パピとママ映画のblog

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ハクソー・リッジ★★★★★

2017年06月27日 | アクション映画ーハ行

「ブレイブハート」「アポカリプト」のメル・ギブソン監督が、激烈を極めた沖縄戦の知られざる実話を映画化した衝撃の戦争ドラマ。武器を持つことを拒否しながらも、地獄の戦場で75人もの命を救い、終戦後、良心的兵役拒否者としてはアメリカ史上初めての名誉勲章を授与された実在の衛生兵デズモンド・ドスの不屈の人生を、臨場感あふれる迫力の戦闘シーンとともに描き出す。主演は「沈黙 -サイレンス-」のアンドリュー・ガーフィールド、共演にサム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、テリーサ・パーマー、ヒューゴ・ウィーヴィング。

あらすじ:アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスは、看護師のドロシー・シュッテと恋に落ちるも、激化する第2次世界大戦に心を痛め、衛生兵になるべく陸軍に志願する。しかし基地での訓練で銃に触れることを拒絶し、上官や他の兵士たちから執拗ないやがらせを受けるようになる。それでも決して信念を曲げないデズモンド。とうとう軍法会議にかけられてしまうが、ついには彼の主張が認められ、晴れて衛生兵として戦場に立つことを許可される。こうして日本軍との激戦の地、沖縄の前田高地、通称ハクソー・リッジ(のこぎり崖)へと赴くデズモンドだったが…。

<感想>この作品は、第二次世界大戦末期の沖縄線であり、地獄の最前線で、武器を持たずに、たった一人で75人の命を救った衛生兵の物語でもある。
実話をベースにした映画でもあり、戦後、“良心的兵役拒否者”として、初めて名誉勲章を授与された、アメリカの隠れた英雄なのです。

世界一の臆病者が、英雄になった理由とは、幼い頃に兄弟げんかをして、兄を気絶させたことと、父親が母親と喧嘩をして拳銃を持ち出し、それを止めるために父親から奪った拳銃を父親に向ける悍ましさ。それから彼は、決して銃は持たないと神に誓った。

主人公のドスを演じたのは、「沈黙 -サイレンス-」のアンドリュー・ガーフィールド。以前は「アメイジング・スパイダーマン」シリーズで活躍したイケメン青年である。弱弱しい体だが、今回では筋肉をつけたと見え、裸になる場面では立派な筋肉美を見せてくれる。
宗教上の理由で銃を手にしない若者が、良心的兵役拒否の資格があり、軍需工場でも働いているので兵士になる必要はないのだ。だが、兵隊検査で不合格となった若者2人が、自殺した。日本軍による真珠湾攻撃のこともあり、銃を手にしなくても戦争に参加したい。

だが、兵士たちも上官も、こんなデズモンドを理解できない。臆病者かと思えばそうでもない。訓練は人一倍熱心で、虐めて除隊させようとする仲間たちに乱暴されても本人は諦めないのだ。

しかし、射撃訓練は拒否する。だから命令違反で軍法会議にかけられ、有罪になる土壇場で、父親が上層部に懇願し、そのはからいで、衛生兵として勤務できることとなる。
良心的兵役拒否とは何か?・・・反戦とも、徴兵拒否とも違う。確たる信仰にもとづく行動なのだ。だが、この戦争では、暴力と無縁ではいられるだろうか。

映画の前半では、看護婦の恋人、テレサ・パーマーもでき、幸せに田舎町で、平和に暮らしているようにみえる。彼女は「X-ミッション」(15)の時も美しかったが、今回はひと際眩しく輝いていた。結婚式でも、ドスは刑務所の中で軍法会議にかけられ、ドロシーは一人取り残されるも、彼を信じて待つのだ。

映画の後半では、その反対に、暴力の支配する世界。画面では男性の兵士で埋め尽くされ、女性は出てこない。女性や家族を守ろうと、男性だけが戦場にやって来ているからだ。

一番の見どころは、地獄の最前線の描写だろう。容赦なく飛び来る銃弾、それに砲弾。一瞬にして兵士が肉片と化す理屈抜きの恐怖。ノルマンジー上陸作戦を描いた98年の「プライベート・ライアン」に、勝るとも劣らず“地獄”を映している。
監督のメル・ギブソンは、「ブレイブハート」でも、中世の血肉飛び散る肉弾戦と接近戦を激烈に描いていた。が、今回ではそれ以上であり、特に、死体にウジが湧いたり、半白骨化した死骸も余すところなく映し出す徹底ぶり。放たれる腐臭、転がっている肢体の死臭が画面から伝わり、実際に観ていて想像を絶する。

あんなに、デズモンドを嫌っていた上官のヴィンス・ヴォーンを助ける場面も、迫りくる敵兵をかわし、丸腰で負傷兵を抱え、断崖から“もやい結び”(ブラジャーかと笑われた結び方)という特殊な結び方で負傷兵を降ろす下りのスリルさは、自分の目で見なければ分からないと思う。それでも、彼は軍法会議で言った名ゼリフ「皆は殺すが、僕は助けたい」と宣言する。
しかし、戦場で綺麗ごとは言ってられない。目の前で敵の銃で撃たれる仲間、まだ生きているなら絶対に助けたいと、一人一人屍に声をかけて、うめき声がすればモルヒネをうち、絶対に助けるからとズルズルと引っ張り、崖の下へと落としてあげるのだ。中でも、日本軍の負傷兵も助けて挙げるシーンもある。

太平洋戦争末期の沖縄戦での最大級の激戦地、前田高地の戦いが背景になっている。150メートルの断崖絶壁の崖は、ノコギリのように険しく、苦戦を強いられた米軍が“ハクソー・リッジ”(ノコギリの崖)と名付けたのだ。上官のサム・ワーシントンが、次々と負傷兵が運び込まれるのを見て、誰がいったい助けたのかと聞くと、「あの弱虫のドスです」たった一人で、断崖絶壁の上に残り、まだ命がある兵士たちを一人づつ崖から落としてやるという勇気あるデズモンドだ。
バンザイ突撃、降伏に見せかけてのダーティなる奇襲。洞窟で日本軍の将校の切腹、と日本軍は単に不気味な敵兵としか描かれていないのが少々不満である。

しかしながら、主人公デズモンドの「敵は殺さない、人を救う」という常識外の行動を徹することで、戦争という人間の愚かな行為への静かな、痛烈な批判を浴びせたかったのだろう。「真の英雄は大地に眠る人たちだ」というデズモンド、だが、武器も持たずに戦場では命がいくつあっても足らないはず。劇中で、「あと、一人助けたい」と、何度も戦地へ戻ってゆく彼の姿に、戦場のイエス・キリストとも言うべき神々しさを見る思いだった。
彼が過酷な戦場で、奇跡的に命が助かったのは、“神に選ばれし者”だったからだろう。決して、目を背けないで観て欲しいですね。戦争とは、人殺しの戦いであることを。

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