徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

“考える”ということ/宗教なんかこわくない!

2011-09-14 03:42:42 | Osamu Hashimoto
<織田信長以来、宗教をこわがらなくなった日本人は、信仰とは別にある“世俗の世界”で、独自の信仰体系を作った。“支配者に対する忠誠”に代表される、個人崇拝である。(中略)そして、この“個人崇拝”は、崇拝する側の人間に、“自分の頭でものを考える”ということを禁じるものである。なぜならば、自分のでものを考え始めたら、「なんであんなオヤジを崇めなきゃならないんだ?」ということになってしまう。つまり、織田信長以来続いている“宗教をこわがらない日本の社会”とは、“会社国家日本”であるためのすべてを備えた社会なのである。だから、この日本は、とっても不思議な形で、恒常的なファシズム状態にある。>

<日本人は、真面目になろうとすると、無意識の内に自分の中に“宗教”を探してしまう。だから、そんな日本人は、自分達とは異質な相手が“宗教”を振りかざしたら、なにも言えなくなってしまう。“違う”と思っていた相手が、実は自分と“同じもの”を持っていたら、もうその“違い”を攻撃の論拠にはできない。だから、「宗教団体を政治団体と同列に扱っていいのか?」などという寝ぼけた議論が起こったりもするのだが、しかし、うっかり真面目になろうとする時に日本人が自分の中に発見してしまうものは、実のところ、“宗教”ではないのである。それは、「自分は当たり前の日本人だ」という、“日本人としての一体感”なのである。それを“宗教”だと錯覚してしまうのだから、日本人は相当に宗教に弱い。がしかし、もしかしたら、そんな日本人は“最高に洗練された宗教の信者”なのかもしれない。>

<日本は、原則として、「自分の頭でものを考えなくてもすんでいる」という国だから、「自分の頭でものを考えるのも自由」だし、「自分の頭でものを考えないのも自由」なのだ。つまり、この国では“考える”ということに関しても対立が、原則として起こらない。起こるとしたら“対立”ではなく、“排除”が起こる。(中略)そして必ず、「思想的に似たような人達の間だけで“対立”が起こる。表面はおだやかで、しかしその内部では激しい対立がある。“派閥”とか“内ゲバ”があって、それが絶対に外には漏れないようになっている。“対立”というのは、その対立を成り立たせるための“共通の地盤”というのが必要だから、日本では、同じ土俵に上がれるような人間の間でしか、対立は起こらないのだ。“違う人間の思想”なんか分からないから、日本の論争は“すれ違い”か“仲間内のもの”にしかならない。日本人は、対立するかわりに、仲間はずれにする。そこで、“自分の頭でものを考えない大人”と“自分の頭でものを考えようとする子供”の間にある“隠された対立”が問題になる。>
(橋本治「宗教なんかこわくない!」マドラ出版1995)


宗教なんかこわくない!
<オウム真理教事件とはなんなのかいや、そもそも宗教とは。緊急出版。悩める若者たちに、会社人間の大人たちに、ワイドショーばかりの主婦たちに。時代を読み解く渾身の書き下ろし440枚。><オウム真理教事件とは、遅れてきた田中角栄信仰とオタク予備軍のしでかした、バブル末期の犯罪である。オウム事件にみる日本のすがた、宗教とは何かを語り、時代を鋭く読み解く。>

登録情報
単行本:307ページ
出版社:マドラ出版 (1995/07)
ISBN-10:4944079052
ISBN-13:978-4944079056
発売日:1995/07
商品の寸法:18.8x12.2x2cm

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