」

 山崎の説明の途中で誰かの声があがった。
 え? 今、おれの名前言われた?

「そうだな。桜井でいいんじゃね」
「ええ!?」

 なんでおれ!?

「お前、渋谷の彼氏だろっ。彼女のカバーは彼氏がしろよ」
「誰が彼女だ!」

 慶がバンバンッと教卓を叩いた。

「だいたい、こいつ、バスケ部と写真部もあるし!」
「そんなのみんな、何かしらあるんだから、断る理由になんねーよっ」
「じゃあお前がやれよ!」
「やるわけねーだろっ」

 慶と前の方の席の男子達で言い争いが始まったけれども、

「まあ、待て」
 冷静な委員長の声に一同口をつぐんだ。

「桜井はどうなんだ? やれないか?」
「え………」

 一斉にクラスの視線が集まり、心臓が止まりそうになる。おれが……?

「桜井! 委員になったら、だーい好きな渋谷と一緒に仕事ができるぞー!」
「え」

 溝部の調子のよい言い方に笑いがおこる。体育祭以降、溝部がそういうことを言うせいで、クラスの他の奴らもさっきみたいに慶とおれのことを変な風に言うようになってしまったのだ。
 慶はニコリともせずに、

「適当なこと言うな溝部。本部委員とクラス委員はまったく別口だ。一緒に仕事をすることはない」
「でも、一緒の会議に出たりするじゃん。桜井ー、ほら、渋谷の議長姿見たいだろー?絶対かっこいいぞー?見たいよなー?」
「えっと………」
「あほかっ」

 通りがかりに溝部の頭をはたいてから、慶がおれのところまでやってきた。

「おれも本部は初めてやるから、どこまでクラスの方に関われるかはわかんねえ。けど、お前がやってもいいって思ってるなら出来る限りのことはする。でも、無理ならはっきり断れ」
「………」

 文化祭委員………みんなの意見をまとめたり、指示を出したり………そんなことがおれに出来るんだろうか……

(いや、出来るか、じゃなくて、やれるようにならないと………)

 そうだ。おれは変わると決めたんだ。友達を支えることができる人間になるって……

「慶………」
 大好きな親友の瞳を見上げる。

「おれに、出来るかな」
「浩介」

 慶は目をみはって……それからニッと笑っておれの頭をくしゃくしゃとしてくれた。

「出来るよ。お前なら」
「慶……」

 慶の力強い言葉にうなずく。
 出来るかな、じゃなくて、やらないと、だ。

「じゃ、決定な」
 委員長の一言に、わっと拍手がおこる。
 拍手の中、委員長があっさりと言った。

「じゃ、さっそくだけど、ここからの司会は桜井と浜野でよろしく」
「え!?」

 こ、心の準備が……っ

「浩介」
「け、慶」

 慶に立たされ、前に連れていかれる。
 慶は教卓の前に立つと、

「お前ら、仕事押し付けたって自覚持てよ? こいつのこと困らせたりしたら、わかってんだろうな?」
「渋谷、過保護過ぎ」

 委員長に冷静に突っ込まれ、慶がムッとする。
 それから、浜野さんとおれに、今決めなくてはならないことを手短に説明すると、ポンポンとおれの手の甲をたたいてから席に戻っていった。

「じゃ………はじめに、何をやりたいか……意見をお願いします」

 息を大きく吐いてから、クラスメートに向かって問いかける。みんなの目がこちらを向いたのを感じて、足が震える。

『出来るよ、お前なら』

 慶の言葉を胸に、慶の触れた手の甲をぐっとつかみ、逃げ出したくなる気持ちを押さえつける。

「何か、ありませんか?」
「お化け屋敷!」

 溝部の声に、女子から「えー」とブーイングがおこる。でも、それをきっかけにどんどん意見が出てきた。

「喫茶店!」
「ゲームセンター!」
「占い!」

 活発に出てくる意見を、浜野さんが黙々と黒板に書きだしていく。その隙に、慶から渡された資料にざっと目を通す。

 明日の放課後までに、第三希望まで書いて提出。なぜなら………

「お化け屋敷は2団体まで、飲食店は、屋内は5団体、屋外は3団体まで、です。おそらくこれらは第一希望で出しても厳しいし、第二希望で出したらまず通らない、と思い、ます」
「えー」

 おれが説明すると、喫茶店、と意見を出した鈴木さんが、ブーと言った。

「じゃ、絶対喫茶店を第一希望! 抽選外れたら諦めもつくし」
「何勝手に言ってんだよっ。お化け屋敷だって第一希望にしないと通らない……」
「お化け屋敷なんて絶対にヤダ!」

 鈴木さんと溝部がいがみ合う中、他のクラスメートもワアワア言いはじめた。

 これは冷静に一つ一つの意見を吟味した上で多数決を取るのが定石だ。……と、思うんだけとみんな好き勝手に喋ってて……

「あの………」

 誰も聞いてくれない……
 どうしよう……

(…………慶)

 クラスを見渡していたら、慶と目が合った。慶は透明な瞳でジッこちらを見ている。見守るように……

(慶)

 たぶん慶だったらすぐにこの場をどうにかすることができるだろう。でも……それをせずに、任せてくれている。見守ってくれている。

『出来るよ、お前なら』

 そう言ってくれた慶の言葉を裏切りたくない。

 出来る。出来る。おれは……出来る。

 呪文のように唱えながら、意を決して顔をあげ…………そして。

「静かにしてください!」

 わあん……と自分の声が教室に響き渡り、自分でもぎょっとする。バスケ部仕込みの腹から声だす応援練習の効果があった。
 ビックリするくらい、教室内がシンッとなって、余計に心臓がドキドキしてきた。けれども、何とか冷静に言う。

「それぞれ、推薦理由の発表をお願いします。まず、お化け屋敷の溝部君」
「おわっおれかっ」

 慌てて立ち上がった溝部のたどたどしい発表を聞きながら、慶のことを見る。

(………慶)

 こちらを見てくれていた慶は、おれと目が合うと、ニッと口の端をあげて笑ってくれた。

(慶………)

 慶がいてくれるから、おれは大丈夫。

 おれもいつか慶を支えられる男になるから、それまでちょっとだけ待っててね。
 

 

----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!

長くなったので、切ることにしました。
なんか……ボーイズラブって名乗ってるのが申し訳ない<(_ _*)>

今さらですが、浩介視点って普通の青春物語なんですよね……。中学時代イジメが原因で引きこもりになっていた少年が、高校で出会い親友となった少年に助けられながら、成長していく物語!みたいな……

いや、でも、そろそろ、ボーイズラブ方向に進む………はず(^-^;っ

また明後日、よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~巡合1(慶視点)

2016年02月21日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 巡合


 浩介のことを好きだと気がついてから、来月で一年になる。
 叶わない恋。ずっと一緒にいるために、おれは『親友』というポジションを選んだ。自分でも、なんて健気なんだろうって誉めたくなってしまう。

 2年生からは同じクラスになれて、同じ写真部に入部して……その後、浩介が女子バスケ部の先輩に恋をして、失恋をして……

 そして、夏休みが終わってから、浩介は少し変わった。正確には、写真部の合宿以降かもしれない。


 今日は9月末。体育祭当日。

「青組応援団遅いね……ちょっと探してくる!」
「おお。頼む」

 おれ達体育委員は、強制的に体育祭実行委員になる。おれと浩介は、生徒の誘導係を担当していた。

 以前の浩介は、何にでも受け身で、なるべく人と接する仕事を避けていたところがあったのだけれども、夏休み明けから、急に積極的になってきた。憑き物が取れたのか、憑き物が憑いたのか、一学期の球技大会のときとは別人のような働きをしている。

「宇野! 早く! こっち!」
 浩介の大きな声。長ラン姿の宇野を先頭に、青組応援団の奴らが慌てて走ってくる。

「わりいっ着替えに手間取った」
「大丈夫! ギリギリセーフ!」

 今、ちょうど赤組の演技が終わったところだ。

「全員集まってる? 準備はいい?」
「おう」
「じゃ、いくね」

 浩介は、親指を立てた宇野に肯いてから、おれを振り返った。

「慶、お願い」
「おっけー」

 テントの放送部に合図を送ると、青組応援団の入場曲がかかった。

「頑張って!」
「おおっさんきゅーっ! おら行くぞー!」

 勇ましい掛け声とともに、宇野達、長ラン姿の応援団がグラウンドの中央に走り出す。

「宇野、今回応援団長なんだな」
「うん。途中ですっごい仕掛けがあるからしっかり見とけって言ってたけど……」

 男子も女子も長ランに長い鉢巻。

「女子の長ランってかわいいよな」
「ね。大きいのをダボって着てる感じがいいよね」

 なんて、普通の男子高校生的会話をしながらも、心中複雑だったりする。

(浩介、いつのまにか宇野と普通に話せるようになったんだ……)

 つい一か月前までは、宇野のこと苦手そうにしてたのに……

(ああ、おれ心狭いなあ……)

 内向的で、おれの後ろにくっついてばっかりだった浩介が、最近はおれ抜きでもクラスの奴らと話していたりする。そのことは良い傾向だと喜ぶべきなのに……なんか……寂しい。

(いやいやいや、元々こいつ、バスケ部の奴らとは上手くやってたし、溝部たちとおれ抜きでおれのバイト先の海に来たりしてたし……)

 そうだそうだ。自惚れるな。別におれがいなくたって、浩介は全然……
 でも、なんていうか……前よりも、自分から積極的に話しに行くようになったというか……

「わ!うそ!」
「え?」

 会場がドッと笑いに包まれた。我に返ってグラウンドをみると……

「げっ」
「仕掛けってこれかー!」

 長ランを脱ぎすてた宇野達……なんと、その下はチアガールの衣装!
 ゴツイ男子学生たちがフリフリミニスカートで青いボンボンを持って、足を振り上げる振りつけは、かなり……気持ち悪い。

「これ、青組一位取りそうだな」
「すごいねーよくやるねー」

 ケタケタ笑っている浩介。楽しそうだ。
 なんか……やっぱり変わった。『一皮むけた』って感じがする。


 演技が終わった宇野達が会場に愛想を振りまきながら帰ってきた。昼休みの間に一般投票が行われ、そこで順位が決まるため、会場に十分アピールしなくてはならないのだ。

 おれが次の白組の送りだしをしている間、宇野と浩介は何か話していた。

(何話してるんだろう……)

 体格の良い宇野のチアガール姿はそうとう不気味だ。本人も分かってやっているのだろう。
 笑いながら宇野が去っていった後に、浩介に聞いてみる。

「何の話してたんだ?」
「え?!」

 妙に動揺した浩介。怪しい……

「なんだよ? 教えろよ?」
「いや、その……」

 詰め寄ると、降参というように浩介が両手をあげた。

「宇野が言ってたんだからね。おれじゃないからね」
「だからなんだ」

 更に詰め寄ると、浩介が言いにくそうにボソリと言った。

「チアガール姿、渋谷だったら似合いそうだなって」
「……………」

 宇野ーーーーっ。
 ピクピクピクっと頬を痙攣させると、浩介が慌てたように手を振った。

「あ、だからね、渋谷はかなり筋肉ムキムキだから、その衣装は似合わないと思うよって言っておいた」
「……………」

 なんだそのフォローは……。

「お前……いつの間に宇野とあんな仲良くなったんだ?」
「仲良くないよ?」

 きょとん、と浩介が答える。何を言ってるんだ。

「仲良くないって、普通に喋ってたじゃねえかよ」
「普通に喋ってた? そう見えた?」
「え?」

 何をいって……

 聞く前に、浩介が大きく息をついた。

「良かった。これで普通……なんだよね?」
「え? ……あ」

 浩介の瞳に怯えのような光が灯っている。
 抱きしめたくなるのを我慢して、大きく肯く。

「おお。普通、だ」
「良かった」

 安心したような笑みを浮かべた浩介……。

 ああ、おれは大馬鹿だ。自分の気持ちばっかりで、浩介の気持ちを考えてやれてなかった。そうだよな。急にこんなに頑張って、無理してないわけがないよな……。

「とりあえず、午前の部は終わりだな! お疲れ!」
「わわわ」

 ぐしゃぐしゃと頭をなでてやると、浩介がくすぐったそうに笑った。いつものおれの大好きな浩介の笑顔だ。変わっていても変わっていなくても、浩介は浩介だ。


 午後も引き続き、委員の仕事があり、競技では二人ともスウェーデンリレーに出場することになっている。

「午後、リレーだね。やだなあ……」
「まあ、まかせとけ。お前が何位でバトン渡そうが、おれがどうにかしてやる」
「お願いします」

 深々と頭を下げてくる浩介。
 スウェーデンリレーは一般的には1000mメドレー(100、200、300、400)らしいが、そんなに長い時間をかけていられないので、うちの高校では、その半分の500mメドレー(50・100・150・200)をすることになっている。

 おれはアンカーの200m。今日のためにかなり走りこんできたので自信はある。たいていの奴は200mだと後半でバテてしまうので、よっぽどの差がないかぎりは挽回できるとみている。

 浩介も実は持久力はあるほうなので、150m一気に走り切れるだろうから、本人が心配するほど変な結果にはならないと思うけど……

「ありがとね、慶」
「あ?」

 ありがとう?
 振り返ると、浩介がふんわりとした笑顔を浮かべている。

「何が?」
「何かあっても慶が助けてくれるっていうのが、いつでもおれの心の支えだから」
「…………」
「頑張るね」
「…………」

 ………………。

 どうしてくれよう。可愛いすぎだろ………。

「慶?」
「…………可愛すぎだな」
「え?」

 聞き返してきた浩介に真面目な顔をして言ってみる。

「お前、可愛いすぎ」
「え~~」

 あはは、と浩介が笑う。

「慶の方が可愛いよ」
「可愛いくない。お前は可愛いけど」
「何いってんの。慶は可愛いって」
「可愛くない!」

 二人ででかい声で、可愛い可愛くないと言い合っていたら、

「お前らさっきっから何言ってんだよ~」
「カップルがイチャイチャしてるみたいだぞっ」
「実はお前ら付き合ってんだろ!?」

 溝部と山崎と斉藤がゲラゲラ笑いながらやってきた。

「誰が付き合ってるだ!」
 キッと睨み付けると、溝部が調子よく、

「いや~渋谷は顔だけだったら確実に学年一位だもんな~。おれはお前が女だったら是非お付き合いお願いしたいぞ!」
「あほかっ」

 人が気にしていることを!
 おれはわりと女っぽい顔をしているせいか、昔からそういうことをよく言われた。子供の頃はその度に相手が謝るまで蹴り倒したりしたけれど、今はさすがにそんなことはしない。

 でも軽く蹴るだけは蹴ると、溝部が避難するように浩介の後ろに回り、背中をつついた。

「なあ? 桜井だってそう思うだろ? 渋谷が女だったら確実に付き合うよな~?」
「え?」

 うわっ溝部っお前はなんて質問をっっ

 でも、おれの内心の焦りもなんのその、浩介はあっさりと言った。

「慶はすっごい男らしいから、女だったら、なんて考えられないよ」
「…………え」

 そんなこといってくれるんだ……。
 なんかちょっと感動………

 でも、溝部はまったくめげず、浩介の背中をバシバシたたいた。

「例え話だろ~~ノリ悪いな~~」
「あ………ごめん」

 浩介は困ったように頬をかいて、

「えーと……女の子だったら……」
と、ジロジロとおれのことを見てから、

「慶の気持ちもあるから付き合うかどうかは分からないけど……」

 真面目な顔をして言葉をついだ。

「男でも女でも、おれが慶を大好きってことは変わらないと思う」

「………………」
「………………」
「………………」
「………………は?」

 今、なんつった?

「ちょっと待て、桜井……」
「うん」

 溝部が額を抑えながら浩介を見上げる。

「今、お前、とんでもないこといったぞ?」
「え? 何が?」
「渋谷のこと、好きだって……」

 溝部の問いに浩介が首をかしげた。

「うん。大好きだよ?」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」

 しばらくの沈黙のあと、溝部、山崎、斉藤が大きくため息をついた。

「幼稚園児かよ……」
「桜井って時々変だよな」
「高校生にもなって恥ずかしすぎるだろ。大好きとか……」

「え!?そうなの!?友達でも好きって言っちゃいけないの!?」

 浩介が慌てたようにワタワタとする。

「ごめん、おれ、そういうのいまいち分かってないっていうか……っ」
「……………」

 そういえば、今では慣れてしまって何とも思わなくなっていたけれど、浩介は出会った頃から、こんな風に恥ずかし気もなく恥ずかしいセリフをペロッといってしまう奴で、おれはそれを聞く度に「変な奴だなあ」と思っていたんだった。
 考えてみたら、さっきの「心の支え」なんてセリフも相当恥ずかしくないか? 慣れとはおそろしい。普通に受け入れてた……。

「いい、いい。それが桜井の良いところだ。言っとけ言っとけ。素直に言っとけ」
「そうだそうだ。桜井はそのまま純粋培養で育ってくれ」

 溝部達が呆れたように言い、浩介が「純粋培養って何!?」とか言うのを、おれは複雑な気持ちで聞いていた。 

(『大好きだよ』か……)

 大好き、は初めて言われたな。
 嬉しいけど……それは確実に友達としての大好きだ。
 嬉しいけど、それを突きつけられたようで、逆に凹む……。

 これ以上この話をしたら立ち直れそうもないので、無理矢理話を変えてやる。

「つか、さっさとメシ食おうぜ? おれら委員の仕事あるから集合早いんだよ」
「おおそうだったっ。どこで食う? 教室戻ってもいいし……」
「チアガールの女子見ながら食いてえなあ」

 溝部の視線の先の、本部テントのあたりをみると、応援団の各組のメンバー数人が、票集めの呼び込みのために、投票ボックスの前に集まっていた。

「チアガールより長ランの方がかわいかったなあ……」

 山崎がボソリと言った言葉に、おれと浩介が激しく同意する。

「だよなだよな!長ラン良かったよな!」
「手が袖から半分しか出てない感じが可愛いかったよね!」

 やっぱりみんな考えることは同じだな! と思いきや、

「えーおれ絶対チアガール」
「おれもー」
 溝部と斉藤が、なー?と顔を合わせている。

 そこで「長ラン」「チアガール」と5人で言い合っていたら、

「そこの男子たち、さいてー」

と、通りがかりのクラスの女子達に軽蔑の眼差しで見られてしまった……。いや、健全な男子高校生の頭の中なんてそんなもんだろ!?
 健全でないおれは、(浩介も長ラン似合いそうだなあ)なんて妄想を膨らませていたけれど、そんなことは絶対に秘密だ。


 スウェーデンリレーは、50、100の二人が2位をキープしてくれ、150の浩介が1位との差をかなり縮めてくれ、アンカーのおれが最後の最後で追い抜かして1位になる、という感動的な結果となった。

 ゴールテープを切った途端、浩介が一番にすっとんできて、公衆の面前だというのに大袈裟に抱きついてきた。

「慶!すごい!かっこよかった~!」
「わっやめろっ離せっ」

 おれが浩介の腕の中から抜け出ようとワタワタする様子を溝部達がゲラゲラ笑いながら見ている。


 親友。クラスメート。友達。呼び名は何でもいい。
 こうして一緒に喜んだり、笑ったりできる毎日を共に過ごせれば、それだけでもう満足だ。

 そんな日が続けばいい。ずっと。ずっと。



追伸。
応援合戦は投票の結果、バク転・バク宙で魅せた白組が一位となった。男子がチアガール衣装まで着た青組は残念ながら僅差で二位。団長の宇野は責任をとって、打ち上げの席でセーラー服を着て「セーラー服をぬがさないで」を振り付けつきで歌ったとかなんとか……。



----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
昨日投稿した人物紹介に引き続き、本編『巡合(めぐりあわせ)編』になります。

今まで短編等で書いたことはありましたが、高校時代、浩介はみんなの前で慶のこと「大好き!」って公言してました。今回のラストシーンの感じが、私の中での高校時代の二人の日常なんです(浩介が抱きついて、慶が「離せっ」っていって、クラスメートが笑って……みたいな)。ようやくその雰囲気がでてきて、浩介の「大好き!」もでてきて、一安心です。
この『巡合』が終わるころには、その友達の「大好き」が恋人の「大好き」になっているはず!!

今まで通り、一日置きの7時21分に更新することを目標としております。
また明後日、よろしくお願いいたします!

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