から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

GODZILLA 決戦機動増殖都市 【感想】

2018-07-27 08:00:00 | 映画


Netflixにて。劇場公開から2ヶ月後での配信。早い!
前作では、終盤で体長300メートルの巨大ゴジラが登場し、2万年の恨みを晴らそうとする人類の希望を一蹴し、残酷な絶望を与えた。3部作の一作目であることを知らずに見たため、その結末に驚かされてしまったが、本作はその中間作であることをインプットしてから見たので、割と自然に見られた。
2作目の本作は、結末となる次作に向けた繋ぎでもあり、前作のような、派手なアクションは用意されない。それでも面白かった。絶対的に強いゴジラ(ぶっちゃけゴジラじゃなくてもよいけどw)と、あらゆるテクノロジーを駆使して立ち向かう人類という構図は本作でも変わらない。前作から奇跡的に生き残った主人公らは、対ゴジラ戦に向けた新たなヒントを発見する。それはかつて、日本がゴジラを倒すために開発した「メカゴジラ」のルーツに繋がるものだった。前作同様、架空ながら、膨大な情報量の技術ロジックを並べ、ゴジラを倒す確信へと導く。あんなに手も足も出なかったゴジラに対して、急展開といえる。ここである展開を期待するのだが、不発に終わって肩透かしを喰らう。その代わりに「バルチャー」という小型ロボットが登場。ガンダムちっくな性能で、ゴジラに攻撃を仕掛けるスピードにテンションが上がる。ゴジラによる破壊描写も含め、アクションの魅せ方が抜群に巧い。ポリゴンのアニメーションのクオリティは相変わらず高く、日本よりも海外での評価が高くなりそうだ。中盤から終盤にかけての「内紛」は、ゾンビよりも人間が怖いという「ウォーキング・デッド」な形態。明らかになる「第三の怪獣」の存在に、最終章への期待が膨らむ。次は劇場で見ようかな。
【65点】
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未来のミライ 【感想。。。】

2018-07-25 08:00:00 | 映画


野心作だが、つまらなくて睡魔と格闘する。散漫で冗長な構成。引力なき脚本と、共感できぬキャラクター。的外れなキャスティング。理解できないことばかりで物語についていけない。細田守監督は、アニメーターとしては素晴らしい手腕を持っているけど、脚本は奥寺さんに任せたほうは良いみたいだ。くんちゃん風にいえば「この映画、好きくなーい!」だろうか。

妹ができたばかりの幼児(「くんちゃん」)のもとに、未来から女子高生になった妹が現れるという話。

主人公の男の子は、階段も両手を使わなければ上り下りができないような幼児。あとで調べたら4歳児の設定とのこと。3頭身の愛くるしい外見だ。ところが声を聞いて驚く。若い女の子の声だ。この強い違和感は最後まで一向に馴染むことなく、キャラクターの画と、命を授けるはずの声がずっと分離したままだった。「時かけ」の仲里依紗や、「サマーウォーズ」の神木隆之介、「おおかみこども~」の黒木華など、先見の明ともいえる、細田監督のタレント起用の信頼度は神がかり的に高かった。が、本作は紛れもなくミスキャスティング。演じた上白石萌音は悪くない。

主人公を4歳児に設定したのも不可解だ。幼児の描写がとてもリアルなのはいい。論理は通用せず、気に入らなければ「イヤだ」の一点張り、父親よりも母親、妹に愛情が向けばシンプルに嫉妬、わがままで暴れまわる怪獣。同じ年頃の子どもの成長を身近で見てきたので、あるあるなシーンが多い。一言で言えば、未成熟、ゆえに愛おしかったりするが、そんな幼児に、本作の時空を超えた物語を背負わすのはおかしい。

あくまで幼児の存在は視点であり、その先にいる観客側に訴求する狙いならわかる。ところが、本作の主人公は4歳児ながら、感じたものを確かな実感として自身のなかに取り込み、成長という形で変化する。家庭内での幼稚っぷりとのギャップ。4歳児の子どもに「ファミリーヒストリー」を見せてもわからないだろうに。。。ファンタジーという言葉だけで逃げられては脚本の意味がない。まあ、声もおかしいから、この際、無視してもよいかも。違和感が積み重なって、主人公に魅力どころか、嫌悪すら感じてしまう。

本作の作りはとてもユニークで野心的ともいえる。家族の自宅が舞台となるが、その空間から一歩も外に出ることなく、主人公が過去と未来の家族と出会い、時空を越えた体験をするというもの。いくつかのエピソードに分かれており、それが単発で定期的に発生する。何か必然的なきっかけがあるわけではなく突如として起こり、描かれるエピソードも特別な繋がりがあるようには見えない。結局、なぜ未来から妹が来たのか、最後までわからなかった。時間軸の異なる各エピソードも冗長だ。睡魔が襲うが「鑑賞料金がもったいない」と抵抗する。映画のラストで、エピソードを通じて細田監督が発したかったメッセージが声高に提示されるが、「でしょうね」と、見た通りのまんまだ。映像の美しさでいくらか補完されるけれど。

前作の「バケモノの子」から、それまで脚本を担当していた奥寺佐和子から、細田守監督に移った。結果、前作では終盤からロジックが破綻し、それまでの過去作で感じた、キャラクター描写の的確さも失せてしまった。そして、本作でいよいよ本の弱さが露呈した。「時かけ~」から「おおかみこども~」までの3作で、すっかり細田監督ファンとなっていたが、本作により気持ちが完全に離れてしまった。期待ハズレの度合いでいえば、今年のワーストワンかもしれない。

【50点】
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ダウンサイズ 【感想】

2018-07-24 23:00:00 | 映画


新作DVDレンタルにて。
体を10センチ程度に小さくする技術が普及し、「ダウンサイズ」な社会で新たな生活を送る人類を描く。
10割バッターだった、アレクサンダー・ペインだったが、本作で連続ヒット記録が途絶えた。
環境破壊の犯人である人類は、地球にとっては害虫。地球を存続させるための方法として、駆逐するのではなく、肉体を小さくするという発想がユニーク。生活に必要な物質も小さくて済むので、経済的メリットも大きいが、「環境」という視点が本作の主題になっている。これが本作を良くも悪くもしている。
肉体をダウンサイズするプロセスがしっかり練られていて面白い。縮小されるのは、あくまで己の肉体であるため、縮小されない金歯を残そうものなら、頭が破裂するとのこと。SF劇で終始するわけではなく、ペインの映画だけあって、中盤から人間ドラマの趣に変わる。マッド・デイモン演じる主人公が、偶然の出会いから、ベトナム人女性と懇意になり、自身の生き様に大きな影響を及ぼしていく。ベトナム人女性演じた、ホン・チャウのパフォーマンスが素晴らしく、マッド・デイモンを完全に喰ってしまっている。2人のドラマが面白かったものの、終盤の「シェルター」に向かうあたりから、よくわからなくなる。危機的、あるいは迷信の環境問題に直面する主人公らは選択を迫られる。主人公の下した決断に「いったい何の映画だったけ??」と狐につままれたような気分になった。
【60点】
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シンクロナイズドモンスター 【感想】

2018-07-24 08:00:00 | 映画


DVDレンタルにて。
周りの評判が悪かったので、スルーしていたが、これ、自分はかなり好き。
恋に破れて地元に戻ってきたアメリカ人女子が、遠く離れた韓国に出現した巨大怪獣と自身の行動がシンクロしていることに気付くという話。奇想天外で誰も思いつかないようなプロットをよくぞここまでまとめあげた。明らかになる「シンクロ」の原因は、後付け感よりも、その発想と感性に感嘆する。大胆で痛快な映画。
「等身大ダメ女子映画」からはじまり、「怪獣映画」→「コメディ映画」→「スリラー映画」→「ヒーロー映画」へと味わいを変えていく映画。とりわけ、スリラーからヒーローへの変わり身が秀逸。主人公が地元に帰り、幼なじみとのロマンスに発展すると思いきや、意外な方向へと舵を切る。2人の間に秘められた過去が「怪獣」へと直結しており、悪役の出現によって、韓国、ひいては地球存亡を危機に瀕したところで、主人公が立ち上がる。それが同時に主人公の成長として語られるから、カタルシスを感じることができる。まさかのクライマックスにワクワクが止まらなかった。あと「酒は飲んでも飲まれるな」(笑)。欠点は久々のダン・スティーヴンス、大好きな役者だけに端役過ぎて勿体ないわ。
【75点】
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レッドスパロー 【感想】

2018-07-23 23:00:00 | 映画


DVDレンタルにて。
ロシアの女スパイが、母国の「モグラ(アメリカ側スパイ)」を探し出すという話。主人公はロシアの元バレエ・ダンサー。スパイになった動機がユニークで、自身の罪をもみ消してもらう代わりにスパイにさせられるというもの。身から出た錆だが、ほぼ強制的で「愛国心」とは異なる。ロシア製スパイの養成所では、相手の性的欲求につけこむため、リアルな「ワザ」が伝授される。娼婦養成所の一面あり。思い出すのは、1980年代を舞台にした海外ドラマ「ジ・アメリカンズ」。女性側だけでなく、男性側も好きでもない相手に対しても自身の性的機能を操らなければならない。紛れもなく特殊訓練の賜物であり、本作ではその裏側が描かれていた。自身の恥じらいやプライドを捨てることがスパイの第一条件のようで、主人公が身を持って知ることになる。ジェニファー・ローレンスが大胆なヌードシーンや激しいバイオレンスシーンで主人公を熱演する。前作の「マザー」といい、オスカー女優となっても揺るぎない女優魂に感心する。本作のサスペンスは、主人公がソ連側かアメリカ側、どちらに忠誠を誓うか、という点で、その答えが明らかになる暗殺シーンが凄まじくスリリングだった。ラストの「落とし前」も綺麗に着地。
【65点】
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カメラを止めるな! 【感想!!】

2018-07-21 08:00:00 | 映画


2018年のサプライズ。

「驚いた」「面白い」「凄い」を通り越して「感動」の映画。エンドロールを見送りながら、脳内でスタンディングオベーションする。チープなゾンビ映画の外見からはまったく想像できなかった。この映画は夢を追う映画人への讃歌ではないか。終盤にかけて、笑うよりも涙してしまう。「one cut of the dead」は映画人たちの情熱と覚悟を表した言葉だっ。喝采。

廃墟を舞台に、ゾンビ映画(ドラマ)を撮影している途中で思わぬ事件が発生するという話。

ネット上のあまりの評判の高さに興味を引かれていたものの、同様の現象であった「バーフバリ」に自分はノれず、「映画は嗜好品」の認識を改めたところだったし、上映館が本当に少なく、見ることを諦めていたが、公開から1ヶ月後、拡大公開により近所のシネコンで上映されることとなった。割引も効いて、オンラインで座席も予約。何という幸運。さっそく観にいった。

で、これがまあとんでもない傑作だった。

脚本良し、演出良し、キャラクター良し。自分が好きな映画の条件をすべて揃える。

昨年に続き、今年の日本映画にハマっていない自分にとっては会心の一撃。
本作への評価は人によって多少バラつくだろうが、おそらく誰が見ても面白い娯楽作。
少なくとも、本作をスルーして2018年の映画は総括できないだろう。

「この映画は二度はじまる」というのが、ポスターのコピーだ。特別な仕掛けが用意されていると察し、あらゆる事前情報をシャットアウトして見た。案の定、何も知らなかった分、驚きも大きかった。

「二度はじまる」の部分だけ言及する。

その言葉から想像するとおり、映画は2つに分かれる。前半の超絶映像(あるいはグダグダ映像)に圧倒され、後半で明らかになるドラマに笑って泣く。前半で感じた不可解なキャラクターの言動が、抜群のユーモアを湛えながら、後半で綺麗に説明されていく。伏線回収とは別モノ。それが用意周到な道筋ではなく、ハプニングに継ぐハプニングが奇跡的に繋がって着地するというもの。「想定外」の連続を緻密な計算によって組み立てた脚本に唸りまくった。

展開を転がす引き金が、キャラクターたちの多様な個性によるものだからさらに面白い。監督、役者、カメラマン、録音、メイク、助手、プロデューサーなどなど、撮影現場で登場するキャラクターたちにもれなく個性と役割をもたせ、機能させていく。映画製作にありがちな、監督と役者の摩擦もコメディに活かされていて、映画を無事に撮り切りたい監督と、アイドル上がりで「事務所的にNG」を口に出す若手女優、何かと演技論を持ち出す面倒な若手俳優、そこに状況をかき回す、監督の妻で元女優の女が加わり、抱腹絶倒の狂騒劇が繰り広げられる。思わぬ救世主となる、監督の娘の才能の開花もドラマチックだ。とにかく面白くて堪らない。

終盤にかけて、劇中のドラマはどんどんヒートアップし、それに呼応するように劇場も笑いで沸く。そんななか、自分は熱いものがこみ上げてきた。前半で描かれるのは、我々がスクリーンを通してみる役者たちの姿だが、後半に描かれるのは、その撮影の裏側の話。裏方である様々なスタッフの連携プレーによって、映画撮影が遂行されていることに改めて気づかされる。いつもの映画鑑賞で、エンドロールに長々と流れるスタッフ紹介だが、それぞれの役割をもったスタッフの尽力があって、ようやく1つの映画が完成されるのだ。あの1人1人が作品の功労者といえる。

本作はそんな暑苦しいメッセージを打ち出すものではない。ただ、何とか成功させようと奔走する監督、役者、スタッフたちの姿が、映画に魅せられ、映画を製作する夢を叶えた、映画人たちの情熱と重なる。映画ファンとしては、涙なしには見られなくなる。

「止めるな!」を実行したラストには、清々しい達成感と、得難い充実感が待ち受ける。そして、特別な映画を見てしまったという興奮と高揚感に満たされた。

【90点】
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ジュラシック・ワールド/炎の王国 【感想】

2018-07-20 08:00:00 | 映画


これはこれで十分楽しめたものの、シリーズを通して貫かれた映像的スペクタルが前半部分で終了したのは残念。前半の「火山パート」をもっと見たかったし、予告編で見た、モササウルスがサーファーを襲うシーンも見たかった。J・A・バヨナのファンとしては擁護したいところで、サスペンス演出は中盤以降の「屋敷パート」で発揮される。溶岩間際の回避など、ユーモアを超えて、ツッコミドコロも多く、大作映画に抜擢されたことで監督の意向がどこまで活かされたのか疑問。「パーク」ではなく「ワールド」の意味にワクワク。早くも次回作への期待は募る。

前作から3年が経過。恐竜たちが暮らす島で火山が噴火するということになり、パート1の主人公らが恐竜たちを救出するという話。

「ジュラシック・パーク」で活躍した、ジェフ・ゴールドブラム演じる博士が冒頭で登場。火山により存亡の危機が迫る恐竜たちの処遇を検討する議会シーンで、博士は「放置」を説く。元は人間が勝手に作り出した古代生物、自然に委ねて放置するか、命を与えた責任をとるか・・・世論も分かれる。ただ、このシリーズはあくまで恐竜を愛でる映画だ。主人公らは当然、救出に向かう。

前半で早々に出し惜しみなく火山が噴火。降り注ぐ溶岩の雨と迫りくる溶岩の洪水、そこに逃げまどう無数の恐竜が加わる。飲み込まれそうになる主人公ら、ちっぽけな人間たちとのスケールの対比が楽しい。これぞ、シリーズの醍醐味といった画が連発する。その迫力に圧倒されながらも、主人公たちは絶対死なないという安心感は常について回り、あくまでアトラクションムービーの立ち居地は崩れない。救出されなかった大半の恐竜たちは、逃げ場のない孤島で無残に命を落とす。主人公らの脱出シーンでは悲壮感が滲む。かつて恐竜たちが絶滅した再現を見た気がする。

火山のパートは前半のうちに終わり、中盤から恐竜たちが捕らえられた「屋敷」へと移る。かなり大きな屋敷で恐竜たちが大暴れするスペースも確保されるものの、「デカい恐竜」と「小さい人間」という構図を効果的に見せる舞台としては不十分。限れらた、逃げ場のない空間で起きるスリルが狙いのようだ。監督J・A・バヨナの「永遠のこどもたち」でも感じたホラー演出が効いていて、中盤以降のサスペンスになる。大いに楽しんで、巧いな~と感じる一方、不満に思う点も随所にあった。

恐竜たちが人間にとって、都合よく使われすぎている。主人公はあくまで恐竜であってほしくて、恐竜たちに人間が振り回される様子を目撃したいのだ。前作でも登場した「ブルー」と、主人公の絆を描いては、ほかの動物映画と変わらなくなってしまう。人間側の「味方」として機能する恐竜たちに、「もっと好き勝手に暴れてくれよ」とヤキモキする。事態を起こすのも、事態を収拾するのも、恐竜によってなされた点はまとまった脚本ともいえるが、もっと、こちらの想像を超える展開がほしい。

大作映画に抜擢された監督のJ・A・バヨナ。ファンとしては歓迎すべきキャリアステップだが、いまいち盛り上がらない前評判通りの及第点だった。監督がこだわったというロボットによる恐竜の質感は、しっかり画面を通じて伝わり、オリジナルの存在が懐かしく感じた。企画段階の方向性か、中盤以降、スケールダウンしたことと、恐竜の描き方は残念。「パーク」ではなく「ワールド」に展開する、次作への序章としては十分役割を果たせたかも。

【65点】
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バトル・オブ・ザ・セクシーズ 【感想】

2018-07-13 08:00:00 | 映画


男女格差を打ち破り、恋愛の多様性を問う。1973年に起きた史実を切り取った物語だが、メッセージは実にタイムリーであり、まさに「今」のための映画。2つのテーマを平行して描くものの、互いを邪魔しない脚本が見事だ。社会と戦う女王「キング」と、男性至上主義のブタ「ボビー」の性別間の戦い。それがもたらした社会的意義と、女子テニス界におけるターニングポイントを知る。ありそうでなかったテニスのプレーシーンに引き込まれる。もっとコメディ要素が強い映画と予想していたが、終わってみれば感涙のスポーツドラマ。オスカー女優になったのち、本作を選んだエマ・ストーンはいよいよ演技派の道を突き進む。

1973年に催された、女子テニス界の現役女王と、現役を退いた男子テニス界の元王者による「男女対抗」エキシビジョンマッチを描く。

中学生時、テニス部だったこともあり、昔からテニスの四大大会を頻繁に見ていた。男子テニスの力強くスピーディな試合はもちろんのこと、女子テニスの長いラリーと巧みなテクニックが交錯する試合、どちらも同じくらい好きだった。当時、一番好きだったのはヒンギスで、彼女のプレーに何度も魅せられたのを覚えている。あれから、時が過ぎ、女子テニスも男子テニスばりのパワースタイルになってから、すっかり疎遠になってしまったけど。

そんな女子テニス界で、優勝賞金が男子テニスの8分の1だった時代があったというから驚きだ。この状況に憤慨したのが、本作の主人公であり、当時の女子テニス界でトップに君臨していたビリー・ジーン・キングだ。賞金の額を決めるのは、当時のテニス協会の会長で、もちろん男。その理由を問うキングに対して、会長は「男性のほうが、観客を沸かせる。これは肉体的な資質だから仕方なし。」と答える。では、女子の試合は観客が少ないか?と言えば、そうではない。女子テニスも観客を沸かせるから、男子テニスと同等に人気がある。早々に会長の女性に対する根拠なき偏見が晒される。

キングは女子テニスの格差是正を求め、女子だけのテニスツアーを発足させる。スポンサー集めに苦心するが、手を差し伸べたのが大手タバコ会社というから時代を感じる。プレー以外で社会から脚光を浴びるキング。その一方で、もう1人の主人公ボビー・リッグスは、華々しいテニスキャリアを退いて久しく55歳、妻の家族が経営する会社で空虚な職場生活を送る。彼はギャンブル依存症であり、賭けと見返りに病的なまでに弱く、現在は妻に固く禁じられている。アメリカ映画でよく見る、集団セラビーの場でも「ギャンブルは悪くない、負けるのが悪い」と名言(迷言)を吐く。そんな満ち足りない日々に舞い込んできたのが、テニス界におけるキングの「反乱」だ。

ボビーの嗅覚が反応する。女性の権利を訴えるキングに対して、それに対抗する男子キャラが登場し、テニスのコートで男女の力を試したら面白いんじゃね?と。彼は自身を「男性至上主義のブタ」と呼ぶことにする。狙いは、興行の成功(カネ)と、失われた自身への脚光だ。ポイントは、彼自身は本当の女性差別主義者ではないということ。妻の会社で働き、妻の稼ぎによって、家族が守られている。女性の力を身近で実感しているはずだ。キングもその状況を理解していて、ボビーは「ピエロ」、「本物」の悪党は別にいることを見抜いている。この三角関係の構図が、コメディで終わらないドラマの土台になっている。

2人の試合が「ショー」であることは、互いにわかっている。ただ、試合に臨む2人の姿勢は対照的だ。前段で現役の女子選手に勝利し油断するボビーに対して、キングは本気で勝ちに行く準備をする。自身が勝利する意味の大きさを知っているからだ。そして、試合は白熱する。テニスの試合を見慣れているからか、テニスの醍醐味がしっかり抑えられていると感じる。今まであまり見たことのない映画でのテニスシーンが新鮮でもあり、手に汗握る迫力で圧倒された。キング演じたエマ・ストーンのしなやかな体型と、ボビー演じるスティーブ・カレルの現役を退き、肥えたシルエットも秀逸だ。

エマ・ストーンが最高にいい。「好きな人を自由に選べる時代」の到来を予見させる映画でもあり、キング自身、同性愛者として秘めた恋愛志向を露にするキャラクターでもある。献身的に彼女をサポートする夫がいる一方、おさえることのできない女性への恋愛感情にこちらもドキドキしてしまう。美容師の愛人と始めて結ばれるシーンがとてもロマンチックだ。恋愛に関してどこか疎く、スポーツだけに打ち込んできたようなアスリートを絶妙な加減で体現しており、エマ・ストーンを通して見るキングの姿に説得力がある。あと、印象的だったのは、ボビーの妻を演じたエリザベス・シューだ。「リービング・ラスベガス」を見てから彼女のファンになっているが、久々に映画で見た気がする。すっかり齢を経ているが(もう50代とのこと!)、増えた皺さえ色気に感じる。本作における、もう1人の強い女性像として隠れた役割を果たした。

男女格差の問題と、恋愛志向の問題が両輪で描かれるが、あくまで前者に比重が置かれていて、映画の流れを邪魔しない。スポーツ映画としても楽しめる内容になっている。ボビーとの試合後、歓喜する前に、キングが見せたロッカーシーンに熱いものがこみ上げてしまった。そこには、スポーツに命をかけるアスリートの姿があった。日本公開はかなり遅れてきたが、劇場公開に踏み切った配給会社の英断に拍手を贈りたい。

【75点】
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ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 【感想】

2018-07-07 08:00:00 | 映画


普通に面白いじゃないかw。ジェダイもフォースも全く出てこないけれど、スター・ウォーズの外伝として、これだけ魅せてくれれば満足だ。相棒の「チューバッカ」や愛機「ミレニアム・ファルコン」との馴れ初めにワクワクする。新たなキャラクターも効果的に機能して、若き日のハン・ソロの活躍を大いに盛り上げる。主演のオールデン・エアエンライクも見るほどに、ハン・ソロに見えてくる。

初めてスター・ウォーズを見たときに、ハリソン・フォード演じる人のハン・ソロが、毛むくじゃらのチューバッカとコンビを組んでいたことが不思議だった。宇宙規模とあって、様々な種族が入り混じる物語だ。そのなかで、チューバッカは「ウーキー族」という種族であることが、あとでわかった。住む場所も言葉も異なる2人がどのように出会い、行動を共にするに至ったのか、以前から興味があった。本作で明らかになる、そのいきさつはとてもナチュラルであり、後付け感はなかった。

チューバッカと同じく、ハン・ソロとセットなのが、彼が乗っている宇宙船「ミレニアム・ファルコン」だ。もはやSWシリーズの代名詞的な存在といえ、数々の名シーンを彩ってきた。相変わらず、貯金箱な後ろ姿がカッコよく、本当にこの宇宙船のデザインを手がけた人は偉大だ。ハン・ソロがなぜ「ミレニアム・ファルコン」を手にすることになったのか、そのいきさつもしっかり描いてくれる。中型機ゆえの迫力とスピード感は本作でも活かされており、カタルシスを感じさせる終盤の脱出シーンに大いに高揚した。

本作のハン・ソロは、ハリソン・フォード演じるハン・ソロとはやや性格が異なる。若きハン・ソロは様々な局面で未熟さを露呈する。今後の成長によって、よく知るハン・ソロへと形成されるようだ。並外れた度胸の良さと、結局は「正義に熱い」ハン・ソロの魅力はそのままだった。賛否が分かれるオールデン・エアエンライクのキャスティングは自分は成功だったと思う。時間を追うごとに彼の存在感は増していった。

ストーリー自体はあまり捻りがなく、本家のSWシリーズや、毛色の違ったスピンオフ「ローグ・ワン」などと比べると平凡な作りだ。ジェダイも、フォースも言葉すら出てこない稀なSWユニバース作品でもある。だけど、自分は十分楽しめた。

本作で初めて登場するサブキャラが思いのほか面白かった。SWシリーズの系譜である、師弟関係の構図は本作でも描かれていて、ハン・ソロの「師匠」の危うい教訓がハン・ソロの生き様に多大な影響を与えた。ハン・ソロの恋人を演じたエミリア・クラークは小柄な体型を感じさせないほど、迫力あるアクションで見せ場をつくる。「ミレニアム・ファルコン」の所有者であった「ランド」のスマートな個性が魅力的。初めて見る「意識高い系」ドロイドは、シリーズの進化を感じさせた。

SFファンとしては、ガジェットのデザインも気になるポイントだったが、旧式でどこか洗練されていないデザインで統一され、申し分ない完成度だ。

製作過程でいろいろと問題があったようだが、監督がロン・ハワードに落ち着いて、綺麗にまとまった映画ができたと思われる。欲をいえば、もっと本家の物語にリンクする要素がほしかったか。ただ、SWシリーズにそれほど思い入れのない自分にとっては、イチSFファンとして大いに楽しめた映画だった。

【70点】
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2018年上半期 ベスト映画ランキング

2018-07-03 23:00:00 | 勝手に映画ランキング


7月に入り、2018年の上半期が終わった。「キングスマン ゴールデンサークル」で始まり、「ハン・ソロ」で終わった。映画館で観た新作映画は33本で、例年通りのペース。
で、私的に面白かった順に上半期のトップ10を勝手に決めてみる。

1位 パディントン2
2位 レディ・プレイヤー1
3位 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
4位 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
5位 シェイプ・オブ・ウォーター
6位 スリー・ビルボード
7位 デッドプール2
8位 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
9位 君の名前で僕を呼んで
10位 フロリダ・プロジェクト

今年のベストワン級と考えていた「シェイプ・オブ・ウォーター」はどんどん順位が下がってきた。しょせんは映画を好みでしか判断できない映画ファンゆえ、「評価」ではなく「もう1回見たいか」という観点で順位付け。かなり今の気分に左右されているので、下半期を含めたランキングでは、また大きく変動しそうだ。

今年は「レディ・プレイヤー1」「デッドプール2」など、あまり期待していない映画が思いっきりツボに入った一方で、日本映画を中心に「孤狼の血」や「万引き家族」など、期待していた映画がそれほどハマらなかったりした。今年も昨年に続き、一昨年のような日本映画の豊作とはならないかも。新作DVDレンタルでの追っかけも、Netflixの視聴時間が長くなったことで、TSUTAYAに行く回数がすっかり少なくなってしまった。

これから公開を控えるサマーシーズン映画だが、例年よりも魅力的な映画が見当たらず、いまいちテンションが上がらない。ハリウッド映画の日本公開が相変わらず遅いということもあり、北米をはじめとする各国での評判が、公開前にインプットされてしまう。J・A・バヨナが手がけたということで楽しみにしていた「ジュラシック・ワールド」の新作も、評判が芳しくないし。そんななかでも一番楽しみなのは、「インクレディブル・ファミリー」。8月1日の公開日が待ちきれない。
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