仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

森崎書店の日々

2015年06月14日 | ムービー
『森崎書店の日々』(2010年/日向朝子監督)を見た。
物語は、「交際歴が1年ほどになる会社の先輩・竹内とのデート中、突然に、"同じ会社に勤めている他の女性と結婚することにした"と言われて呆然となる貴子(菊池亜希子)。会社を辞めてしまい日々ふさぎこんでいるところへ、叔父のサトル(内藤剛志)から、自身が経営している古書店"森崎書店"を住み込みもできるから手伝ってほしいと依頼される。初めて住む町・神保町。それまで本の世界に興味を持つことなどなかった貴子は、店の常連客サブさん(岩松了)や喫茶店のマスター(きたろう)、アルバイトのトモコ(田中麗奈)、高野(奥村知史)らと知り合い、古書の世界や神保町のことがだんだん好きになっていき・・・」という内容。
楽しいはずのディナーから一転、深い谷底にいきなり突き落とされ、目の前がマックラ。
そこから立ち直るには相当な時間がかかることだろう。
しかも、"このあとどうする!?君の部屋に行く!?"だなんて平然と言ってくるのだから、これは突き落とされた谷底に、さらに大きな岩を落としてくるようなものだ。
(-_-;)
これだと、何もかもイヤになって会社を辞めてしまうのもあり得るよなぁと思ってしまう。
こんな馬鹿な展開を吹っ切るにはいっぺんに環境を変えるくらいしか方法が思い浮かばないようなところへ、救いの手ともいうべき叔父からの電話。
いくら優柔不断とはいえ、マッタク今後のことが見えない貴子には断る理由がなかったわけだ。
そして、少し新しい環境に慣れてはきたものの、まだ前のことを思い出してみたりもしている時、サトルが貴子に、"神保町という街は本と同じ。開くまではすごく静か。でも開いてみるとそこには途方もない世界が広がっている。そして読み終えて閉じるとまたシンと静かになる"というような話をするのだが、貴子が住み始めた神保町という街がなかなか魅力的に描かれている。
人付き合いや世界有数の古書店街という環境もそうだし、映画ならではの映像の綺麗さがまた良い。
これを見ていると、新しい街に住んでみたいなぁ、どこか違う街に住んでみたいなぁと思ってくる。
(^_^)
原作は八木沢里志著の同名小説だそうで、『桃子さんの帰還』という続編では1年半後が描かれていたり、さらに『続・森崎書店の日々』へと、この物語は続いているようである。

ディア・ドクター

2013年02月06日 | ムービー
『ディア・ドクター』(2009年/西川美和監督)を見た。
物語は、「四方を山に囲まれた神和田村。コンビニも無いその小さな村に研修医・相馬啓介(瑛太)がやって来た。かつて無医村だったその村には曽根村長(笹野高史)自慢の医師・伊野治(笑福亭鶴瓶)がおり、診療所に付帯する公宅に住みつつ、日夜その重責を担っていた。あらゆることを引き受ける献身的な姿に医師としての本分を見出した相馬だったが、ある日突然伊野が姿を消してしまう。失踪事件として届出が出され、波多野刑事(松重豊)と岡安刑事(岩松了)の捜査が始まったのだが・・・」という内容。
村長が「神様や仏様より頼りになる先生」と最大の賛辞を贈る通り、伊野先生は日々の診療はもとより患者さんの弱った心のケアまでしている様子だった。
それは、その有様を間近で見ていた研修医が研修期間終了後またこの診療所に戻って来たいと言い出すほどだったが、実はこの伊野という医者は(年老いて現役の医者を引退したと思われる)父親への自分なりの抵抗として、そのように生きているらしかった。
決して自分が志していたことではなく、"親への抵抗"という何とも子供じみた感情が出発点であるらしいことが描かれている。
ただ、村長すら伊野の素性を知らなかったし誰も知ろうともしていなかったという点から、そのような理由やきっかけはこの地域の住民達にとってどうでもよい類いのことだったと推測できる。
うすうすと伊野の"うそ"を感じながらも一緒に地域医療に従事していた看護師の大竹朱美(余貴美子)以外は・・・。
例えば、『巨人の星』(梶原一騎作)の主人公・星飛雄馬は父・一徹が思い描いた人生を歩むこととなり苦悩したが、この物語の主人公・伊野は残念ながらプロにはなれなかった。
そういう別の種類の苦悩が、彼を小さな村での"医療行為"に走らせたのだろうか。
ちょっと面白い不思議な話だった。