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ベター・コール・ソウル シーズン2 【感想】

2016-04-22 08:00:00 | 海外ドラマ


本家「ブレイキング・バッド」(BB)はシーズン2から異常に面白くなった。
そのスピンオフである「ベター・コール・ソウル」はどうか。
そのシーズン2(全10話)をNETFLIXにて観終わったので感想を残す。

シーズン1も十分面白かったが、シーズン2に期待するのはシーズン1を上回る引力(中毒性)だ。

結果、めちゃくちゃ面白かった。貫禄の完成度。「引力」という点においては本家BBには及ばないが、このドラマの設定上では仕方ないか。相変わらず演出レベルがハンパない。本家BB同様、映像演出の教材になりうるクオリティだ。最後の最後まで「ヴィンス・ギリガン、さすがだわ~」と唸ってしまった。

前シーズンで兄チャックとの確執によって「ソウル」ことジミーは大きな挫折を味わったが、「捨てる神あれば拾う神あり」で他の大手弁護士事務所にスカウトされ、就職することになる。貧乏暇なしだった前シーズンとは打って変わって、豪華なオフィスに豪華な社宅、高級社用車が支給され、御用聞きの部下まで付く状況になる。超高待遇の会社に就職し人も羨む「勝ち組」弁護士になったが、1匹狼でやってきたジミーが会社という組織で活躍できるのか?というのがシーズン2の大きなポイントになっている。ユニークなのは弁護士ドラマなのに法廷シーンが一切出てこなかったこと。



本家「ブレイキング・バッド」では口達者かつ取引上手の要領の良さで主人公のウォルターを支えていたが、それはドラッグ取引という違法な世界の中でのことだ。「殺し以外なら金のために何でもやります」なソウルだったが、当時のジミーが関わっていた法曹界は当然ながら真っ当でクリーンな世界。社会的コンプライアンス、そして組織の中でのルールを何よりも優先しなければならない。「結果良ければすべてヨシ」というわけにはいかず、彼の正攻法が所属する弁護士事務所と衝突する。「取引で何でも済まされると思うな!」はジミーに対する象徴的な一喝だが、それは同時に彼の素質を殺すことにもなる。本シーズンでも自分らしい生き方をジミーは模索するのだ。

まだ「ソウル」という言葉は劇中に出てこないが、ソウルが誕生した前日譚としてはシーズン1よりも、かなりスピードアップして助走を始めた印象だ。ソウルに繋がる多くの片鱗が垣間見れるが、印象的なのは彼のショーマンシップだ。見る者、聞く者を惹きつけなければ、己のメッセージは届かない。タイトルの「ベター・コール・ソウル」は「ソウルに電話しようぜ!」という彼の代名詞ともいえるCMのキメ台詞であり、本作でも初めてジミーは自身のCMを製作し、その才能を発揮する。そのCMの撮影風景が可笑しくて堪らない。さすがヴィンス・ギリガンのドラマだ、ユーモアもキレキレである。



本シーズンのもう1つの特徴はマイクが前シーズン以上に独立したキャラクターとして描かれていることだ。前シーズンではジミーが彼を巻き込んだ形でマイクにスポットが当たったが、本シーズンではジミーとマイクが絡むシーンはほとんどなく、ジミーの物語と並行して、マイクの物語が描かれている。マイクファンとしては堪らないエピソードが多く非常に嬉しい。前シーズンで「顔馴染み」となったナチョとの関係が継続し、彼の仕事の依頼を受けたことからサラマンカ一族と対立することになる。マイクの豊かな経験に裏打ちされた洞察力と度胸、そして並外れた戦闘力がサラマンカ一族の脅威となり、いやはや痛快。再登場となるトゥコとの対決シーンが秀逸。よくあんな脚本が書けるなーと脱帽する。そして、本家BBで強烈なインパクトを残した、車いすチンチン爺さんことへクターとの知られざる因縁も明らかになる。ブレイキングバッドで登場した無口な双子ヒットマンも登場でテンションが上がる。マイクがへクターの陣地に乗り込むシーンは迫力と緊張で思わず鳥肌が立った。BBでウォルターとガスが初めて対面したシーンを思い出す。



海外ドラマ特有の中毒性は「スリル」によってもたらされる。その点で本シリーズが弱いのは、ジミーが堅気の世界で活躍する、一見、平和な物語だからだろうか。マイク側の物語で全編を綴れば中毒性が増すことは間違いなく、おそらくもっとスリリングなドラマに仕立てることもできただろう。しかし、本作はブレイキングバッドのスピンオフであり、あえて違う方向性を打ち出しているように思う。なのでこのドラマを本家BBと比較して「退屈」などと揶揄されるのは実に腹立たしい。ジミーのパートナーであり自身の力で成功をつかみ取ろうとするキムの物語(チャーミングなキムが萌!)や、ジミーとの摩擦によって苦悩する兄チャック、そして彼ら家族の物語は前シーズン以上に見応えがある。それは時に感動を覚えるほどだ。第7話「風船人形」での編集の妙技、第10話「引き金」の無音演出など、ヴィンス・ギリガンならではの他ドラマと一線を画す名シーンも鮮烈だ。



そんな中、本シーズンで唯一残念だったのは、最終話でのジミー側のクライマックスがなかったことだ。大変嬉しいことに、シーズン3の製作が決まったようだが、その反面、次のシーズンへの繋ぎ程度にしか最終話が描かれておらず、「そこで終わりかー」と拍子抜けしてしまった。もう少しサービスしてくれても良かったと思われる。

本シーズンもまた、前シーズンと同様に多くのドラマ賞にノミネートされるだろう。本シーズンではキム演じるレイ・シーホーンがとても魅力的だったので、彼女の助演女優でのノミネートに期待したい。

あぁ、シーズン3のリリースまで、また1年近く待たねばならないのか。。。
それにしてもNETFLIXのコンテンツ力はやっぱ凄いわ。huluも見習ってほしい。

【88点】

ベター・コール・ソウル シーズン3 【感想】
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