パピとママ映画のblog

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エルネスト★★★・5

2017年10月09日 | アクション映画ーア行

キューバ革命の英雄チェ・ゲバラと行動を共にした日系人のフレディ前村を題材にしたドラマ。留学先のキューバでゲバラに出会って心酔し、共にボリビア軍事政権に挑んだ彼の姿を描く。メガホンを取るのは『顔』などの阪本順治。『血と骨』『ゆれる』などのオダギリジョー、『海辺の生と死』などの永山絢斗、写真家、ダンサーでもあるホワン・ミゲル・バレロ・アコスタらが出演。

あらすじ:日系二世として生まれ、医者になることを夢見るフレディ前村(オダギリジョー)。キューバのハバナ大学に留学した彼だったが、キューバ危機に直面する。混乱の中でチェ・ゲバラ(ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ)と出会ったフレディは、その理念やカリスマ性に感銘を受ける。やがてゲバラの部隊に加入した彼は、ゲバラのファーストネームであるエルネストを戦士名として本人から授けられる。そして、ボリビアの軍事政権を倒す戦いに身を投じるが……。

<感想>キューバ新政府の使節団団長として、日本の広島を訪問するチェ・ゲバラの姿で幕を開ける本作。原爆ドームや資料館を巡った彼の「君たちはアメリカにこんな酷い目に遭わされて、なぜ怒らないんだ?」という言葉が、60年近くの時を経て我々の胸に重く響く。その後、原爆慰霊碑への献花、写真を撮っているゲバラが映し出される。そんなゲバラに留学先のキューバで強く感化され、母国ボリビアで革命に身を投じて散った日系人の若者の姿を描くわけだが、そこにはいまだアメリカ追従を続ける現代日本へ対する疑問も少なからず投影される。

主役として阪本順治監督の「人類資金」(13)で、ロシア語の堪能なヘッジファンドのマネージャーという脇役を演じたオダギリジョー。この作品では、殆どをスペイン語のセリフに挑んだオダギリジョーの熱演も素晴らしい。

昨年亡くなったフィデル・カストロと共にキューバ革命を闘い成功に導き、革命家として全世界に影響を与えたチェ・ゲバラが登場人物の一人でもある。チェ・ゲバラに扮したフアン・ミゲル・バレロ・アコスタも、そっくりさんのような姿で驚いた。彼の革命家としての偉業は、今も誰かが引き継ぐだろう。

後にフレディ前村は、キューバを離れ、最終的にボリビアで反政府ゲリラ活動を率いるさなか、政府軍に捕まり1967年に処刑された。こう言った史実として多くの者が知るゲバラの生涯とは対照的に、同じボリビアのゲリラメンバーの一人として闘い、同じ年に処刑された兵士に、フレディ前村という日系ボリビア2世の青年がいたことは殆ど知られていない。私もチェ・ゲバラのことは当然知っていたが、彼と行動を共にしたフレディ前村の存在を、この映画で初めて知ったのだ。

彼は、ゲバラと同じく医師出身で、また同じくエルネストという名を持ち、サンタクララにあるゲバラの霊廟では、ボリビアで死んだ他の兵士らと共に、「エルネスト・メディコ(医師)」という名前でレリーフを刻まれ、祀られていることを知る。
この映画を観て、実際のフレディ前村という人物も、言うべきことはしっかりと言うが、余計なことは語らず、寡黙で静かな人間だったということを知った。
医学生の頃から、ものの考え方や人との関係性の作り方など、大人びた人間だったと思うし、その辺が俳優オダギリジョーと似ていて相通じるところがあると感じました。体重を12キロ絞り、約半年間でスペイン語とフレディ前村の生まれ育ったボリビアの方言を習得。撮影の大半はキューバで行われたそうです。

それに加えて、彼が演じたフレディは、自分の未来をゲバラに託すことになる。日系医学生のまっすぐな若さ。同じ大学で思いを寄せた女性ルイサが、妊娠をして夫となる男性が同じ医学生であり、結婚はしないと、堕胎をしろと言われた。そういう相談を受け、ルイサはシングルマザーとなり女の子を産み、育てるのだが、その生活面をフレディが支えてあげ、彼女もフレディのことが好きになり思いを伝えるも、フレディもボリビアの内戦もあり結婚どころではないのだ。そんな女性関係も少しは花を添えて描かれていて、微笑ましい。

かくしてフレディは大学を辞めて「ボリビア民族解放軍」に入るために訓練を受け、ゲバラから「エルネスト・メディコ」という戦闘名をもらい、1966年10月にボリビアに潜入する。その後、米軍の指導を受けたボリビア政府軍の罠にかかったフレディが捕まり処刑されるのであります。
自分の命を懸けてボリビアの解放運動に参加していて、それは絶望的な状況でもなお希望を失わなかった主人公のフレディ前村、そして25歳の若さで命を落としています。その大変さを、そうとは思わせない淡々とした態度でこなしていく姿勢が感じられ、主人公の想いも伝わり、オダギリジョーの一段と上達した俳優魂を感じました。
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