パピとママ映画のblog

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星ガ丘ワンダーランド★★★

2016年06月02日 | アクション映画ーハ行
売れっ子CMクリエイターの柳沢翔が豪華キャストを起用して映画監督に初挑戦したミステリー・ドラマ。タッグを組むのは最年少で撮影カメラマンとなり、その独自の撮影方法から生み出す斬新な映像が注目されている今村圭佑。
幼い頃に自分を捨てた母の死の知らせを受けた主人公が、やがて思いも寄らない真実に辿り着くさまを、切なくも心温まるタッチで描く。主演は「やるっきゃ騎士」の中村倫也、兄役に新井浩文、そして義理の姉弟には佐々木希と菅田将暉。4人の子供たちの母親であり謎の死を遂げる女性を木村佳乃、その夫を松重豊、さらに温人の閉ざした心を開くキーパーソンを市原隼人が演じ、映画界の実力派俳優と勢いのある若手俳優が顔をそろえている。

あらすじ:さびれた小さな駅“星ガ丘駅”で駅員として働く温人。20年前、彼の母は、夫と2人の子どもを置いて突然去っていった。その際、母は赤い手袋の片方を“そっちは温人が持ってて、必ず取りに行くから”との言葉と共に残していった。ある日、その母が亡くなったという知らせが届く。警察の話では、この町にある小さな遊園地“星ガ丘ワンダーランド”の観覧車から飛び降りて自殺したというのだった。納得いかず、真相を探り始める温人だったが…。

<感想>母親の死をきっかけに、温人は離れ離れになっていた兄、そして義理の姉弟と出会うことになる。そして彼らが出会うとき、閉ざされていた過去が明らかになっていく。なぜ母は死んだのか?・・・その思いでの先に、想像もしなかった感動のクライマックスが待っていたのです。
この作品の中には2種類の画面が出てくる。一つは、田舎町の駅員の主人公の温人で、落とし物の世話をする姿が鮮明な映像で綴られるうち、間に何かを置いて被写体を撮ったようなボケた画面が出てくるのだ。クリアなのに逆光のシーンもある。

その落とし物係をする内に、温人は落とし物にどんな人が取りに来るのか想像して似顔絵を描き札を吊るしていた。中には片方だけのタップシューズや、少し汚れた赤白の毛糸の手袋、ビニール傘に子供がマジックで描いたもの、スノードーム(観覧車の)のキーホルダーとか、その他にも様々なものが駅に落ちていました。
ですが、その落とし物はある一定の期間が過ぎてしまうと、ゴミとして処分される事になります。そのゴミ処理場にいたのが市原隼人で、いつも温人の相談役になっていた。ビニール傘を取りに来た母親が、期限が過ぎてゴミ捨て場に行ってしまったのを、ゴミの山から一生懸命に探す温人に手を貸してあげる市原隼人。
温人がやっとゴミの中から見つけたのに、取りに来た母親は、子供に絵を描いて貰った新しいビニール傘を嬉しそうに持っていたのだ。

例えば主人公の温人が20年前に別れた母親の死を知らされ警察へ行くシーン。彼が廊下を進むと、そばの部屋から男の号泣が聞こえ、若い女の姿が見えるだけで、誰が前にいるのかはわからない。立ち止まった主人公は、部屋には入らずくるりと後ろ向きになり警察を出てゆく。

何だか、意味不明な展開が多く、今見たものが何なのかを掴めないないままに終わってしまう。しかし、警察の前に音信不通だった兄の新井浩文がいて、彼の兄が去るのと入れ違いに、義理の姉弟の佐々木希と菅田将暉が中から出てきて、菅田将暉が喚きながら温人に殴りかかり、彼のセリフによると2人がどうやら異父姉弟だとやっと分かるのだ。

だから、全編の描写が不透明のまま続いて、分かりずらく少しずつ明らかになっていく物語の筋が読めてくるのだ。母親の死の謎をめぐるミステリー形式の全体の中で、赤い毛糸の手袋の片方が大事な母親の温もりであり、幼児期の母との別れの記憶である。記憶の中身が二転三転して謎解きは混乱してしまう。
だからなのか、描写の不透明度からすれば、ミステリーとしては成り立たず、逆にそのことで新鮮さを放ち、この町にある小さな遊園地“星ガ丘ワンダーランド”の観覧車に乗った記憶がある幼いころのことが蘇ってくるのだ。

母親は高所恐怖症であり、観覧車には乗らないのに、どうして観覧車に乗って死んだのかを究明していく温人。ほんの少しの出番だが、女刑事役で杏が出ている。母親が子供のころに父親と離婚してまで、他の男のところへ行ってしまったのか?・・・その理由も解り、実家を出て一人暮らしをしている温人、兄は父親が亡くなり町工場の借金300万円の返済が迫り、母親に300万円を用立ててもらいに、観覧車の前に呼び出したのが兄の新井浩文。
この映画を見て思うに、男の兄弟が辛い母親との別れを体験して、幼い子供だったので何がどうしてそうなったのかが理解できずに苦しみ悩み、大人になってまだ幼いころに別れた母親の面影が恋しくて、母を裏切り者として憎めずにいる自分に歯がゆ差を感じているのだ。
誰でもが子供のころ、両親の夫婦喧嘩の末に別れるという話し合いになり、子供はどちらが引き取るのかと、喧嘩腰に怒鳴りあっている両親を見たことがあるのではないかと思う。楽しかった子供のころだけではないはずだから。
冒頭の一面の銀世界を、一台の車が走っている。乗っているのは、運転席に父親と母親、幼い兄、そして温人。口論の末に車から降りる母親を必死に追いかける温人と、そんな二人を車の中からじっと見つめる兄の姿が胸を締め付ける。

母親が家族を捨てた理由は、全編を通して明らかにされていくのだが、このシーンは、柳沢翔監督が幼少の時にバックパッカーだった両親との冬の北海道を旅した時の、両親の夫婦ゲンカがベースになっているというのだ。
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