パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ムード・インディゴ うたかたの日々 ★★★.5

2014年01月04日 | ま行の映画
作家やミュージシャンなどとしてマルチに活躍したボリス・ヴィアンの傑作小説を、『エターナル・サンシャイン』などのミシェル・ゴンドリー監督が映画化。肺の中にスイレンの花が咲く病にかかった女性と、彼女を救おうと奔走する青年の切なくも美しい愛を描く。カクテルを作るピアノや恋人たちを運ぶ雲など、原作の独創的な世界観をゴンドリー監督ならではの遊び心あふれるセンスで映像化。出演は、『タイピスト!』などのロマン・デュリスと『アメリ』などのオドレイ・トトゥ。
あらすじ:仕事をしなくても生活できる財産があり気ままに生きていたコラン(ロマン・デュリス)は、純粋なクロエ(オドレイ・トトゥ)と付き合うことに。その後、友人たちに見守られながら結婚した二人は幸福に満ちあふれた生活を送っていたが、ある日クロエが肺にスイレンが咲くという奇病に侵されてしまう。ばく大な治療費を稼ぐために仕事をし始めたコランの人生は徐々に狂い出し、クロエも日増しに弱っていき……。

<感想>フランスで半世紀以上愛されているボリス・ヴィアンの恋愛小説「うたかたの日々」を映画化したもの。この作品は、前から絶対に観たいと思っていたもので、4日から地方でも上映されて、早速観てまいりました。
ミシェル・ゴンドリー監督の独特な遊び心満載で大人の寓話ですね。お伽噺として楽しむには面白いと思います。ですが、内容よりもメランコリックなイマジネーションが表に出ていて、おかげでストーリー運びや登場人物の心理描写が中途半端になって、少し分かりにくいのが難点。

主人公のクロエのオドレイ・トトゥは、ちょっと年齢的に無理があるような、でも不思議ちゃん役はお手の物なので違和感はないです。それに、彼氏のロマン・デュリスも、金持ちのお坊ちゃんという役も「タイピスト」など、やっているので良かったです。特に上手かったのは、同居している料理人のニコラのオマール・シーが良かったですね。彼は前作の「最強の二人」での演技も良かったですしね。
でも、ボリス・ヴィアンの原作も摩訶不思議な物語ですが、ミシェル・ゴンドリー監督の偏執狂的な細工を施した演出は、イマジネーションとクリエイティビティの限界に挑戦しているようにも見えた。見たこともないものを作っているのはよくわかるのだが、個人的にはピンとこない部分があった。
大勢の人間がタイプをしているシーンは、この物語をタイプしているようにも取れた。うなぎが蛇口からにょろにょろと出て来るし、ガラスや鉄の食材や、カクテルを作るピアノも、他の動く食べ物やいろんなものが“チャップリン”の作品にあったのを見ているみたいな感覚でした。
家の中では鼠がペットのようにいろんなことをしているし、呼び鈴が蜘蛛のような動きで叩いても数が増えていく。窓からの日差しが白いゴムで、幾本もの日差しが差し込む様子も素敵。それに、コランの靴がガルルって唸るし、この辺りは楽しげに見てました。

クロエと知り合って、恋に落ちて雲のような乗り物でデートする。ダンス会場での二人は、足が伸びて不思議なダンスに驚く。結婚式も素敵だったし、ガラスで出来たリムジンもスケスケでいい感じだし、ですが、新婚初夜の晩にクロエの口の中へ、白い雪の精のようなものが入り、それが肺の中で育って睡蓮の花となるという難病だなんて。

そこからが、コランの人生が落ちていくような、家の壁にカビがびっしりと付いて、いかにも貧乏のどん底に落ちていくような描写が、前半の明るい色から薄暗い灰色に変わっていく様子も分かり安くていいと思います。
これは出来不出来とは関係なく、このセンスに乗れる人には、チャーミングで宝箱のような作品なのでしょう。様々な奇想天外さを盛り込みつつ、意外に骨組みは原作に忠実であるそうで、単純にここまでくると相性の問題なのだろう。やはり好き嫌いがあるのでは。タイトルにある「うたかたの日々」のように、最愛の妻に愛情を注いでも、難病ともなればそれはどうしようもないことなのだ。儚い夢物語を表しているんですね。
ですが、一方的にCGに偏ることなく、手作り感が映像の表現による視覚効果が素晴らしかった。物語が難病悲恋ものだけに、恋人のクロエの肺に睡蓮の花の蕾が根付くというお話は、少しニュアンスが違うが、邦画の「シャニダールの花」のよう。
原作に書かれた奇想天外な物語を、次々と視覚化してみせるスタミナと手腕には脱帽せざるを得ない。ですが、それらのアイディアの無意味さや無責任さ、そして意図された現実への敬意のなさなど。おもちゃ箱をかき混ぜたような子供っぽい残酷な想像力が、ゴンドリー監督にとってはボリス・ヴィアン小説が、格好の題材だったのだろう。
2014年劇場鑑賞作品・・・2  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング 


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