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読書「優駿」宮本輝

2020-05-24 20:02:32 | 読書
 優駿とは、足の速い優れた競走馬のことをいう、 とある。競馬と言えば、天皇賞、日本ダービー(東京優駿)、オークス(優駿牝馬)、菊花賞、ジャパンカップ、有馬記念などが頭に浮かぶ。私の関心は、それ以上でも以下でもない。

 それでも関心を持ち始めたのは、宮本輝の「月光の東」という作品。この中で主人公が「複勝転がし」という馬券の買い方でかなりの現金を手にする。俄然ここで競走馬について興味がわいてきた。

 JRA(日本中央競馬会)や楽天競馬を覗いていると、競馬の世界を知りたくなった。楽天競馬は、地方競馬を主体としていて大井、船橋、帯広、盛岡、金沢、高知、佐賀などがある。ここでは実況映像が観られる。それを見ていると馬体の美しさに見とれてしまう。艶のある毛並みに不要な筋肉がどこにもついていないし、500キロ近くの体重を支えるスラリとした細い四本の脚。西部劇で馬が疾走する場面が好きなわたしは、競走馬の疾走に目が離せなくなった。

 その競走馬の世界への入り口としてこの本を選んだ。北海道の静内にある小さな牧場で生まれたオラシオン(祈り)と名付けられた一頭の成長物語に、取り巻く人間たちの強さや弱さをきめ細かな描写が読者を惹きつけてやまない。

 競走馬を育てるということ、牧場経営の辛さや喜びとともに時速70キロ近くのスピードで走る馬上で駆け引きや複雑な人間関係も浮き彫りになる。

 今日5月24日は、東京競馬場で優駿牝馬(オークス)が行われ一番人気のデアリングタクトが期待通りの1着を記録。デアリングタクトは、去年の2歳新馬1着から、エルフィンSの1着、桜花賞1着という負けなしでオークスに挑んだ。

 北海道日高の小さな長谷川牧場育ち。こういう経歴を見ていると、この小説のオラシオンと重なってくる。現実の世界でも奇跡の躍進があるのが面白い。私はまだ馬券を買ったことがない。今はシュミレーション中で、ひょっとしたら買うかもしれない。

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スポーツ「チビッ子にさよならを……」

2020-05-14 16:32:36 | スポーツ
 湿気の少ないからりと晴れたきょう14日。ウォーキング&ジョギングに出かけた。60歳代のあの元気さはもうない。ジョギングの2キロあたりで足が軽くなり調子が出て10キロを気分よく走ったものだ。今は歩いたり走ったりの体たらく。

 後半、緩い下り坂をのんびりと走っていくと、若いお母さん二人連れと子供たち。5歳ぐらいの男の子が右手を出してハイタッチの格好をした。私が右手を下ろして応えようとすると男の子は手を引っ込めた。

 男の子の後ろには乳母車に乗った三歳ぐらいの女の子が、文字通りモミジの葉っぱのような手のひらで、私のタッチを待っていた。私は軽く触れて「さよなら」と言った。走り去る私のうしろで、チビッ子たちの「さよなら」の大きな声が何度も聞こえた。

 その時、ふと思ったのはチビッ子にしても、他人との触れ合いの楽しさを感じたのだろう。私自身も気分のいい一日になった。

 人は他人との触れ合いで成長していくものと言ってもいい。新型コロナウィルス禍が早く収束して、巷に人々の触れ合いが戻る姿を見たいものだ。

 それにしてもこの哀愁のこもった優しさを感じる「さよなら」の語感の美しさ、これは日本人にしか分からないだろう。

ちなみにさよならの語源は「左様なら」「左様ならば」とされている。
「さようならば手前だけ帰りましょう」
「左様ならばお暇いたす」
「左様ならば失礼致す」などの様な言葉から自然に「さようなら・さよなら」と略されるようになったと考えられる。 とある。
いずれにしても、「さようなら・さよなら」の言葉を大事にしたい。

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読書「プリズンホテル 夏」浅田次郎

2020-05-10 16:22:44 | 読書
 初刊1993年というから27年前になる。浅田次郎の直木賞受賞作「鉄道員」が1997年なので、この作品はウォーミングアップと言ったところか。

 極道小説で巷の人気をさらっているのは木戸幸之介。「東大なんて楽勝だと豪語していたガキがよ、ワセダの二文まであっさり落ちて、おまけに駿河台予備校の試験まで落ちてよ」と木戸孝之介を揶揄しているのは、孝之介の叔父でやくざの木戸仲蔵親分なのだ。

 孝之介の父の七回忌に白いベンツでやってきた仲蔵オジが「リゾートホテルを始めた」という。なんでまた酔狂なと思われるかもしれないが、もちろん抵当流れの物件ではあるが、やくざ者が刑務所から出てくればひとときの安らぎが必要なのだ。それを提供する意味もあって仲蔵親分はホテルを始めた。

 そのホテルへ向かう木戸孝之介には、同伴するオードリー・ヘップバーンを彷彿される美女・清子がいて月20万円で契約している。夜とぎも入れての値段で、表向きは「秘書」という立場だ。

 しかも元夫は、やくざ者で刑務所で服役中とあり、清子もこの世界には詳しい。作家としては情報源の清子としても重宝な存在。それなのに木戸孝之介は、偏屈で悪意のある人間との評判がある。やくざ者よりたちが悪そうなのだ。

 仲蔵オジの「奥湯元あじさいホテル」は、プール、野球場つきで、支配人、料理人以外はその筋の人たち。一応極道専用ではあるが、一般客も受け入れる。

 言葉遣いはまるで任侠の世界。任侠の世界といえば、連想するのは清水次郎長。そして、清水次郎長と言えば、浪曲の二代目広沢虎造。「飲みねえ 飲みねえ すし食いねえ よう神田の生まれだあ 江戸っ子だあ」という江戸言葉。

 この生粋の江戸言葉、下町言葉ともいう粋でいなせな口調が最近聞けなくなった。もうずいぶん前になるが、日比谷線の築地駅で聞いた江戸言葉が今も耳に残っている。

 そんな懐かしさとともに読み進むと、大手の商社を定年退職した夫婦が投宿。やたら威張り散らし上から目線で不機嫌な夫に離婚届を突き付ける腹づもりの妻。

 林道で死に場所を探したが死にきれず、このホテルと決めた夫婦と子供三人の家族連れ。

 ツッパリ息子をアルバイトで働かせるホテルの支配人。台風襲来の夜、人情ドラマが生まれる。

 すがすがしいエンディングとともに自殺志望家族にエールを送る梶板長の言葉と料理。「今日は先代ゆずりの鮎会席にいたしましたよ。たんと召し上がってください。この梶平の包丁は、まだまだ錆びちゃおりませんよ。ねえ、旦那さん、成仏するなんてかてえことはおっしゃらずに、ずっとここのいらして下さいな」

 フランス料理の服部シェフが見た会席膳に自らの腕を恥じた。その料理とは、笹の葉に根ショウガを添えた塩焼。ゆずの香りの立ち昇る奉書焼。氷を敷いた重箱の上にシソの葉を置き骨ごと輪切りにした背越しの刺身。山菜と生のはらわたを和えたうるか(鮎の内臓の塩辛)。花籠にはから揚げ、鮎飯に吸い物、骨酒、ガラスの高坏(たかつき、1本の足の上に台を乗せて食べ物をもる)に甘露煮と栗とを葛(くず)で固めた、琥珀色の羹(あつもの、熱い吸い物)。和食の贅を尽くしたという感じで、こちらが食べたくなる。

 昼間の暑気を払う、夕暮の縁側をかすめるそよ風のように、心地よい余韻を残す読後感である。夏、秋、冬、春の四部作。 
    
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海外テレビドラマ「オザークへようこそOZARK」Netflix

2020-05-05 15:41:35 | 海外テレビ・ドラマ
 ミズリー州の観光地オザークで、メキシコの麻薬カルテルに取り込まれ窮地に立つバード家をスリリングに描く。

 四人家族のバード家には、一家の主マーティ・バード(ジェイソン・ベイトマン)とその妻ウェンディ(ローラー・リニー)、娘のシャーロット(ソフィア・ラブリッツ)それに息子のジョナ(スカイラー・ゲルトナー)がいる。

 マーティは、シカゴで資産運用のアドヴァイザーとして友人とともに会社を経営している。妻のウェンディは、かつて上院議員の選挙事務所で辣腕を振るったやり手。 
 ところが今、妻の浮気を掴んだマーティの心は不安定。顧客二人を前に応答が揺れ動く。それもそのはず、机上のパソコンには妻の浮気現場の淫らな証拠映像が映しだされている。

 そんな時、夜、同僚の友人から呼び出しがあって、駆けつけた倉庫で見たものは凄惨な殺戮の現場だった。全く訳が分からないが、カルテルのボス、デル(エサイ・モラレス。後に殺される)の資金を友人達が横領していたのが分かる。マーティも共犯者として殺される寸前、ポケットに入っていたオザークの観光案内を出しながら「横領された資金を用意するから、オザークで資金洗浄の実績をみせる」と言って難を逃れる。

 これがすべての始まり。800万ドル(約8億5千万円)の現ナマを持ってバード一家はオザークへ引っ越した。資金洗浄、麻薬取引、殺人というおどろおどろしい犯罪行為の数々。ウェンディの浮気を知っているマーティの態度が何となく冷ややか。そんな両親を見ながら不安を覚える思春期二人の子供。

 隣家のスネイル夫妻がバード家の現金を狙い、犯罪一家のロングモア家も胡散臭い。ストリップバーやカジノ経営で、ロングモア家の娘ルース(ジュリア・ガーナー)を使うマーティ。身分を隠したFBI捜査官ロイ(ジェイソン・バトラー・ハーナ)。カルテルから派遣されてきた弁護士ヘレン(ジャネット・マクティア)の冷酷さ。何もかも人間の強欲のなせる業。

 何度か窮地に立たされるマーティを助けるウェンディ。逆にウェンディを助けるマーティ。シーズン3では、不安定な家族関係をさらに追い込むウェンディの弟ベン(トム・ペルフリー)の出現。精神に問題があるベンは、思慮浅く怒りに任せて思ったことを口に出す。弁護士のヘレンと娘のいる場所で、ヘレンに向かって「お前はカルテルの資金洗浄と拷問をしている」と言い放つ。ベンの口からそれを聞いたマーティは大変なことになったと悟る。狼狽するウェンディ。やがてベンは、死体袋に入って届けられる。

 そのころ、ヘレンは別の土地でカジノ開業計画をカルテルのボス・ナバロ(フレリックス・セリス)に伝える。生きるか死ぬかの狭間でマーティとウェンディは、必死に活路を見出そうとする。その一方で麻薬を作る地元民のダーレン・スネル(リサ・エメリー)が存在感を示し始める。

 そしてボス・ナバロからの電話は、「ヘレンとともに夫婦でメキシコに来い」なのだ。本来プライベートジェットの旅は快適なはずだが、そうとも思えない時間を過ごしてたどり着いたナバロの家。にこやかに迎えるナバロ。握手の手を差し伸べようとしたとき、一発の銃弾がヘレンの頭部を貫通していた。血しぶきを浴びたマーティとウェンディに「今日がスタートの日だ」とナバロ。

 ヘレンは大きな間違いを犯した。ナバロの目には、カジノ計画などと出過ぎた真似に映って消された。部下には余計な力を与えない。この世界では出る釘は打たれるのである。

 このドラマは、2017年7月シーズン1を、2018年8月シーズン2を、2020年3月シーズン3を配信。

 主役二人、マーティ役のジョイソン・ベイトマン51歳、生まれはニューヨーク州ウィンチェスターで妻はポール・アンカの三女アマンダ。ちなみにポール・アンカは、シンガソングライターで1957年「ダイアナ」でデヴュー、しかもビルボード・ホット100の1位にランクされた。よく知られているのは、フランク・シナトラでヒットした「マイ・ウェイ」はポール・アンカの作品。

 ウェンディ役のローラー・リニー56歳。映画界とテレビ界で活動してきてさすがに年齢的にアップでは容色の衰えは隠せないが、存在感は十分にあって、遠景の立ち姿はまだまだという感じ。

 そのほかのキャストは、バード家の長女役シャーロットのソフィア・ラブリッツ1999年生まれの21歳。
 ジョナを演じたスカイラー・ゲルトナーは出自未詳。ルース役はジュリア・ガーナー1994年ニューヨーク、ブロンクス生まれの26歳。
 ヘレン役は、ジャネット・マクティア1961年イギリス生まれ。

このドラマは、批評家の評価も良とされている。




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