風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

高崎だるまと観音さま 2

2017-09-11 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
その1からの続きです。

● 高崎といえば

目的だった2つのお寺を訪れたあとの予定は、特に決めていませんでした。
「さて、これからどうしよう?」
「達磨寺に行ってみたいな」とミカンさん。
祈祷してもらったダルマを、家に飾りたいそうです。

たしかに、高崎といえばダルマ。
毎年、年末近くなると、だるまの作成にいそしむ高崎のニュースが流れます。
もちろん異存はありません。参りましょう!

● こけしのメッセージ

途中の道路脇に、こけしが等間隔に立っていました。
(うわっ、どうしてこけし?)と胸がザワつきます。



よく見ると、胴体に文字が書いてあります。
「ゆ・っ・く・り・走・ろ・う」
こけしのインパクトの強さに驚いているうちに、通り過ぎてしまいそう。
ドライバーは、すぐにメッセージに気づくのかしら。

● 群馬八幡駅

小さな駅の前を通りました。
「なんていう駅かな?」
一瞬「郡上八幡駅」かと思いました。
でもあれは岐阜県。そんなはずないわね。
正解は「群馬八幡駅」でした。似てるー。

名前から察するに、そばには八幡宮があるということですね。
大きな鳥居の奥に、立派そうな社殿が見えました。
看板に「上野国一宮八幡宮」と書かれていた気がして、おやっと思います。
日本一ノ宮巡りもしている私。
群馬の一ノ宮、貫前神社は参拝しましたが、ほかにも一ノ宮があるのかしら?

あとで調べてみると「上野国一社八幡宮」だったとわかりました。
群馬八幡に続き、こちらもまぎらわしいな~。
というより、見間違えるのは私の目が悪いせいですね。

● だるまのお寺

目指すだるま寺は、山の方にありました。
川に架かった橋の欄干に、なにか赤いものが見えます。
あれはもしや、リンゴ?



いいえ、ダルマの後姿です。



橋を渡って着いたのは、少林山達磨寺。
略して少林寺、ではありません。
黄檗宗(おうばくしゅう)の、きっちりとした禅宗寺院です。
境内には、凛とした空気が張り詰めていました。

鐘楼。下は通り道になっています。
鐘が「ゴーン」と鳴った時に下にいたら、すごい音響でしょうね。



観音堂。雰囲気があるかやぶき屋根。さらにそこから若草が生えています。
境内には、建築家ブルーノ・タウトが、2年の間過ごした家も残されています。



本堂へ向かうと、なにか赤いものがごそっとうず高く積まれているのが、遠くから見えました。
なんだろうと思って近づいてみると、そこにあったのは、ダルマ!



あふれんばかりの大小さまざまなダルマが、みっちりと詰まっていました。
おびただしい数の、色とりどりのダルマに圧倒されます。



どのダルマにも、両方の目が入っています。
願いが叶った人々がお礼参りに訪れて、奉納しているのでしょう。



大きなダルマには、JRや森永といったメジャーな会社や、地元の野球チームなどの名前が書かれていました。



軒下には、雨宿りをしているトトロのような、大きなダルマがいました。
いろいろなサイズのダルマが飾られていました。みんな白目でちょっと怖いです。
ミカンさんは、小ぶりのダルマをひとつ選び、お坊さんに祈祷をお願いしました。
「では頭をお下げ下さい」とお坊さんが小声で穏やかに言ったかと思うと、突然朗々と響く声でお経を読みだしたので、一緒に頭を下げていた私もビクッとしました。



このお寺では、そうやってダルマに念を込めてくれるんですね。
これでミカンさんの願いも叶うことでしょう。



ピンとした空気の漂う達磨寺の境内に、「だるだる」という名前の甘味処があって、ちょっと脱力しました。
高崎観音は高さ41.8m。大船観音は25mなので、大きさでは高崎に軍配が上がります。
大船は胸像で「本体は地面に埋まっている」という都市伝説もありますが。(あくまで伝説)
どちらの像も優しい感じで、両方好きな巨大仏です。

戦前に造られた高崎の観音様はとにかく目立つため、戦時中は「空襲の標的となる」という理由で、取り壊しが検討されたそうです。
でも、市民からの強い反対で取り壊されずに済んだのだとか。それで、私たちも今こうして見られているわけです。
今も昔も、住民の心の支えなんでしょう。

そばまで行って満足し、また山を下りました。



群馬に来るたびに、この2人のポスターを見かけます。
すっかり群馬代表ですね。

● 思いつきで洞窟観音

ダルマに別れを告げて「次は、こんにゃくパークに行ってみようか」と、下仁田方面へと向かいました。
途中にあった「洞窟観音」の看板に目が留まります。
「今の見た?」
「洞窟観音って書いてたね?」
洞窟の中に観音様がいるんでしょうか?

なんだか気になります。そう遠くなかったので、こんにゃくパークから方向転換して、そちらに行ってみることにしました。
よくわからないまま、中に入ってみると、ひんやりした空気に包まれます。
洞窟の中は常に17度くらいなんだそうです。自然の冷蔵空間。
外のじめじめした空気は一気になくなりました。



これまで入った洞窟は、どこもみんな暗くて、明かりがないと先に進むのも一苦労といったところばかりでした。
ここも真っ暗かと思いましたが、歩くのに問題ない程度の明かりがついています。

少し行くと、御影石の観音像がありました。
通路沿いにいくつも洞があり、その中に観音さまが一体ずつ入っています。
33の姿に変化をすると言われている観音様。
その一つ一つの観音様の像が彫られているようです。


衆宝観音



徳王観音


観音様の御顔は端正で涼しげな美しさ。一つ一つのクオリティがとても高く、見とれます。
周りには誰一人としていません。時折、洞窟のどこかから人の話し声がぼんやりと聞こえてきますが、姿は見えないので、ずいぶん遠いところにいるようです。



完全な異空間ですが、居心地は悪くありません。
ゆっくり進んでいくと、曲がりながらもなお洞窟は先にのびています。



そのうちに大きな洞があり、何体もの観音像が洞にありました。
迫力!
人が銅像の前でくつろぎながら瞑想できるように作られた「瞑想の場」がありました。



冷気が洞窟の奥からやってきます。
涼しくて、避暑にうってつけの場所です。



観音様の周りの石は、浅間山から持ってきた溶岩石だそう。
通路を進んでいくと、途中で通路が左に曲がっていくところがあり、その辺りから雰囲気が変わっていきます。
コンクリートの坑道が素彫りの洞窟に変わり、小さかった通路横の小部屋も急にダイナミックになります。

滝観音。奥に大きな滝を模して削った岩がありました。20mもの高さだそうです。



外に出て来た時には、本当に別世界から戻ってきた感覚。



隣には礼拝堂があり、ろうそくの光が灯っていました。
洞窟の中なので、換気穴がしっかりありました。



● 徳蔵さんはすごい人

ここは、大正時代に呉服で財を成した山田徳蔵という商人が、当時のお金で私財200億円を投じ、88才で亡くなるまで50年間かけてつくりあげた洞窟。
多くの人々が共に楽しめる霊場、楽天地を目指して、ここを作ったそうです。

機械のない時代、人の手でここまで作ったということに、驚き、そして感動します。
徳蔵爺の邸宅の下にはかつての防空壕がありましたが、崩壊の危険があるとかで途中までしか入れませんでした。

総長400mを越えた、十分長い洞窟ですが、「この倍は掘りたかった!」という徳蔵さんのコメントが載っており、彼の無念さが偲ばれます。
とっても見がいがあって、大満足。
おもしろい体験ができました。

● 陽気な鬼と閻魔

敷地は広く、隣には回遊式日本庭園が広がっています。
北関東一のスケールの大きさだそう。



群馬の三波石をはじめ、日本中の巨岩が集められています。
よく計算された配置の名園ですが、ここに、笑い閻魔と笑い鬼の像がありました。
ワッハッハ!明るい気持ちになります。



また、観音像第1号の像もありました。
ビギナーの作品というような荒削りの感じ。
でも十分上手です。私にはとても真似できません。



池にいるのは浦島太郎?一寸法師?
亀の上に乗っているので、浦島太郎の方でしょう。





● つじうらを引く

庭園を散策していると、山田徳蔵さんが「霊力が籠っているとして、祈り奉った」という大きな石がありました。
そのそばに、なぜかおみくじの引き出しも。
おみくじって、お寺や神社で引くものじゃないの?
1番目の引き出しは、通常のおみくじ。
二番目は、英語版のようです。
3番目に、「つじうら」と書いてありました。
つじうら?初めて見ます。
よくわかりませんが、なんだかおもしろそうなので、引いてみることにしました。



気になる結果は…
大吉!
やったあ!
でも、よく読むと「情事ご注意」なんて書いてありました。



「つじうら」とは、かつていた辻占い師のことのようです。
なので、これは神託としての「おみくじ」とは違って、もっと俗世的なことがかかれていました。
「デイト:早目にせよ」とか(笑)。

● 山徳記念館

庭園内には記念館があり、山田徳蔵氏のコレクションが展示されています。



「のらくろ」の作者、北沢楽天氏の作品や日本の歴代首相のイラストなどが飾られていました。
なかなか堪能できた面白い場所。
庭園も美しく、秋には美しい紅葉が楽しめるようです。

● 早目の帰途に

「つじうら」について聞いてみようと、先程の発券所の人のところへ行くと、閉園間際でもう閉まっていました。
さびしーい。



ここは「ぐるたび2016年」で「群馬県の日本庭園注目ランキング」第1位に選ばれたそうです。
しかし、ぐるたびというものがあると、これまで知りませんでした。
なんだか雨足が強くなってきたように感じます。
まだ時間はありますが、変な天気なので、そろそろ帰途に着くことにしました。



高速に乗ると、徐々に雨が強くなり、とうとうものすごい雨になりました。
前を走る車が両脇に水を飛ばし、タイヤの辺りは水しぶきでもうもうと白くなるため、車間距離が曖昧になります。
こわいわ~。



どの車も、一様に減速します。
声を交わさなくてもわかりあっている優しい世界。。。
なんてことを言っている場合ではありません。
かなり危険度が高い場所にいるので、それぞれにできる防災をしているわけです。

● 大雨の事故

大雨の中でも、初めのうちは道路はそれなりに動いていましたが、とうとう渋滞になりました。
道路脇を、埼玉県警の警察カーが走り抜けていきます。
どうやら先の地点で事故が起こった模様。
おそらく大雨の視界不良やスリップしやすさで事故が起きてしまったんでしょう。



ナビを見ると、さっきまで白かった高速道路が、黄色と赤色になっています。
黄色は渋滞、赤色は暴風雨区域とのこと。
いよいよ嵐の中に突入し、ワイパーを高速で動かしても、雨が打ち付けて前が見えません。



「わあ、怖い。こんな時に高速は運転できないわ~」と言うと、
「それでも下の道路よりは全然楽」とミカンさん。
確かに、交差点での事故が起こりやすいですね。
それに人や自転車は死角に入りやすいし、急な動きの予想がつかないからですね。

じりじりと車は進み、いよいよ事故現場の横を通り過ぎました。
青い車が横向きで停まっており、運転席の窓ガラスが割れていました・・・。
どうか、乗っていた人が無事でありますように!

● 渋滞を抜けて

そこを過ぎると、今までの込み具合が嘘のように道路は空き、暴風雨区域からも外れたようで雨も収まってきました。
一斉にびゅんびゅん飛ばしはじめる周りの車の中で、
隣を目立つバスが走っていきました。
武蔵ヒートベアーズという、埼玉県のプロ野球球団でした。





雨も降ったり止んだり。「またいつ大雨になるかわからないので、もうちょっと東京に近くなってから休憩しよう」と言っているうちに、横浜まで来てしまいました。
こういった日は、暗くなるのも早いもの。
この日は誕生日だったため、ケーキをいただきました。





● epilogue

年に一度の誕生日までお寺巡りにあてるなんて、私もすっかり巡礼者…と思いますが、百観音巡りもまた一つ歩が進み、残すところあと5寺になりました。
ゴールが近づいてきたわ~。

一人で行くと、黙々とお参りばかりをして、真面目な修行という意味合いの方が強くなりますが、だれかと一緒だと、道中楽しくおしゃべりができるし、その土地の食べ物や近隣の観光などもできるので、満喫したと気持ちが上がります。
高崎も、ダルマだけではなくいろいろな見どころ、食べどころがありました。
残りのお寺もこれまで通り、ひとつひとつ地道に進んでいこうと思います。



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