創作小説屋

創作小説連載中。BL・R18あるのでご注意を。

イノセントチャイルド  (あとがき)

2006年08月31日 00時25分22秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
2004.4.15 pm0:15

↑に書き上げた作品でした。
何で書こうと思ったのか、ちっとも記憶にないんですが
何だろう?過去を背負って前向きに生きようって思う何かがあったんだっけな?
思い出せない~

私生活的には、2004年4月といえば、長男が1歳になった月。
あの時まだ歩けずしゃべれずだった長男が、今では走り回るしマシンガントークをぶちかましてるし・・・。
次男が今1歳1ヶ月なので、ちょうどあのころの長男ぐらいかあ。
時が立つのは早いものですねえ。


次回からは、短いのをいくつか。
基本的にせっかちなもので、長編書けないんです私
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イノセントチャイルド (8/8)

2006年08月30日 01時08分14秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
 結論からいうと―
 ユウは幽霊なんかじゃなかった。
 ユウの正体はお隣の斎藤さんちのイサム君だった。
 どうやら「勇気のユウでイサム」と紹介されたのをミカのお母さんが勘違いして覚えていたらしい。斉藤さんは勇君を保育所に入れるつもりなのだが、現在空きがなく、今はミカのお母さんにお金を払って面倒をみてもらっているそうだ。
 勇君は普通の子より小柄なので実年齢よりも小さくみられるらしい。言葉も遅く、まだ数語しか話せないそうだ。
 そして顔もかわいらしいのでいつも女の子に間違われているらしい。池田さんが勇君の名前を言わなかったのは、私が「女の子の名前」を聞いたからだ。池田さんにとって勇君は孫なのだから当然男の子であることなど百も承知なわけだ。
 うちの庭に突然現れて消えた理由もわかった。お隣との境目の垣根に小さな子供であれば通り抜けられる隙間があったのだ。
 全ての謎があっさり解けてしまった。なんとも間抜けな勘違いだった。
 でも、大切なことがわかった。
「ショーコちゃん着いたよー。降りるよー」
 ミカが先頭をきって電車から飛び降りた。サユリとマユリも奇声をあげながらそれに続く。
「子犬ってこのくらいかなあ?」
「楽しみだねー」
 出発したときから三人は飽きずに繰り返し同じ話をしている。
 昨日の母からの電話にでたところ、飼い犬が子犬を産んだというので、冬休みに入ったサユリ・マユリ・ミカをつれて実家に遊びにいくことにしたのだ。三ヶ月ぶりの帰省である。自分一人で帰るのは何となくバツが悪いので、子犬をだしに子供達についてきてもらうことにした、というのが本当のところだ。勇君は母親の仕事が休みなので一緒ではない。
「誠実に生きること」
と、池田さんは言っていた。
 逃げていてはいけない、と思った。母からも、自分がしてしまったことからも、自分がされたことからも、これからの自分からも。
「ねえ、うちにいく前に寄りたいところがあるんだけど」
 近所の水子地蔵のある神社にいって、あのときいなくなった私の赤ちゃんに誓うつもりなのだ。
 一生あなたのこと忘れない。もう逃げない。あなたの無垢な魂を背負って私は生きていく。一生懸命生きていく。
「あーあ、ユウにも子犬みせてあげたかったなー」
 ミカが残念そうにつぶやいた。
「それじゃ、一匹もらって帰ろうか。あのアパート動物飼ってもいいからさ」
 提案すると三人は目を輝かせて叫んだ。
「さんせーい!」
 これからは前を向いて歩いていく。



〈完〉
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イノセントチャイルド (7/8)

2006年08月29日 00時36分52秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
「あの……池田さん」
 意を決して聞いてみた。
「あそこにいる女の子の名前、ご存知ですか?」
「女の子? 知ってるよ」
 池田さんは言った。
「サユリちゃん、マユリちゃん、ミカちゃん、だよね」
 ああ―……。
 頭の中で大きな音が鳴り響いた。
 やはりユウの姿は見えていないんだ。
 やはりユウはあのときの赤ちゃんの幽霊なんだ。
「ユウ……」
 ユウは無邪気に笑っている。切ないほど楽しそうに。
「私、なんてことを……」
 初めて、涙がこぼれた。堕胎した赤ちゃんに対して、初めて涙をこぼした。自分の無責任さを初めて後悔した。私はあの子の魂を無責任に生み出してしまった。
 ずっと傷つけられた自分がかわいそうでしょうがなかった。でも違う。一番かわいそうなのはユウだ。なぜ今まで思いやってやれなかったのだろう。なんてことをしてしまったのだろう。今、一番大切だと思う子なのに。
「どうしたんだ? 大丈夫か?」
 池田さんがうろたえたように手を差し伸べた。節ばった大きな手。この手で奥さんのことを何十年も抱きしめてきたのだろう。
「私、取り返しのつかないことをしてしまったんです」
 どうして、その時だけ楽しければいいというような恋をしたのだろう。どうして、五十年後にも愛しているといえる人とSEXしなかったのだろう。
「何があったのか知らないが……。取り返しのつかないことなんてないんだよ」
 優しく頭をなでられた。
「誠実に生きていけば必ず報われるんだよ」
「誠実に……」
 何もかも見とおしたような瞳だった。年齢を重ねた人だけがもつ重みのある瞳。
 気がつくとユウが膝元にきていた。無垢な魂がそこにはあった。涙が止まらない。
「ごめんね……」
 何年か先、必ず心から愛する人と愛し合うから。そうしたらもう一度私の元に生まれてきてね。
「ごめんね……」
 ぎゅっと抱きしめる。温かい。心の中の黒く淀んだものが透き通っていくようだ。重くのしかかっていたものが軽くなっていく。ユウの魂が体の中に入りこんくる―。
 突然、ドアが開いた。
「あら? あなた……」
 お隣の斉藤さん―池田さんの娘さんが驚いたようにこちらをみている。
「ママ!」
 するり、とユウが私の腕の中から飛び出して斉藤さんに抱きついた。
 ママ?
「イサム。あんたもきてたの」
 イサム??
 思考回路がショートした。涙も止まった。
 ―どうなってんの??
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イノセントチャイルド (6/8)

2006年08月27日 22時03分12秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
 横内とは今から二年半前、高校三年生の夏の終わりに出会った。近所の大学の文化祭でナンパされたのだ。中学から女子校の上、家が厳しかったせいもあって、異性との交流がほとんどなかった私は、一つ年上の横内にすぐに夢中になった。恋愛をすることによって今までの地味な自分と別人になれたようで嬉しかった。
 高校三年生にもなると『経験』をすませた子が増えてくる。奥手な自分が周りからどんどん置いていかれて、馬鹿にされているような気がして、焦っていたのも事実だ。
 横内と付き合っているときは毎日が楽しかった。このまま時が止まればいいと思っていた。将来のことなんて何も考えていなかった。
 そして雰囲気に流されて、SEXをした。自分が大人になった気がした。クラスの経験済みの子たちとその話で盛り上がった。まだしていない子たちを見下した。
 外泊をした日、母にたたかれた。もっと自分を大切にしなさいといわれた。でも今が楽しいのだからいいと思った。
 そして……妊娠した。
 横内には「オレの子だっていう証拠でもあるの?」とまでいわれた。話した翌日には音信不通になった。
 あんなに好きだっていってくれたのに。あんなに楽しかったのに。裏切られた。裏切られた。かわいそうな私。かわいそうな私……。
 それ以来、嘔吐と貧血でまともな生活ができなくなった。医者には『うつ病』と診断された。高校は何とか卒業したが、進学もせず家にこもり続けた。母とのいさかいも絶えなくなった。一人になりたかった。誰とも話したくなかった。
 それで叔母の経営するアパートに一人暮らしさせてもらうことになったのだ。大学受験の勉強をすることと、精神科に通うことを条件に両親にも許してもらえた。
 初めての一人暮らしは自分との向き合いだった。暗い気持ちになって眠れない日は続いたが、何時に起きようが寝ようが注意する人もいないし、食べなくても怒られないので気は楽だった。
 そして子供達と出会ってからは格段に体調はよくなっていった。特にユウがそばにいると心が落ち着く。なぜユウは特別なのだろう? なぜ先ほど「一番大切な人」ときかれユウのことを真っ先に思いついたのだろう?

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イノセントチャイルド (5/8)

2006年08月26日 23時43分44秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
 池田のおじいちゃんは最上階の特別室に入院していた。一泊何十万もするはずだ。もしかしてすごいお金持ちなのか?
 サユリに聞くと即答された。
「そうだよ。坂田スーパーのそばの大きいおうち知ってる? お庭にぞうさんときりんさんの形の木があるおうち。あそこだよ」
 驚いた。では遺言書を隠したという隣の斉藤さんのお父さんということか。どんな人なのか興味がわいてきた。
「おじーちゃーん。お見舞いにきたよー」
 扉を開けると予想通りの豪華な部屋がそこにはあった。壁一面花と果物かごで埋め尽くされていて、病室には似つかわしくない皮張りのソファーまで備えつけられている。
 大きな白いベッドの中にその老人は埋もれていた。
「みんないらっしゃい」
 病気のせいかもしれないが、斉藤さんのお父さんにしてはずいぶん老けてみえる。見事に禿げ上がった頭に落ち窪んだ目。まるで骸骨のようだ。
「あの、これお見舞いのりんごです」
「ありがとう。もしかしてショーコちゃんかな? サユリちゃん達から話は聞いてるよ」
 声には張りがある。
「そこにクッキーがあるからみんなで食べなさい。冷蔵庫にジュースもあるからね」
「わーありがとー」
 サユリ達は勝手知ったるという感じであちこちをあさりはじめた。池田さんはその様子を目を細めて眺めている。
「そうだ、おじいちゃん。頼まれてたお手紙、ちゃんと言われた場所に入れてきたよ。レッスンの前にこっそり行ったから誰にもみつからなかった」
 サユリの言葉に老人はニヤリと笑った。
「そうか。ありがとう」
 手紙? それはもしかして。
「遺言書のことですか?」
「え?」
 なんで知ってるんだ? というように目を向けられた。あわてて言葉を足す。
「私、娘さんの隣に住んでるんですよ。で、ちょっと小耳にはさんで……大切な人に預かってもらってるとかって……」
「ああ、そうそう」
 池田さんは楽しげにうなずいた。
「ワシの一番大切な人って誰だと思うかね? 君だったら誰に預ける?」
 一番大切な人……。
 真っ先に思いついたのはなぜかユウの顔だった。
「恋人かな?」
 ひやかしぎみに言われて初めて横内の顔を思い出した。ザワリと胸が騒ぐ。
「……そんな人いません」
「そうか。まだ一番に会っていないんだね」
 いや。横内とつきあっていたころは彼が一番だと思っていた……ような気がする。
「そのうち君にも一番が現れるさ」
 穏やかな顔。見ていたら池田さんの一番がすぐにわかった。
「池田さんの一番は奥様ですか」
「ああ。三年ほど前に死んじまったがね。ワシの一番はいつまでたっても五十年連れ添った女房だけだよ」
 照れたように老人は言い切った。
「だから遺書は女房の遺影の裏に隠してもらったんだよ。あ、これは内緒だよ。そのうち娘にだけは話すつもりだがね」
「……いいですね」
 うらやましい、と素直に言葉がでた。
 そして気がついた。横内のことを五十年後にも愛しているだろうと思ったことは一度もない。
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