パピとママ映画のblog

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ブラック・スキャンダル ★★★.5

2016年02月02日 | アクション映画ーハ行
ジョニー・デップが主演を務めた実録クライムドラマ。実在するアイリッシュ・マフィアのボス、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーが裏社会でのし上がっていく姿を追う。メガホンを取るのは、『ファーナス/訣別の朝』などのスコット・クーパー。『エクソダス:神と王』などのジョエル・エドガートン、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのベネディクト・カンバーバッチらが共演する。さまざまな思惑が渦を巻く人間模様に加え、圧倒的存在感を放ちながらホワイティを演じるジョニーにも目を奪われる。
あらすじ:1970年代、サウスボストン。アイリッシュ・マフィアのボスとして同地一帯を牛耳るジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(ジョニー・デップ)に、FBI捜査官のジョン・コナリー(ジョエル・エドガートン)が接触を図ってくる。彼はFBIと手を組んでイタリア系マフィアを駆逐しようとホワイティに持ち掛け、密約を交わすことに成功。両者の連携によってイタリア系マフィアの勢力は弱まるが、その一方でホワイティは絶大な権力を持つようになる。

<感想>善と悪、追う者と追われる者。FBIと大物ギャング、利害の一致が生んだ大悪人とFBIの密約。1970年~90年代のボストンの裏社会を支配した男、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー。「ディパーテッド」でジャック・ニコルソンが演じたアイリッシュ・ギャングのボスのモデルにもなった実在の犯罪王である。

その伝説のギャング、ホワイティ・バルジャー役をジョニー・デップが渾身の役作りで成りきり、表情一つ変えることなく邪魔者を抹殺していく冷酷な男を、オールバック・スタイルにまとめたハゲズラメイクと、猛菌類さながらの鋭い目付き、残忍さを漂わせる低い声のトーンなど、とんでもなく怖いイメージで演じているのだ。あのオサマ・ビン・ラディンの次に名を連ねた史上最悪の犯罪者。ボストン南部の犯罪組織のトップにして、19人を殺害したばかりか、16年間も逃亡を続け、2011年にようやく逮捕された実在の人物であります。

FBIの情報屋という保険を掛けた上で、好き勝手に犯罪を繰り返す。イタリアン・マフィアと自動販売機の利権を巡り争っていたジミー。当初はFBIのコノリーの情報源となることを断るのだが、自分の身を守りイタリアン・マフイアを潰すため情報提供を約束する。ライバルの情報を密告して消し去る。

だが、FBIへの情報提供は、ジラせるだけジラす。ジミーは、FBIのコノリーが責任を問われて切羽詰まるまでイタリアン・マフイアの隠れ家を教えず、信頼を得ると同時に自分の価値を知らしめるわけ。
それに、情報提供だけでなく、コノリーらを金で抱き込んだジミーは、どっちの立場が上か叩き込むのだ。自分を軽く見るFBI捜査官や、夫とギャングの付き合いをよく思わないコノリーの妻に対して、彼は真の顔を覗かせて脅す。ジミーは文字どうりやりたい放題を繰り広げていた。

ですが、何の迷いもなく人を殺す残酷さを備えたジミーは、その一方で妻と息子、それに年老いた母親を愛し優しかった。妻が息子が熱があるのに病院へ連れて行かないし、アスピリンを過剰に飲ませすぎて死に追いやる妻を許せないのだ。母親とのポーカーでも、わざと負けてやる優しさなど。ジミーの妻役をあの「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のダコタ・ジョンソンが演じている。その他、FBIの捜査官にケヴィン・ベーコンや、コリー・ストールら男臭い顔ぶれが揃う。

だが、ジミーの性格は異常なまでに潔癖症で、子分が店でピーナッツボールに指を舐めながら指を突っ込み、殻が皿に散らばっているのを嫌い、その子分を殺す。1日に何度も手を洗ったりといった人間臭い癖も持っている。

実弟は上院議員で、ボストン政界を代表する大物政治家。ベネディクト・カンバーバッチが演じているが、兄とFBIのコノリーの間を取り持つこともある。

FBIのコノリーには、ジョエル・エドガートンが扮して、バルジャー兄弟と同じ地域で育ち、捜査の情報源として、ジミーと密約を交わすと、彼が暴走し殺人を重ねても、あくまで庇おうをする。ですが、コノリーよりも一枚上手なジミー、その極悪ぶりは背筋が凍りつくほどで、邪魔者は容赦なく殺して行く様には、ジョニーの怪演ぶりが恐怖を増幅させている。
本来なら相容れないはずの両者が、秘密裏に結託をして互いの利益のために動いているとしたら?・・・。悪が自由に罪を重ねて、捕まることすらないのだ。FBIがギャングのために罪を黙認し、ギャングは邪魔な同業者を密告してFBIの逮捕させる。

幼馴染であった2人は、あっという間に使える密告屋と結びつき、自分専属にすることでそのFBI捜査官は出世が約束されたも同然で、だからこそコナリーは喉から手がでるほどにジミーを取り込みたかったのだ。
コノリーの欲望とジミーの野心の融合によって、2人とも引き返せない悪の泥沼に落ちてゆくのだ。最後では、コノリーからのリークによって、ジミーは逃亡生活に入るわけだが、もはやどちらが密告屋か分からない立場の逆転劇も興味深いですね。
汚職の横行した当時のアメリカの病んだ空気感を、徹底的なリサーチの基に再現した、細部にこだわった演出と類まれなる映像センスにも、スコット・クーパー監督の手腕こそが、何よりも見事だと言わざるを得ない。

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