波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

続 「あの頃」を読む。

2017年05月13日 | 読書
(前回の続き)
じ時期(夫が亡くなった直後)のエッセーから。「ふいに涙が出てきて、やっぱり悲しいだけだなあ、と思う。丸まってお湯につかり、ケッと泣いた…お悔やみの電話をかけてくれた親切な誰彼のことを、その人が男であれば(丈夫だなあ。なぜ死なないのだろう)と、女であれば、(あの人のつれあいだって、いまに死ぬぞ)と、湯船の中で思ったりなどもする」【お湯】。形容詞でなく、『ケッ』から続く言葉に、人はこうやって生きていくもんだとつくづく思う。
                 
の本でも、人間の観察と食べ物の感覚がやっぱり面白い。辛辣だが一線を越えない彼女流の「反省」と「述懐」。無人島に一冊だけ持って行く本、と言われたら内田百閒か武田百合子と前に書いた。物語や説明文選ばずエッセーなのは、日常感覚の優れた言語化に触れさせていただき、自分という人間の捉え直し、その快さなんだろうなあ。感覚の触媒みたいな言葉に出会い、幼稚で浅はかな自分を笑う醍醐味。
             
風立男氏は、還暦少し前から意識してコラムを読むようになった。昔の朝日「天声人語」なんかは確かに名文揃いだ。エッセーの優劣は文末でわかる、が波風氏の持論だ。この「あの頃」もやっぱりそうなのだ。今回、一人娘(写真家 武田花)が波風氏と同年齢だったことを再確認した。それにしても、武田泰淳は64歳で逝ったのか。一冊も読んでないが読む予定もない。意外にそんな読者が多かったりして。


 
右上画像は前回ブログで書いた本書表紙裏掲載の作者武田百合子氏休み休み、本の片付け中。文庫本の『食べ物』に関するエッセーや小説が結構あった。もう一回読みたいので、コーナーを作っておこう公式裏ブログ更新しました。お題は「目頭に悪いコロッケ」です。
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