波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

しあわせの歌

2020年12月31日 | 日記・エッセイ・コラム

 


大晦日の午後、仕事もせず本を読む。97歳の詩人(杉山平一さん)が東日本大震災後にまとめた詩集『希望』。あの花森安治さんが聞き書きして庶民の暮らしぶりを伝える『花森安治選集』(「ある日本人の暮らし」「日本紀行」収録)。詩集あと書きに、詩人が高校時代を旧姓松江高校で過ごし、花森安治氏に文芸を吹き込まれたとあった。2冊の本で、「しあわせ」という言葉で立ち止まっていたから訳もなく嬉しい気持ちになった。
台所仕事の手を休めてスマホ見ていたママヨさんが、東京が1300人越えたと言っている。


待つ
                     杉山 平一

待って
待っても
待つものは来ず
禍福はあざなえる縄というのに
不幸のつぎは
また不幸の一撃
ふたたび一発

わざわいは重なるものとも
知らず
もう疲れきって
どうでもいいと
ぼんやりしていた
それが
しあわせだったと気づかず
                          *詩集『希望』から


しあわせのうた

しあわせは
おいらのねがい
仕事はとっても苦しいが
流れる汗に未来をこめて

1956年5月の『暮らしの手帖』に収録された港区の親子4人タクシー運転手一家の話。冒頭に『しあわせのうた』の冒頭部分。青森の農家5男に生まれ16歳で東京に出て働く。色々失敗し満鉄で働き結婚。「こういう人がいっぱいいた。戦後を作ったのはこういう大人だったんだな」と思った。妻は勉強が好きだが家が貧しかった。引き揚げてから夫に叱られながらも本を読み周りから慕われ明るく家庭を支える。筆も立ち新聞投書に、いこじで騙され狡い人間に見られ損な性質だが「割れ鍋に綴じ蓋」で私には一番似合いの夫とあり、ホロリとさせられる。最後に、しあわせのうたで終わる。この歌は、忙しく働く父親が週に数回夕食時に食卓にいる時にみんなで歌うとあり笑顔の写真も。

しあわせは
あたしのねがい
あまいおもいや夢でなく
いまの今をより美しく
つらぬき通して生きること
みんなと歌おう
しあわせのうたを
ひびくこだまを追ってゆこう


今年一年を思い出すと、そこにはいつも「今は 幸せなんだろうなあ きっとそうだよな」という問いと答えがひとつになった感情がいつもあった。詩は、不幸を何でそうなのよと思うその時こそが実は「しあわせ」で、『しあわせのうた』の歌詞は「まだ幸せでないから」歌うはずで、『しあわせ』というのは、自分で決めれば良いこと、何かとか誰かと比較するものでは全く無いんだなとつくづく思う。手書き題字は花森氏作。
黒豆が煮えたようだからこの辺で今年のブログは終わりとしよう。

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言葉のケイコ【その六拾陸】

2020年12月29日 | 【保管】言葉のケイコ


今年漢字

2020年の今年の漢字は、予想通り「密」。投票なので、今年はどうしても例のウィルス関連の漢字が多くなってしまうだろうと思っていた。上位10個のうち、8つまでがウィルスに関わる漢字。そして残りが「鬼」「滅」。まさに今年を象徴しているなぁ。それでも、「密」を選んだ意見の中には、物理的距離ができたからこそ人との繋がりがより「密」なものと感じることができたというものもあり、私もなるほどそうだなと思う。当たり前に大切な人に会えるということがいかに大事なものかを感じることができた1年。対面だけではなく、オンラインでも「密」接に関わることができる可能性を生んだ1年。このような状況だからこそ気づけることもあったなぁと振り返られることは、素直に今年良かったことだと思える。

は、ケイコの今年の漢字は。色々考えたけれど、「初」が一番しっくりきた。40年以上生きてきたけれど、今年は初めて経験することが多かった。初めてアイドルにハマったしね(笑)。そんな中、一番悲しいことは、帰省ができないこと。生まれて初めて両親と一緒に過ごさない正月となる。こんなに長く会わないのも初めて。仕方ない、仕方ないと言い聞かせた2020年が終わる。それでも、明るい兆しが見えるように、希望を込めて「初」とした。当たり前の大切さに改めて気づいた、スタートの年だと信じて。今を乗り越えた2021年は、どんな「初」めてに挑戦しようかな。

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第24回『ほんのおつきあい』全記録

2020年12月28日 | 読書
  • 11月29日(日)に開催した今年最後の読書交流会記録。そして、参加者3人の最少交流。その分、発言時間に遠慮必要無くなり深まったかも。


MS
(女) 『時雨の記』(中里恒子著:文春文庫)、未亡人と既婚男性との不倫、男が一生懸命に女の人を好きになるが、妻のことを悪く言うのはどうかと思う。不倫はやっぱり駄目だと思った。小説自体はしっかりしているから★5。『神様のボート』(江國香織著:新潮文庫)、ここに出て来るパパは嫌いだな、娘に迷惑をかけているから★4。全く興味無かった不倫、この読書会がきっかけで不倫小説を続けて読み一応決着ついた(笑)。不倫は嫌だ、ちゃんと結婚したいから(笑)。

KK(女) 『恋愛脳』(黒川伊保子著:新潮文庫)、男と女のすれ違いを脳の違いで説明していて面白い。男は一旦好きだとずうっと好きだが、女は一生好きというのは信じられないし一度嫌いになったら2度と好きにならない、嫌いにならないために「好きだ」と言われ続けたいのだ(笑)★5。同じ著者の『夫のトリセツ』(講談社)、男(夫)の訳のわからない言動を分析して了解・共感できるところ多い実用書★5。
今回のいちおしは『異類婚姻譚』(本谷有希子著:講談社文庫)、自分の顔が夫の顔に似てくることに気づく芥川賞受賞のファンタジー。ひょうひょうとした表現で夫婦と言う形式をあらためて考えさせられる★5。

波風立男 『ぼくの叔父さん』(伊丹十三著:つるとはな)、単行本未収録を集めた本書、半世紀以上前のエッセーなのに全部が少しも古くない、題材の選択と表現のセンスに驚く稀有の才能。見事なイラストも著者による、いやはやいやはや★5、読後に『伊丹十三の本』を買ってしまった。本を片付けている老後なのに(涙)。残りは、本ブログでも紹介した詩集『希望』(杉山平一作:編集工房ノア)、詩は苦手と言う人に読んで欲しい、懐かしい何かが全部の詩から香ってくるよ、97歳の詩集★5。『モーロクのすすめ 10の指南』(坪内稔典著:岩波書店)、前に図書館から借りてきて読み、70歳に近づいてきたコロナ禍でどう明るく暮らしていくかを考えようと思った時にこの本を思い出して購入、中身は題名と違いふんわりした老人のダンディズムを感じる★5。


このブログ、今月21日で10年を迎えた。だからどうということもないが、書くことがあり、協力してくれる人がいて、読んでくれる人もいた結果。読書交流会『ほんのおつきあい』も早3年になる。

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波風食堂の会計

2020年12月26日 | ご連絡

年は波風食堂を一度も開くことができませんでした。波風本宅で何回か極々うちわでウドンを食べていただいた以外、予定していた2つの展覧会や珈琲教室のイベントもすべて中止。でも、大勢の皆さんのご協力で、当地の子ども食堂応援費は例年より多く集まり責任者の方へ届けることができました。この場を借りてお礼申しあげます。

【収入】計26.540円
・うどん定食(20杯) 10.000円
・波風珈琲カンパ(200グラムに100円) 3.550円 
・読書交流会参加費(1回100円)4.700円
・古本売上げ金(メルカリ)3.290円 ※読書会参加者の方のご協力で。
・工作依頼費(怪獣着色作業)5.000円  

【支出】計26.540円
・うどん材料費 5.000円
・子ども食堂応援費 21.540円


来年は皆さんと一緒に安心して遊べますよう願ってやみません。引き続き、波風食堂のご参加と応援をよろしくお願いします。   
                                2020.12.26 波風食堂 店長

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WILD FOX №9/ダイナミックに

2020年12月24日 | 【協力】Wild foxギャラリ

鳥には全く興味がなかった私を夢中にさせてくれたオオワシ。

羽を広げたら2m以上もあり、近くで見て圧倒されました。

警戒心の強いオオワシを間近でこのように撮るのに3年かかりました。

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