パピとママ映画のblog

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湯を沸かすほどの熱い愛 ★★★★

2017年01月12日 | アクション映画ーヤ行
『紙の月』などの宮沢りえと、『愛を積むひと』などの杉咲花が母娘を演じ、余命宣告を受けた主人公の奮闘に迫る家族ドラマ。行方不明の夫を連れ戻すことをはじめ、最後の四つの願い事をかなえようと奔走するヒロインの姿を捉える。『チチを撮りに』などの中野量太が監督と脚本を担当し、物語を紡ぎ出す。母親と娘の強い絆はもとより、人生の喜怒哀楽を詰め込んだストーリーに夢中になる。
あらすじ:1年前、あるじの一浩(オダギリジョー)が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉(宮沢りえ)と安澄(杉咲花)母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。

<感想>やっと今年になってから東北でも上映されました。ネットで皆さんの高評を見て断然観たくなり、駆けつけました。死期が迫る母親が、遺される家族のために奮闘する姿を描いたヒューマンドラマです。主人公の母親に扮する宮沢りえが、人情味あふれる母親を情感豊かに演じているのが最高。それに、娘役の杉咲花と父親のオダギリジョーの飄々とした姿も完璧の演技陣に拍手を贈りたい。

とても私には、こんなにも強く優しく血のつながりもない子供たちを育てる母親像が、羨ましくもあり、いつもの余命いくばくもないという映画を観て、涙を流してきたのが1年間に数十本もあるのに、中でも死という生を軽んじる安直な映画が許せなかったが、この映画だけは違っていた。

本作は白い煙の煙突に始まり、赤い煙の煙突で終わる。立ち上る煙の様子に、生きることを象徴させて、登場人物たちの成長と共に煙突の姿もまた成長させているように見えました。
残された家族は、双葉がパートで働いて生活をしていたが、職場で急に倒れて病院へ行き、余命宣告を受けるほどの末期癌だったとは。普通は、そこで親戚とか友達に相談して、夫を探し当て、家を売ったお金を半分貰って離婚するんですけどね。この映画では、まったくもって違っていた。

夫であるオダギリジョーが、パチンコに行くといって出て行ったきり戻って来なかったことから始まり、実は浮気をしていて、子供までいて隣街のアパートで暮らしていた。探偵に依頼して探してもらったのだが、ひょうきんな顔をしてオダギリジョーが暗くなる作品を上手く笑いのとれるコメディにしてくれる。双葉が死ぬ前に生きたいと言っていたエジプト旅行。入院先の病院の庭で、家族で作る人間ピラミットで驚かすのには苦笑いでした。
それからは、一度は銭湯の風呂場で泣き明かした双葉だが、意を決してそれからは、銭湯の再建と家族の複雑なしがらみを1人で踏ん張って解決していく。

まさか、長女の安澄が先妻の子供であり、そして出て行った夫が連れてきた娘と、自分がお腹を痛めて生んだ子供がいないのが難点。それに双葉の生い立ちも詳しく描かれていない。それに長女は学校でいじめられており、登校拒否をする。そこで母親は、負けるな、強く立ち向かえとばかりに、安澄の好きな水色のブラジャーとパンツをプレゼントして、「ここぞと言うときの勝負パンツだよ」と笑って娘に言う。娘が学校で、意地悪3人娘に対して、その下着の使い方が大変気が利いて良かった。でも、これは恥ずかしさが先に出て、勇気がなければダメ。

そして、夫が戻ると銭湯を開くといい、双葉は「働かざる者食うべからず」とみんなに手伝うように仕向ける。それに、毎年のように安澄の誕生日にタカアシガニを贈ってくる、安澄の母親に会いにいくのだ。聾唖者である母親のために、安澄に手話を覚えるようにと言う双葉。会いに行き、複雑な思いの安澄の心に、双葉はお母ちゃんが2人いて良かったねと。

それに、夫の連れっ子である娘は、母親恋しさから番台からお金を盗み家出をする。双葉は、前に住んでいたアパートに行くと、そのドアの前に座っていた。母親に捨てられたのではないと、待っている。その娘も、双葉の優しと愛情で次第に懐いて来るのだった。

その旅行中に、若い青年がヒッチハイクで車に乗せてくれと言う。その男は、松坂桃李くんで、父親が再婚をしては腹違いの弟がいて、家に帰りずらいと言う。この青年も、心を病んでいるのを知って双葉が愛の手を差し伸べる。

最期には、双葉が探偵に自分の母親探しを依頼していて、見つかったというので行くと、再婚をしており大豪邸に住んでいて幸せな顔の母親が見えた。そして、一目だけでも会いたいと言うと、母親は「私には子供はいない」と、つれない返事で会ってもくれない。頭にきて、孫と遊んでいる幸せそうにしている母親に、門にあった置物を投げつけてやる双葉。

それでも最後まで、ひねりのある人情味あふれる脚本と、細部にさりげない遊びを取り入れた演出も巧いですね。確かに死に往く母親の心配りということでは、「バースデーカード」の母親に設定は似ているし、痛いエピソードもある。けれども、その痛さをしっかりと蹴とばすことになる伏線が、巧みに用意されており、気が付いたら泣き笑いしていた。
本作で思わず涙腺が緩むのは「死」が悲しいからではない。厳しい現実に直面しながらも、生きることを諦めない姿に心動かされるからであります。ラストの葬式のシーンでは、湯船に双葉の好きな赤い色を中心に花畑を作り、その中に双葉が白いワンピースを着て寝ていた。もしかして、双葉の遺体はお風呂を沸かすために焼いたのだろうか。ちょっとこれは気に入りません。
それから、家から車で出て河原にピクニックにでも行くように、みんなでお昼を食べ笑って見送る家族の姿は素敵でした。
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