パピとママ映画のblog

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危険なプロット ★★★★

2014年01月02日 | か行の映画
フランソワ・オゾン監督が、文才あふれる少年と彼に翻弄される国語教師が繰り広げる心理戦を描いた作品。かつて作家を目指していた高校教師ジェルマンは、生徒たちの作文を採点している最中、男子生徒クロードが書いた文章に目を留める。それは、あるクラスメイトとその家族を皮肉につづったものだった。クロードの感情あふれる文章に危うさを感じながらも、その才能にひきつけられたジェルマンは、クロードに小説の書き方を指導していくが……。

<感想>人間が持つ毒と日常に潜む狂気を、ユーモアを交えて描いたサスペンス劇である。何だか、ウッディ・アレンと一瞬錯覚してしまった。可笑しくて、奇妙で、軽くて深くて、メリハリがあって、ただただ唸る傑作です。
本当に巧すぎる。この俳優さんたちの豊潤さときたら、言葉とかイメージ的でも、褒めすぎかしらと思うくらいに見事な連鎖である。

物語に魅入られていく、恐ろしいのか、美しいのか、分からない結末。この感覚はもしかして「雨月物語」と、驚いてみたりもする。
というのも、人間関係の描写に、奇妙な心理的スリルと、シニックな笑いがいかにもフランソワ・オゾン流である。高校の国語の教師が、文才のある生徒に、作文の指導を通して、友達の母親との恋愛ごっこのコーチをする。それはスリリングで面白いのだが、教師のやるべきことではない。

国語教師のジェルマン役のファブリス・ルキーニは、そんな教師を巧みに演じているのもいい。教師の妻ジャンヌを演じるクリスティン・スコット・トーマスが、ソファに脚を交差させて肉感的に座るのも最高に上手いし、友達の母・エステルを演じるエマニュエル・セニエも適役でいい。そして、エルンスト・ウンハウアーの、悪意なき魔性の美少年ぶりにも注目したい。

語りの視点次第で、切り出される現実は異なってくる。のみならず、創作行為は現実に介入して、現実もまたフィィクションに模倣するのだ。では、虚実の境界とは、いったい、・・・それらの知的刺激に満ちたメタ構造映画である。
こういった語りの進め方をする映画って、これまでいくつか見たことあったと考えながら、真っ先に思いついたのがヒッチ・コックの「裏窓」だったのだけど。映画のラストショットを見ると、その連想もあながち的外れではなかったように思えた。全体的に、皮肉で小味な人間喜劇に仕上がっている。
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