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ババドック 暗闇の魔物 【感想】

2015-10-31 18:00:00 | 映画


ネットフリックスにて。面白い。秀作のホラー。
母親と幼い息子の二人に「ババドック」という魔物が襲いかかる話。というのが、映画の外観だが、解釈によってあらすじが変わるので面白い。

のっけから息子が凶暴だ。自身の感情をコントロールできず、すぐに泣きわめき、破壊と暴力によって衝動を満たそうとする。母親の制止も利かず、周りの子どもたちにもケガをさせる始末。息子役のキャスティングと熱演が素晴らしく、子どもの異常性が既にホラーを香りを漂わす。母親は息子の対応に苦労しながらも、息子をかばい、愛し続けようとする。子どもの誕生日が夫の命日という背景が切なく、母親と子どもの距離に暗い影を落とす。

ある日、自宅で見慣れぬ本が見つかる。「ババドック」という魔物について記された絵本だ。母は子どもに読み聞かすが、その内容はいわゆる呪いの本で、読んだ人間が、ババドックに取り込まれ、死を欲するというものだ。母親は「気味が悪い本」と一蹴するが、息子はそれ以来ババドックに執着する。息子は次第にババドックの存在を感じるようになるが、母親は子どもの妄想癖が出たと頭を悩ます。

ここからの展開がユニークだ。ババドックはその存在を否定する者に取り込むという特徴があって(普通は逆)、ババドックの狙いは母親側に向く。母親の息子に対するコンプレックスと、ババドックによる支配が折り重なる。夜は眠れず、精神をすり減らす。愛しいはずの子どもに暴言を吐き捨て、子どもの脅威に変貌してしまう。

そこでふと思う。この光景は母親の育児ノイローゼではないかと。おそらく、本作の監督ジェニファー・ケントが女性であるということと無縁ではないだろう。女性が持つ母性と、それでも抑えられない哀しい衝動を恐怖の形として見せているのではないか。そしてまた、ババドックという存在はなく、すべて主人公の精神状態のなかにある空想とも捉えられる。
ラストのオチは非常に意外なもので、今後の母と子ども幸せと不幸、どちらにも振れてしまう危うさとユーモアが同居する。本作が海外で高い評価を受けたことも納得の映画だった。

しっかりとしたホラーでありながら、家族のドラマを描き切る手腕に、監督ジェニファー・ケントはホラー以外の作品を撮らせても一流なのだと思えた。

【65点】
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