波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

『ほんとうのリーダーのみつけかた』を読みながら

2020年08月29日 | 日記・エッセイ・コラム

この国の首相辞任のニュースを不思議な気持ちで聞いた。「白けた」気分7割、虚しさ3割。このリーダーの言葉を思い出そうとしたが、意味なく多用する「いわゆる」とか「そもそも」のような修飾語しか浮かばない。良し悪し別にして心に残る言葉が一つも思い出せない。強行採決法案すぐに思い出せても庶民に寄り沿った政治結果は全然浮かばない。

この最長政権のリーダーは、繰り返し「責任」を唱えながら全く何もせず、大げさで空疎な「今までに例の無い」「いまだかつてない」のような事実と乖離した言葉をコロナの危機的状況下でも使う。その果ての2度目の政権投げ出し。何なんだこの方は?
政治家の命は言葉だと言う。庶民と政治家との信頼関係の鍵がそれだ、民主々義の本質は真実の言葉だ。その場限りの耳障りの良い言葉やインパクトが強いだけの言葉は、政治に対するあきらめを生んだ。感銘するに遠い官僚の書いた作文もそれに貢献した。

空疎な言葉の影響は深刻だ。任期途中のリーダー辞任は大きなニュースのはずだがそういう感じがあまりしない。希な自分の言葉で述べた辞任会見の言葉も重みを感じさせない。そして、次のリーダーに期待できない感じは、政治の言葉を信頼できなくなってしまったからだろう。最低からさらに最低になるのは勘弁して欲しい。政治家への期待はただ一つ、聞く耳を持ち、心のこもった言葉による政治信頼だ。
先々週に読んだ『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店:梨木香歩著)を、首相辞任のニュース聞いた後で所々開いて読みこのブログを書いた。

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第20回『ほんのおつきあい』全記録(下)

2020年08月28日 | 読書


KK(女) マンガ『子どもはわかってあげない 上下巻』(講談社:田島列島作)、なぜこのタイトルなのか?モシ君の兄はなぜトランスジェンダーなのか?、今時の子どもは人は人自分は自分であり今の状況を壊さない、色々な読み方が可能★5。『ギンイロノウタ』(新潮社:村田沙耶香著)、愛情の形と女性の成長を描く衝撃の2作★3。『絶対正義』(幻冬舎:秋吉理香子著)、殺された人は正義の塊そして助けてもらった人達に殺される、灰色の無い白黒の「自分はぜったに正しい」が追い詰めて行き・・・・★5。

腹ペコ(女) 平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書:平野啓一郎著)、「本のお付き合い」でとりあげられていて気になっていた作者の新書。自分という人間は、他者や環境によっていろんな顔を見せる。それを「分人」という言葉で整理して、様々な人間関係を説明する、というのが本書。「誰と一緒にいる「分人」が、自分は好き?」という観点で生きていきたいなぁと思う★5。マンガ『リンセスメゾン』(小学館:池辺葵作)、この作者のテーマはたぶん「女性の生きづらさ」、もう少し言うと「女性が生きやすくなるためには」みたいなことが、テーマにあると思う。生きていく上で大切なことは、変わってもいいし、変わらなくてもいい。変わることも、変わらないことも肯定してくれる物語は、励まされる。「女性の生きづらさ」的本は沢山あるけれど、「男性の生きづらさ」に関する本ってないのだろうか?それとも知らないだけなのだろうか、と気になった★4。 ※この感想はメールによる参加協力です。

波風 『熱源』(川越宗一著:文芸春秋社)★5(7/12ブログ「『熱源』を読む」参照)、米原万里著『米原万里の「愛の法則」』(集英社新書)と『偉くない「私」が一番自由』(文春文庫)、自由で健やかな精神と豊かな知識教養と類い希な環境がこんな魅力的な文章を生むのか、井上ひさしと小森陽一や佐藤優との関わりに「そうなんだろうなあ」と思いつつゆっくりとこのエッセィスト(享年56歳)が残した文章を時々思い出したように読み続けたい★5。

【今回 話題になったこと】

■村田沙耶香をどう読むか ※『コンビニ人間』の交流以来、この作家の紹介が増えたが「気持ちが悪くなる」「なぜこういう小説を書くのだろう?」という読後感が多い。

■ドキュメンタリーを読むか読まないか  ※小説は読むがドキュメンタリーは読まない参加者、その逆の傾向の参加者、どちらも読む参加者もいて。

■『アイヌ』について私たちはどこまで知っているのか ※小説『熱源』から、身近な民族問題なのに実は何も知らないのではないか。


今月の読書交流会『ほんのおつきあい』を、8月30日(日)14:00~波風食堂で開催します。交流は3冊まで、参加費200円(100円は珈琲代+100円は子ども食堂支援)。準備の都合もあり参加希望の方は前日までにご連絡ください。メールによる参加もお寄せ下さい。(→ namikazetateo@gmail.com)

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第20回『ほんのおつきあい』全記録 (上)

2020年08月27日 | 読書

先月26日に開催した読書交流会の紹介。一昨年秋から始めて早20回。忙しい12月末とコロナで2回開催できなかった。別枠でメールによる読書感想交流2回、合計すれば全部で22回。

ママヨ 『影裏』(文藝春秋:沼田真佑著)、友人から借りて読んだ芥川賞受賞作。読めない漢字あるが文章は読みやすい。東日本大震災で不意に失った友のことを自然を交えて綴る、生死不明でも良いのではないかが印象に★4。『地球星人』(新潮社:村田沙耶香著)、読後悲しい、人に対する共感無く親しみのある他人がいない、辛い自分(地球星人)を否定する者たち(宇宙人)を消すことで生きている不条理、そんな人間関係を悲しく思う読後★3。
※ケイコさん/評価の分かれる一冊。中毒性があるが気持ちは悪い。ママヨ三が最後まで読んだのが凄い(笑)

 

MS(女) 『殺人出産』(講談社:村田沙耶香著)、普段読んでいる本と全く違う、自分がこの本を読んでいることを知られるのが恐い(笑)、読書会で紹介されたので読んでみたが刺激が強すぎる。しかし、本ってこういうものなのかとも思った★5。ケイコさんがこういう本をサラっと読めるのが凄い。
※ケイコさん/この作者のものでは、『消滅世界』と『殺人出産』がおすすめですよ。

 

SN(女) 『人狩り熊』(つり人社:米田一彦著)、2016年の秋田の事件、テリトリーに入った老人が最初に食べられる。自分も写真撮影で熊に遭遇する可能性もあり、熊の第一人者によるドキュメントは必読書★4。『「鬼畜」の家-わが子を殺す親たち』(新潮文庫:石井光太著)、3事例のドキュメント、子どもを憎くて殺している親は無く、もの扱いの未熟な育て方や統合失調症の親、負の連鎖、相談者もいない。以前、友人から近所の父子家庭で虐待の話聞いたこともあり、周囲も行政機関もしっかりしなければ、虐待を知らない人に読んで欲しい★5。画集『ノーマン・ロックウェル』(トーマス・S・ブッヒゥナー著、ノーマン・ロックウェル/イラスト)、留学した人からのプレゼント★5。 ※明日の(下)に続く。

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言葉のケイコ【その四十捌】

2020年08月25日 | 【保管】言葉のケイコ

 

薔薇色読書人生

この人の作品をまた読みたいと思える作家さんとの出会い。何度経験しても心が浮き立つ。それでも、そういう作家さんと出会えることはそう多くないから、これは運命と感じる。特に、私が好きなミステリ系の作家さんとの出会いは貴重だ。最近、秋吉理香子さんの本を読み始めて、この人の本は全部読もうと決める。二冊目に手に取った『暗黒女子』が素晴らしかった。そこまで目新しい手法を使うわけでも、ラストに大きな衝撃展開があるということもない。ただ、文章の書き方、言葉の使い方、構成、伏線の張り方が私の好みにドンピシャに当てはまった。次に手に取った『聖母』もとてもいい。私はミステリにはどんでん返し的展開を求める傾向が強いが、奇をてらいすぎているとか、なぜこうなったのかが結局よくわからないというラストは好まない。その点、秋吉さんのミステリ小説は、読後感も含めて全てが計算され尽くされているような美しさを感じる。読んだ後、ゾクッとして呆然とする。伏線が綺麗に回収され、思わずもう一度ページをめくってしまう。例えば料理を作ったり、掃除をしたりしているときにふと思い出すことも。秋吉さんの小説は、私の日常にさえ入り込んでくるのだから、これが運命の出会いでないはずがない。

ちなみ最初に読んだ秋吉さんの小説は『絶対正義』。読書交流会で紹介した。つまり、紹介したくなるくらいに心を掴まれたと言うこと。これから『自殺予定日』を読む。このタイトルをどう超えてくるのか、楽しみだ。

※集英社 文芸単行本公式サイト:秋吉理香子インタビュー

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HONEBONE - 『冷たい人間』

2020年08月21日 | 日記・エッセイ・コラム

HONEBONE - 『冷たい人間』 Music Video / "A Cruel Person" MV

今の孤独感をこんなに直裁に歌う。率直で生々しく、聞いている側に隠れる場所も弁解する時間も与えてくれない。自分はさりげなく隠しているのに、こうも開けっぴろげに言われて唖然としてしまう。だが聞き続けていると、自分を「冷たい人間」だと正対するのは実は優しさなんだなと思えてくる。この救いにほっとする。

 

「生きているしるしが、『会う』」ことよりも、『会わない』ことの方にあるのだ 荒川洋治」(8/21 朝日新聞『折々の言葉』から)。「会わないのは姿に触れないことだから不安で心許ないものだが、相手が死者だと会えもしない。会わないという状態に『耐えて』いるのはだから、相手も自分も生きているという証なのだと。思うという形で確(しか)とつながる『大きな世界』」に思うところがありブログで書こうとした。その前にユーチューブでこの曲を聴いてしまった。

 

互いに生きているから、自他ともに冷たく思ったり、会えるのに会わなかったりできるのだ。動画の最後、病室での笑顔と涙に立ち止まる。『生きるのに疲れた』も注目曲。

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