2月6日 編集手帳
「お客様は神様です」と聞くと、
着物姿でにっこりする在りし日の三波春夫さんが浮かぶ。
ところがこのせりふ、
言い出したのは三波さんではなかったらしい。
永六輔さんがご本人の感想を著書に書き留めている。
<妙なものですねェ、
私は「お客様は神様です」といったことはありません、
あれはレツゴー三匹の皆さんが、
三波のいいそうな言葉だというのでおっしゃったそうで>
(『アイドルその世界』文芸春秋、1983年刊)
漫才トリオ「レツゴー三匹」といえば、
登場時に“お約束”があった。
「じゅんでーす、
長作でーす、
三波春夫でございます」
面長にアゴひげがトレードマークだった長作さんが、
病気のため74歳で亡くなった。
じゅんさんも4年前に他界し、
スポーツ報知によれば、
三波さんのものまねをした正児さんは認知症で療養中という。
学生の昔、
下宿のあった商店街に「お客様は…」のノボリがそよいでいたのを思い出す。
上司が言えば説教だが、
昭和のひととき、
明るく弾むような響きがあったことは確かだろう。
先の三波さんの言葉は<(三匹に)感謝しております>と結ばれる。