風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

遠くて近い房総へ-1

2014-12-14 | 千葉
○ プロローグ

神奈川の隣の県ながら、海を挟んでいるためになかなか行く機会のない房総半島。
三浦半島に行くたびに眺めていますが、近いようで遠い場所です。
1月に訪れましたが、再び海を渡って半島上陸することにしました。

目的は、ドライブしながらのお寺巡り。
お寺好きのzimaと出かけます。

○ 快晴のアクアライン

天気は快晴。寒波が押し寄せる極寒の一日だと天気予報で聞いたので、おろしたての厚手のダウンコートを着ましたが、それほど寒さは感じません。
家の近くで集合し、「久しぶりだね、いつぶりかな?」「もう思い出せないねー」と言いながら、出発します。



川崎からアクアラインを通って行きます。
羽田空港のすぐそばなので、飛び立ったばかりの飛行機がとても近くに見えます。
近すぎて、心臓バクバク。海に落ちないでねー。



早朝だからか、アクアラインはすいていて快適。
海中トンネルに入ったのは覚えていますが、互いの近況報告をしているうちに、車は海の上を通っていました。
「あれ、海ほたるは?」
「もう後ろだよ」
話に夢中で、海ほたるを通り過ぎたことにも、気が付きませんでした。



zimaの運転には無駄がなく、身体に変なストレスがかかりません。
ドッタンバッタンの私の運転とはえらい違いです。
相変わらずの華麗なハンドルさばきですが、本人は「この道路がいいだけだよ」と謙遜していました。



海では海苔の養殖が見えました。
「この辺りは遠浅で、人が立っているのを見たことがあるよ」
そんなに浅瀬なのね!海に落ちても溺れずに済みそう!

○ 緑の国、房総

子供の頃には、何度か親に連れて行ってもらったことがあるそうですが、ほとんど覚えていません。
大人になってから房総半島に行くのは、これが3回目。
3回とも、海を渡る前と渡りきった後の、土地のあまりの変貌ぶりに、驚きました。
「県境の長いトンネルを抜けると、緑の国だった。」

手つかずの自然というか。いえ、手は入っているんですが、日本昔話に出てくるような原風景的な光景が広がります。
(土地の方、気を悪くされたら済みません)

海を渡り切ったところで、zimaが「どこで降りようかな」とつぶやきました。
選択肢なんてないのでは?と思いましたが、最近、高速道路が伸びたんだそう。
私たちが向かう先は富津なので、まだ少し高速道路を乗って行きました。

○ 東京湾観音

高速を降りた途端に、くねくねの細い畑道になります。
私ならハンドルを握りながらも腰が引けそうですが、今回は助手席ですっかりおまかせモード。



大林宣彦の映画に登場しそうな、レトロな駅の前に出ました。
内房線の佐貫町駅です。平屋なので、空が広く感じる~。時が停まったよう。

更に進むと、山の上に大きな像が見えてきました。
「あれはもしや、東京湾観音!」



その名は聞いていましたが、実際に見るのはこれが初めて。
本当に大きいわ~。高さ56mだそうです。
逆光でシルエットになっていましたが、なめらかな曲線が優美でした。いいことありそう。

そうして、最初のお寺に到着しました。

○ 仁王さんと不動さん

やってきたのは関東三十六不動の一つ、岩瀬不動尊。入り口に仁王像があります。



仁王と不動明王のコンビは、にらみがききまくり。
ここに忍び込める泥棒は、よっぽど豪胆者でしょうね。

お寺の人が庭掃除をしており、本堂の中へと勧めてくれました。
住職が中におり、御朱印をお願いすると、ご接待のお煎餅をいただきました。
zimaにお線香を分けてもらって、一緒にあげました。



ご本尊が不動尊。本殿の参拝を済ませた後、奥の観音堂へのルートを見つけたので、行ってみることにしました。

○ 土砂崩れの爪痕

お堂は崖下にあり、山の中腹に観音堂があります。
結構な石段を登って行きます。



観音堂の前で、驚きの光景を目にしました。
お堂の後ろはそそりたつ崖で、上から青いビニールシートがかけられていたのです。



どうやら、最近土砂崩れがあった様子。
お堂はギリギリ無事だったのね、と安心しかけましたが、よく見ると屋根が壊れています。
「お堂も、土砂崩れを受けちゃったのかな」
下を覗き込んだzimaは「土台がずれちゃってるよ」と声をあげます。
基礎から柱が、1mくらいスライドしていました。

生々しい自然の爪跡がそのまま残されており、驚きのあまり、声をなくす私たち。
土砂流に押されて、ずれたんでしょう。かなり危険状態にあったと分かります。
それでも、お堂の中は被害に遭っていません。
土砂流に押しつぶされずにそのままの姿で移動したようです。
木造ながら、しっかりと組まれた造りなんですね。



さらに奥へと続く道をたどってみると、細道は階段になり、それを登りきると、見晴らし台がありました。
町の向こうに、房総の海が見えます。

気持ちがいい光景ですが、足元の登ってきた斜面の方に目をやると、広げられたブルーシートに何とも言えない気持ちになります。
シートの下に見えるのが観音堂。
「崖の下にお寺を建てる時、後ろの斜面の木を伐採することが多いけれど、そうすると地盤が緩んで崩れやすくなるんだよね」
地中にしっかりと張り巡らされている木の根が抜かれてしまうからですね。
物知り~。



次に大雨が降る時までに、しっかりと土砂災害の対策を講じられればいいのですが。
お坊さんの住まいである庫裏は、建て替え中でした。まずは人の住むところから補強しているのかもしれません。

土砂崩れが気になりながらも、ぐるっと裏山散策をしたことで、不動尊だけでなく厄除け観音もお参りできました。

○ 真理交差点

次に、坂東31番札所の笠森観音へ向かいます。
内房から、外房の方へと向かったところ。
地図で見るよりも、房総半島は距離があるため、到着までに時間もかかります。
車内では、四国香川でうどんめぐりをした話を聞いて盛り上がりました。

袖ヶ浦市に入ったところで、交差点の信号に目がひきつけられました。
「真理ですって!」
読みも「まり」。全国の真理ちゃんに、教えてあげたーい。

国道410号線には、富来田富士見という信号もありました。
「ふくたふじみ」と読むそうです。一気に長くなったわー。
近くにあるのは、JR久留里線の馬来田(まくた)駅。
ふくたとかまくたとか、紛らわしいですね。

駅の近くには「真理谷」交差点がありますが、こちらは「まりやつ」と読むそうです。
まりやなら女の子名前が続いたのに、ちょっと残念。



○ 子供の遊び場ならず

笠森寺の大きな駐車場には、結構な数の車が止まっていましたが、見たところひとけがなく、とても静か。
「参道入り口」と書かれた場所から、うっそうとした木立の中に入って行きます。
結構な数の石段を登って行き、息切れしました。

境内に鳥居があったので、寄ってみます。
笠森熊野神社で、扁額に「熊野三神」と書かれていました。
遠く離れた熊野の神様を、房総に勧請したんですね。



参道に、しめ縄の蒔かれた大きな穴の開いた木があり、子供がくぐって遊んでいました。
「わあ、私もくぐりたいなー」と言うと、「いやいやちょっと待って」とzima。
指さした方を見ると「子授楠(こさずけのくす)」と書かれていました。子供たち、遊んじゃいけませーん!
子宝祈願って、なぜかくぐる系が多いですね。



階段の上にある二天門内には、髪を逆立てた、スリムな「風神」と「雷神」が祀られていました。
「立春大吉」の札が打ちつけられています。
立春といったら節分の翌日ですが、いまは12月。
時期が違いますが、2月に打ち付けた分かしら。
どんどん重ね打ちされ、立体的になっていく札を見るたびに、いったいどこまで増やすんだろうと思います。
重力への飽くなき挑戦ですね。



○ 真四角の笠森観音

そうしてたどり着いた本堂。
真四角の伽藍を眺めます。こんな形のお寺を見たのは、初めて。
京都の清水の舞台を思い出しますが、このような形はここが唯一のものだそうです。
不思議な変わった光景から、目が離せません。



まずは手水舎でお浄めをしてから。
自然さを感じるあたりがこのお寺に合っている、すてきな龍の手水舎です。



本堂へは、遠くからでも斜めに見える階段を上がって行きます。
予想にたがわず相当急で、手すりにつかまらないと、バランスを崩してしまいそう。
靴を脱いでスリッパに履き替えるため、滑ったらザ・階段落ちです。
屋根がついているだけの、建物の外なので、突風が吹いたらどうしようという怖さもあります。



手すりの向こうには、本堂の足組が見えます。
太い木材ですが、これで支えられているってすごいですよね。
なぜ揺れずにいられるのかしら?なぜつぶれないのかしら?
日本の木造建築って、本当に素晴らしい。上まで上れたことに、感動します。



御朱印をお願いしている間に堂内で読経をしたら、お坊さんが書き上げて、私がお経を読み終えるのを待っていてくれました。
ひー、プロの人に聞かれちゃったよ~、と、恥ずかしくなりましたが、「どちらから起こしに?」「ご苦労さまでございました」と、親切に応対していただきました。
でもあせってハイスピードでお経を読んだため、zima(読経未経験)から「お経はもっとゆっくり読まなきゃ」とダメ出しが出ました。



登ってきた下界を見下ろします。
ここは、高所恐怖症の人は無理そうですね。
四方が見渡せて、見晴らしはとてもいいのですが、残念ながらここは内陸、どんなに目を凝らしても海は見えませんでした。

帰りの階段は、行きよりも恐怖感。
お尻で滑って行ければいいのに。



時折大きな鐘の音が響いていたので、鐘楼のところへ行ってみます。
参拝を済ませてしまったため、鐘は打たずに眺めるだけにしました。
杖を突いたよぼよぼのおじいさんが、おばあさんに支えられながらやっとのことで鐘楼堂に登ってきましたが、誰よりも大きな音で勢いよく鐘をついていました。



約2万坪の山全体がこのお寺の敷地。
お寺を取り巻く林は、創建当時より禁伐林として保護されており、昔のままの状態で残されている自然林は、国の天然記念物に指定されています。

来た道とは違う道を通って帰ってみます。
いくつもの年配グループが狭い石段を登ってくるたびに、みんなが登り終えるまで上で待って、挨拶を交わしました。



その2に続きます。


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