パピとママ映画のblog

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母と暮せば ★★★★

2015年12月12日 | アクション映画ーハ行
「おとうと」「小さいおうち」の山田洋次監督が、吉永小百合と二宮和也を主演に迎えて贈るヒューマン・ファンタジー・ドラマ。戦後の広島を舞台にした父と娘の物語『父と暮せば』を手がけた井上ひさしが生前に構想していた長崎が舞台の物語というアイデアを山田監督が受け継ぎ、原爆で死んだ息子と生き残った母が織りなす切なくも感動的な絆と希望の物語を綴る。共演は黒木華、浅野忠信、加藤健一。
あらすじ:1948年8月9日、長崎。一人で慎ましく暮らしている助産婦の伸子(吉永小百合。夫と長男は戦死し、次男の浩二(二宮和也)も3年前の原爆で亡くなった。浩二の恋人だった町子(黒木華)はそんな伸子のことをずっと気にかけ、今でも足繁く通ってくれている。そんなある日、伸子の前に浩二が幽霊となってひょっこり姿を現わす。以来、浩二はたびたび現われては、伸子と思い出話に花を咲かせるようになる。笑いの絶えない楽しい2人の会話だったが、最後は決まって町子の幸せへと話が及んでいくのだったが…。

<感想>楽しみにしてた二宮和也くんと大女優の吉永小百合さんとの映画、さすがにお母さんの吉永小百合さんの素晴らしい演技に、息子の二宮和也くんの幽霊と生きている時の学生時代の演技とか、それに長崎弁の台詞に、とにかく上手いのに感心しました。校歌を歌うシーンでも、アカペラでこれも上手かった。ちょっとマザコンのような、母親の布団にもぐる二宮君、「お母さんの匂いがする」と甘えて、小学校4年生まで寝小便をしていたというエピソードも。
戦後一人で助産婦として生きる母親と、母親の健康を気遣う息子の幽霊との心温まる交流をファンタジックに描いています。医大に入学して、大学での授業中に被爆して、即死。この原爆投下シーンも、大学の授業中にピカーと光って、その後にドカンという爆発音がした。シンプルな演出ながら、インク壺がグニャリとなり閃光が、それは観る者の胸を締め付けるシーンでもあります。

それに、母親の寝ている夜中に、戦地で亡くなった兄の息子の亡霊が現れるシーンでは、死にきれない、浮かばれない亡霊の姿が息子と一緒になって、母親に逢いに来たのだ。そのシーンは、ホラーのようで恐ろしい形相で、「野火の映像のようでした。

他にも大学教授に、あのベテラン俳優の橋爪功さんが演じていました。それに、厚生省の役人に小林捻侍さんが、左腕を戦争で失くしたのでしょう、味のあるキャスティングでした。それに上海帰りのおじさんに加藤健一が、ヤミの物資を運んでくるのだが、初めっから母親にその気があると思ってましたよ。

しかし、3年後にやっと母親の前に幽霊として現れる浩二。陽気でお喋りで、残された母親のことが心配で、それに恋人の町子のことも気になっている。
ですから、殆どのシーンは母親伸子と浩二が暮らした一軒家で繰り広げられる舞台のような会話劇になっている。
中でも、母親の目の前に突然現れる息子の幽霊、それは伸子にしか見えないのだ。幽霊の浩二を相手に戦前や戦時中の出来事を振り返るような、生き残った者の痛みとこれから生きていく使命などを描いています。

母親が一人で貧しい夕食を食べるシーンでは、どうしても味気ないし食事もおいしく感じないと思う。そこへ、陽気な息子の幽霊が現れるのだから、話し相手になり、回りには独り言をぶつぶつと言っている、頭が変になったおばさんにしか見えないのだろう。

それに、息子の婚約者を演じる黒木華は、幽霊の二宮とは対照的に生き生きとした演技で、物語りに花を添えて印象的です。ですが、母親は、恋人の町子に、もう亡くなった浩二のことは忘れて、好きな人がいたら結婚しなさいと言うのだが、町子は、浩二の母親の身体のことが気掛かりだし、一人暮らしが心配でならないのだ。
だから、毎日のように勤めの小学校の帰りに家に来るのだ。まるで、本当の娘のようで、しかし亡くなった浩二は、二度とこの世には戻らないのだから、町子には浩二の幽霊が見えないのが不思議。幽霊の浩二の方には町子のことが見えるのに。やはり、町子が他の男と結婚するのは嫌だと言う浩二。しかし、町子のことも考えないと年を取って行き遅れになってしまうのだ。

どうやら、町子を好いてくれる男が見つかった。浅野忠信さん扮する傷痍軍人で、片足がなくそれでも小学校の先生をしている。町子とは、レコードの趣味が同じで、「メンデルスゾーン」の交響曲のレコードを聞き、涙を流したという男である。
やっぱりラストに息子役の二宮君が、お母さんの吉永さんの手を引いて、天国へと連れていくところで、胸がいっぱいになり涙が止まりませんでした。ラストの皆さんの大合唱と共に天国のような雲の上にいるような、そんなファンタジーの世界観が良かったですね。終戦70年という節目の年の、最後を締めくくるのにふさわしい鎮魂劇だと思います。
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