救護院の自室に戻ったジョシュアは、そのまま崩れるようにベッドに倒れ込んだ。
葬儀から帰る途中、道端で胃の中のものは全て戻していたが、それでも一向に嘔吐感は収まることがなかった。ふらつきながらも何とか窓枠までたどり着き、乱暴に窓を開け放つと、ジョシュアはこみ上げてくる胃液を雨に向かってぶちまけた。
震えが止まらなかった。臓腑がきりきりと引き絞られるように痛み、なお彼に嘔吐を促した。
取り返しのつかない過ちを、犯してしまった…。
その思いに捕らわれ、ジョシュアはまともにものを考えることも出来なかった。
あの日、マードックの部屋のドアを激しくノックしたその時から、例え何があっても後悔はしない、妹の仇を討つためならば、灰色のオーバーコートの男、今では名前もわかっている、エドワード・マクマーナン、奴の命を絶つためならば、どんなことでもする、そう、悪魔にだって魂を売ると固く誓ったはずなのに…。
実際にはジョシュアは、自分の犯した罪の大きさにただうち震えるばかりだった。
自分は、決して奪ってはならないものを一人の少女から永遠に奪ってしまったのだと、ジョシュアは思った。
どうすれば、この罪を償えるというのか…。
どうすれば、ティルダに許しを請えるというのか…。
どうすれば…、自分は…。
ジョシュアはベッドにうつ伏せになり、額を枕に強く押しつけ、震えながらその答えを必死に求めた。
不意に彼は、声を押し殺して笑った。
自分がエドワード・マクマーナンのことを決して許せないのと同様、彼女も真相を知れば、自分のことを許せないに違いない。そしてそんな自分が犯した罪を償う方法はたった一つしかない…。
そんな当たり前の結論に達して、ジョシュアは笑いたい気分になった。
マードックの体に一本目のナイフを突き刺したその瞬間に、自分が与えられる罰は自ずと決まってしまったのだ…。
雨が激しく救護院の屋根を叩いて、少年の嗚咽の声を包んだ。
ジョシュアは、その夜生まれて初めて、信じていないはずの神を呪った。
*『空のない街』/第十三話 に続く
葬儀から帰る途中、道端で胃の中のものは全て戻していたが、それでも一向に嘔吐感は収まることがなかった。ふらつきながらも何とか窓枠までたどり着き、乱暴に窓を開け放つと、ジョシュアはこみ上げてくる胃液を雨に向かってぶちまけた。
震えが止まらなかった。臓腑がきりきりと引き絞られるように痛み、なお彼に嘔吐を促した。
取り返しのつかない過ちを、犯してしまった…。
その思いに捕らわれ、ジョシュアはまともにものを考えることも出来なかった。
あの日、マードックの部屋のドアを激しくノックしたその時から、例え何があっても後悔はしない、妹の仇を討つためならば、灰色のオーバーコートの男、今では名前もわかっている、エドワード・マクマーナン、奴の命を絶つためならば、どんなことでもする、そう、悪魔にだって魂を売ると固く誓ったはずなのに…。
実際にはジョシュアは、自分の犯した罪の大きさにただうち震えるばかりだった。
自分は、決して奪ってはならないものを一人の少女から永遠に奪ってしまったのだと、ジョシュアは思った。
どうすれば、この罪を償えるというのか…。
どうすれば、ティルダに許しを請えるというのか…。
どうすれば…、自分は…。
ジョシュアはベッドにうつ伏せになり、額を枕に強く押しつけ、震えながらその答えを必死に求めた。
不意に彼は、声を押し殺して笑った。
自分がエドワード・マクマーナンのことを決して許せないのと同様、彼女も真相を知れば、自分のことを許せないに違いない。そしてそんな自分が犯した罪を償う方法はたった一つしかない…。
そんな当たり前の結論に達して、ジョシュアは笑いたい気分になった。
マードックの体に一本目のナイフを突き刺したその瞬間に、自分が与えられる罰は自ずと決まってしまったのだ…。
雨が激しく救護院の屋根を叩いて、少年の嗚咽の声を包んだ。
ジョシュアは、その夜生まれて初めて、信じていないはずの神を呪った。
*『空のない街』/第十三話 に続く
以前読んだときも感じたのですが、言葉の選び方のひとつひとつ、文章、内容、どれをとっても本当に「うまいなあ」と。
せぷさんの作品の最高峰のひとつだと思います!
多少ご都合主義的なところはありますが、ツイストに次ぐツイストで物語からは目が離せないですし。
にもかかわらず、「読んだ!」と言ってくれた人は蒼史さんも含めて二名しかいないのです。
リアルな知り合いに至ってはゼロ。
どーしてかな~、なぜなのかな~、恥ずかしがって読んだってこと言い出せないだけなんですかね?