パピとママ映画のblog

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竜とそばかすの姫★★★

2021年10月16日 | アクション映画ーラ行

                


細田守の「竜とそばかすの姫」は、これまでのどの作品にも増して、エモーショナルである。だいぶ前に鑑賞したので一応ノートにメモを取っていたので,それを見ながら書いてます。もの凄く期待をしていったので、なんかがっかりした感じでした。でも、特に歌は最高でしたよ。中村佳穂の歌声は、全編にわたり観客の心を揺さぶりつづけるのも圧巻でした。



二つの世界を舞台とする、めくるめくアニメーションの夏であり、方や緑豊かな日本の田舎であり、高知の十七歳の高校生すずと、もう一方は極彩色で目がチカチカするくらいのネット空間で、インターネット上の歌姫ベルと、主人公が二人いる世界は次元を異にしており、強く対照をなしている。



すずは幼いころに母親を事故で亡くした後、引っ込み思案になっていたが、親友の誘いのもと、ネット世界に飛び込むかのように、スクリーンが仮想世界(U)の世界に導く。そこに圧倒的な存在感と共に現れる美女は、(U)の世界の歌姫ベルだ。歌声はいっぱいに響きわたり、群衆は「ベル!ベル!」と大歓声をあげる。めくるめくる熱狂、冒頭から観る者を映像の世界へと引き込むのである。



主人公が二人としたが、ヒロインは一人であり、二人で一人なわけです。ベルの歌がネット空間で注目を浴び、彼女はたちまち人気を得ていく。実際ベルの高らかで伸びやかな声で歌うのには、魅力に溢れており、インターネットの中ではあっという間に有名になるのだった。本人のすずも驚いている。


異次の二世界が交互に描かれる中で、美しい映像と音楽の一方で、作中で示される社会に対する細田監督の視線は、これまでに較べて冷ややかであった。ネットの空間では常軌を逸した行動で、狂暴な竜が現れて暴れまわり、ベルのライブを台無しにしてしまう。自警集団が竜退治を始めるが、ベルは竜の心の傷を想い、その内面が気にかかり始める。



作品はそのあたりで微妙に変わっていく。すずの分身がベルであるように、竜も誰かの分身のはずだから、竜の狂暴さは元の人物から発しているに違いない。そこで、その人物捜しが始まるわけ。元の人物は、すずと同じ世界にいるわけで、やがて彼女は父親の暴力に苦しむ兄弟を探りあてる。


すずの世界と竜の世界は次元を異にするのに、ベルをいわば橋渡しに繋ぎられてしまうのです。すず=ベルも、竜も、そもそもアニメ内の虚構であり、ベルはネット空間という虚構における人物なのだから、二重の虚構性を帯びているのだ。そんな人物が橋渡しになるとは、虚構の倫理として筋違いではなかろうか。


すずの母親は、氾濫した川で子供を救おうとして死んだわけで、親友はすずを元気づけようとネット空間へ誘ったのだった。ベルは、竜の心を理解しようとしたのだが、すずは父親の暴力から弟を護る兄をつきとめたのだった。明らかに護るということが貫いており、それが変な筋違いを招いたしまった。


そんな物語の流れよりも、二重の虚構だからこその強烈な魅惑に満ちたベルの歌声が、表現として重要でしたね。そしてもっとも人の心の内側に光を当てる作品になっていた。



後半では、竜が化け物として現れ、ベルと竜は、まるで「美女と野獣」の物語と類似しており、そのことが残念でならなかった。最後は、楽しそうに竜とダンスをしたりして、竜の心が和らいでいくのが分かります。


細田守の作品作りは、さらに進化を遂げ、そしてこれまでの作品と同様に最後には、「どんな状況であっても未来を信じられる」と。それこそが細田監督が、映像作家として守り続けるもので、人々に共感を与えるのでしょう。


 


 

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