創作小説屋

創作小説連載中。BL・R18あるのでご注意を。

心中ごっこ (あとがき)

2006年08月17日 10時54分26秒 | 心中ごっこ(原稿用紙30枚)
2000年6月28日(火)am2:18

↑に書き上げた小説です。

このころの私といえば・・・
失恋の痛手を乗り越え、数ヶ月後にせまった別の人(注:現在の夫)との結婚準備にむけて忙しくすごしていた・・・はず。
すんごい忙しかったはずなのに、小説書く暇はあったんだな


こんなつたない小説をお読みくださり、本当にありがとうございます。
更新できなかった日にも、予想人数以上の方々がお立ち寄りくださっていて、とても感激しています。
一言でもコメントいただけますと、今後の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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心中ごっこ (9/9)

2006年08月16日 22時49分27秒 | 心中ごっこ(原稿用紙30枚)
 2週間後―
 僕は高校生になっていた。新しい制服はまだぎこちない。芝田たちとは時々廊下等で会うけれどお互い無視している。学年トップの成績で入学した僕をみな一目おいているのだ。トップの座を守りつづけることが今の目標だ。でも授業は新しくできた友人たちと適当にさぼったりしている。最近僕はあまりがんばらないでいることを覚えた。それでいいかな、とも思うのだ。
 そして―ようやくある病院の個室に辿り着いた。親戚と嘘をついて病室に入れてもらうと、白いベットに色白の女性が眠っていた。
 僕が飛び降りようとしたビル―あそこから飛び降りて通行人に大怪我させたあげく自分も助かった人がいる、というアサコさんの言葉を思い出して、この二週間その生存者を探し続けたのだ。案の定、それは彼女自身のことだった。飛び降りからすでに二ヶ月以上たっていたが彼女は今だに入院していた。
 僕が出会ったのは、アサコさんの死のうという意識が実体化してしまったものだったのだろうか。それが僕の死のうとしていた魂と呼び合って、僕達は出会えたのだろう。不思議な、奇跡的な出会いだ。
「―アサコさん。正平だよ」
 白いなめらかな頬に手を触れると、彼女はゆっくりと目をあけた。そして僕を認めると驚きもせず、ふわりと微笑んだ。
「正ちゃん。髪、切ったのね」
 金色の髪はさすがにまずいので(両親にこっぴどくしかられた)黒に戻して短髪にしたのだ。そして眼鏡はやめてコンタクトにした。
「……あたしも髪きろうかなあ」
「きっと短いのも似合いますよ。アサコさん」
 僕は後ろに隠し持った白いくまのぬいぐるみを差し出した。
「またゲーセンとか競馬とか色々いきましょうね」
「うん。……今度は焼肉、食べれるといいね」
 アサコさんはくまを抱きしめ、くしゃくしゃっと顔中で笑った。今まで見た中で一番素敵な笑顔だった。


<完>

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心中ごっこ (8/9)

2006年08月15日 19時46分40秒 | 心中ごっこ(原稿用紙30枚)
 しばらく走り続けた僕らはいつのまにか駅の前まできていた。
「あーおもしろかった!」
「おもしろかったってアサコさん! 危ないじゃないですかっ」
「だって、正ちゃん助けてくれると思ったんだもーん。それにしても正ちゃん決まってたじゃない最後のケリ! 格好よかったよ!」
「ですよねっ。僕も自分に惚れました」
 明るく笑うアサコさんにつられて僕も笑い出してしまった。ざまーみろだ。
「今度奴らに会った時どういう反応しめしますかねえ。仕返しされるかな、やっぱり」
「仕返しこわい?」
「いいえっ。またケリいれてやりますよ」
「やったあ。技の名前考えようよっ」
「ちゃかさないでくださいっ」
 気づくともう8時を過ぎている。続々と駅から帰途につく人々が流れてきている。
「―正ちゃん、帰る? そろそろ」
「―え?」
 ギクリとした。―なんてことだろう。僕は、、、、忘れて、、いた。死のうと思っていたことを。すっかり、、、、忘れて、いた。
「―アサコさん」
「正ちゃん帰んな。ご両親も心配してるよ。わかったでしょ。正ちゃんにはたくさん可能性があるって。一番は勉強だけじゃないんだよ。ケンカだって強くなりそうだし。ネッ」
「いてっ」
 腹にいきなりパンチをいれられた。
「楽しかったね。競馬もゲーセンも変身も。正ちゃん、本当にかっこいいよ。さ、帰んな。色男。帰り道ナンパでもしてったら?」
「アサコさん……」
 僕は呆けてつぶやいた。アサコさんの猫のような目に僕はどう写っているのだろう。ショーウィンドーに写る自分を盗みみる。あの情けない正平はどこにもいない。いない。
「アサコさんは……どうするんですか?」
 きくとアサコさんはぎこちなく笑った。
「しばらくここにいる。正ちゃん、帰りな」
「でも」
「帰りなって。あたしは……」
 ふいにアサコさんが口をつぐんだ。視線の先―三十メートルくらい離れた駅の改札から出てくるサラリーマン風の背の高い男―。写真の男だ。アサコさんの元彼氏。
 アサコさんは食い入るようにその人を見ている。男は改札前の喫煙コーナーに歩いていき……一人の女性に声をかけた。ショートカットの茶色い頭の女性。彼女は男を見ると嬉しそうに笑い、吸いかけの煙草を灰皿におしつけた。そして女が男の腰に手をまわし、男が女の髪をなでる。『恋人』そのものだ。
「長い髪が―」
 小さく、アサコさんがつぶやいた。
「長い髪が似合うねっていうから髪を伸ばしたの。―お化粧する子は好きじゃないっていうからいつでも薄化粧でいたの。自分の彼女には煙草吸って欲しくないっていうから煙草もすわなかった」
 あろうことか二人は仲良く手をつないでこちらに向かって歩いてくる。
「あの人がいれば何もいらなかった。あの人のそばにいられるだけで幸せだった」
「っ?」
 二人はアサコさんのことが見えないように、何事もなく通り過ぎて行く。
「ごめんね。正ちゃん。つきあわそうとして。一人で死ぬの怖くて。でも―今日楽しいかったね。でも―ダメなの。何があってもダメなの。あの人にもう会えないっていわれたの。あの女の子を好きになったっていわれたの。あたしが一番じゃなくなったの。必要じゃなくなったの。あの人のそばにいられない世界で生きてても辛いだけなの。だから―だから、ごめんね」
「アサコさん!」
 予告もなくアサコさんが走り出した。慌てて追いかける。駅前の大通りにでた。いけない。道路に飛び出す気だ。
「危ない!」
 何も考えていなかった。ほとんど無意識のうちにトラックの前に飛び出したアサコさんの腕をつかみ引き寄せた。反動で道路に二人でひっくりかえる。僕はしっかりとアサコさんを抱き寄せていた。
 激しいブーイングのクラクションを残してトラックが走り去る。何事かと立ち止まった人々もまたその場を去り出した。
「―大丈夫? アサコさん」
 さすがに僕も足の震えがとまらない。抱きかかえたアサコさんは茫然と僕を見上げた。
「正ちゃん。危ないじゃない……なんで助けたりするの……」
「だって、アサコさん」
 僕は力の限りアサコさんを抱きしめた。
「だって、アサコさん。アサコさんの人生はあの男の人のためにあるんじゃない。アサコさんのためにあるんです。僕はあなたに生きていてほしいんです。アサコさん。あなたに生きていてほしいんです」
 人の目も気にならない。僕はまっすぐにアサコさんをみかえした。アサコさんは泣き笑いの顔で僕を見上げている。
「……ありがとね、正ちゃん」
 そしてぺちぺちと頬をたたかれた。
「その言葉そっくりそのまま返すよ。正ちゃん。正ちゃんの人生は親とか親戚とか近所の人とかクラスメートのためにあるんじゃないよ。周りがどう思おうと、正ちゃんの人生は正ちゃんのためにあるんだよ。正ちゃんにはたくさん可能性がある。あたしが保証する」
「アサコさん……」
 衝動に掻き立てられ、再び強くかき抱く。でもアサコさんはさみしそうに微笑んで首をふった。
「あたし―もっと早く正ちゃんに出会えてたらなあ」
「―え?」
 突然―、キラキラと馬券が舞ったときのようにアサコさんのまわりが輝きだした。
「アサコさん?」
「もっと早く、出会えてたらな―」
 そして―手応えがなくなり―
「アサコさんっ?」
 ふっと……消えた。
「アサコさんっ」
 アサコさんは、突然、消えてしまった。暖かいぬくもりとやわらかい感触だけを残して。
 僕はその場に座り込んだまま、しばらく動くことができなかった。
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心中ごっこ (7/9)

2006年08月15日 00時14分11秒 | 心中ごっこ(原稿用紙30枚)
 お次のアサコさんの希望場所はゲームセンターだった。僕は拒んだのだが無理やりつれてこられた。無意味な大音響で頭が痛くなる。
「ほら、正ちゃんもやろうよ」
 強制的に車のレースをやらされた。やったことがないので何もわからない。案の定アサコさんにも負けた。でも―なかなかおもしろい。UFOキャッチャーなるものも初めてやった。二人でムキになって白いくまのぬいぐるみを5000円もかけてゲットした。こんなことにお金をかけるなんて無駄以外のなにものでもないけど―取れたときの感動ったらなかった。調子にのってプリクラを十枚もとった。これも初めてやった。噂にはきいていて何が面白いんだろうって思ってたけど―面白いじゃないか。なんで今までやらなかったんだろう。そのシールをネタに店の横で缶ジュースを飲んでいたときだった。
「―げ」
 僕はとっさに隠れる場所を探した。もっとも会いたくない奴らが店にはいってきた。だからここに来たくなかったんだ。
「誰? あの3人知り合い?」
「知り合いというか……クラスメートでした。もしかしたらこれからもクラスメートになったかもしれない」
 あいかわらず奴らはヘラヘラしながら店内をうろついている。なにが楽しいんだか。
「僕のことを勉強しかできない暗い奴だっていつも馬鹿にしてやがる。なのにその奴らと同じ学校にいくなんて、寒気がする。あんな馬鹿な奴らと同じレベルだって思われるなんて、本当に冗談じゃない。……何ですか?」
 アサコさんが首をかしげていった。
「だって正ちゃん、馬鹿にされてるの嫌っていいながら、勉強できない彼らを馬鹿にしてる。道徳の時間に習わなかった? 自分がされて嫌なことは人にしちゃいけませんって」
「だって―」
 それは……それは。
 言いよどむ僕を尻目に、アサコさんは奴らの横を通りすぎ、バイクのゲームにまたがった。ミニスカートの裾があがり、かなりヤバめなラインまでみえている。
(アサコさん、目をつけられる)
 ひやひやしていると予想通り、奴らの目にとまった。いやらしい笑いを浮かべながらアサコさんの真後ろに回り、立ったりしゃがんだりしながらひやかしの声をあげている。
「……なあに君たち」
 ゲームを終えたアサコさんがバイクから降りて奴らを見上げる。奴らが下品に笑いながらアサコさんに近づく。
「お姉さん、一人なの? 一緒に遊ぼうよ」
「えー、どうしよっかなー」
 アサコさんはくるりと一回転して、僕のほうをみた。
「ダーリンに聞いてみる。ダーリーン!」
 ……って僕のことかよ、おい。
「この人達が一緒に遊ぼうって。どうする?」
 どうするって……。
「―正平? まさかお前正平じゃねえの? なんだよその格好」
 奴らの一人、芝田というリーダー格の男が僕に気がついた。最悪だ。
「え? 正ちゃん知り合い?」
 わざとらしく驚きの声をあげるアサコさん。
「知り合いっつーか、クラスメート」
 僕は観念した。またこれでゴタゴタいわれるんだ。ああ嫌だ嫌だ。うざったい。
「うっそだろ。正平の彼女? お姉さん」
 芝田たちが疑いの目をむける。
「なんでこんな奴とつきあってんの? つまんないでしょ、こいつ」
 芝田たちは本人を目の前にして僕の『つまならさ』を力説した。暗いし友達いないし話していても面白くないし勉強しか取り柄がないくせに自分たちと同じ学校にいくことになった馬鹿な奴。
「……で、だからなに?」
 ぴしゃりとアサコさんが話をさえぎった。
「あたしは、その正ちゃんを好きになったの。なんか文句ある?」
 澄んだ瞳。演技と分かっていてもくらくらしてしまう。芝田はにやにやと
「だからお姉さん、それは錯覚だよ。オレらと遊んだ方が絶対楽しいって。ね」
 あろうことかアサコさんの肩を抱いた。瞬間―頭に血がのぼった。
「離せよっ」
 反射的に芝田の手を払いのけていた。芝田が薄笑いをうかべた。
「へえ。やんの正平。小学校のときから優等生面してケンカの一つもしたことないくせによ。オレのこと殴れんの? あ?」
「うるさいっ」
 おもわず―芝田の顔をげんこつで殴っていた。芝田が不意をつかれたようによろめいてゲーム機にぶつかる。
「てめっ」
 あとの二人がつかみかかってきた。体当たりを食らわせるが、びくともしない。まずい。
「正ちゃん伏せて!」
 声とともに白いくまのぬいぐるみがとんできた。二人が驚いて手を離したすきに、腹にケリをいれる。感動的にきまった!
「正ちゃんっ逃げるよっ」
 アサコさんに腕をとられ、僕は脱兎のごとくその場を逃げ出した。
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心中ごっこ (6/9)

2006年08月12日 23時20分48秒 | 心中ごっこ(原稿用紙30枚)
「こういうの食べると頭が悪くなるっていわれませんでしたか?」
 僕は『ファーストフードのハンバーガー』を初めて食べた。思ったよりずっと食べやすい。ちょっと味が濃すぎる気もするけど。
「いわれないわよ。正ちゃんちってもしかして金持ち? もしくはお母さん教育ママ?」
「………そういうわけじゃないんですけど」
 家族の顔を思い浮かべると胃が痛くなる。
「真面目一方なんです。うちの両親。それに兄貴も。―兄貴は絵に描いたような優等生で、中学では生徒会長してて、県でトップの高校入って、東大ストレート入学。―僕も頭悪いってわけじゃないんですけど……学年でも十番内には必ず入ってましたから」
 アサコさんは何もいわず長いポテトを端から少しずつ食べている。
「でも兄のようにはなれなかった。第一志望の私立高校には落ちて、すべり止めだった県立高校にも落ちて、結局二次募集していた僕の偏差値の半分しかない高校に行くことになって。―ずっと勉強だけしてきたんです。ろくに遊びもしなかった。なのに屈辱ですよ。親戚や近所の人達にもいえやしない。馬鹿にされるのが目にみえてる。『あんなにがんばってたのにかわいそうね』とか『お兄ちゃんは東大なのに弟さんはあの高校なのね』とか。そんなのたまらない。両親も恥ずかしくて言えないでしょう。僕は期待にこたえられなかったダメな息子なんです。周囲から馬鹿にされながら生きていくなんてまっぴらなんです。だから死のうとおもったんです―こんな理由、馬鹿みたいですか?」
「……正ちゃん、あそこの女子高生三人がずっと正ちゃんのことみてるの気づいてる?」
 アサコさんが僕の問いかけとはまったく関係の無いことをいいだした。アゴで前方にすわっている群れを指している。
「正ちゃん、今そうやってみられちゃうくらいカッコよくなってるの気づいてる?」
「は?」
 ガラスに映る自分。自分でないような派手な男。目立つ男。自身に満ち溢れた男。
「勉強しかしてこなかったっていったよね。でも勉強以外のことに挑戦してみたらもっと色々一番になれることあっただろうね。例えばルックス。磨けばこんだけ光るんだもん。クラスでも一番人気だったかもよ」
「そんな……外見が変わったくらいじゃなにも変わりませんよ」
「……そうね。これ、みて」
 つきだされたのは一枚の写真。海をバックに清楚な女の人と背の高い男の人が仲睦まじく写っている。
「げ。これひょっとして…」
 得意気なアサコさんと写真の女を見比べる。まるで雰囲気は違うがパーツは同じである。
「そ。あたしよ。そうよね。外見変えたくらいじゃ本質はなーんにも変わらないのよね」
「……でも気分転換になりましたけど。競馬も初体験だったけど楽しかったです」
 僕が正直なところを打ち上げると、アサコさんは、ふ、ふ、ふと笑った。
「あたしも気分転換にはなったなあ。でもダメ。やっぱり生きていくの、辛いなあ」
 そしてピンッと写真の男を指ではじいた。
「あたしの死ぬ理由はこれ。この人、もうあたしのものじゃないの。もう会えないっていわれたの。あの人の一番じゃなくなっちゃったの。……そんな世界で生きていくのはつらすぎて苦しすぎて。だから、死ぬの」
 きっぱりと言いきる穏やかなアサコさん。
「でも……これから生きていけばその人より好きな人ができるかもしれないじゃ……」
「いこっか」
 さえぎるようにアサコさんは席を立った。
「―アサコさん」
 一瞬、アサコさんの姿が透けてみえて僕は目を疑った。遠い背中―追いかけて抱きしめたい衝動にかられたけど―足がすくんで動けなかった。
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