普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

マクドナルドへの地裁判決について

2008-02-03 06:53:47 | 企業経営

 1月28日、東京地裁は,日本マクドナルド株式会社に対して,同社の店長として勤務していた従業員に対し,未払いであった残業代を支払うことを命ずる判決を下した。
 これに対して同社は、店長が管理職であるので,残業代を支払う必要はないと控訴する予定だそうでマスコミを賑わしている。

[社員の管理者化の歴史]
・従業員→管理者化→残業代カット
 マクドナルド社の一般従業員を管理者扱いにする方法は、一昔左派系の指導者に率いられた労働争議の激しかったころ、労働組合の力をそぐ為に、会社の業務について従業員を指導する立場にあった古参の職長やベテランの技術者達(組合側から言えば組合の有力者)を管理職にしたのがその始めだ。
 当時競争がそう激しくなかった会社側の立場から言えば、組合の力を削ぐだけたでなく、結果的には残業代を支払わずにすむと言うオマケを産んだ。

・職場の生産性向上の動き
 バブル崩壊以前では、西欧諸国との競争力向上のための、生産現場では生産性向上に力を入れられた。
 その効率測定の尺度になったのが、従業員の作業時間だ。
 幸か不幸か、従業員への残業代支払いのために、タイム・カードなどにより正確に作業時間が採取されていた。
 何故なら労働組合の眼が光っていたからだ。
 そして生産性向上のために残業時間を含む作業時間の短縮が図られた。
 会社への忠誠心に基づく小集団活動、改善活動などの成功もあり、日本の企業は世界有数の競争力を持つことが出来た。
 詰まり、作業時間と言う絶対的なスケールがあったから、そして残業代の支払いと言う条件があったから日本の生産現場の生産性は飛躍的に上昇したのだ。

・バブル崩壊後のホワイト・カラーの大量解雇
 バブル崩壊後に各企業は一層の合理化を迫られた。
 然し生産現場では、既に可なり徹底的な効率化が進んでいたのでこの部門でのコスト削減の余裕はなかった。。
 残るのはホワイトカラーだ。
 事務、管理部門では生産現場に比して殆ど合理化が進んでいない。
 それこそバブル時にコピー機やパソコンの革命的な機械を導入したのにだ。
 ざっと考えてもこれだけで、30%近くの経費削減が出来たはずだ。
 それを放置していたのがバルブ崩壊後の事務、管理部門の大量解雇に繋がったのだ。
 その様なお粗末の結果になるまで、事務、管理部門の合理化の必要性に気づかなかったのか、気づいてもその差し迫った必要性を感じなかったのは、彼らの時間管理がおろそかになっていたからだ。
 管理職に残業代を支払う必要が無かったからだ。
 また事務職の人達も目の前の管理職の人達が残業代なしで働いているのを見て、それを要求しにくいため「サービス残業」をしていたのが。

・バブル以後のサービス産業の発達
 バブル崩壊後米国式のサービス産業が急激な発達を遂げた。
 しかし、日本の大企業のような生産性はとても望めないから、当然それだけの給料は払えない。
 それで中心の従業員を給料の安いパートや契約社員とした。
 彼らは当然よりよい仕事を求めて移動する。
 そのために手取り足取りのマニュアルを作りその指導を正式社員にさせた。
 そして指導するのだからと言って管理職の名を与え、残業代をカットした。
 その管理職?は移動の激しい、勤務状況の不安定な非正規の従業員の穴埋めに自分で身体を動かす他ない。
  それが今回の問題が発生したのだ。
 マクドナルドを告訴した人は気の毒としか言いようがないが、客商売の同社の印象を傷つけたと言う意味での被害は大きいと思う。
 同社は裁判所の判断に従って、その管理制度を改めねば同種の問題は引き続いて起こるだろう。

・「ホワイトカラー・エグゼンプション法案」
 そしてその流れにあるのが経団連からの、あの残業代ゼロ法案として悪名の高い「ホワイトカラー・エグゼンプション法案」の提案で、ラインの仕事に乗らないスタッフの人達の殆ど全ての残業代をカットして企業の競争力を上げようとしているのだ。

[管理者の時間管理]
 私は基本的には、少なくとも課長クラスまでの中級管理者へは残業代支払いをした方が良いと思う。
 何故なら、残業代支払いという経費を要することが、管理職の人達やそれを見てサービス残業をしている一般の事務員の合理化のインセンティブになるからだ。
 言い換えれば会社はいつも中級以下の管理職サービス残業をしている一般の事務員の管理から眼を外せないというメリットがあるからだ。
 それは理想論過ぎるとし、残業代支払いは無しとしても、彼らの時間管理は、その健康管理のために是非進める必要がある。
 何故なら、とかく過重労働に陥り安い彼らが、そのために病気になったり、過労死したり、最悪の場合そのことに付いて裁判に持ち込めば会社のイメージが一度に悪くなるし、今のような採用される側の売り手市場では優秀な生徒が逃げてしまう。

 いやそれ以前に、いくら管理職とな名がついても従業員だ。
 その健康管理は、会社の従業員に対する基本姿勢を示すものだからだ。

 
第一、忙しい時は会社のためにサービス残業をしていた人達を会社の都合でレイオフするなど非人間的だと思いませんか?

 参照: NHKの視点・論点「管理職と労働時間規制」

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