仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

深夜食堂

2017年03月12日 | ムービー
『深夜食堂』(2015年/松岡錠司監督)を見た。
物語は、「新宿。のれんに"めしや"とだけ書かれている食堂。営業時間が夜12時から朝7時頃までなことから、客は皆、"深夜食堂"と言っている。マスター(小林薫)が用意しているメニューは、豚汁定食、ビール、日本酒、焼酎のみ。"あとは勝手に注文してくれりゃあ、出来るものなら作るよ"という営業方針だ。ある日、いつものように常連の忠さん(不破万作)、竜(松重豊)、ゲン(山中崇)、小寿々(綾田俊樹)らがいる時、マリリン(安藤玉恵)が、誰かが置き忘れていった骨壺を見つける。意外な忘れ物に困ったマスターは・・・」という内容。
これは、2009年から不定期に放送されている同名のテレビドラマが映画化されたもの。
常連客達はほぼ全員がそのまま登場していたが、第20話で姿を消した片桐(オダギリジョー)は登場せず、代わって近所の交番に詰める警察官の小暮(オダギリジョー)が登場した。
どちらも少しばかり風変わりなキャラクターで、面白い。
(^_^)
また、柄本時生(西田はじめ役)、多部未華子(栗山みちる役)、余貴美子(塙千恵子役)、筒井道隆(大石謙三役)、菊池亜希子(杉田あけみ役)、田中裕子(塚口街子役)、向井理(客)などの俳優さん達がゲストとして出演されていたが、「ナポリタン」に登場したたまこさん(高岡早紀)は、多くの常連客達とは異質な、初のひねくれキャラだったかもしれない。
(^_^;)
家で洗濯物を取り込むマスターの姿や、買い出しの様子も描かれていたりして、映画になってほんのすこし店から飛び出したようだが、約25分で完結する短い物語であるテレビドラマ版のスタイルを踏襲して、映画作品でも基本的にはそのように展開していた。
テーマ曲の♪思ひ出♪(鈴木常吉/歌)がそのまま使用されているのも良かった。

海のふた

2016年09月01日 | ムービー
『海のふた』(2015年/豊島圭介監督)を見た。
物語は、「東京で舞台美術の仕事をしていたまり(菊池亜希子)は、故郷・西伊豆の小さな町に帰ってきた。船を降りて早々、幼馴染の酒屋のオサム(小林ユウキチ)と再会し、"ここでかき氷屋をして生きていく"と宣言する。空家を借受け、連日開店準備を進めていると、母(天衣織女)の友人の娘はじめ(三根梓)が滞在するので面倒をみてくれるようにと頼まれる。会ったこともない子の面倒を見させられることに不満なまりだったが・・・」という内容。
自分が気に入ったものしか提供したくないというかき氷の店"なぎ堂"のメニューは、糖みつ(500円)、みかん水(500円)、エスプレッソコーヒー(500円)のみとあって、せっかく来たお客さんの女の子は「赤いのください」、「緑のください」と注文するものの自分が食べたいものがないことから泣き出してしまうし、オサムからは「メニューが少ない」、「値段が高い」、「こんな田舎でエスプレッソ飲む人なんていないよ」、「冬どうすんだよ」とダメ出しの連続。
母には「赤いのが食べたいならファミレスにでも行きなさい」(確かそんな感じ)と言う始末。
これじゃ、"お遊びの営業"と見られても仕方がないところだろう。
「さぁ地元企業に貢献!!」と、通りかかった知り合いを店に呼び込んでくれたオサムは、長年そこに住み続け、親の酒屋で仕事を頑張ってきたという自負を持っているのだろうと思える人物で、何かと「昔のこの町はこうじゃなかった。どうしてこうなっちゃったんだろう」と口にするまりに多少反感を持っている様子が伺えたが、そういう気持ちは何となく分かるような気がした。
飛び込みでやってきた営業マン(吉岡睦夫)が持ち出した"フランチャイズ化"のエピソードや、オサムの店のエピソード、ぬいぐるみのエピソード等を合わせて考えた時、『海のふた』の"海"というのは、長い間に出来上がった旧来の営業の仕方や、ビジネスそのもの、マネーの流れを指しているのではないかと考えるに至ったのだった。
また、「これ食べなさい」、「これも食べなさい」と何度もごちそうを勧めてくる父(鈴木慶一)や、「この辺がいいんじゃない」と持ってきたお祝いの品の置く場所まで決めてしまおうとする大家のおばさん等、小さなコミュニティで生活している人達への"嬉しいんだけどちょっとウザいよ"的な描写は、おそらく原作(『海のふた』よしもとばなな著/2004年)の著者の実体験によるものなのだろうとも思ってみたりした。
まぁ、何となく分からないでもない。
(^_^;)

森崎書店の日々

2015年06月14日 | ムービー
『森崎書店の日々』(2010年/日向朝子監督)を見た。
物語は、「交際歴が1年ほどになる会社の先輩・竹内とのデート中、突然に、"同じ会社に勤めている他の女性と結婚することにした"と言われて呆然となる貴子(菊池亜希子)。会社を辞めてしまい日々ふさぎこんでいるところへ、叔父のサトル(内藤剛志)から、自身が経営している古書店"森崎書店"を住み込みもできるから手伝ってほしいと依頼される。初めて住む町・神保町。それまで本の世界に興味を持つことなどなかった貴子は、店の常連客サブさん(岩松了)や喫茶店のマスター(きたろう)、アルバイトのトモコ(田中麗奈)、高野(奥村知史)らと知り合い、古書の世界や神保町のことがだんだん好きになっていき・・・」という内容。
楽しいはずのディナーから一転、深い谷底にいきなり突き落とされ、目の前がマックラ。
そこから立ち直るには相当な時間がかかることだろう。
しかも、"このあとどうする!?君の部屋に行く!?"だなんて平然と言ってくるのだから、これは突き落とされた谷底に、さらに大きな岩を落としてくるようなものだ。
(-_-;)
これだと、何もかもイヤになって会社を辞めてしまうのもあり得るよなぁと思ってしまう。
こんな馬鹿な展開を吹っ切るにはいっぺんに環境を変えるくらいしか方法が思い浮かばないようなところへ、救いの手ともいうべき叔父からの電話。
いくら優柔不断とはいえ、マッタク今後のことが見えない貴子には断る理由がなかったわけだ。
そして、少し新しい環境に慣れてはきたものの、まだ前のことを思い出してみたりもしている時、サトルが貴子に、"神保町という街は本と同じ。開くまではすごく静か。でも開いてみるとそこには途方もない世界が広がっている。そして読み終えて閉じるとまたシンと静かになる"というような話をするのだが、貴子が住み始めた神保町という街がなかなか魅力的に描かれている。
人付き合いや世界有数の古書店街という環境もそうだし、映画ならではの映像の綺麗さがまた良い。
これを見ていると、新しい街に住んでみたいなぁ、どこか違う街に住んでみたいなぁと思ってくる。
(^_^)
原作は八木沢里志著の同名小説だそうで、『桃子さんの帰還』という続編では1年半後が描かれていたり、さらに『続・森崎書店の日々』へと、この物語は続いているようである。