のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
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新しい子猫たち No.1901

2021-06-30 00:46:40 | 新しい子猫たち 
あの男の子はそんなに人気は実は出なかった。可愛い男の子なんだけど、あの男の子だけでなく あの三家族に共通した傾向があって、必死すぎる、真面目過ぎるのであって、面白みが全く感じられない。


長時間 正座が出来ないので、離席が多い、長く正座していると這いながら離席しないといけない。それも恰好は良くないが、それは減ってきていた。


将棋メシと言われていたか、この子は 治部ホテルのお子様ランチAしか食わない、洋太郎の威光で治部ホテルも追加されていた。治部ホテルは今では日本最高の格式を誇り、このレストランのランチは 一万円近いのだ。ただお子様ランチAだけは安く、500 円にしている、普通のランチは八千円。この子以外 だれも頼まない。高級車で治部ホテル東京、つまり 国賓クラスの泊まるホテル から 500円のお子様ランチA を一個 配達していた。


おやつは食わない、ミネラルウォーターと栄養補助食品の固形タイプのステックを決まった本数だけ食う。ジュースもお茶も飲まない。カフェインは取らないように言われていた。


全く 面白みがない。 お子様ランチAは実は日替わりで味付けが変わっていて、対象の子の年齢、体重、健康状態で変わるのだった。治部ホテルのレストランは 実はそんな新規の客なんぞは少ないのだ。お子様ランチAと云いながら この子のための日替わりランチ、対象となる子の栄養を管理して作られている。


小学校に上がるまで この男の子は 将棋以外の事は考えもしなかった。そして猫の先生の助けがなくても AIと云うかソフトの変化が判るようになってきていた。家では最高級のパソコンは持っていたが、ネット経由で コネコ研究所のスーパーコンピューターにアクセスできるように猫の先生はしてくれていた。


人間との対戦は まだ少ないのであったが アマの大会そして この棋戦と経験を積んできていた。


瞑想しながら 又 ブツブツいながら 歩く。そして屈伸運動して 席に戻る。それの繰り返し。


新しい子猫たち No.1900

2021-06-29 00:43:31 | 新しい子猫たち 
タイトル戦は粛々と行われた


第一局と第二局は この男の子が完封 二日制 なのに 一日目の夕方には勝敗は既についていた と云う将棋。

二日目の 昼前には 終わっていた


ただ第三局は 開き直って 力戦模様にした。これは混戦になった。それでもあの男の子が優勢に見えたが、肝心な所で緩手が出た。これで形勢がひっくり返った。それでも難しいようだったが、あの子は 失敗した手にクヨクヨする癖はまだあって、それで勝ち筋も見逃して、タイトル保持者が勝ってしまった


冷静に言って、この子には経験が不足していて、研究できない 力戦模様が勝ちやすいのは事実なのだった


ただその後の感想戦で 男の子の話を聞くと 大体判っていて、正しく判断できない事を悔やんでいた。早指しの癖 と 緩手にガッカリしすぎる癖が敗戦の理由なのだった。この感想戦を聞いて相手は もう 力戦模様にしようとする気が失せた。確かに勝てるチャンスはあるが、あくまで あの男の子の判断ミスとガッカリして判断が鈍る事を期待するだけの手法なのだ。それはトップ棋士として情けない気持ちもあるし、起こる確率は少ない。それにこの棋士も確かな棋力をこの子に感じた。多分 AI的な力とは別な棋力は高くなっていて、しかもそれは上がっている。力戦模様でもこちらが負ける日は近いと本能的に判った。


開き直って、自分の得意戦法にしたが、あの男の子の研究の前に屈した。

第四局と第五局は 又 男の子の完封勝ちに終わった。

新しい子猫たち No.1899

2021-06-28 00:41:07 | 新しい子猫たち 
この時のタイトル戦は 変な雰囲気で行われた


洋太郎は 主催の一角に ドーンと位置しており、騒ぐなと言っていた

香奈チャンネルの将棋チャンネルは あの男の子を売り出していて

騒ぎたい、盛り上げたいのであるが 洋太郎に逆らうワケにはいかない


他のネットテレビは ちょっと引き気味


一般的なマスコミも あの男の子が若すぎる、漸く小学校に上がる子だけに

どこまで騒いでいいのか 判らない。

話題にしたくても あんまり若すぎる


一方 将棋界のトップ棋士たちは 

今のタイトル保持者では 一つ勝つのも大変、4勝0敗でタイトル移動もあり得る

と見ていた。


猫の先生は 生きているAIと知る人ぞ知る存在だったが 残念ながら猫なので

洋太郎がどんな権威があっても 猫が棋士になるのは無理、猫もなりたいとも言わなかった。

この子は幼いとは云え人間なので 二代目生きているAIと意識されていた。

普通の人間では余程の事がない限り、勝つのは無理 と

知っている人は知っていた。

新しい子猫たち No.1898

2021-06-27 00:38:32 | 新しい子猫たち 
相手側の棋士は極めて 本音を言うタイプだった。この男の子に対抗できる棋士は まあいない。この男の子も 疑問手 悪手を出さない事はない。頻度は極めて少ないが それでも出る。それが出ると勝負にはなる。挑戦者決定戦第二局のように。


ただ 全体に見て この男の子に敵う 相手はいない。現在の この棋戦のタイトル保持者は ドッチかと云うと受けの気風で 粘り強く指して、終盤に相手のミスに付け込み 逆転してしまうタイプ。


ただ、そんな事は この男の子では 滅多に起きない。挑戦者決定戦トーナメントで この男の子と戦った 棋士は 全員 そう思っていた


ただ危惧はあった、この男の子は 物心ついてから将棋しかしていない。棋士も人間、色々と成長していく中で 色々と問題もでるだろう、それに今のように将棋三昧と云うワケにはいくまい。それを真剣に考えている人は、この男の子の周辺にはいるだろう。ソフトと云うか AI を超える子、将棋の天才ではあるが これからどのように成長していくのか それは大変ではある。 このまま成長して行ける筈はない。ただ短期的に見て、この男の子に敵う相手は今の将棋界にはいない。よほど研究していないと、中盤過ぎたら 既にリードされていて、終盤間違う事が ほとんどない子なのだ。

新しい子猫たち No.1897

2021-06-26 00:32:40 | 新しい子猫たち 
相手の経験に基づく 将棋観 と あの男の子 の研究に基づく 将棋観 が真っ向対決の将棋となった


中盤まで一進一退の攻防だった。男の子の渾身の手が出た。この手を考え出すまで どれ程 研究した事か、暫くすると この手の意味が相手にも判り、負けたと思った。負けたと思うと 経験が逆に作用して、坂を転げるように差が開いた


終盤は こんな所で 投了は出来ないと 思って指し続けた。一応考えられる奇手も指した。それも慎重に対応されて、最後は指す手がなくなった。みっともない投了図には出来ない。トップ棋士としての誇りもあった。


早い投了になった。


相手は もう一度勉強をやり直して、来年は 君とタイトル戦を戦える事を目指すよ と言った。