ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ア・リーパ教会

2010年01月18日 | イタリア

 小雨が似合う、素朴な佇まいのサン・フランチェスコ・ア・リーパ教会。
 小さな内陣では、朝の礼拝の後なのか何人かの信者が静かに祈ってい、邪魔をしないように、主祭壇の左、小さな礼拝堂に足を運んだ。

 この淋しい雰囲気の教会が旅の案内書に載るのは、この礼拝堂に、初期バロック彫刻を代表する巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの最晩年の傑作 「福者ルドヴィカ・アルベルトーニ」があるから。

 Photo_2ある罪で告発された弟ルイージの恩赦を得るために、教皇一族のために数多くの作品を手がけたベルニーニが、パルッツォ・アルベルトーニ枢機卿の依頼に応え無償で制作したとされているのがこの作品。

 死の淵で苦しみながらも神とともになるルイーザ、別名ルドヴィカを主題とする本作、右手を右の乳房に、左手をその下に添えて苦しみ悶えるその姿は、見るものを驚かせずにはいないだろう。

 枕やベール、そして、聖服の襞の細やかな表現。
 
何よりも、顎を心もち反らせ小さく唇を開き、今だ捨て切れぬ己が業に苦悶するかのような表情に、一途に神を敬う優美な官能、甘美が見て取れる。

 Photo_3Photo_4老いてなお増す神秘性への傾倒と理想とする女性美の追求に、ベルニーニの凄さを感じさせる。

 彼女は、裕福な一族に生まれながらも、貧者への施しと献身的な神への奉仕のため、健康を損ね天に召されたという。

 この作品、神のもとに召される喜悦と解釈するのが正しいのだろうが、天才ベルニーニ、80歳にならんとする老芸術家の瑞々しい感性に 「恐れ入りやした」と、ローマの下町の素朴な教会と別れた。

 そぼ降る雨が、教会前、サン・フランチェスコ・ディ・アッシジ広場のオベリスクを濡らしていた。
 
その教会と広場、アッシジの聖フランチェスコがヴァチカンを訪れた際に、教会に隣接する巡礼者宿泊所に投宿していたことに由来するという。

 もし、ローマはトラステヴェレへ行かれたら、この小さな教会を覗いてみて下さい、ルイーザがあなたを優しく迎えてくれるでしょう。

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