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創作小説連載中。BL・R18あるのでご注意を。

(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 18-6(泉視点)

2017年01月29日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


***


 それからたくさん、キスをした。
 お互いの肌を撫でて唇を這わせた。
 モノ自体に直接触れるのを避けたのは、「イチャイチャ」を満喫したかったからだ。言葉にだして言ったわけではないのに、諒も同じように、モノには触れず、じゃれるようなキスをたくさんくれて嬉しくなる。


 胸がないからと言って性懲りもなく隠そうとした手を外して、そこに舌を這わせると、くすぐったいっと言って少し高い声で諒が笑いだした。それが可愛すぎて……

「なんか悔しいなあ……」
 ついつい愚痴めいた言葉がでてしまう。

「お前のこういう可愛いとこ、何人の女がみてるんだ?」
「みてないよ?」

 肌と肌が溶け合うくらいくっついて諒が言う。

「オレ、基本的に服、下しか脱がなかったから」
「え」
「だってやるだけなんだから、上脱ぐ必要ないじゃん?」
「……………。なんかお前ホント鬼畜だよな」
「そうかな……」

 首を傾げた諒。

「女の子達も別にオレのことなんか好きじゃないからお互い様だと思うけど」
「何言ってんだよ、あんだけモテてて……」
「彼女達にとってオレはアクセサリーみたいなもんだし。そうじゃなかったのは、侑奈と……ユミさんだけ」
「ユミさん?」

 誰だそれ?
 聞くと諒はちょっと気まずそうに答えた。

「中一の時のお手伝いさん」
「ああ……あの」

 前に聞いたことがある。諒の初めての女、だ。20歳くらい年上の人。
 諒の初めてがその人で良かった、と思ったんだ。同年代の女と初めて同士、とかだとすごく重い感じがして嫌だけど、20歳も年上の女性なら「手ほどきを受けた」って感じで何か納得ができる。

 そんなことを言うと、諒はホッとしたように「うん。そう、手ほどき」とうなずき、

「それでね、ユミさんに言われたんだよ」
「何を?」

 言いながらもキスをせがむように顔を寄せてきたので、軽く唇を合わせる。すると、この上もなく嬉しそうな笑顔を浮かべた諒。

「唇へのキスは本当に好きな人としなさいって」
「あ、それで……」

 散々色々な女とやりまくっていたくせに、キスはしたことがなかった、というのはそれでだったのか。
 諒のファーストキスはオレがもらった。そんなアドバイスをしてくれた「ユミさん」に感謝だな。

 諒は今度は自分から唇を寄せてくると、にっこりとして、

「オレの初めては優真にあげるから」
「………」

 諒の言葉にドキッとする。ずっと素っ裸で肌を合わせあっていたので、もちろんモノはずっと兆したままだったけど、そんなこと言われたら、もう……

「優真……」

 それを察したように、諒が「いい?」と上目遣いで言いながら、そっとオレを包み込んだ。 


 そして……


 キスをしながらお互い扱きあって、それから、諒が手際よくゴムを付けてくれて、潤滑のジェルも塗ってくれて……

 自然な流れで諒が上になり、繋いだ手に力をこめた。騎乗位、というやつだ。ゆっくり、ゆっくりとオレのものを包み込みながら降りてくる。

「……っ」
 温かい、というより、熱い。すごい締め付けに声が出そうになる。

 後から聞いたんだけど、諒はこの日のために毎日入れる練習をしてくれていたらしい。シャワーが30分以上かかったのも、中をキレイにしたり、すぐにできるようにしていたからだったそうで……

 そんな努力のおかげで、スムーズにオレは諒の中に入っていけて……

「入っ………た」
 諒の尻がオレの股までおりてきて密着した。全部入った、ということだ……。

(諒と繋がってる……)

 心臓が高鳴る。感動と、初めての自分の手以外による刺激の気持ちよさに、思わず眉間にシワが寄ってしまう。

「優ちゃん……」
「え……」

 こちらを見下ろしている諒。……なんだ? 不安そうな…… 

「諒……?」
「優ちゃん………気持ち良くない?」
「何言ってんだよ?」
「だって……」
「こんなになってんの、分かんない?」

 下から思いきり突き上げると、「あ…っ」と諒が悲鳴じみた声をあげた。それに刺激され、衝動をこらえきれず数回突きあげたら、すぐに、イク寸前まで持っていかれてしまい、慌ててやめる。……と、

「諒?!」

 諒の両頬に涙が伝っていることに気が付いて、ハッとする。

 もしかして、痛いのか?!

 見ると諒のモノはたいした力ももたず、オレの腹の上に乗っているだけだ。それなのにオレ、自分の欲求に任せて……っ

「ごめん、オレ調子に乗って……っ」
「……違っ」

 ブンブン、と諒は首をふった。

「違う……」

 そして、ポロポロと涙をこぼしながら、やさしく微笑んだ。

「優ちゃんが、オレの中にいる……」
「え……」
「それが、嬉しくて……」

 ぎゅうっと握った手に力がこもっている。

「夢、みたい……」
「……諒」

 愛しい……愛しい諒……

「お前の中、すっげー気持ちいいよ」
「ホントに?」
「うん」

 体を起こし、繋がったまま、唇を重ねる。まだ涙を流し続けているその頬にキスをする。

「大好きだよ、諒」
「優真……」

 諒は、本当に幸せそうに、幸せそうに、微笑むと、

「誕生日おめでとう」

 そう言って、きゅっと抱きついてきた。


***


 誕生日当日の夜は、例年通り、諒と侑奈も招いて、うちの家族全員と一緒にご飯を食べた。

 普段は店があるため、家族全員揃ってご飯を食べることはほとんどないのだけれども、誰かの誕生日の時だけは、全員集まることが義務づけられている。
 うちは、今時珍しいくらい厳格な家長制なので、祖父の言うことは絶対なのだ。その祖父がなぜか誕生日にこだわる人なため、両親・兄・姉2人・妹、誰一人文句も言わず集まっている。だから、友達や恋人と過ごしたい、という場合は、その友達や恋人を家に連れて来るしかないわけで……


「お誕生日おめでと~」

 畳の部屋。ちゃぶ台とローテーブルの上には、和洋折衷の料理とケーキが並んでいる。
 この歳になって、家族に囲まれてローソクを消すのは、ちょっと恥ずかしい。でも、隣に座っている諒が去年よりもずっと諒らしい顔でニコニコしてくれているのが、ものすごく嬉しい。

「幸せそうな顔しちゃって」
 うちの家族の騒がしい食事風景の中、右隣に座った侑奈が小さくいって、脇腹を小突いてきた。

「おめでとう、ございます?」
 疑問形で言う侑奈。その「おめでとう」は、誕生日のおめでとうではないな……

「……おお。色々ありがとう」

 察して素直に言うと、

「わ、ホントに?良かった!おめでとう!」

 侑奈ははしゃいだように笑ってくれた。
 やっぱり侑奈はオレの救いの女神だと、あらためて思う。

 と、そこへ……

「おめでとう、の相手は、もしかして諒君か?」
「!」

 耳元で聞こえてきた言葉にバッと振り返ると、兄が真面目な顔をしながらオレとオレの左隣にいる諒を見比べていた。

「え、あの」
「うん」

 戸惑ったような諒が何か言い出す前に、大きく肯いてやる。

「兄ちゃん、よくわかったな」
「わかったっていうか……」

 兄はちょっと呆れたように、

「お前さ、オレのパソコン勝手に使っただろ」
「え」
「閲覧履歴消したからバレてないとでも思ったか?」
「え」

 履歴消せば大丈夫なんじゃないのか?!

「閲覧履歴消したって、検索履歴は残ってるからな」
「………え」

 検索……履歴? 検索って、オレかなり恥ずかしい言葉を入れたような……っ

「え、えええええ?!」
「ええーじゃねえよ。馬鹿優真」

 ゴン、と頭を小突かれる。

「とりあえず、大人になるまでは、じいちゃんと父さんにはバレないようにしろ」
「え」
「認めてもらうのは、成人して、家を出てからでいいだろ」
「…………」

 確かに頭の固い二人に理解してもらうのは難しいだろうけど……
 でも、まだ、嘘をつかないといけないのか……

「諒君、侑奈ちゃん、こんな馬鹿だけどこれからもよろしくね」
「………」

 兄は二人に頭を下げると、立ち上がって台所に行ってしまった。侑奈が慌てたように兄の後を追っていって、何かコソコソ話して笑っている。絶対オレのこと話して笑ってる……

「………」
「………」

 残されたオレ達、顔を見合わせた。

「まだ、嘘つかないといけないんだな……」
「……しょうがないよ」
「でもさ」

 諒の手に、テーブルの下でそっと触れる。

「大人になったら、ちゃんと言うからな」
「……うん」

 ぎゅっと手が握り返される。

 オレは今までずっと嘘を重ねてきた。
 そのせいで、諒のことも侑奈のことも傷つけた。
 でももう、二度とそんなことはしないって決めたから。

 出会った頃に誓ったように、今、心から誓う。

「お前のことは、オレが一生守ってやるからな」

 言うと、諒はあの頃と同じように、嬉しそうにうなずいてくれた。



---



お読みくださりありがとうございました!

泉視点最終回でした。お幸せに~^^な感じで!!
作中2001年8月。スマホはもちろんないので、お兄ちゃんのパソコンを借りた泉君なのでした~^^;

昨日もお知らせさせていただきましたが、あと2回くらい?でこの「嘘の嘘の、嘘」は終わりなのですが、
しばらくバタバタで書く余裕がないため、2月6日(月)から再開しようと思っております。
物語内も数ヵ月時間が過ぎてからのお話になると思います。
もしよろしければ、また遊びにきていただけると嬉しいです!!よろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 18-5(泉視点)

2017年01月28日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 17歳の誕生日前日、約束通り、諒の家に泊まりにいくことになった。誕生日プレゼントを受け取るためだ。

「お前の初めて、オレにくれ」

 2週間前、そういったオレに、諒はぎゅううっと抱きついてきて、

「うれしい」

と、ため息まじりに言ってくれた。実は諒もそのつもりだったということは後から聞いた。


 ただでさえ諒は女性経験が豊富だ。ガッカリさせないためにも何とかしないと……と、ずっと考えていたのだけれども、結局、なんの対策も立てられないままこの日を迎えてしまった……

 方法は噂通り尻穴を使うということは侑奈から聞いた。他は男女と変わらないというので、一応、手持ちのAVやエロ本を見返そうとは思ったんだけど、なんかそれも違う気がして……。
 それで兄のパソコンをこっそり使って男同士の方法の検索をかけてみた。でも、見つけたサイトがちょっとエグくて見続けることができなくて……


「変なプライド捨てて、諒にまかせれば?」
「変なプライドって」

 誕生日前日、夕飯を食べた後、コソコソと言ってきた侑奈に、ムッとして返す。

「オレはただ諒をガッカリさせたくなくて……」
「別にドーテー君に期待なんかしてないでしょ」
「……………」
「それに」

 侑奈は真面目な顔をして言ってくれた。

「諒は泉とそういうことできるってことだけで満足なんだから大丈夫だよ」
「……そういうもんか?」
「そういうもんです」

 そして、侑奈は洗い物をしている諒のところにいって、何かコソコソ話しはじめた。諒と侑奈、すっかり小学校の時のノリに戻った感じがする。元恋人とはとても思えない。どちらかというと女子同士のような感じだ……

 こうして、侑奈の家で夕飯とケーキを食べて、ガッツポーズの侑奈に見送られ、二人で諒の家に移動したんだけど……



「…………。遅い」

 ポツーンと、諒の部屋のベッドに腰かけたまま待つこと30分……。いい加減、緊張の糸も切れて、バタッと横になった。

『シャワー浴びてくるね。ちょっと時間かかるかもだけど、部屋で待ってて』

 そう言って諒は浴室に消えていった。『ちょっと時間かかる』って、もう30分だ。ちょっとじゃないだろ……

「まさか嫌になったとか……」

 そんなことも薄ら思う。思いながらも、横になったベッドから諒の匂いがしてきて、なんだか幸せな気持ちに包まれてウトウトしてきてしまった。

(そういや昨日の夜、緊張して全然眠れなかったんだった……)

 侑奈の料理とケーキでお腹もいっぱいで、余計に眠気が……



 それからどのくらいたっただろう。

(………?)

 部屋の電気がいつの間に消されていた。体にタオルケットがかけられている。そして、背中に温かいぬくもり………

「………諒?」
「……ん」

 体を反転させ、ぬくもりの方に向く。石鹸の良い匂い……

「………懐かしいな」
「うん?」

 寝ぼけたように、諒が目をこすった気配がした。そんなところも、懐かしい。こうして泊まるのは小6の時以来だ。

「まだ寝るか?」
「ううん……」
「寝てもいいぞ?」
「寝ないよ……」
「………」

 諒の首の下に腕を入れて頭を引き寄せる。諒のぬくもり。諒の匂い………

(あの時も、こうして頭引き寄せてたんだよな……)

 諒を恋愛対象として「好き」だと気が付いた小6の夏休み……。

 そんなことを思い出しながら、諒の頭を撫でていたら、

「オレね……」

 ポツンと諒が言った。

「最後に優真が泊まりに来た時……初めて出たんだよ」
「出た?」
「こうして優真にくっついてたら扱きたくなって、それでコッソリ扱いて……」
「え」

 そ、それって……

「あ。呆れてる?」
「あ、いやっ」

 心配げに言った諒の頭を再び撫でながら、当時のことをよくよく思い出す。
 あの時の諒は、いつもと違ってなんだか妙に色っぽくて……

「それでだったのか……」
「え?」
「もしかしてその後部屋から出て行ったのって」
「あ、うん。下着汚しちゃったから……って、え?」

 パッと諒が顔をあげた。

「優真、あの時起きてたの?」
「起きてた」
「うそっ」

 叫んだ諒の頬をつーっと撫で、少しおどけて言う。

「んで、お前が部屋戻ってきてから、隠れてシコってた」
「え」

 案の定ビックリした様子の諒。ヒヒと笑って続けてやる。

「あの時、お前で勃っちゃってさ」
「………」

「それで、お前のこと好きだって気がついたから、オレ」
「…………」

 諒は息を止めたまま、暗闇の中でオレのことをジッと見続けて……

「………同じ時だったんだね」
 ため息のように、つぶやいた。

「同じ時?」
「うん………」

 諒は泣きそうな声で肯いた。

「オレもあの時、優真のこと好きだって、気が付いたんだよ」
「…………え」

 そ、そうなのか?
 言うと、諒はクスクスと笑いながら、

「だから、優真にくっついてたら扱きたくなったっていったじゃん」
「あ……そっか」

 そういう、ことか……

 ため息が出てしまう。

「オレ達、5年も一緒に遠回りしてたんだな」
「うん……」
「…………」
「…………」

 そっと唇を重ねる。愛しい感触……
 頬を囲み、おでこを合わせ、そしてまた、唇を重ねる……

 あの時こうしていたら……

 なんて後悔は、もうしたくない。覚悟を決めよう。

「……諒、おれも風呂入っ……、っ」

 言いかけて、止まってしまった。諒が首筋に唇を這わせてきたからだ。充分な刺激すぎて、途端に硬化が始まってしまう。

「諒、待……、風呂」
「あとで一緒に入ろ?」
「でも、オレ、バイトから走って帰ってきて、汗かいて……っ」

 首筋を舐められ、震えてしまう。諒の唇、諒の舌……

「りょ、汚いって」
「優真の味がする」
「何言って……っ」
「ずっと、こうしたかった。中学の時もね、部活で汗かいてる優真のことみて……ここのとこ、吸いつきたくてずっと我慢してた」
「……っ」

 鎖骨の上の柔らかいあたりに舌を這わされ、鎖骨に吸い付かれ、くうっと出そうになった声をこらえる。
 代わりに諒の着ているTシャツを捲りあげ、直接肌に触れようとした。……のだけれども、

「ま、待って。待って、優真」
「え」

 慌てたように、諒がオレを押しのけた。暗いのでよく見えない。……なんだ?オレなにかまずいことしたか?

「何……」
「あの、オレ……胸とかないからね?」
「……………は?」

 言葉の意味が分からない。

「何のことだ?」
「あの……だから」

 諒は言いにくそうに言葉を詰まらせると、

「オレ、女の子と違って胸ないけど……いい?」
「何言ってんだ?お前」

 意味が分からない。

「当たり前だろ」
「でも……」

 つぶやいた諒……暗くて顔が見えないから、どんな表情をしているのかわからない。うーん、と思って立ち上がる。

「ちょっと電気つけてもいいか? さっきから暗くて何も……」
「え、ダメダメダメ!」

 暗闇の中、ガシッと腰のあたりを掴まれた。なんなんだいったい。

「なんだよ? これじゃ何がなんだか……」
「このままでいいからっ見えない方がいいから……っ」
「は?」

 必死な様子の諒の頭をグチャグチャと撫でてやる。

「さっきっから何言ってんだよ?」
「だから、だから……っ、オレのこと見て優真がやる気なくしたら困るから……っ」
「へ?」
「オレ、男だし、女の子と違って胸もないし、その……っ」
「そんなこと知ってる。毎年プールだって一緒に行ってるだろ」
「………あ」

 あ、そっか、とつぶやいた諒。
 何を今さらなことを言ってるんだこいつは。

「諒」

 暗闇の中、チュッと音を立ててキスをくれてやる。

「お前さあ、さっきっから、女の子と違う、女の子と違うっていってるけどさ」
「うん……」
「あいにくオレは、お前と違って女の胸を触ったこともなければ生でみたこともないからな。比べようないぞ」
「…………あ」

 ご、ごめん……、という諒……

 いや、謝られるのもフクザツだけど……

「電気、つけるぞ?」
「…………」

 部屋の電気でなく、勉強机のライトをつける。眩しいのですぐに背を向け、ベッドの方を向くと、諒は不安げにベッドの脇に腰かけていた。

「諒?」
「優ちゃん……」

 不安な瞳に唇を落とすと、諒は泣きそうな声で言った。

「優ちゃん、ホントにいいの……?」
「何言ってんだよ」

 こめかみに、頬に、耳たぶに、首筋に、唇を落としながら、重心をかけ押し倒す。

「オレはお前を初めて見たときから、お前と結婚するって決めてたんだからな」
「優ちゃん……」

 大好き、と言う言葉は、キスと一緒に吸い込んだ。




---



お読みくださりありがとうございました!

一気に最後まで書きたかったのですが、ついつい長くなってしまったため、二回に分けました!
続きは明日お送りいたしますっしつこくてすみません~~っ
泉君ドーテー卒業記念ということでご容赦くださいませっ。
明日、泉視点最終回でございます。ようやく、ご卒業!!

そのあと2回くらい?でこの「嘘の嘘の、嘘」は終わりなのですが、
しばらく書く余裕がないため、2月6日(月)から再開しようと思っております。
でもその前にとりあえず明日、よろしくお願いいたします~。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 18-4(泉視点)

2017年01月26日 07時27分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 お祭りには、途中から桜井浩介先生とその彼女の一之瀬あかね先生も合流した。

 桜井先生は何だかやつれた顔で終始ぼんやりしていた。でも、携帯に入ったメールを見た途端、

「ごめん、帰る。じゃあね!」

 急に元気になって帰ってしまった。彼女を置いて……(それから少ししてから、あかね先生も帰ったけど……)

「一体なんだったんだろうな?」

 桜井先生の謎の行動について言うと、諒は「ああ」とうなずき、

「渋谷さんの仕事が早めに終わったとか、そういうことじゃない?」
「渋谷さん?」

 諒の言葉に首を傾げる。なぜ、彼女を置いて友達に会いに行くんだ? しかもあんなに嬉しそうに……

 言うと、諒は「あ」と口を押さえた。「マズイ」みたいな顔をして。

「……諒ー?」
「あー……」

 両脇を掴んで、ジーーっと正面から顔を見つめてやる。昔から、諒が隠し事をした時はこうして無言で瞳をのぞきこむことにしてるのだ。するといつも一分もたずに白状する。今回も例にたがわず諒は両手をあげると、

「絶対内緒だよ? 侑奈にも内緒だよ?」

と、前置きをしてから、衝撃の事実を教えてくれた。


 桜井先生の恋人はあかね先生ではない。あかね先生はカモフラージュ。本当の恋人は、親友の渋谷慶さん、なのだそうだ!

 し、しかも……

「ま、マジか……」

 あの小柄で中性的な容姿の渋谷さんが、桜井先生のことを抱いている、だってー?!

「ってことは、もしかして!」

 諒が色々聞いてる、そういうことに詳しい人って……っ

「桜井先生のことか?!」
「あ、侑奈から聞いたの?」

 もー言わないでっていったのにーと口を尖らせながらも、諒はコクンと肯き、

「色々、準備があって……でも、たぶん、大丈夫」
「たぶんって」
「誕生日、あげるからね」
「……っ」

 無邪気な笑顔で言われて、くらっときてしまう。
 オレと諒以上に身長差のある渋谷さんと桜井先生……そんな二人ができてるってことは、オレも……

(できる……かなあ……)

「泉くーん! 高瀬くーん! おまたせー!」
「おー」

 弟の潤君を連れてトイレに行っていたライトに手を振る。ちゃんと兄弟に見えるぞ? ライト。

(血の繋がりとか、肌の色とか、関係ないんだよなあ……)

 ふいっと、横にいる諒を見上げる。諒がニコっとしてくれて嬉しくなる。

(性別とか、背の高さとか……)

 そういう変な常識に囚われて、ずっと想いを閉じ込めて、嘘に嘘を重ねて……

「諒」
「え」

 ぎゅっと手を繋ぐ。

「ちょ、優真、ライトが……」
「………」

 慌てた諒の言葉にかぶせるように、さらに手に力をこめる。

「いつかさ」
「う、うん……」
「真っ昼間でも、ちゃんと手繋いで歩ける日がくるといいな」
「………え」

 目を瞠った諒に肯きかける。

「いつか、誰にも嘘つかないで、オレ達が付き合ってるって、みんなにちゃんと言いたい」
「…………優ちゃん」
「…………」

 もう一度、手に力をこめると、諒も今度はぎゅっと握り返してくれた。

 ライトと潤君が目の前にきても手を離さずにいたら、当然ライトがツッコんできた。

「わー、なになに、男同士で手握り合っちゃってどうしたのー?」
「…………」

 その言葉に、何か言おうとしたところ……

「それは仲良しだからだよねー?」

 潤君がニコニコで言ってくれた。そして、ライトと繋いでいる手をつきだして、

「ほらみて。潤とお兄ちゃんも仲良しになったから手繋いでるんだよー」
「あ、ほんとだ」
「一緒だな」
「え、それとこれとは話が別のような……」
「同じようなもんだ」
「ね」

 たたみかけるように言うと、ライトは「え?そうなの?それありなの?」とブツブツいった挙げ句、

「じゃ、オレもユーナちゃんに手繋いでもらおーっと」

 いくぞー潤君!と張り切って歩きだした。

「…………。絶対無理だな」 
「ね」

 二人でクスクス笑いながら、ライト達の後を着いていく。屋台の間の人混みの中、はぐれないように手を繋いだまま……



***



 ライトの母親の再婚相手の日村さんは、感じの良いオジサンだった。51歳のオレの父と同年代……と思ったけれど、話を聞いたらまだ46歳だそうだ。髪の毛がかなり後退しているから老けてみえる……。

「こないだ、お祖父ちゃんですか? って言われちゃったんだってー」

と、ライトが楽しそうに話してくれた。日村さんの子供の双子の潤君と実那ちゃんはまだ幼稚園の年長さん。まあ、ない話ではないのか……

「うちの母ちゃんは若くみえるから、そのうち娘さんですか?って言われそうってビビってた」
「…………」

 ライトの母親は実年齢は36歳だけれども、見た目は20代前半なのだ。確かに親子に見えなくもなくて、否定してあげることができない。

「それにオレも加わったら、ほんと謎の集団だよね~」
「……確かに」

 ライトの言葉に肯いてしまう。

「でも」
 侑奈がパンと手を合わせて宣言した。

「一つの集団に見える」
「うん」
「見える」

 二人でうなずく。
 
「家族って言われたら納得する」
「だな」
「うん」

 ライトは「そうかなあ……」と首を傾げながらも、少し離れたところにいる母親と日村さん親子を目を細めて眺めていた。

(きっと、家族になれる)

 世の中の変な常識とかに流されないで、自分の欲しいものを手にいれられたら、そうしたらきっと、幸せはそこにある。


***

 お祭りからの帰り道、いつものように侑奈を送ってから、二人で帰路についた。手を繋いで歩く夜の道。

「潤君、すっかりライトに懐いてたね」
「だなー。それに二人ともライトの母親のことも『あーママ』って……」
「『新しいママ』の略っていうのにはちょっとビックリ……」

 うんうん、と肯きながら、手に力をこめる。

「あのぐらいの年齢の子って、なんていうか……余計なものが何もなくていいよな」
「余計なもの?」
「変な常識に囚われてないっていうのかな」

 自分があのくらいの年齢だった頃を思い出す。ちょうど諒と出会った頃……

「オレさ……」
「ん?」

 振り返った諒の瞳。あの頃と変わらない、守ってやりたくなるような瞳……

「オレ……お前に初めて会った時、『将来、こいつと結婚する!』って思ったんだよ」
「……え」

 立ち止まり、目を大きく見開いた諒に、淡々と話し続ける。

「でも、二年生になってからだったかなあ……姉貴たちと母ちゃんに『男同士は結婚出来ない』って聞かされて……」
「………………」
「あの時、そんなこと教えられなかったら、自分の気持ち否定することも、嘘つくこともなかったのにな」

 繋いでいる手を両手で包み込む。 

「オレが世間の常識なんか気にしないで、ちゃんと告白してたら………そしたらお前も嘘つかないですんだのにな」
「優ちゃん………」

 コン、と肩に諒の額が落ちてきた。その愛しい頭を撫でながら、出会った時と同じように、誓う。

「もう、嘘はつかない」
「うん」

「諒、大好きだよ」
「優真……」

 大好き、と諒の小さな声が胸のあたりに響いてくる。

 なりふりなんてかまってられない。カッコ悪くてもいい。今のオレで、精一杯の愛を伝えよう。



---



お読みくださりありがとうございました!
次こそはとうとう!?ああ、ドキドキしてきました……

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 18-3(泉視点)

2017年01月25日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


「抱かせて、ほしい」

 そう言ったはいいものの……

 …………。

 どうやるんだ?


 噂では、尻穴を使うと聞いている。でも、それが本当のことなのかどうかは分からない。それは単なる噂であって、実際はオレの知らない何かが………


「ありません」
「え、ないのか?」

 困った時の侑奈様、で侑奈に聞いてみたら、あっさりと首を横に振られた。

「ないよ。噂通りで大丈夫」
「だ、大丈夫って!」

 それメチャメチャ痛そうだし、そもそも入るのか!? ていうか、そのこと諒は知ってて望んでるのか!?

 言うと、侑奈はうーん、と言うのをしばし迷ってから、

「……知ってるみたいよ、諒」
「え」
「なんか知り合いで詳しい人がいて、その人から教えてもらって、色々準備してるって言ってた」

 じゅ、準備!? ってなんだ!? ていうか、その知り合いって誰だよ!?

「さあ?」
「さあって!!」

 部活の誰かか!? オレの知らないところでそんな話………っ

(教えてもらって準備って、まさか、そいつと実践とかしてないよな!?)

 頭の中がぐるぐるしている中、侑奈はいたって呑気に、

「まーそういう訳だから、リードは諒に任せればいいんじゃない?」
「何でそうなる!?」
「え、だって分からないんでしょ?」
「でも任せたくないから、聞いてるんだろっ」

 そうじゃなきゃ、こんな話しない!
 言うと、侑奈はさも面倒くさそうに、
 
「うるさいなー、じゃあ、諒に聞けば?」
「そんなの聞けるかっ」
「なんで?」

 なんでって……
 ぐっと詰まってから、本音を言う。

「………。そんなのカッコ悪いだろ」
「は?今さら」
「…………」

 鼻で笑われた……

「泉がドーテーってことくらい、諒だって分かってるんだからさー」
「ドーテー言うな!!」
「ホントのことでしょ。ドーテーがカッコつけるなっての」
「だからドーテー言うなーーー!」

 わーわー不毛な言い争いをしていたところで、

「何二人でそんな盛り上がってるの?」
「わわわっ」

 当の本人が来たので慌てて話を止める。キョトン、とした顔が抜群に可愛い諒。

(なんか、ホント最近可愛くなったよな……)

 相当フィルターかかってるのかもしれないけれど、オレと付き合うようになってから、諒は日に日に「可愛く」なってきている。顔の作り自体はクールでカッコいい諒のままなんだけど、オレに向ける表情は、小学生の時の頼りなげなものにすっかり戻っていて、口調までもその頃のものに戻りつつある。

(今まで無理してたんだよな……)
 オレへの想いをずっと隠していた、と言っていた諒。そのために、オレの呼び名も変えていたのだそうだ。そんな風に無理して、自分を作ってきたなんて……

(オレが勇気を出していれば……)
 オレだってずっと諒のことを想っていた。そのことに気が付いた小学6年生の時、周りの目なんか気にせずに、勇気をだして告白していたら、こんな無理をさせることもなかったのに……

(もう、そんな思いはさせない)

 ちゃんと想いを告げて、想いを受け止めて、それで……

 ………………。

 どうやるんだろう……

 って、また、ここに戻ってきてしまった……。


***


 今日は夏祭り。
 侑奈は毎年浴衣を着てくる。亡くなったお母さんから着方を習っていたそうで、自分で着られるのだ。日本に戻ってきて初めての夏祭りの時に、他のクラスメートが浴衣を着ていないことや、着ていても、誰かに着付けてもらっているということを知って、とても驚いていた。

「ママに騙された。日本じゃみんな自分で着るっていうから練習したのに……」

 当時、侑奈はそう言って頬を膨らませていたけれど、これこそ確かに残された母親の形見なのだと、今なら分かる。浴衣を着た侑奈はいつもにも増して凛として美しい。


「あ、やだ、ひっかけた?」

 待ち合わせの時間寸前、侑奈が髪の毛に手をやって眉をよせた。ぱらついてきた雨に傘をさしていたけれど、止んだので閉じようとしたところ、引っかけてしまったようだ。キレイに結われていたのに崩れてしまっている。

「あ、直すよ」
 自然な感じに諒が侑奈の髪を直し始める。

 懐かしい。諒は昔はよくこうしてオレの妹や侑奈の髪を結っていた。それに、オレの髪をサルの毛づくろいみたいによくいじっていた。でも、小6の夏休み明けからピタリとそれはなくなり……

(……あ)
 考えてみたら、歴代の彼女、全員髪の毛わりと長くないか? そういえば「一回限り」の女には、ショートカットの女がいたことはあったけれど、「彼女」として付き合ってた女は、揃いも揃って肩につく以上の長さの髪の女ばかりだ!

 侑奈も髪を肩より短くしたことないし、諒の美人な母親も、ずっと綺麗な長い黒髪だし、諒の周りの女はみんな髪が長い……

「…………」

 真剣な表情で侑奈の髪をセットする諒の横顔。オレに見せる幼い表情とは違って、なんだかカッコいい……

(歴代の女にもこういうことしてたんだろうなあ……)

 そうして、何人もの女と関係を結んできた諒……

(やっぱり経験値が違いすぎる……)

 ため息しかでてこない……


 と、そこへ。

「わ~~ユーナちゃん浴衣~!かわい~!」
「!」

 ライトの明るい声に我に返った。
 10日ほど前に会った時は、暗い声をしていたのに…………、と?

「あ」
「あ」
「あ」

 思わず、三人で顔を見合わせて「あ」と言い合ってから、
 
「ライト!」

 一斉にライトと、ライトに肩車された男の子に向かって手を振った。
 ライトから少し遅れて、ライトの母親と、オレの父親と同年代くらいの男性、その間に二人に手を繋がれた女の子。

「………馬鹿ねえ」
 侑奈が嬉しそうにつぶやいた。

「変な心配しなくても、ちゃんと家族に見えるじゃないのよ」
「だな」
「うん」

 オレ達も肯く。
 どこからどう見ても、彼ら5人は一つのまとまりとして、そこに存在していた。



---



お読みくださりありがとうございました!
まだ続くのですが、長くなってしまったのでとりあえずここまで……
続きは明日、更新したい(希望)。
だってさー、もう、早くやっちゃいなさいよ君たち!って感じじゃん!
そのシーンが書きたくてここまで書いてきたんだからさー(←え)
でもまだ8月18日……泉の誕生日は22日です。

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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 18-2(泉視点)

2017年01月23日 15時43分55秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


「何やってんだお前! 大丈夫か!?」

 待ち合わせ相手であるヤマダライトが、派手めな男2人と揉めてる!と、慌てて声をかけたところ、当の本人ライトは、「え?」と、間抜けた顔をして見返してきた。

 その直後。

「何だお前? この外人と知り合い?」

 揉めてる男2人…じゃなくて、その少し離れたところにいたガタイの良い男が携帯をいじりながらこちらに向かって歩いてきて……

(げ。マジか)

 ライト対男2人だと思ってたのに、よくよく見ると、そのガタイの良い男の隣にもあと2人。合計5人もいて……



 それから30分後……

「泉の馬鹿!考えなし!だからサルって言われるんだよ!」
「あーもー分かった分かった……」

 侑奈に言われ続け、いい加減嫌になって耳をふさいだ。諒がオレを庇うように侑奈に手の平を向けて、

「まあまあ、侑奈、結果的には無事だったんだから……」
「それは私が諒に電話して、諒と桜井先生がきてくれたおかげでしょー?!」
「うんうん。そうだね。侑奈のおかげだね」
「何その言い方ー!!」
「まあまあ……」

 諒に宥められてもまだ侑奈の気は収まらないようだ。
 その横でライトはヘラヘラとしている。でもそのヘラヘラもいつもよりさらにヘラヘラで……

「それにしても浩介先生、あいかわらずデカイ声だったねー。『おまわりさーん!こっちでーす!』ってさー」
「おかげでちょっとノド痛いよ……」

 桜井先生が苦笑して言い、「いただきます」と目の前に出されたお茶をすすりだした。この真夏に熱いお茶を飲む桜井先生……
 開店時間直後のためか、そのお蕎麦屋さんにはオレ達以外に客がいなかった。おかげで遠慮なく話ができて助かる。


「で、何があったんだよ?」
「え」

 ヘラヘラを止めないライトにちょっとイラッとして語気を強める。

「なんで喧嘩ふっかけたんだよ?」

 奴らの話を総合するに、ライトと奴らは全くの初対面で、なぜかライトの方からいきなり殴りかかってきた、ということなのだ。

「んーーー……気分?」
「バカかっ!気分であんな強そうな奴らに喧嘩ふっかけんなっ。助けに入ったオレの身になれっ」
「んーーーー……」

 ライトはうーんうーん、と唸ると、「あのさあ……」と不思議そうにこちらを見上げてきた。

「なんで泉君、あそこで声かけたの?」
「は?」
「普通かけないよね?自分がやられちゃうかもしれないのに」
「かけるだろっ」

 ゴッと拳骨でライトの額を小突いてやる。あの時の不思議そうな「え」も「なんで?」の「え」だったのか!
 再度「え」と間抜けな顔をしてこちらを見てくるライトに、もう一度鉄拳制裁加えてやる。

「普通、友達やられそうになってたら声かけるだろっ」
「え」

 目を見開いたライト。

「オレ、友達なの?」

 は?

「はあああああ?!」

 びっくり発言にオレが叫ぶと、侑奈も同じように叫んで「馬鹿じゃないの?!」とライトの肩をたたいた。

「何今さらなこと言ってるの? 普通に友達でしょ!」
「え、でもさ、自分がやられちゃうかもしれないのに助けに入ろうと思えるほどは仲良くないよね?」
「はあ?!」
「だいたい、そのくらい仲良くたって、普通見捨てない?」
「見捨てるかっ」
「馬鹿馬鹿馬鹿っ」
 
 侑奈と二人でワアワア怒鳴っていたら、諒が「まあまあ」とオレ達に向かって手の平を向けた。そして、ライトに向き直ると、

「見捨てる人もいるかもしれないけど、でも、優真は見捨てない人だよ」

 諒は少し誇らしげに笑って、

「友達のことちゃんと守ろうとしてくれる。そういう人もいるんだよ?」
「…………」

 ライトは眉間にシワを寄せて押し黙ってしまった。
 ライトにはこうして庇ってくれる友人が今までいなかったということだろうか……


「……ま、でも、泉君?」
 沈んだ空気の中、桜井先生が呑気な調子で言う。

「相手5人じゃさすがに分が悪いよ? 慶くらい喧嘩が強いならともかく……」
「あー……はい。すみませんでした……」

 ここは大人しく頭を下げる。実は2人だと思ってたなんて、恥ずかしいから言えない……

「あ、もしかして、あの『おまわりさーん』って、今までも経験あるんですか?先生」
「うん……実は3回目」

 侑奈の問いに、頬をかきながら桜井先生が言う。

「慶を助けるため、というより、相手に怪我させたら大変だから、止めさせるためにね……」
「へえ……」

 あの可憐な容姿からは想像ができない……と思っていたところ、

「あの時と同じだね……」
 いきなりライトがボソッと呟いた。今まで聞いたことのないような暗い声。

「あの時も、慶君がオレのこと庇ってくれて、それで浩介先生が叫んで……」
「…………」

「オレが殴りかかった理由も同じだよ。オレ成長してないね」
「…………」

(あ……そうか…)

 少し前、ライトが渋谷さんに話していたことを思いだした。

『オレが中1の時もさ、オレに『日本から出てけ』とか言ってきた奴らに、『お前ら両親とも東京出身か?そうじゃないなら東京から出てけ!お前らが言ってるのはそういうことだ!』とかキレたよねー』

 そういう類のことを言われた、ということだ。そういえば奴ら、ライトのことを「外人」と言っていた。それでカッとなって殴りかかったということか……


「オレ、日本国籍だし日本に10年住んでるっつーのに、いつまでたっても「外の人」扱いなんだよね」
「…………」
「母ちゃんが先月正式に再婚したんだけどさ。その再婚相手の親も、オレのこと「外人さん」って言うんだよ。あ、もうボケちゃってる婆ちゃんなんだけどね」

 ライトは苦笑しながら、麦茶を一口飲んだ。

「当たり前なんだけど、再婚相手と向こうの連れ子2人と母ちゃんの4人は一緒にいると家族にみえるんだよね。でもオレは一人だけ浮いてて……」
「ライト……」

 侑奈がそっとライトの手を取ると、ライトは照れたような笑みを浮かべた。

「だから一人暮らしさせてもらってんの。気楽でいいよ」
「でも………、あ、ううん」

 侑奈は何か言いかけたけれど、やめてニコッとすると、

「私も高校卒業したら一人暮らしするんだよ」
「わ。そうなの?そしたらオレと一緒に住もうよ!同棲同棲!」
「しません」

 握り返された手をぴしりと容赦なく払いのけてから……侑奈はふっと笑った。

「さっきね、そんなの気にしないでママ達と一緒に暮らせばいいのにって言いかけたの。でも考えてみたら、自分もお父さんの再婚相手と住むのが嫌で一人暮らしするって言ったんだったって思い出して……」
「…………」
「自分のことだと見えないけど、人のことだと見えてくるものもあるのかもね……」
「ユーナ……」

 お父さんの再婚については割り切れたような顔をしていた侑奈だったけれど、やっぱりまだまだ思うことは色々あるのだろう……

 シンッとした中で、ちょうど蕎麦が運ばれてきた。

「はい!さっさと食べないと遅れちゃうよ!」

 はい、はい、はい、とわざとらしく明るく手を叩く侑奈。

「時間厳守なんだから!」
「分かってるって」

 今日はこれから、日本語ボランティア教室で大掛かりなレイアウト替えがあるそうで、男手が必要ということで、オレと諒もかりだされた。桜井先生は元々、この教室の親組織のメンバーらしく、こういうことの手伝いには時々参加するらしい。


 黙々と蕎麦をすすり、全員が食べ終わりかけたところで、

「あの、考えたんだけど!」
 いきなりの桜井先生の声に、みんな顔をあげる。

「あのね……」
 桜井先生はものすごく真剣な調子で、言った。

「結局のところ、自分が最も望む道に進むのが一番だよね」
「え」

 みんながキョトンとする中、ライトが「ああ」と肯く。

「さっきの話? 先生ずっと考えたの?」
「うん。ライトが一人暮らしの方がいいって言うなら、それでいいし、お母さんと一緒に暮らしたいと思うなら、他の人の目なんか気にする必要ないと思う。自分の気持ちを大切にして」

 こくりと肯く桜井先生。先生、ずーっと黙ってたけど、ずーっと考えてたんだ……

「ホント先生、天然……」
「だね」

 諒と二人で肯き合う。ライトはクスクス笑いだすと、

「浩介先生って昔からそうだよねー。一人でジーッと考えてて……」
「え、そう?」
「そうだよー! それで突然、オレと話すためにスワヒリ語覚えてきちゃったり!」
「え、だってそれは、ライトがスワヒリ語しか話さなかったから」
「でも、ママンからの情報で、オレが日本語も英語も話せるって知ってたでしょ?」
「でも実際、スワヒリ語しか話さなかったじゃん」
「だーかーらー……」

 言いながらライトは「あーあ」と両手を広げた。

「先生には敵わない。こんな人いないよー普通」
「え、普通だよ」
「普通じゃないって」

 ライト、嬉しそう……。たぶん、その当時、スワヒリ語しか話さなかったのは、ライトなりの世間に対する精一杯の拒絶だったんだろう。でも、その拒絶をアッサリ突き崩して手を差し伸べてきたのが桜井先生。天然のなせるわざ……

 桜井先生って、すごく素直な人なんだと思う。たぶん、オレと諒が付き合ってるって言っても「ふーん。そうなんだ」って普通のことのように受け止めてくれる気がする。なんの偏見も持たずに。色々な常識とかプライドとかに囚われているオレとは大違いだ。

『自分が最も望む道に進むのが一番』

 最も望む道……
 それは、諒と一緒にいること。諒と幸せになること。そのためには……
 



***




 レイアウト変更は予定通り無事に終わった。
 もう遅かったので、侑奈の家には上がらず、団地の下まで送ってから、いつものように二人で遠回りをしながら家まで帰ることにした。

 両想いだとわかってからは、こうして夜二人で歩く時は手を繋ぐようになった。でも、さすがに恋人みたいには繋げないので、友達同士がふざけて引っ張り合いをしているように歩くことにしている。それでも、繋がっている手が温かくて嬉しい。

「優真、もうすぐ誕生日だね」
「あー、そうだな」

 オレの誕生日は8月22日。あと2週間後だ。

「あのね……」
 諒が立ち止まり、繋いでいる手に力をこめてきた。

「優真の誕生日の頃、うちの両親、毎年恒例の海外研修とかいうやつで、一週間帰ってこないんだ」
「あ……そうだよな」

 小学生までは、諒が寂しいだろうから、といって、この時期は毎年泊まりにいっていた。でも、中学に上がってからは誘われなくなり、オレも自制できる自信がなくて極力個室で諒と二人きりになる事は避けていたので、一度も泊まったことはない。

「だからね……」
 諒はこちらを伺うように顔を傾けると、

「今年は久しぶりに泊まりにこない?」
「………え」

 申し出にドクンと心臓が波打つ。

「それで誕生日になる瞬間、一緒に過ごそうよ」
「……あ、うん」
「良かった」

 諒の柔らかい笑顔にますます胸のあたりが苦しくなる。

「ケーキ買おうね」
 明るく言いながら、今度は諒がオレのことを引っ張りながら歩きだした。

「………」

 目線の少し上にある諒の頭のてっぺんをジーと見つめる……

『自分が最も望む道に進むのが一番』

 オレが望む道……望むもの……


「諒」
 立ち止まり、繋いだ手に力をこめる。

「ん? っとと!」
 振り返った諒を、ぐっと引っ張り近づけさせる。

「な、何?」
「……諒」

 ずっとずっと大好きだった。一目惚れしたその柔らかい笑み。性別とか背の高さとかそんなこと何も関係なく、ただずっと大好きで……

「優真? どうし……」
「誕生日プレゼント、くれ」
「え」

 戸惑った様子の諒。

「プレ……ゼント? 優真、欲しいもの、あるの?」
「ある」

 繋いでいる手にさらに力をこめると、諒は困ったように口を引き結んだ。
 
「優真、オレもね、考えてることが……」
「諒」

 諒が何か言いかけるのを、人差し指で唇を押さえて遮ってやる。

「優……?」
「諒……」

 愛しいその瞳をのぞきこむ。そして、勇気を持って………告げる。

「抱かせて、ほしい」
「………」

 諒は目を見開き……

「え?」

 瞬きをするのも忘れてこちらを見返してきた。
 
「諒……」

 その愛しい唇に素早くキスをする。

「オレ、ちゃんとできるかどうか分かんないけど」
「……………」

「でも、一番望むものはお前だから」
「優ちゃ……」

「だから、お前の初めて、オレにくれ」
「………」

 諒は息を飲んで………それから、ぎゅうっと抱きついてきた。


 

---


お読みくださりありがとうございました!
大遅刻大変失礼いたしました。どうしても気に入らなくて何度も何度も修正修正で……でもずっと書きたかったライト君の内情。
あ、ちなみにライトは母親のことを人に話す時や人前では「母ちゃん」もしくは「ママン」と言いますが、ママと二人きりの時は「ママ」と呼ぶことが多いです。
次回は明後日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします!

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