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時間が描く

2020-11-27 07:04:39 | 編集手帳

10月30日 読売新聞「編集手帳」


誰でもさぼりたくなるときはある。
時は金なり…
そんなお説教はもう耳にタコだという方にはホンダの創業者、
本田宗一郎の言葉が励ましになるかもしれない。

「世界中、
 どこのどんな人間にも平等に与えられているものは時間しかない」。
平等に与えられたものなどそうはないのに、
すぐそこにあることを気づかせてくれる。
小欄は名言集で出会って、
本田さんに時間というものを前より好きにさせてもらった。

一方で新聞記者をしながら、
時間は怖いものだと思ったこともある。
ひき逃げ事件では、
逃げた時間が長くなるほど重い罰が科されるという。

人気若手俳優の逮捕の報に驚きつつ、
残念に思いつつ、
かつて検察官から聞いた話を浮かべた。
逃亡時間を罪の軽重の判断に用いるのは、
被害者の救護義務をどれほどおろそかにしたかをはかるためである。
今回の場合、
事故を目撃した別の車の運転手が容疑者を追跡し、
戻るよう説得したという。
通りがかりの人が罪を重くしない方向に導いてくれるなど、
そうあることではない。

人生にふいに訪れる流転を描くとすれば、
何分くらいのドラマになるだろうか。

 

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