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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 8-1(浩介視点)

2016年11月24日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 文化祭一日目が無事に終了した。

 今回は嬉しいことに、慶が遊びに来てくれて、少しだけ一緒に回ることができた。高校生に戻ったみたいにはしゃいでしまったおれ。バスケ部の生徒にもからかわれたくらいだ。
 慶が仕事の時間になり帰った後も、思いだしては頬が緩んでしまい、隠すのが大変だった。慶がいてくれると、景色が変わる。すべてが輝く。昔からそうだ。慶との記憶は全部キラキラしてる。

 浮かれたまま帰宅し、早々にご飯も食べて、久しぶりに高校の卒業アルバムを本棚から引っ張りだした。

「あー……慶、めちゃめちゃかわいいしかっこいい……」

 一緒に写っている修学旅行のページを見ながら、一人なので遠慮なく全開でニヤニヤしていたところ、

「………ライト?」
 
 メールの着信があった。ライトからだ。ライトはおれが大学時代に所属していた日本語ボランティア教室で知り合った17才の男の子だ。今日の文化祭にもあかねと一緒に来てくれていた。

 メールを開き……

『浩介先生の学校の超かわいいハーフの子がオレに会いにきてくれたー!お持ち帰りしてもいい?』

「は!?」
 思わず叫んで、画面を二度見してしまった。

「超かわいいハーフの子って、相澤さん……?」

 そういえば今日、二人が一緒にいるところを見かけた……。しかし、ライトは今日は渋谷のカラオケボックスで夜9時半までアルバイトのはずだ。今、9時40分。と、いうことは、相澤侑奈がこの時間に渋谷でフラフラしているということになる。

(このままだと校則違反になる)

 この学校では、保護者同伴以外の夜10時以降の外出を禁止している。相澤侑奈の担任の学年主任の吉田先生は厳しい人だ。容赦なく停学処分を下すだろう。そうなると明日の文化祭2日目に参加できなくなってしまう。

(吹奏楽部、明日もステージあったよな……)
 相澤侑奈はソロをやっていた。抜けられたら困るだろう。それに何より、このために頑張ってきたであろう相澤侑奈の努力が無駄になってしまう。

『家出してきたんだってー帰りたくないんだってー』

 なんだそれは……
 メールの続きを読み、頭を抱えてしまう。
 
 吉田先生は、神経質そうな眼鏡の50過ぎのベテラン教師で……少し父に似ているので余計に苦手なのだ。

 本当はすぐに報告すべきなんだろうけれども………

「………あーーー……」

 ごんっとテーブルにオデコを落とす。

「………上野先生」

 そのゴンッという衝撃で、ふいに思い出した高校時代の恩師。自習時間にトランプで遊んでいて、ゲンコツをくらったことがあるのだ。あの頃のおれは、慶のおかげで初めてクラスに馴染むことができて……。

 おれを暗闇から救ってくれた慶。その慶と同じクラスになるよう裏で手を回してくれ、陰から見守ってくれていたのが、バスケ部の顧問だった体育教師の上野先生だった。

(先生だったらどうするかな……)

 おれが尊敬する先生は二人いる。一人は上野先生。そしてもう一人は小2の時の1学期の間だけ担任だった佐藤先生。二人に共通していることは「生徒に寄り添ってくれる先生」ということだ。おれもそんな先生になりたくて、教師を目指したはずだった。

 ところが、今のおれはどうだろう。生徒の名前と顔を成績という数字と結びつけて覚えるような教師で……。教師になりたての頃は、もっと情熱を持って生徒と向き合っていたはずなのに……。

「…………。家出かあ……」
 家出をしたいなんて、おれも何度思ったかわからない。それを実行する勇気も覚悟もなかったけれど。

「相澤侑奈………」
 英語でこちらに突っかかってくるくらい強気なくせに、ふっと寂しそうな表情をする女の子だ。どうして家出なんてしたんだろう。……おれはどうしたらいいんだろう。

(慶だったら、どうするかな……)

 そんなことを思ったら、ふっと、高校時代に慶に言われた言葉が頭の中に蘇ってきた。

『お前がどうしたいかにかかってるんじゃねえの?』

 おれがどうしたいか………

 相澤侑奈が家出をした理由は分からないけれど、家出をしたいという気持ちは分かる……

 卒業アルバムに写っている愛しい慶を指で撫でる。

 おれは高校時代、生徒に寄り添える先生になりたいと思っていて……
 慶は、患者と患者の保護者と一緒に戦うような小児科医になりたい、といって、今も休みなく頑張っていて……

『お前がどうしたいかにかかってるんじゃねえの?』

 本来は学年主任に報告すべき案件だ。そして校則違反として罰するべきだ。

 でも……でも。

 きっと、慶だったら……上野先生だったら……佐藤先生だったら……

(いや、違う)

 おれが。おれが、どうしたいか。

『お前がどうしたいか………』

 おれがどうしたいか。
 おれは……おれは、相澤侑奈に手を差し伸べたい。

 卒業アルバムをパタンと閉め、立ち上がる。

「……慶」

 あの頃なりたかった自分に、おれも少しでも近づきたい。



-----



お読みくださりありがとうございました!

この続きも書きかけていたのですが、
昨日夕方に役員関係でトラブルが発覚し、徹夜で作業にあたり(眠い~~)…………でも結局終わらず、こちらの続きにも手をつけられず……

別件もあり、落ちつくまで時間がかかりそうです。
本当は、本当に、こんな中途半端なところで休みたくないんですが(涙)
しばらくお休みをいただきます。

12月4日の月曜日から再開……できなくとも、この日に何らかのお知らせをさせていただこうと思います。


あ、引っ張る話でもないので、ネタバレを一つ書かせていただきます。
侑奈の家出の直接の原因は、お父さんの再婚です。
そして間接的原因として、前日の諒と泉の抱擁があったのでした。
そんな話を次回も浩介視点で。浩介先生頑張って^^って感じです。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 7(泉視点)

2016年11月22日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘

 中1の夏から約3年半も続いていた諒の女遊びは、侑奈と付き合うようになってからピタリと止んだ。もう丸5ヶ月経つけれど、一度も浮気していないようだ。

(やっぱり諒の本命は侑奈だったんだな……)

 二人がオレに気を遣って今まで付き合えなかったのかと思うと、複雑だ……。

「お前いつからユーナのこと好きだったんだ?」

 一度諒に聞いてみたんだけど、

「内緒」

 そう言って、教えてくれなかった。拳骨で背中をグリグリしても、横腹をくすぐっても、両頬をムニムニしても絶対に口を割らないところをみると、かなり前からだったのではないか……と思って、さらに複雑な気持ちになってくる……。


 二人が付き合うようになってからも、〈仲良し三人組〉は健在だ。むしろ前よりも一緒にいることが増えた気もする。

「お邪魔虫」

 最近、クラスの奴らにそう言われる。
 侑奈とオレは2年生は同じクラスなれたので、諒がうちのクラスに遊びに来ることが多い。恋人同士の諒と侑奈の間にいるオレは、はたからみると邪魔者以外の何者でもないらしい。

「ちょっとは遠慮したら?」
 侑奈とわりと仲の良い、小野寺という女子が特にウルサイ。

「侑奈が、諒君と二人きりの時間が全然ないって愚痴ってたよ」
「…………」

 そうなのか? 愚痴ってるのか?
 その割には、侑奈の方から誘ってくるんだけど……
 それに乗っかるオレもオレなのかもしれないけど……


 そうして、今日も侑奈に誘われ、買い物に付き合ってから、家に上がりこみ、買ってきたケーキを食べながら三人でウダウダと話したりして……

「今日、お前らする?」
「んー、どうしよう? 諒は?」
「どっちでも」
「じゃ、する」
「ん」

 この5か月で当たり前のようになった恒例のやり取りのあと、諒と侑奈が侑奈の部屋に消えていき、オレは隣室でCDウォークマンを聴いているフリをしながら、その物音に耳をそばだてる。

「………」
 衣擦れの音の後、遠慮がちにはじまる侑奈の喘ぐ声……

(小野寺のせいだな……)
 いつもだったら、それを聞いた途端に自慰をする気満々になるのに、小野寺に言われた言葉が気になってそんな気になれない。

(愚痴ってるって……だったらなんで誘うんだよ)

 そう思ってから、はたと気が付いた。

(そうか。この見張りのためか)

 オレは、侑奈の父親が急に帰ってこないか見張る、という名目でここにいるのだ。まあ、この5か月で最中に帰ってきたことなんて一度もないけど。

(………。それなら終わったらすぐに帰ってやるか……)

 そんなことを思いながらぼんやりと隣室の声を聞く。

「ユウ……」
「あ……っんっ諒っ」

 愛しさをこめて侑奈を呼ぶ諒の声。いつもの諒とは全然違う声。侑奈の余裕のない、でも可愛い、喘ぎ声。いつもの侑奈からは想像できない声。……ゾクゾクする。

(あ……やっぱ勃ってきた)

 苦笑してしまう。どんなAVよりも効果てきめんだ。
 でもする気にならなくて、本当に、かなり大きめにCDをかけて窓の外を見る。気が紛れてものもおさまってきた。

(お邪魔虫……か)

 そうだよなあ……小学生中学生じゃないんだから、いい加減〈仲良し三人組〉は卒業しないといけないのかもしれない……
 そんなことを考えながら窓の外をジッと見ていたら、

「泉?」
 終わったらしい諒がオレの横にストンと座ってきた。

「どうかした? 今日、なんかちょっと変じゃない?」
「あー……」

 のぞきこまれて詰まってしまう。さすが小学校一年生からの親友。イヤホンをはずしながら答える。

「別になんもねえよ」
「そう……?」

 二人に「オレは邪魔なんじゃないか」と聞いたところで、二人とも「そんなことない」と答えるに決まっている。だったら、オレのほうから身を引いてやるべきなんだよな……

「あのさ」
「うん」

 コクンと肯いた諒。オレのことを頼りきったような瞳。背はずいぶん高くなったけれど、こういうところは出会った頃と変わらない。その瞳を直視できず、立ち上がりながら告げる。

「オレ、帰るわ」
「え?!」

 びっくりしたようにこちらを振り仰ぐ諒。

「え、何で? 何かある?」
「あー、ちょっとな。お前はゆっくりしてけよ」
「泉が帰るなら帰るよっ」
「何言ってんだよ」

 呆れてしまう。

「お前、ちゃんと侑奈と二人の時間作ってやれよ」
「………今、二人だった」
「あのなー」

 こらえきれなくて、くしゃくしゃくしゃ、と諒の頭をかきまぜる。

「お前と侑奈は恋人同士。おれは単なる友達。いつまでも今までみたいにはいられないだろ」
「……………やだ」
「え? ちょ……っ」
 聞き返したのと同時に、いきなり、腰に手を回され引き寄せられた。

「りょ……っ」
 力強すぎ……っ。腰に回された腕にぎゅうっとすごい力が入っている。諒は座ったままなので、オレの胸のあたりに頭がある。

「前もそう言った」
「………え?」

 諒が額をグリグリと押しつけながら言ってくる。

「何の話……」
「もう、中学生だから、小学生みたいなことするなって言った」
「…………」

 なんでそんな昔の話……
 戸惑うオレを置いて、諒は小さく言った。

「どうして、今のままじゃいけないなんて言うの?」
「え………」

 口調が小学生の頃に戻っている。
 なんだ? どうしたんだ? 諒……

 諒は小さいけれど、ハッキリとした口調で、言った。

「オレ、三人一緒にいられないなら、別れるから」
「は?!」

 なんだその脅しみたいなセリフ。

「だから……」
「…………」

 なんなんだろう……
 諒……まるで怯えているような……

「諒……」
 ゆっくりと頭を撫でてやる。頭を撫でるのはすごく、すごく、久しぶりだ。

「お前……バカ?」
「うん……」

 さらにぎゅうっと強く抱きついてくる諒……

 侑奈が部屋から出てきたのは、いつもよりもずいぶんと時間が経ってからだった。


***


 翌日、文化祭が行われた。毎年6月の第一土日に行われているらしい。
 クラスの出し物(景品付きボーリング場だ)の係の合間に、侑奈が所属する吹奏楽部のステージを諒と一緒に観に行った。今回、侑奈はソロを任されているそうで、余計に楽しみだ。

 体育館にひきつめられたパイプ椅子の客席はかなり埋まっている。前方の端の方に座ってはじまるのを待っていたのだけれども、入り口のあたりが妙にザワザワしているので、振り返ってみたら……

「あ! 渋谷さん!」
「おー」

 入り口に立っていた渋谷さんが手を振り返してくれた。渋谷さんは諒の所属するバスケ部の顧問である桜井先生の親友だそうだ。先々月、一緒に練習試合を観て知り合いになった。
 渋谷さんは、芸能人ばりにカッコいい。だから普通に一人で立っていても注目を集めてしまうんだけれども、今回はそれだけではなかった。

「すごい、派手な集団……」
「だな」

 諒とも肯きあってしまう。
 そのカッコいい渋谷さんの横に、背の高いものすごい美人。そして、その隣に、黒褐色の肌の高校生くらいの男子がいる。

「あの美人、何者だろう?」
「ああ、桜井先生の彼女だよ。中学校の先生って言ってた」
「げ」

 桜井、あんな美人の彼女がいるのか。親友もあんな美形で彼女もあんな美人。どうりで侑奈の美貌にビクともしなかったわけだ……。

「あの外人は?」
「さあ?」

 二人で首をかしげていたら、ちょうど桜井先生もやってきて、四人揃ってオレ達の方に歩いてきた。

「ここ空いてる?」
「あ、はい」

 もう4席連続で空いているところはなかったため、オレ達の前の列に彼女と黒褐色の男子が並んで座り、その斜め前の席に桜井先生と渋谷さんが並んで座った。

(桜井先生……彼女とじゃなくて、親友の隣に座るんだ?)

 不思議……
 オレ達もああいう風に見えるのかな? そしたら渋谷さんがオレと同じ「お邪魔虫」だ。

 桜井先生と渋谷さん、仲良さそう。二人くっついてプログラムを見ながら楽しそうに話してる。桜井先生の彼女はそれを気にする様子もなく、黒褐色の男子と話してて……。

(お邪魔虫に見えない……)
 と、思うのは、美人彼女に負けないくらい渋谷さんがカッコいいからだろうか。

(オレはダメだな……)
 吹奏楽部の演奏がはじまり、隣に座る諒の整った横顔と、舞台上の侑奈の綺麗な顔を見て、あらためて思う。

(オレじゃ、釣り合いがとれない……)

 だから「お邪魔虫」になっちゃうんだな……



「ねーねーねーねー!!」

 吹奏楽部の公演が終わった途端、前に座っていた黒褐色の肌の男子がこちらを向いて、パタパタと手を振ってきた。

「あのフルートのソロの子、知り合い? 戻る時、キミ達に向かって手振ったよね?!」
「え?」

 外見は外国人そのものだけど、日本語話せるらしい。侑奈と一緒だ。なんだか大興奮している。

「めっちゃくっちゃ可愛かったよね! 友達? 紹介してよ!」
「あー……」

 そういうことか。

「それは残念。あの子、こいつの彼女」

 オレが諒を指さすと、「げげげげげっ」と一回怯んだものの、そいつはますます前のめりになり、

「それでもいいから紹介して! 可愛い子の友達は可愛いに違いないっ。友達紹介してほしー」
「ライト」

 コン、と桜井先生の彼女がそいつの頭を小突いた。

「彼氏に向かって何言ってるのよ。……ごめんなさいね」
「あ……いえいえ」

 こちらに微笑んでくれた桜井先生の彼女に慌てて手を振る。完璧な美人のわりに話しやすい感じなのは学校の先生だからだろうか。

 そこにタイミング良くだか悪くだか、侑奈がやってきた。途端にライトと呼ばれたその男子が「おおお!」と叫んだ。

「わー!近くで見るとますます可愛いー!!」
「ライト」

 再び桜井先生の彼女に小突かれた。侑奈がキョトンとしている。

「誰?」
「ヤマダライトでーす」

 ニコニコのライト。名字、山田っていうんだ……意外。

「キミ達、高1?高2?」
「高2……」
「おお!同じ歳ー!でもオレ高校行ってないけど! ここでバイトしてるから来ってね~」

 さっさっさっと手慣れた様子で配ってくれたのは、渋谷にあるカラオケボックスの割引券。

「特に可愛い子大歓迎!お友達と一緒に是非是非」
「…………」

 侑奈が困った顔をしていると、桜井先生の彼女が再々度ライトを小突いた。

「ほら、困ってるじゃないのよ。ホントごめんなさい」
「いえ……」
「もう始まるから前向いて」

 彼女がライトを前に向かせたのと同時に、次の演劇部がはじまるとのアナウンスが入った。友達が出演するので観たい、と侑奈がいう。

「じゃ、オレは……」
「泉も観よう?」
「………」

 二人の邪魔をするのも……と思って立ちかけたのに、諒に腕を掴まれ座らさせられた。侑奈は諒の反対側の隣にちょこんと座っている。並んで座った二人は本当にお似合いで……

(だから、オレはお邪魔虫なんだって……)

 体育館の中が暗くなり、ステージにスポットライトが当たった。オレの目線上に、桜井先生と渋谷さんの後ろ姿がある。

(渋谷さん……あれだけカッコいいんだから、彼女とかいるんだろうな……)

「泉? どうした?」
「………」

 諒に耳元でささやかれ、軽く首を振る。

(オレが今から渋谷さんみたいにかっこよくなるのは無理だけど……せめて彼女ができて、4人で遊ぶようになれば、お邪魔虫じゃなくなるかな……)

 そうしたら、オレ、これからも一緒にいてもいいかな……。



 侑奈が家出をした、と侑奈の父親から連絡があったのは、この日の夜のことだった。




-----


お読みくださりありがとうございました!

ちなみに、侑奈は別に愚痴ってません。
「今までみたいに三人で遊んでる」と言ったのを、小野寺さんが拡大解釈(?)しただけです^^;

次は、浩介視点です……が、書き終わっていません……。今回でとうとうストック切れてしまいました。早くて明後日……どうぞよろしくお願いいたします。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 6(浩介視点)

2016年11月20日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 慶とは5月の連休中に一日だけゆっくり会って以来、もう3週間もまともに会えていない。

 でも、今日はようやく「絶対に時間が空く」というので、久しぶりに外での待ち合わせにした。いつもはどちらかの部屋で集合なので、俄然デートっぽくて新鮮でいい。

 待ち合わせの珈琲店に時間よりも前に入って、本を読んで待っていたのだけれども、

(………あ)

 慶が入ってきたのがすぐに分かった。少し、店員さんの声色が変わるし、店内のお客さんの視線が動くからだ。

(あいかわらず目立つなあ……)

 こういうのを「オーラがある」というのだろう。本人はまったく自覚していないけれど、本当に目立つのだ。
 慶はものすごく綺麗な顔をしている。でも、目立つのはそのせいだけじゃない。綺麗な顔だけならどこにでもいる(いや、慶レベルだと難しいか)けれど、それだけではない、人目をハッと惹き付けるような輝きがあって………

「浩介!」
「………………」

 おれを見つけて手を振ってくれる慶……。
 その全開キラキラオーラがおれにだけ向けられているという、この優越感は筆舌に尽くしがたい。

(なんでなんだろうなあ……)

 本当に不思議でたまらない。

(なんで、こんな人がおれなんかを好きでいてくれるんだろう……)

 慶がおれを好きだということに疑いを持ったことはない。疑いようもなく、慶はまっすぐにおれのことだけを見つめてくれる。

 でもそれは愛情面の話であって、慶の今の生活のほとんどを占める、仕事への情熱を加えてしまうと……

(「仕事と私、どっちが大事なの!?」って、言いたくなる女性の気持ちが良くわかる……)

 自嘲気味に思いながら、読んでいた本を閉じると、

「お前ホント、本好きだよなあ」

 慶がコーヒーをのせたトレイをテーブルに置き、向かいの席に座りながら、ムッとして言った。

「おれと本、どっちが好き?」
「………へ?」

 何を言うんだ、いきなり。

「お前の中、生徒のこととか、本のこととかで埋めつくされてるだろ?」
「……………」

「おれ、お前の中でちゃんと存在感ある?」
「……………」

 慶、口が尖ってる……

「あー………」

 そうだった。
 そういえば、慶って、ものすごい嫉妬深いんだった……。

 久しぶりの嫉妬発言に思わずニヤニヤしてしまう。おれと同じようなこと考えてくれてたんだ。

(かわいいなあ………)
 嬉しくて、胸のあたりが温かくなってくる。

「なに笑ってんだよ」
 ますます口を尖らす慶。本当にかわいくてしょうがない。
 
「そんなの、おれの中には慶しかいないに決まってるじゃん」

 笑いをこらえて言うと、慶は「いーや」と首を振った。

「お前、さっき、本読んでて、おれが外から手振ったのに気がつかなかった」
「え」

 ここはガラス張りになっているので、外から中の様子が見える。まさか時間通りに慶が来られるとは思っていなかったので、外の様子にまでは、まだ気を配っていなかったのだ。

「気が付かないほど夢中になって読んでて……」
「ご、ごめんっ。まだ来ると思ってなかったから……」

 言い訳をすると、慶が首をかしげた。

「なんで? 約束6時だよな? ピッタリだぞ?」
「うん。珍しいよね」
「…………」

 思わず正直に言ってしまった。「うっ」と額を押さえて俯いた慶……。

「だよな……ホントごめんな、いつも……」
「あ、別にそんなつもりじゃ……」

 慌てて手を伸ばして頭を撫でると、その手をきゅっと掴まれた。胸がきゅんとなる……。

 って、ここ、都内の珈琲店なのに、いいんでしょうか? ただでさえ、慶は注目浴びて入店してきたのに……

 なんて、余計なドキドキもしながら、そのままでいたら、

「浩介」
「ん?」

 顔をあげた慶。

「浩介……」

 愛しさの溢れた瞳がこちらをじっと見つめてくれている……

「………………」

 そんな目で見られたら、もう、外で食事なんかしてる場合じゃない。学生時代みたいに、お弁当買ってホテルにしけこみたくなってしまう。

「ね、慶………」

 我慢できずに、慶の手を握り返した………が。

「携帯鳴ってるぞ?」
「え」

 カバンの上の携帯電話がブルブル震えている。

(しまった……)
 いつもは慶に会えたらすぐに電源を切るのに、忘れていた。

(どうせ、母からだ)

 ため息が出てしまう。
 恐れていた通り、祖母が亡くなってからというもの、日に日に母からの電話は増えていった。内容はいつも同じ。

『今後のことについて話したいから一度家に帰ってきなさい』

 今聞くから電話で話してください、と言っても、

『会った時でいいわ』

と、言う。そう言いながらも、あかねとの結婚はどうするんだ、からはじまり、おれが中学校時代に不登校だったことで母がどれだけ苦労したか、とか、そんなおれが教師をやっていて大丈夫なのか、やはり父の跡を継いで弁護士になるべきじゃないか、今からでも遅くないから弁護士になる勉強をはじめたらどうか、とか話しはじめる。

 自分がどれだけダメで出来損ないの人間なのかということを延々と聞かされるのは、毎回のこととはいえやはり凹むものだ。しかも、そうして辛抱強く聞いても、結局最後は『とにかく一度帰ってきなさい』と結ばれるのでうんざりする。

「出ていいぞ?」
「あー、うん、でもどうせ……、え?」

 慶に言われて、嫌々携帯を開いたけれども、画面の表示が予想と違い、あれ?と首をかしげる。

「……事務局からだ」
「ボランティア教室の?」
「うん……」

 大学時代参加していた日本語ボランティア教室。就職してからは、そのサークルが加盟している国際ボランティア団体の直のメンバーになったものの、参加する時間はずいぶん減ってしまった。でも、それでも続けているのは、『受験対策重視』の今の学校方針に対する息抜きをしたいからなのかもしれない。

「………はい」
『あ!浩介先生良かった! 今、空いてる?』

 出た途端に、事務局長のキンキンした声が耳に刺さり、思わず少し電話を離す。

「どうし……」
『今から警察に行ってほしいの』
「……え?」

 警察?

「警察って……」
『ライト君が喧嘩して捕まっちゃって。その身元引き受けをお願いしたいのよ』
「………………」

 思わず慶を見返す。綺麗な瞳でじっとこちらを見ていた慶は、コクンとうなずいてくれた。

「……すぐ行きます」

 せっかくのデートだったのに……

 なんて子供の心配よりも先にそのことを思ってしまったおれは、やはり母の言う通り、教師に向いていないのかもしれない。


***


 ライトとは、おれが大学3年生の時に知り合った。当時小学校6年生だった彼ももう17歳。中学までは教室に顔を出していたけれど、卒業してバイト生活をするようになってからは、ほとんど来なくなったらしい。おれも就職したのですれ違ってしまうことが多く、こうして会うのはかなり久しぶりだ。

『わ~、浩介先生、久しぶり~!』
 人懐っこい笑顔も、丸い黒い瞳も、黒褐色の肌も、すらりと伸びた長い手足も、子供の頃のまま。でも、声だけはさらに低くなった。背もおれと同じくらいはありそうだ。

『ごめんねー、誰か来ないと帰らせてくれないっていうからさー』
 流暢とは言い難いスワヒリ語で話すライト。この子は、日本語と英語とスワヒリ語が話せる。けれども、どれも中途半端。それも昔と変わらないらしい。

『何でスワヒリ語で話してるの?』
 おれもスワヒリ語で聞くと、ライトはニヤリと笑った。

『最近は英語話せるお巡りさんも多くてさ』
『…………』

 相手がわからない言語でまくしたてて、適当に誤魔化そうという魂胆らしい。
 そういえば、先月も学校で英語でまくしたててきた子がいたなあ……

『お母さんは?』
「まい、まざー、いず、山へ芝刈りに~」

 うひゃひゃひゃひゃ、という笑い方も変わらない……

「あ、今、日本語喋ったな? やっぱり日本語話せるんじゃないか」

 ピクリと眉を寄せた警察の方。でも、ライトは肩をすくめると、

「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン」

 そしてまた、うひゃひゃひゃひゃ、と笑う。
 うーん、お調子者な感じも昔と全然変わっていない……

『ライト』
 とりあえず、スワヒリ語で話しかける。

『山へ芝刈りにいくのはお爺さんだよ』
『…………』

 ライトは「え」と言ってから……、ブッと吹き出した。

『浩介先生、変わらないねー。嬉しいなー』
「…………」

 笑いながらも、目尻に涙がたまっている。
 何か事情がありそうだ……。


**


 書類に記入し、諸々お説教をされてから、ようやく解放された。

「先生、お腹すいたー」
「おれもだよ……」

 本当ならば今ごろ慶と何か食べて……もしくは、慶を食べていたはずなのに……

「何か食べて………、と、あ」

 言いかけてから、大声を上げてしまいそうになった。
 警察署を出た先にあるバス停のベンチに、慶が座っている。待っててくれたんだ!

「慶!」
「おお」

 慶が立ち上がり手を挙げると、ライトが「わああああ!」と悲鳴みたいな声をあげて、慶に向かって駆け出した。

「慶くーん!久しぶりー!あいかわらず美人ー!」
「男相手に美人言うな」

 抱きついてきたライトを無情に押し返し、慶がムッとしていう。

「お前、あいかわらずだな」
「慶くんもあいかわらず美人ー美人ー!」
「だから美人言うなって!」

 ベタベタと触ってこようとするライトをシッシッと追い払う慶。
 慶はボランティアには参加していないのだけれども、イベント等によく顔を出してくれていたので、ライトとも知り合いではあるのだ。

『彼、ますます色っぽくなったね? 彼女でもできたのかな?』
『知らないよ』

 今度は英語でコソコソと聞いてくるライト。おれが答えたのと同時に、慶が後ろからライトを蹴ってきた。

「そのくらいの英語、おれでもわかるぞ。バカにすんな」
『じゃ、教えて教えて! 彼女できた?!』
「余計なお世話だ。んなことより、メシ食いにいくぞメシっ。腹減った!」
「おー!やったー!」

 ピョンピョンと跳ねながら駅の方に向かいはじめたライト。後ろをついていきながら、慶と顔を見合わせる。

「あいつ、大丈夫なのか?」
「うーん……」
「大丈夫じゃなさそうだな」
「うん……」

 何か事情がありそうだ。
 とにかく母親に連絡を取って迎えにきてもらわないと……

 そう思っていたら、

「あ、そーだ、せんせー」
 クルッと振り返ったライトが、パンッと手を合わせて拝んできた。

「今日泊めてくれない? うちの鍵無くしちゃってさー」
「え」

「母ちゃん、今、旅行中だからいないんだよー」
「う……」

 そういわれたら、泊まらせないわけにはいかないじゃないか。でも……

(あーあ……せっかく今日は慶とデートだったのに……)

 思いきりガッカリしてしまったおれは、やっぱり教師失格だろう。

(母の言う通りだな……)

 なんて思って、色々な意味で落ちこんでしまっていたけれど、

「じゃ、おれも泊まりにいく」
「え」

 ムッとした慶の声に我に返った。

「泊まりって慶……」
「おれ、明日休みになったから」
「え、そうなの?」

 突然の嬉しい言葉に顔がにやけそうになってしまう。するとライトまでワーイワーイとはしゃぎだした。

「やったー!そしたら慶くん一緒に寝よー」
「アホか。お前は床で一人で寝ろ。おれは浩介とベッドで寝る」
「えーなんかやらしー」
「うるせー」

 ガシガシと蹴りをいれている慶。こんな子供にもヤキモチ焼いてくれるなんて、嬉しい。けど……

(大丈夫かな……)

 一晩一緒のベッドで何もできないなんて……

 拷問だ。



------


お読みくださりありがとうございました!
二人とも、ちゃんと一晩我慢しましたよ~~コッソリ手は繋いでたけどね(*^-^)

ライト君も私が高校時代にノートに書いていた時代から設定上はいた子なので、こうして書くことができて感無量でございます。
彼は女の子大好きな普通の男の子です。ただ、キレイなもの・かわいいものが大好きなので、そういった意味で慶のことはすごく好きらしい。

明後日は、泉視点です。文化祭です(*^-^)
どうぞよろしくお願いいたします。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 5-3(諒視点)

2016年11月18日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


*今回R18です。具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*


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〈仲良し3人組〉

 オレと彼と侑奈の三人は、小学校5年生の頃からそう呼ばれてきた。

 しかし、純粋にその関係でいられたのは、ほんの短い期間のことだ。

 彼はかなり早い段階で侑奈のことを好きだといいはじめた。とにかく顔が好みらしい。でも、侑奈はまったく相手にせず、そして、彼もそれを気にすることもなかったので、3人の友情は続いていた。

 でも……
 小学6年生の夏、オレは彼への恋心に気がついてしまった。同性愛を打ち明けられるわけもなく、その思いはひた隠しにして、〈仲良し3人組〉を続けていた。

 そして中学生になり……この関係はさらにこじれたものになっていく。侑奈がオレに好意を持ってしまったのだ。言われたわけではないけれど、侑奈は分かりやすいので、すぐに気が付いてしまった。

 でも、その好意はオレにとっては都合が良かった。

 オレが欲情する相手は、彼だけだ。
 だからオレは、侑奈がオレを好きでい続けてくれるように、細心の注意を払うことにした。

 この綺麗な三角形を守りたい。

 万が一、侑奈がオレでなく彼のことを好きになり、二人が付き合うようになったりしたら、耐えられない。
 でも、それよりも耐えられないのは、侑奈が他の男と付き合うことなって、彼が侑奈を諦め、他の女と付き合うこと。それだけは絶対に許せない。それなら侑奈の方がまだマシだ。

 侑奈のことは、オレもオレなりに好きなのだ。気が強いところもかわいいと思うし、それでいて少し寂しそうなところもいい。人形みたいに綺麗な顔は見ていて飽きない。あげればきりがないほど、好きなところはたくさんある。何より彼が侑奈を好きなので、オレも彼女を好きでありたいと思う。ただ、それは恋愛感情の好きではない。オレが「好き」なのは後にも先にも彼一人だけだ。

 

 高校も三人同じ学校に進学した。
 侑奈が推薦で行くことが決まっていた高校を彼が受験するというので、オレも当然そこを受けたからだ。

 予定外だったのは、そこが私立高校で授業料が公立高校より高いため、彼が部活には入らず、家族で経営している和菓子屋でアルバイトすることになったことだ。だったらオレも帰宅部になり、彼と一緒にいられる時間を増やそうと思ったのに、

「お前は部活入ってくれよ。オレもその応援とか行って、入ってる気分になりたいからさ」

 なんて彼に言われてしまい、入らないわけにはいかなくて、結局中学の時と同じバスケ部に入った。

 約束通り、彼は試合を毎回観にきてくれている。練習日に彼のバイトのシフトが重なることも多いので、中学の時よりも彼と二人きりの時間を増やすことができて、本当に嬉しい。

 でも、その反面、彼に対する欲情を抑えることがさらに難しくなってきてしまった。
 だから、気がついたら、中学の時よりも、さらに複数の女子と関係を持つようになっていた。
 女子の方も、高校生になって一線を越えることに躊躇しなくなった子が増えたから、落とすのが簡単になったとも言える。


 でも、行き過ぎてしまった……
 後悔したときには遅かった。

 小学校中学校の時と同様に、彼と一緒に時々侑奈の家にも遊びに行っていたのだが、ある時、少し彼の到着が遅れて侑奈と二人きりになった際に、言われてしまったのだ。

「諒と、したい」

 そう言わせてしまったのはオレのせいだ。オレが遊び過ぎたから……
 
 彼の侑奈至上主義は小学生の時からずっと変わらない。時々、それが羨ましくて堪らなくなって、彼の好きな侑奈を自分のものにしたくなる時がある。でもそんなことをしたら、彼が悲しむから、ずっと我慢してきた。

 それなのに、そんな目でオレを見るな。
 お前は、オレに引っかかるような軽い女じゃないだろ。そんなの彼の好きなお前じゃないだろ……

「相澤とはしない」

 彼が悲しむからお前とはしない、と告げ………、その時の侑奈の絶望したような顔を見て、オレは初めて後悔した。

 三角形が崩れてしまう………



 それから2ヶ月ほどの間、侑奈はオレだけでなく、彼のことも避けるようになってしまった。

「最近ユーナに避けられてる気がする」

 彼も気にしてオレに何度も言ってきた。でも、何も答えられなかった。

 彼が侑奈を心配げに見る度に、胸の奥がチリチリとする。

(オレのことも見て)

 そう言って抱きつきたくなる。昔みたいに頭を撫でてほしくなる。抱きしめてほしくなる……。

 我慢できず、そこらへんにいる女子に声をかける。

「高瀬君、マキコと付き合ってるじゃないの?」
「付き合ってないよ?」

 戸惑ったような瞳をのぞきこむ。

「どうして?」
「だって、マキコが高瀬君としたって……」
「付き合ってないとしちゃダメなの?」

 頬にそっと触れる。

「今、君としたいんだけど、ダメ?」
「え……と」

 そして腰に手を回して抱き寄せる。

「うち、行ってもいい?」
「え……」

 恥ずかしそうにうつむいたその顔は、肯定以外のなにものでもない。

(……ほら、簡単だ)

 こうして、いつものように、よく知らない、好きでもない女に性欲を吐き出す。

 ………でも。

 いつもならば、これで少しはマシになる欲情が少しもおさまらなかった。チリチリと焼けつく胸の痛みもひどくなるばかりだ……



***



 クリスマスの夜、侑奈が知らない男にホテルに連れ込まれそうになったところを、彼とオレとで救出した。それがキッカケで、侑奈とも仲直り(?)することになった。

「仲良し三人組に戻りたい」

 侑奈がそう言ってくれて、心底ほっとした。これで元に戻れる。そう、思ったのに……


 いくら女を抱いても、彼に対する欲情はおさまらなかった。胸の痛みも増すばかりで……。
 彼が笑顔を向けてくれる度に、その唇に唇を重ねたくなる。彼が愛しげに侑奈を見る度に、侑奈のことを抱きたくなる。

(歪んでるな……)

 オレは歪んでいる。でも、彼と一緒にいたい。彼がいなければオレは生きていられない。彼が好きなものをオレも好きでいたい。彼が欲しいものをオレも欲しい……



 そして……

「お前らオレに遠慮せず付き合えよ」

 正月の真昼間。
 オレと侑奈が両想いだと勘違いした彼がとんでもないことを言い出した。

 オレと侑奈がしている最中、侑奈の父親が帰ってこないか隣室で外を見張っててやる、と……。

「オレこれ聞いてるから。だから何も聞こえないから安心してやってくれ」

と、CDウォークマンのイヤホンをした彼。


 この勘違いを解いたとしても、元の〈仲良し三人組〉に戻れないことはわかっていた。もう、オレが限界だ……

 だから……

「相澤……、後悔、しない?」
「………」

 オレが彼を好きだと気がついたのに、コクリと肯いてくれた侑奈。
 その細い体を強く強く抱きしめたら、胸の奥のチリチリした痛みがようやくおさまった。


***


 
 一度目は勢いでしてしまったけれど……
 その後どうしようかと思っていたら、なぜか、彼が積極的に、

「オレ明日バイトないぞ? お前らも部活ないよな?」

 などと、日程調整までして、オレと侑奈がするのをお膳立てしてくれた。その上、「あ、でもでも」と明るく言った。

「二人でデートとかしたかったらちゃんと言えよ? オレ、遠慮するから」
「何言ってんの」

 侑奈も明るく彼のことを叩いて言う。

「私達、〈仲良し三人組〉でしょ? 三人一緒が一番いいよ」
「…………」

 彼が何を考えているのかもわからないけれど、侑奈もわからない……。


 二度目もまた、彼に侑奈の部屋に押し込められて、勢いでしてしまい……
 でも、三度目の際には、さすがに冷静になっていた。

 本当にこんなことしていいんだろうか?
 彼は何を考えてるんだ? そして、侑奈は……

「諒?」

 するりと制服のブラウスを脱ぐ侑奈……白い肌が魅力的……だけれども。
 頭の中の混乱が邪魔して、やる気が起きない……

「相澤は……本当にいいの?」

 隣室にいる彼に聞こえないよう、小さく小さくささやくと、侑奈もオレの耳元で小さくささやき返してきた。

「私は諒とこういうことできて、すっごく幸せ」
「…………」
「諒は……したくない?」

 そっと遠慮がちに侑奈の手がオレの下半身に伸びてきた。でも、残念ながら兆しがなく……

「諒」
 侑奈はオレの手を取ると、自分の胸に引き寄せた。柔らかい感触……女性だけに与えられた癒しの感触。

「……んんっ」
 侑奈は色っぽい声を上げると、オレにぎゅっと抱きついてきた。でも、まだ兆さないオレ……

(……まいったな)

 こんなこと今までなかったのに……
 今までの色々を思いだして意識が遠のきそうになったところで、

「諒」

 侑奈がオレの耳元で再び囁いた。

「あのね、台所側から回って、泉の様子見てきて?」
「………え?」

 見返すと、侑奈がいたずらそうにいった。

「たぶん、面白い物がみられるよ」
「?」

 首を傾げたオレに、ふっと真面目な顔になった侑奈……

「私は泉の代わりでいいから」
「え?」
「泉の代わりでいいよ……」
「……?」

 そして、押しのけられ、廊下に出る方の襖に背中を押された。その後なぜか一人でガサガサと衣擦れの音をさせ、喘ぎ声の演技をはじめた侑奈……

(なんなんだ……?)

 面白い物……?
 ああ、実は「音楽聴いてる」って言ってた彼が、こちらの様子に聴き耳立ててるとか?
 それはそれで興奮するな……

 なんて思いながら、廊下側から台所の引き戸を静かに開け、台所の続きにある彼のいるコタツのある部屋をのぞきみて……

「………!!!」

 危うく、声を上げてしまいそうになった。

 窓辺の下の壁に寄りかかるように座っている彼……
 ズボンの前をはだけさせ、下着から自分のものを取りだして、扱いている……
 声を出さないためなのか、反対の手の甲で口元を押さえながら、天井を見上げていて……

(………っ)

 途端にはち切れんばかりに勃起してしまった。

 なんて色っぽい……
 あんな表情の彼、みたことない……

 聞こえてくる侑奈の喘ぎ声に呼応するように、彼の手が擦られて……

(ああ……)

 我慢できず、自分の腕に爪を立てる。

(……あそこにしゃぶりつきたい)

 彼の手をどけて、オレが触りたい。彼のそこを舐めまわして、喘がせて、それで、それで……


 頭が沸騰する。


 体中の血が逆流するような感覚のまま、侑奈のいる部屋に戻った。
 そして、ベッドに腰かけ、自分の胸を揉みながら喘ぎ声をあげている侑奈を勢いよく押し倒す。

「諒……っ」
「……っ」

 我慢がきかない。服を脱ぐのも脱がすのももどかしい。ゴムをつけるのももどかしい。でも何とか終えて、その白い肌に跡が残るほど強くつかんで足を押し開く。

「んん……ッ」

 顎があがり晒された首元……我慢できずにしゃぶりつく。
 先ほどの彼の喉元を思い出す。天井を見上げていた彼の喉元にこうして口づけたい……

「諒……」

 あられもなく足を広げた侑奈の中に、押し入る。熱い……っ

「あ……、諒……」
「…………っ」

 侑奈の中の快感に頭を支配され、そのあとはもう自制がきかなかった。こんなこと、初めての時以来だ。

 彼の潤んだ瞳、手の甲で押さえられた口元、握られた彼のもの……

 脳裏に浮かぶ先ほどの彼の姿。興奮のまま、侑奈の腰を引きあげる。侑奈の白皙に恍惚の表情が浮かぶ。喘ぎ声も演技ではなく、余裕のないものになっていき……

(……聞こえてる?)

 襖を挟んだ隣の部屋にいる彼に心の中で問いかける。ねえ、聞こえてる? オレが啼かせてる声……

「諒……っ、も、イク……ッ」
「ん……」

 オレも限界が近い。そのまま侑奈の声に答えるように、侑奈の最奥を突き上げ続け……

「ユウ……ッ」
「ん……ッ」

 思わず呼んだのと同時に、絶頂が、きた。吐き出される欲望……

「あっ、んんんっ」

 同時に侑奈もビクビクっと体を震わせ、オレにギューッと抱きついてきた。中がドクドクと波打っている……

 肩で息をしながら、そっと引き抜き……、侑奈を抱きしめる。

(ああ、これが彼だったらどんなに……)

 なんて失礼なことが頭をよぎってしまう。他の女を抱いた後にもいつも思うことだけれども、今日は特にそう思ってしまう……

 しばらくそうしてジッとしていたら……

「………行っていいよ?」
「……え?」

 侑奈が耳元でささやいてきた。「何?」と聞き返すと、侑奈は切なくなるほどの笑顔で……言った。

「今、泉の隣にいたいでしょ?」
「…………」

「行って、いいよ?」
「…………」

 侑奈がどうしてそういうことを言うのかわからない。……わからない、けれども……

「ありがと」
「…………」

 ぽんぽん、と頭を撫でると、侑奈はこの上もなく嬉しそうに笑った。



 身支度をして隣の部屋に続く襖をあけると、彼は何事もなかったかのように、窓のサンに腰かけて外をみていた。イヤホンをしながら。

「……泉」
「あれ?」

 隣に腰かけて、そっと彼の膝に膝をくっつけると、彼は驚いたように目を瞠った。

「ユーナは?」
「まだ……」

「終わったばっかの彼女置き去りにしていいのかよ?」
「……先に行けって言われた」

 肩をすくめて答えると、彼は「ふーん」と言ってから、左耳のイヤホンを取ってオレに渡してくれた。

「お前も聴く?」
「うん」

 左耳から流れてくる男性ボーカル……切なくなるような声。くっついた膝の温かさ……

(ああ……幸せだ)

 オレの中でどす黒く渦巻いていた欲情が、ようやく透明なものに変わってくれたような気がする……




-------



お読みくださりありがとうございました!
「3」の侑奈視点の、諒視点のお話でした。

泉君はバレてない……と思っている一人エッチ、普通にバレてます(^_^;)
侑奈は家事全般していてゴミ回収ももちろん彼女の仕事なので、前回のあと、ゴミ回収したとき気がついちゃったんですね~~。
「この丸まったティッシュはもしや……」と。
泉も人のうちに残骸捨ててくなんて詰めが甘~~い。でも、小学生の頃から我が家のように出入りしてるので、なんも考えなしだったんだろうな(^-^;

そんな侑奈ちゃん、実は2号さん体質? 彼女も彼女で4年近く片想いしてたので、ちょっと歪んでます(^_^;)

次回、明後日は浩介視点。よろしくお願いいたします。


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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 5-2(諒視点)

2016年11月16日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 初体験は、中一の7月。相手はうちに来ていたお手伝いさんだった。

 母は父の女癖の悪さを気にして、いつもおばあさんと言える年齢の人とばかり契約していた。でもこの時は、契約していた人が急に体調を崩し、次の人が見つかるまでの繋ぎとして、まだ30前半だった彼女が2週間だけ派遣されてきたのだ。関係を持ったのは、その間だけ。

「これからはちゃんと同年代の子と付き合いなさいよ?」

 そう言って頭を撫でられたのを最後に、彼女とは一度も会っていない。
 彼女には感謝している。あの時、彼女がいなかったら、オレはどうなっていたか分からない。


***


 隣の家に住む同級生の彼への恋心を自覚したのは、小6の夏休みの終わり頃。
 それ以来、毎晩のように彼のことを思い浮かべては自分で欲望を埋めていた。でも、表面上は今まで通り、仲の良い友達のままでいた。彼は女の子である侑奈のことが『好き』。だからオレの想いが通じることはない。それでも、一緒にいられれば充分だった。

 そのまま、残りの小学校生活も彼と侑奈と三人で穏やかに過ごしていたのだけれども、ある時ふと気が付いてしまった。

(最近、全然頭を撫でてくれない……)

 彼に頭を撫でられると、この上もなく幸せな気持ちになれていたのに。オレが特別だって実感できていたのに。
 出会った頃はオレのほうが彼よりも若干背が低かったのに、六年生になって、ずいぶん高くなってしまったせいだろうか。

 頭を撫でる、という行為を思い出させたくて、わざと彼の前で侑奈の頭を撫でてみたりもするのだけれども、彼はまったくの無反応で……
 少しずつ、昔とは関係性が変わってきてしまった感じがして、不安でモヤモヤしていた。

 そのモヤモヤした不安は中学生になってから、確実なものとなった。
 小学校は一学年1クラスしかなかったので6年間ずっと一緒にいられたのに、中学は5クラスあるため三人バラバラのクラスになってしまい、彼にはオレの知らない新しい友達がたくさんできてしまった。せめて、と思って、同じバスケ部に入ったはいいけれど、彼と二人きりの時間はほとんどなくて、毎日毎日不安と不満で爆発しそうだった。


 そんな中、期末テストの勉強のために久しぶりに彼がうちに遊びにきてくれた。

 彼と久しぶりの二人きり……学校とか道端とか公園とかでなく、誰の目もない個室で二人きり、という状況にオレは妙に高揚していた。それなのに、オレの知らない友人の話を楽しそうにしはじめた彼……。
 小学生の時はずっと一緒だったので、彼について知らないことは何一つなかった。それなのに今はオレの知らない彼がこんなにも増えてしまったのか……。
 ショックで苦しくて、黙ってしまっていたら、

「諒? どうした?」
「………」

 オレの様子が変なことに気が付いた彼が、コツン、とおでことおでこを合わせてきた。昔からよくやる仕草。でも、ずいぶん久しぶりで、息が止まりそうになる。

「………っ」
 近くに感じる彼のぬくもり。彼の息遣い……。体中が熱くなってくる。

 我慢……できない。

「諒?」

 首を傾げた彼を、ぎゅうっと抱きすくめる。途端に下半身が反応してしまう。この猛りを押しつけたい、という気持ちと、ばれないように腰を引かないと、という気持ちが交差する。でも………

(もっと、もっと近くにいたい……)

 本能が理性に勝って、強く抱きしめ直そうとした。……が、

「お前、具合悪いのか? 大丈夫か?」
「え……」

 体を押しのけられ、オデコに手を当てられた。上目遣いの彼にドキッとする。
 でも、そんなオレに気が付くわけもなく、彼は軽く眉を寄せた。

「うん。熱あるっぽいぞ」
「え」
「オレ、帰るよ。お手伝いさんに声かけておくから」
「………」

 そうして彼はさっさと勉強道具をまとめると、「じゃあな」と部屋から出て行ってしまった。

(………まずい)

 彼の出て行った後のドアを見つめながら、サーっと血の気が引いていく。抱きしめたりしたから帰っちゃったのかな……

(で、でも、具合悪そうって言ってたし……)

 そうだ……大丈夫……大丈夫。具合悪いから抱きついたと思ったんだ、きっと……。
 なんとか良いように解釈して自分を励ます。

「でも………」

 でも、次にこんなことがあった時……抱きしめるだけで我慢できるんだろうか。その先に進みたくなってしまうんじゃないだろうか。

(……その先って?)

 キス? あとは……あとは?

 なんだろう? 何がしたい?

 そんなことを思ったら、落ち着いていた下半身が再び膨張をはじめた。

 ぎゅうううっとくっつきたい。触りたい。触ってほしい。触りたい。今すぐ彼を追いかけて、さっきみたいに抱きしめたい。抱きしめられたい。逃げるのを捕まえてでも、無理やりにでも抱きしめたい。欲求で爆発しそうだ。抱きしめたい。抱きしめられたい。抱きしめたい……

 頭の中がそのことでいっぱいになり、ほとんど無意識で立ち上がって、部屋のドアを開けて出ていこうとした。が、

「きゃっ」
「え」

 柔らかいものにぶつかった。お手伝いさん、だ。一週間前から来ている人。派手でもなく地味でもなく、美人でもなく不美人でもなく、普通の人。サバサバしていて感じがいいので、いつもはお手伝いさんには挨拶しかしないオレが、珍しく何度か話しをしていた。

「具合悪いって聞いたけど、大丈夫?」
「…………」

 首を傾げた彼女……
 背の高さ……ちょうど彼くらいだ。
 今、オレは身長175センチある。彼は160くらいで……

「赤い顔してるね。熱でも……」
「………」

 さっき彼がしてくれたようにオデコに手を当てられた。彼も上目遣いでオレのこと見てて、それで、それで……

「…………」
「ちょ……っ、諒君?」

 停止も聞かず、かぶさるように抱きしめた。大きくなったモノが彼女に当たりますます膨張率が増す。柔らかい胸の感触が気持ちいい……
 しばらくそのまま、膨張したものを押しつけるように抱きつきながらジッとしていたのだけれども……

「………大丈夫?」
「………」

 冷静で、それでいてすごく優しい声に、我に返った。

「…………。クラクラする」
「少し横になろうか?」

 言い訳の言葉だったのに、腕をとられ、部屋に戻された。ベッドに寝そべると、彼女は優しく頭を撫でてくれた。

「勉強のしすぎで疲れちゃった?」
「…………」

「夜ご飯の時間になったら起こしてあげるから、少し寝たら?」
「…………」

 言われたまま目をつむると、そのまま頭を撫で続けてくれた。心地の良い手……。彼の手と少し似ている……


**


 翌朝、彼は何事もなかったかのように、

「具合大丈夫かー?」

と、元気に声をかけてきた。オレが抱きしめたことは、やはり具合が悪かったせいだと思ってくれたようだ。

(良かった。…………でも)

 複雑。
 彼にとっては、オレが抱きしめても何も関係ないんだ。当たり前だけど……自分一人が空回っていることに、どうしようもない虚しさが襲ってくる。

「………大丈夫じゃない」
「え」

 先を歩き始めた彼に後ろから覆いかぶさって、ぎゅうっと抱きつく。切ない。でも、気持ちいい。でも苦しい。
 すると彼がポンポンと腕を叩いてくれた。

「なんだよ? オンブなんかできねーぞ。お前無駄にデカくなりやがったからな」
「…………」

 やっぱり、オレの方が身長高くなったこと気にしてるんだ……

「大丈夫じゃないなら、学校休めよ」
「………やだ。このまま連れてって」

 さらに強くぎゅうううっと抱きしめる。と、

「諒」
「…………」

 無理矢理に腕を外されてしまった。
 彼はクルリとこちらを振り向き、眉を寄せて、言った。

「もう中学生なんだから、昔みたいにべたべたくっついてくるなよ」
「…………」

「もう小学生じゃないんだぞ、オレ達」
「…………」

 そして……先を歩いていってしまった。
 もう、くっついたりしちゃいけないって……もう、小学生じゃないって……

「………知ってるよ、そんなこと」
「え?」

 小さく言ったのに、振り返られた。

「なに? どうした?」
「………………」

 何歩も前を行く彼……
 手を伸ばしても届かない距離。これが、オレと彼の距離……

「諒?」
「学校……休む」
「え」

 ビックリした顔をした彼を置いて、家に戻る。

「諒ー?」
「…………」

 追いかけてきてもくれない。その場で呼ぶだけ。それが、彼のオレに対する思いの量。

「知ってるよ……そんなこと」

 もう一度、つぶやく。
 知ってる。彼にとってオレは、ただの友達。そんなの、知ってる……。


**


 2時過ぎ、階下の物音で目を覚ました。お手伝いさんが来たようだ。

(………柔らかかったな)
 昨日の彼女の感触を思いだしたら、下半身がムズムズしてきた。彼を抱きしめた時の、幸福感とか絶望感とかそういう複雑な感情とは別の、単純な性欲。

 なんとなく、下着の中に手を入れて、自身を握り占める。軽く擦っていたら、頭の中に今朝の彼の言葉が頭に浮かんできた。

『昔みたいにべたべたくっついてくるな』

 怒った顔してた……
 嫌われたのかな……オレ。嫌われたのかな……

 涙が出そうになり、目をつむる。

 どうしたらいいんだろう。彼と一緒にいたら、触れたくなる。抱きしめたくなる。それをずっと我慢していたらおかしくなって、そのうち爆発して、何をしでかすか分からない。

(じゃあ、会わなきゃいいのか)

 ………。

 そんなことできるわけない。会わないなんてつらすぎてできない。実際問題、学校も同じで家も隣なんだから「会わない」なんてできるわけないし、できたとしたって、会わない方がつらい。

(じゃあ、どうすれば……?)

 この滾りをどうすればいい? こうして自分で吐きだしているだけじゃ、もう我慢ができなくなってる。抱きしめたい。抱きしめられたい。触れたい。触れてほしい。……もう、限界だ。限界だよ……


「諒君?」
「!」

 ビクッと布団の中の手を止める。
 ドアから顔をのぞかせたのは、お手伝いさん……

「学校お休みしたの? 大丈夫?」
「………」

 黙っていたら、すっと枕元に腰かけられた。優しい手がおでこにおりてくる。

「ああ、ちょっと熱っぽいね……」
「………」
「だからかな?」

 その手が頭を撫でてくれる。

「目が潤んでる。熱のせい? それとも……」

 コツンとオデコが合わさる。

「もしかして、泣いてた?」
「…………」

 その頬にそっと触れると、彼女は目をみはり顔を上げた。

「諒く………」
「泣いてた」

 彼女の手をぎゅっと握る。

「もう、どうしようもなくて……」

 言ってるそばから、涙が溢れてきた。もう、どうしようもない……

「前にも進めない。後ろにも戻れない。吐き出すこともできない」
「………」

「どうしたらいいのかわかんない」
「諒君………」

 少し身を起こし、座っている彼女の太腿に顔を埋める。柔らかい……

「オレ、このままじゃおかしくなる」
「………」
「辛くて、苦しくて……」
「………」

 涙が止まらない。
 戸惑ったように、でも、確実な優しさで彼女の手が頭を撫でてくれる。

 気持ちいい。この手は気持ちいい……

「………ユミさん」

 初めて、彼女の名前を呼ぶと、手が止まった。ゆっくりと、彼女の方に顔を向ける。

「ユミさん………助けて」
「…………」

「助けて」
「…………」

 彼女の指が、ツーッとオレの頬を下りてきて、唇を辿ってきた。

「………綺麗な顔」

 彼女はつぶやくように言って……ふっと笑った。


***


 翌日もその翌日も、オレは学校を休んだ。それで、発情期の動物みたいに何度も何度も彼女を求めた。
 初めての時は最後までさせてくれなかったけれど、その後、コンドームを買ってきてくれて、付け方まで教えてくれて、それで最後までした。童貞卒業だ。でも、特になんの感慨もなかった。

「中学生とするなんて犯罪だね」

と、言うので、「これは看病だよ」と真面目に返したら、ひどく笑われた。

「午前中はお爺さんの介護で、午後は中学生の看病かあ」

 一年前、彼女のお父さんが寝たきりになってしまい、今、お母さんと交代で介護をしているそうなのだ。

「恋人は?」
「しばらくいないなあ……」

 だからご無沙汰で、つい……、と笑った彼女はとても可愛らしかった。



 彼はこの3日間、学校帰りにも登校時にも毎日訪ねてきてくれた。でも、会わずに帰ってもらった。会うにはまだ心の準備ができていなかった。

 定期テストなのでこれ以上は休めず、一緒に登校することになった木曜日の朝………

「…………こないだ、ごめんな」

 学校に行く道を進みながら、彼がぼそっと言った。

「別にお前とくっつくのが嫌ってわけじゃなくて、その………」
「…………」

 そのこと考えてくれてたなんて………嬉しい。

(嫌じゃないって。………良かった)

 彼がこの3日、オレのことを考えてくれていたのなら………それでもう、充分だ。

「オレの方こそごめん。もう小学生じゃないしね、オレ達」
「諒……」
「もう、大人にならないとね」

 言いながらも、胸がチリチリする。今すぐ家に帰って彼女を抱きたい。そうすれば落ち着く。きっと、落ち着く………


 彼女の契約が終わったのは、この週の土曜日だった。
 木曜日も金曜日もテストで帰宅が早かったので、帰って早々に何度も体を重ねた。途中でコンドームがなくなって追加を買いにいくことになり、「もっとたくさん入ってる箱にしとけばよかったなあ」と苦笑された。

 土曜日、契約の最終日……

「これからはちゃんと同年代の子と付き合いなさいよ?」

 最後のセックスのあと、そう言って頭を撫でてくれた。それから彼女には一度も会っていない。


***

 夏休みに入り、毎日のようにバスケ部の練習があった。

 キラキラした汗、上気した頬……

 ついつい彼に目がいってしまう。
 セックスしている時の彼もあんな感じかな……。オレの腕の中であんな風に荒い息遣いをさせてみたい。汗だくの彼にぎゅうっと抱きしめられたい……。

 そんな妄想にかられていたら、うっかり勃ちそうになってしまった。

 落ち着かせるために、顔を洗いにいく。顔だけでは、落ち着きそうもないので、頭から水をかぶる。

(欲求不満だな……)

 こんなとき彼女がいたらいいのに。セックスでもしたら少しは気を紛らすことができそうだ……

 ブルブルと首をふり、水気を落としてから、持ってきていたタオルを取ろうとしたところ、

「はい、どうぞ?」
「…………」

 女バスの三年の先輩が、タオルを差し出してくれていた。彼女のタオルだ。

「……汚れちゃいますよ」

 自分のタオルを取って頭をふきはじめると、先輩はちょっとムッとしたような顔をしてオレを見上げてきた。

「先輩の好意は素直に受け取りなさいよ」
「…………好意?」

 好意って?
 聞き返すと、先輩はパアッと赤くなった。ムッとしたり赤くなったり忙しい人だ。

「好意って、あの、そういう意味じゃ……」
「じゃ、どういう意味?」

 顔を近づけると、さらに赤くなった。面白い。

「高瀬く……」
「……………」

 唇をその唇のギリギリまで近づけてから、ふいっと耳元に移動させ、

「先輩、可愛い」

 軽く耳朶にキスすると、先輩はさらにさらに真っ赤になって、「もうっ」と言ってオレのことを叩いてきた。それから「今日、一緒に帰ろうね」なんて誘ってきた。

(ふーん………)

 ずいぶん簡単だな、と思う。
 本気じゃない恋は、簡単だ。

(まあ、一緒には帰らないけど)

 だって、オレは彼と帰るから。それは譲れない。それだけは、譲れない。




----


お読みくださりありがとうございました!
タラシの諒君出来上がり、の回でございました。
20年上のユミさんから色々仕込まれたので、女の扱いはバッチリです。
彼のお父さんも相当なタラシなので、血筋もあるかもしれません(^_^;)

次回もう一回、諒視点。高校生になってからのお話です。

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