から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

アウトポスト 【感想】

2021-03-20 21:48:25 | 映画


日本公開を楽しみにしていた1本。予想の斜め上をゆく壮絶さに言葉を失う。
つい14年前の話。アメリカとタリバンが中東でバチバチにやり合っていた頃。今も昔も世界最強のアメリカだが、本作で描かれるのは、攻撃するタリバンと防戦するアメリカ兵の図であり、主人公らは必死に生き延びようとする。三方、山に囲まれた嘘みたいな立地にある基地。銃撃による攻撃は日常茶飯事で、地理的不利をその戦闘力でカバーする。

敵味方関係なしに、常に人間の生き死にが間近にある。職業として「軍人」を選んだ男たちの職場は、その不安をかき消すように殺伐としていて、口汚い言葉が飛び交い、相手をイジるジョークで笑いをとる。そのなかにある徹底した上下関係は、なるほど、このような戦場では大きな意味を持つ。イラク戦争の教訓から、和平による戦略を優先するも、拭えない脅威に慄き、ついに恐れていた事態が実現化する。リアル「オオカミ少年」に身震いする。

銃弾とロケットの雨あられ。読んで字の如くの「地獄」。後半たっぷり時間をかけて描かれるバトルシーンは、観客を劇内に放り込む。おそらくその場にいなければ感じえなかったであろう恐怖をこれでもかと味わわせる。これまでいろんな映画でPTSDが描かれてきたけど、本作が最も説得力があった。

卓越した撮影、編集、音響、視覚効果のテクニック、そして、キャストたちの熱演。生きるか死ぬか、勇気と恐怖がせめぎ合う男たちの迫真の表情に引き込まれる。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、最高か。自らの危険を顧みず、仲間を救出しようとする姿は、プロパガンダという雑念を消し去るほどに胸を揺さぶる。同時に、この戦争に命をかけるほどの価値がどれだけあるのか、虚しさも突きつける。

最後は、実話映画あるあるの、実際の本人の写真が映し出される。それぞれ、どの勲章が与えられたかという情報は、正直日本人の自分には理解できず興ざめしたけど、形として個人を讃えるのはアメリカらしいと感じた。

【75点】



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第93回(2021年)アカデミー賞ノミネーションが発表された件。

2021-03-16 01:41:52 | 映画


週明けの月曜日。今日(昨日)は出社日だった。朝はコロナ禍前と変わらず満員電車なのだけど、夜の終電間際の遅い時間になると余裕で座れるのでラクだ。
現在、自身が従事する業界の繁忙期にあたり、仕事に忙殺され、あれほど毎年楽しみにしていた、アカデミー賞のノミネーション発表を完全に失念していた。
帰宅電車内のTwitterで知り(時代だな・・)、23時半帰宅後、真っ先にテレビで公式Youtubeから今年の顔ブレを確認した。

結果、総じて満足。とてもよい選出なのではなかろうか。
(!)は予想外の結果。

【作品賞候補】

ファーザー
Judas and the Black Messiah
Mank マンク
ミナリ
ノマドランド
プロミシング・ヤング・ウーマン
サウンド・オブ・メタル
シカゴ7裁判

年末(?)にかけて一気に名乗りを上げた「Judas and the Black Messiah」が滑り込み。
「ミナリ」と「プロミシング・ヤング・ウーマン」が候補入りしてくれて安堵。
一方で、ピクサーの「ソウルフル・ワールド」が入っていないのは残念。

【監督賞(候補)】
トマス・ヴィンターベア(Another Round)(!)
デヴィッド・フィンチャー(Mank マンク)
リー・アイザック・チョン(ミナリ)
クロエ・ジャオ(ノマドランド)
エメラルド・フェネル(プロミシング・ヤング・ウーマン)

今年の主要部門のなかで最大のサプライズはデンマーク監督のトマス・ヴィンターベア。
「偽りなき者」以来、マッツ・ミケルセンとタッグを組んだ注目作で堂々の候補入りだ。
とにかく酒を飲みまくっている映画ということしか事前情報はないが、日本公開が楽しみだ。
まぁ、受賞はクロエ・ジャオの一択と思うが。。。

【主演男優賞(候補)】
リズ・アーメド(サウンド・オブ・メタル)
チャドウィック・ボウズマン(マ・レイニーのブラックボトム)
アンソニー・ホプキンス(ファーザー)
ゲイリー・オールドマン(Mank マンク)
スティーヴン・ユァン(ミナリ)

特にサプライズなしだが、スティーヴン・ユァンが入ってくれたのはとても嬉しい。
ウォーキングデッドファンの歓喜が聞こえてきそう。おそらく、受賞自体は故人となったチャドウィック・ボウズマンで固いと思うが、他の候補者含め、今年はやや迫力不足が否めない。チャドウィック、とても巧いのだけど「圧倒的」ではないんだよな。。。

【主演女優賞(候補)】
ヴィオラ・デイヴィス(マ・レイニーのブラックボトム)
アンドラ・デイ(The United States vs. Billie Holiday)
ヴァネッサ・カービー(私というパズル)
フランシス・マクドーマンド(ノマドランド)
キャリー・マリガン(プロミシング・ヤング・ウーマン)

順当が過ぎる顔ぶれ。シドニー・フラニガン(17歳の瞳に映る世界)が入ってくれたら面白かったのだけど。受賞の行方は、フランシス・マクドーマンド VS キャリー・マリガンの構図だろう。キャリー・マリガンを全力で応援。

【助演男優賞(候補)】
サシャ・バロン・コーエン(シカゴ7裁判)
ダニエル・カルーヤ(Judas and the Black Messiah)
レスリー・オドム・ジュニア(あの夜、マイアミで)
ポール・レイシー(サウンド・オブ・メタル)
ラキース・スタンフィールド(Judas and the Black Messiah)(!)

ここでも来ました「Judas and the Black Messiah」。受賞もダニエル・カルーヤの可能性が最も高く、チャドウィックと共に史上初、アフリカ系俳優が主演と助演を占める結果になりそう。個人的にはSAGの候補に漏れていた、ポール・レイシーがしっかり候補入りしてくれたのが嬉しい。

【助演女優賞(候補)】
マリア・バカローヴァ(続・ボラット)(!)
グレン・クローズ(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌)
オリヴィア・コールマン(ファーザー)
アマンダ・セイフライド(Mank マンク)
ユン・ヨジョン(ミナリ)

前哨戦では強かったものの、「続・ボラット」のマリア・バカローヴァが候補入りするとは。。。凄いな、あんだけ、お下劣なことをしていたのに。まぁ過去を紐解けば、助演に関してはコメディーに関しても寛容だった歴史あり。授賞式当日は、彼女の紹介VTRで大爆笑が起きそう。楽しみが増えた。

最多の候補入りは「Mank マンク」の10部門だが、昨年の「アイリッシュマン」と同様に無冠で終わりそうな気がする。ほか、脚色賞で「ザ・ホワイトタイガー」が候補入りされていて、同作に出演し、今回のノミネーションのスピーカーであったプリヤンカー・チョープラが嬉しそうで可愛かった。


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星の王子ニューヨークへ行く2 【感想】

2021-03-14 09:13:26 | 映画


しょーもない続編。SNLか。ガッカリ。

昔、土曜ロードショーでよくやっていた前作。実は「裕福な王子」という素性を隠し、真実の愛を求め、アメリカで花嫁探しをする。久しく見ていないけれど、子供ゴコロに映画の楽しさを教えてくれた1本と記憶している。

本作はその約30年後を描く続編。水戸黄門的な前作のプロットは使えず、本作では新たな要素が加わる。王子(現在は王)にはアメリカに残した隠し子(?)がいたという設定で(それも何だかな・・・)、その息子との交流が描かれる。なんつっても、息子の小者感が最後まで抜けない。王子の嫡男という冠だけで、必死に担ぎ出そうとするのだけど、若き頃のエディ・マーフィと比べると明らかな役不足。

なので、その息子の姿を通して王子が我が身を振り返るという重要なポイントも全くしっくりこない。当のエディ・マーフィもお腹がぽっこり出て、すっかりオジサン体型。「すっかり変わってしまった」というメタファーにもなるのかもだけど、今でもカッコいい姿を見せてほしかった。同じ時代間で描かれたTVドラマ「コブラ会」はとても秀逸だったな、と改めて思った。

舞台は前作のニューヨークからザムンダへと移る。前作では十分に描かれなかったザムンダの様子は目に楽しいし、煌びやかな衣装も見どころ。一方、アメリカの広大な風景はフル合成、動物もCG。屋外ロケがあまりなかったようで、ほぼスタジオ撮影だった模様。あとで調べたらコロナ前に撮影したらしい。製作費の問題だったか。

新たに加わったキャスト陣も含め、さながら、サタデー・ナイト・ライブによるパロディーコントのよう。内輪で盛り上がるために作ったようにも見え、温度差を感じてシラケる。脚本も取っ散らかっているし。せっかくオリジナルキャストが顔を揃えたのだから、前作のシーンをもっと映しても良かったのでは。

そんななかでも楽しかったのは、ウェズリー・スナイプスのチャームだろうか。マッチョなアクション俳優というイメージは昔。いい感じに力が抜け、きっとアニメ声優映えするであろう低音ボイスを駆使し、ちょいワル役を好演していた。

【55点】

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ギャング・オブ・ロンドン シーズン1 【感想】

2021-03-06 07:07:15 | 海外ドラマ


圧巻。こりゃ、スゲーわ。
TVドラマの尺でアクション映画を撮ってみた、的な海外ドラマ。TVドラマ界に新たな新風を吹き込んだといっても過言ではないのでは。。。そのボリューム、緻密さ、秀逸さ、残忍さ、製作陣の熱量がほとばしる。傑作ドラマシリーズの誕生か。

昨年末より、一部の海外ドラマフリークを賑わせていたドラマだ。
Amazonチャンネルに加わったSTARZPLAYより、計9話、久々のイッキ見にて完走した。

ロンドンを牛耳るギャングのボスが殺害されたことで起きる、抗争を描く。アメリカ同様、移民国家のイギリス。本国、アイルランド、アルジェリア、パキスタン、クルド、ジプシーなど、多様な民族のギャングが存在する設定で、一部の対立関係はあるものの、それぞれが連携し、和平的均衡が保たれていた状況が、事件をきっかけに崩れていく。

暴力で制し、暴力は暴力で返すギャングの所業だ。
「血で血を洗う」これほどしっくりくる言葉はない。



原案・監督は何せ、「ザ・レイド」で名を馳せたギャレス・エヴァンスだ。本作がTVドラマデビューとなるが、やることは彼が手掛ける映画そのものだ。肉弾アクションとガンアクションの高次元の融合に魅せられる。彼が実際に監督としてメガホンをとったのは、1話と5話。1話の尺は90分近くあり、シリーズの方向性と成功を決定づける見事なオープニングだ。アクションのコーディネートも勿論だが、空間の使い方が唸るほどの巧さ。その1話目があまりにも素晴らしかったので、以降、パワーダウンすることも十分想定されたが、最終話まで同じ熱量のまま駆け抜けた。

ハズレ回が見当たらず、全話が神回といってよいが、中でも独立したエピソードの色が濃い5話目が白眉な仕上がり。穏やかな田舎の1軒家で起きる壮絶な「戦争」。命からがら逃れてきた男たちと、そこに住まう女と子どもたち。武装集団が容赦ない銃撃の雨を降らせる皆殺しの絵から、反撃の火が灯され、その行方を見届けるなか、興奮と緊張で体が硬直し釘付けになった。これらのアクションは、裏方のスタントマンたちの仕事によるものであり、彼らへのギャレス・エヴァンスの愛を感じる。



決して痛快ではない。本作のアクションに常にあるのが、生と死を分ける瀬戸際の攻防であり、そこに慈悲という足かせはない。銃弾で瞬殺される場合も、しっかり肉片が飛び散り、痛覚を刺激する。本作の残酷描写は奇をてらったものでなくて、暴力を描くことの誠実さに見える。

何かとアクション描写に注目が行きがちだが、連続モノとして見せきるTVドラマの必要条件もハイレベルでクリアしている。ギャングの抗争のベースにある「家族」というコミュニティの強固な絆。抗争の間に割って入る潜入捜査官が生み出すスリル。ギャングが表社会も牛耳っているという大見栄のスケール。複数のキャラクターを通して描かれる異形だが、貫かれる母性。ギャング抗争の裏にあった大いなる陰謀。。。主人公演じる不敵なジョー・コールや、GOTの悲劇の母親から一転、狂母を演じたミシェル・フェアリーもめちゃくちゃいい。

シーズン2の製作が決まっているとのこと。「凄いものを見た」後の、シーズン2への期待と不安が入り混じる感覚は、ドラマ「ファーゴ」の時に近い。物語として一定の区切りがついたなか、シーズン2はいったいどんな展開になるだろう。

あと、内容があまりにもシリアスなため、視聴後、キャスト陣が温和な姿で本作を振り返るインタビュー映像をYoutubeで漁った。

【90点】
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