作家・妹尾河童の自伝的小説で、上下巻あわせて340万部を突破するベストセラーを、「ホタル」「鉄道員(ぽっぽや)」の降旗康男監督が映画化。太平洋戦争下という時代に翻弄されながらも、勇気や信念を貫いて生きた家族の激動の20年間を描き、実生活でも夫婦の水谷豊と伊藤蘭が夫婦役で映画初共演を果たした。昭和初期の神戸。名前のイニシャルから「H(エッチ)」と呼ばれる少年・肇は、好奇心と正義感が強く、厳しい軍事統制下で誰もが口をつぐむ中でも、おかしなことには疑問を呈していく。Hはリベラルな父と博愛精神に溢れる母に見守られ成長し、やがて戦争が終わり15歳になると独り立ちを決意する。
<感想>毎年のごとく8月15日が来る度、日本人が辿った戦争の歴史を思い、二度と繰り返さないと、その気持ちを強くします。
激動の昭和初期をたくましく生き抜いた神戸のある一家の姿を描いている。リベラルな父親を水谷豊が演じ、実生活でも妻である伊藤蘭と夫婦役で共演。昭和10年代、神戸の下町。妹尾家の長男、肇は小学校の帰りに友人たちと海で道草をくったり、父親の仕事のお伴で外国人居留地を訪ねたりと、無邪気に子供らしい毎日を送っていた。だが、彼と家族のつましくも明るく幸せな暮らしに、戦争の影が徐々に忍び寄ってくる。
戦争が始まり、外国人を顧客に多く抱えていた父親盛夫にスパイの嫌疑がかかる。警察に連行された盛夫は夜どうし拷問を受け、洋裁で生計を立てている彼の右手を中心に痛めつけられる。息子の肇も学校でスパイの息子といじめに遭う。
中学生になった肇も軍事訓練でしごかれ、軍国主義に対する素朴な疑問を口にし、原田泰造演じる田森に目を付けられる。好きな絵を描いていつも画集を持って歩く肇。裸婦の西洋画を模写したことで「敵国の絵を真似るとはけしからん」と、田森に体罰を受ける肇。そんな彼を救ったのが、軍国主義に染まらない教官の佐々木蔵之介に出会う。
そんな中、肇と仲良くしていた近所のうどん屋の息子、小栗旬が政治活動をしていたらしく、ある夜のこと、「アカ」として逮捕されてしまう。一方では、オトコ姉ちゃん(早乙女太一)が、召集令状に一旦は応じたものの、出兵後に脱走し首吊り自殺をして死んでしまう。肇の周辺で戦時下の暗い空気が漂い始める。
戦争で外国人たちが帰国し、仕立て屋が立ちいかなくなったため、父親は志願をして消防士になる。体が小さい盛夫は、消防士の制服が大きくて、まるで貸衣装みたいだとみんなに囃され、一晩で自分の身の丈に合わせて作り上げる。
さすが、仕立て屋だけのことはある。しかし、消防士の仕事は、重労働で辛い毎日だ。
まだ幼い妹は田舎かに疎開させ、その後、神戸も大空襲に見舞われしまう。母親と二人で家に残っていた肇は、空襲の焼夷弾で家が焼け、火事を消そうと奮闘するが、近所の人たちは消火訓練のかいもなく、みんな逃げていなくなり町は一晩で焼け野原となる。それでも、父親の大事なミシンを2階から降ろすも、外は猛火で逃げるのに精いっぱい。命が助かっただけでも有難い。
空襲で避難所暮らしを余儀なくされる妹尾家。それでも、母親の敏子はどんな逆境にあっても楽観的で、キリスト教の愛を体現し変わらぬ明るさを持ち続けます。戦時中といえども将来、様々な国の人と交流するだろうと、教会の外国の人が国に帰る時に頂いたナイフ、フォーク、スプーンを取り入れ、外で話すときは標準語を使いなさいと、子供たちに新しいものをどんどん取り入れる。戦後の物不足の時代でも、自分の家族がやっと食べられるご飯を、隣の家族に分けて上げる優しさ。これには、肇も母親に反発して怒ります。でも、こういう母親だったからこそ、家の中が明るく和んで良かったのですよ。伊藤蘭さんの母親の演技も素晴らしかったです。
そして、父親の水谷豊さんの何より強く印象に残っている場面は、空襲の翌朝、自宅周辺の焼け野原で呆然とたたずむ姿。息子の肇を見つけた時、彼は喜びの表情さえ出すことができなかった。その後も、避難所暮らしでは、まるで抜け殻のような水谷さん。憔悴しきって何もする気が起こらないのだ。そんな時に、妻の敏子が宗教の信念ゆえの強さを見せて、家族を支える夫婦愛とでもいうのでしょうか良かったですね。
最後は、息子の肇が家を出て自立をして、絵描きになろうと頑張る姿が眩しかったです。理不尽と我慢を強いられる戦中、肇が線路の上で死のうと覚悟するも、何かを感じたのでしょうね、生きることを選んだ肇少年。
そして不安を抱きながらも「普通に生きられる喜び」を感じる戦後を、ユニークな家族の物語とともに描いていて、今現在、ささやかな日常を過ごせることの尊さを、この映画の中で戦争をあらためて考えさせる作品です。
2013年劇場鑑賞作品・・・250 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>毎年のごとく8月15日が来る度、日本人が辿った戦争の歴史を思い、二度と繰り返さないと、その気持ちを強くします。
激動の昭和初期をたくましく生き抜いた神戸のある一家の姿を描いている。リベラルな父親を水谷豊が演じ、実生活でも妻である伊藤蘭と夫婦役で共演。昭和10年代、神戸の下町。妹尾家の長男、肇は小学校の帰りに友人たちと海で道草をくったり、父親の仕事のお伴で外国人居留地を訪ねたりと、無邪気に子供らしい毎日を送っていた。だが、彼と家族のつましくも明るく幸せな暮らしに、戦争の影が徐々に忍び寄ってくる。
戦争が始まり、外国人を顧客に多く抱えていた父親盛夫にスパイの嫌疑がかかる。警察に連行された盛夫は夜どうし拷問を受け、洋裁で生計を立てている彼の右手を中心に痛めつけられる。息子の肇も学校でスパイの息子といじめに遭う。
中学生になった肇も軍事訓練でしごかれ、軍国主義に対する素朴な疑問を口にし、原田泰造演じる田森に目を付けられる。好きな絵を描いていつも画集を持って歩く肇。裸婦の西洋画を模写したことで「敵国の絵を真似るとはけしからん」と、田森に体罰を受ける肇。そんな彼を救ったのが、軍国主義に染まらない教官の佐々木蔵之介に出会う。
そんな中、肇と仲良くしていた近所のうどん屋の息子、小栗旬が政治活動をしていたらしく、ある夜のこと、「アカ」として逮捕されてしまう。一方では、オトコ姉ちゃん(早乙女太一)が、召集令状に一旦は応じたものの、出兵後に脱走し首吊り自殺をして死んでしまう。肇の周辺で戦時下の暗い空気が漂い始める。
戦争で外国人たちが帰国し、仕立て屋が立ちいかなくなったため、父親は志願をして消防士になる。体が小さい盛夫は、消防士の制服が大きくて、まるで貸衣装みたいだとみんなに囃され、一晩で自分の身の丈に合わせて作り上げる。
さすが、仕立て屋だけのことはある。しかし、消防士の仕事は、重労働で辛い毎日だ。
まだ幼い妹は田舎かに疎開させ、その後、神戸も大空襲に見舞われしまう。母親と二人で家に残っていた肇は、空襲の焼夷弾で家が焼け、火事を消そうと奮闘するが、近所の人たちは消火訓練のかいもなく、みんな逃げていなくなり町は一晩で焼け野原となる。それでも、父親の大事なミシンを2階から降ろすも、外は猛火で逃げるのに精いっぱい。命が助かっただけでも有難い。
空襲で避難所暮らしを余儀なくされる妹尾家。それでも、母親の敏子はどんな逆境にあっても楽観的で、キリスト教の愛を体現し変わらぬ明るさを持ち続けます。戦時中といえども将来、様々な国の人と交流するだろうと、教会の外国の人が国に帰る時に頂いたナイフ、フォーク、スプーンを取り入れ、外で話すときは標準語を使いなさいと、子供たちに新しいものをどんどん取り入れる。戦後の物不足の時代でも、自分の家族がやっと食べられるご飯を、隣の家族に分けて上げる優しさ。これには、肇も母親に反発して怒ります。でも、こういう母親だったからこそ、家の中が明るく和んで良かったのですよ。伊藤蘭さんの母親の演技も素晴らしかったです。
そして、父親の水谷豊さんの何より強く印象に残っている場面は、空襲の翌朝、自宅周辺の焼け野原で呆然とたたずむ姿。息子の肇を見つけた時、彼は喜びの表情さえ出すことができなかった。その後も、避難所暮らしでは、まるで抜け殻のような水谷さん。憔悴しきって何もする気が起こらないのだ。そんな時に、妻の敏子が宗教の信念ゆえの強さを見せて、家族を支える夫婦愛とでもいうのでしょうか良かったですね。
最後は、息子の肇が家を出て自立をして、絵描きになろうと頑張る姿が眩しかったです。理不尽と我慢を強いられる戦中、肇が線路の上で死のうと覚悟するも、何かを感じたのでしょうね、生きることを選んだ肇少年。
そして不安を抱きながらも「普通に生きられる喜び」を感じる戦後を、ユニークな家族の物語とともに描いていて、今現在、ささやかな日常を過ごせることの尊さを、この映画の中で戦争をあらためて考えさせる作品です。
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