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読書「ザ・ドロップTHE DROP」デニス・ルヘイン著 ハヤカワ・ミステリ2015年刊

2024-04-09 15:09:00 | 読書
 本書の書評の一つに「ボストンの労働者階級の犯罪を扱った、タイトでざらざらした感触の小さな物語……ルヘインは肩をすぼめて暮らす登場人物たちの生活の細部に本物の命を吹き込み、彼らの一挙手一投足に無言の感情を通わせる」がある。

 ボストンのある集合住宅地に住むボブという男。変わり者で孤独なボブは、集合住宅地の裏側にあるバー「カズン・マーヴの店」で午後4時から翌日午前2時までバーテンダーをやっている。カズン・マーヴは、ボブの従兄弟でかつてオーナーだったが、今はチェチェン・マフィアのボスが実質的なオーナーなのだ。

 本のタイトルのドロップが表すように、マフィアが裏で稼いだ金、違法賭博、売春、コカインなどの売り上げを警察の手入れで没収されないように、一時的にこのバーに保管する場所でもある。金の匂いを素早く感知する輩が多く、強盗に襲われ金を持ち去られた。ボスから金を早く取り戻せとも言われる。

 ボブが子犬を助けた縁で知り合ったナディア、ナディアの知り合いの刑務所から出てきたエリック、刑事のトーレス、マフィアのボスの息子チョフカなどが入り乱れて、まさにざらざらした感触の小さな物語が、まるでゴキブリがはい回るように描かれるのである。物語の最後の最後に「この世はままならない」で終わるが、まさにそれなのである。

 またいつものように、音楽で表すとすればジャズの「ラウンド・ミッドナイト」かな。エディ・ヒギンズ・クインテットでどうぞ!

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