
◎2011年7月22日(金)
<銅親水公園(5:25)……スリットダム(6:19)……取り付き(6:50)……塔の峰(9:14~9:35)……石塔尾根からの合流点(10:57)…庚申山(11:18~11:40)…オロ山(12:48~12:53)…沢入山(14:02~14:11)~中倉山(14:48~15:00)~林道(16:02)~親水公園(16:40)>計11時間15分
石塔尾根は過去に庚申山まで歩いたことがあったが、塔の峰尾根(正式な名称は知らない。便宜的にこう記す)は中途半端な状態になっている。例のスリットダムから塔の峰に登り、庚申山に至る。さらに、帰りは石塔尾根で下る。これは、今年の足尾の山歩きの目標の一つに据えていた。ネットで調べると、両尾根の通し歩きはstarion氏の「日光稜線紀行」の記事(http://mountaintrail.web.fc2.com/kousin-oro1/1.html)等数件で、ポピュラーなコースとはきわめて言い難い。好き者のコース。ちなみにstarion氏の記事はよく活用させていただいているが、今回もまた勝手にやっかいになった。
金曜日は夏季休暇をとっていた。台風一過とはいえ、それほど高温に達しない予想のようで、この時期の歩きは断念していが、前日に思い立って行ってみることにした。子供のようなもので、欲しがったら、すぐに手に入れたくなる性分だ。銅親水公園に車を置くと、途中で断念した場合、舟石新道か庚申山の林道ルートから逃げることになる。となると、かじか荘からタクシーを呼ぶか、1時間半ほど歩くことになる。塔の峰尾根の途中か終点の庚申山であきらめた場合はまだ始末もいいが、石塔尾根に入ってから放棄することは出来ない。どこにもエスケープルートはない。その見極めの判断と覚悟が必要だろう。そして、最大の問題は仁田元沢のスリットダムの通過である。右手から高巻いて越えるのはいいが、今のダムの状況や沢の水量がよく把握できないし、その先の取り付きが今ひとつ分からないのが不安のまま残っている。
(当初、地形図で考えていた取り付き付近。スリットダムの手前にあった。)

家を4時前に出る。草木ダムのトイレに寄り、親水公園の駐車場に着いたのは5時20分。平日だけあって、釣り人が2人、準備しているのみ。小型のバイクを下ろしていたから、松木沢の奥にでも入るのだろう。空はどんよりとしている。終日、雨は降らない予想だが、この空がどの程度まで晴れるかだな。長時間歩きになるのは必至だから、カンカン照りになったらつらいし、どんよりのままというのも困る。近道の導水菅橋を渡り、林道歩き。導水菅橋を渡ることを思いついた方は偉い。岩峰群への長距離ルートを眺めながら歩いた。取り付きは難しくもなさそうだが、なかなかのロングコースに見える。さぞ眺めもいいだろう。中倉山への通常の入口を通りすぎると道は大きく迂回し、スリットダム手前のダムが見えてくる。実は、このダムがスリットダムとばかり思っていたから、あれっと思った。このダムを過ぎると、道は途端に荒れ、車の通行は無理になる。ここで注意が必要だ。最近までの25,000分の1地形図には、スリットダムのマークが付いていない。林道の線も先まで延びているし、地形図上の林道の終点付近も、こんな迂回の態にはなっていない。道沿いにずっと歩いて行けば、道も終わり、スリットダムが正面に聳え建っている。古い地形図では荒れ地のマークのあるところだ。市販されている25,000分の1の新地形図がどうなっているかは知らないが、少なくとも、「ウォッちず」では訂正されている。
(スリットダム表側。梯子持参でないと下には降りられない)

自分で「注意」と言っておきながらおかしなことだが、実は、旧地形図に記載された一つだけのダムマーク(実際は手前のダム)がスリットダムとばかり思い込み、そのダムマークのちょっと先の河原から尾根、または沢伝いに行くつもりでいた。確かに、スリットダム手前に尾根状になり、取り付けそうなところがあった。ところが、実際のスリットダムはその先で、スリットダム越えがきつかったら、ここに戻って入ろう思ったが、その先、ダム越え作業のことだけが頭にあり、すぐに忘れてしまった。あとで考えれば、確かに何もスリットダムに行かずとも、予定通りに手前の尾根から取り付けば、自然に塔の峰への尾根に至る。「スリットダムを経由しないと行けない」といった固定観念が、現地で支障を来すことになってしまったいい例を実証した。実際、スリットダムを越えてから、沢の様相は狭谷になり、取り付きの目印となるような河原などなく、どこから入ろうと急斜面になっていた。ちなみに、後で調べると自分とはレベルが違いすぎるが、「高原山探訪」氏の記事にも、同じようなミスをされた記載があった。
(スリットダム裏側)

スリットダムは二重構造になっていた。手前が通常のダム。その奥5~6m先にスリット式のダムがある。右岸は絶壁で、取りあえず、左岸に渡らないといけないが、台風の影響か、水量は半端ではない。しばらく思案し、靴を脱いで渡る。ガレ場を高巻き、スリットダムに出る。見下ろすと、スリットダムの左岸側の端の空間は水もなくくぐれる。ただ、2m以上のコンクリート壁を下りないといけない。ほぼ垂直で足場はなく、ここもそのまま高巻く。「平成18年完成 国土交通省」の碑が置かれていた。何とかスリットダムを越えた。沢はさらに水も多く急流になっていた。とにかく右岸側に戻らないといけない。しばらく先へとうろうろしたが、濡れずに渡れそうなところはない。何とか、ここならと見つけ、石に足を置いてみたら滑る。時間が徒に経っていく。また靴を脱ぐのももどかしく、意を決して、そのまま水に入る。さっと渡ったつもりだが、膝まで濡れてしまった。この濡れが、後で足裏のマメをつくる遠因にもなった。過去に、このスリットダムの写真をネットで何度も見たが、完成の平成18年以前のものが多く、その当時(つまり工事中の時期)とダムの様相が大分違っている。
(沢の様子)

(この左脇から入った)

スリットダムの50mほど先、最初の沢から取り付こうとしたら、水がかなり流れている。その先の沢には水がないがかなり悪相だ。まだこの時点で、机上計画が頭の中にあるからお目出度い。スリットダムが手前のダムの位置のままだ。地形図と見比べてもまったく違う。もうここまできたらと、この沢の左脇の斜面から取り付いた。もっとも、さらに沢を遡上するのは無理な状態になっている。水が多すぎる。スリットダムに入ってから30分ももたついてしまった。
(こんな案配)

すぐに「砂防指定地」と記されたコンクリートの石柱を見つける。人の手も加わり、このまま行けばいいのだろうと暢気な解釈。この先、石柱に出会うことはなかった。とにかく急斜面である。おまけに、地面が水分を大量に含み、滑る。そして薄暗い。生木をつかみながらよじ登った。尾根に出ることだけが取りあえずの目標とした登り。左手に、上が切れた尾根と思しきところが見え、トラバースしながら向かったら、すぐに空も消えた。やがて大岩。なかなか、開けたところに出ない。悪戦苦闘40分、ようやく、右下から来る尾根に出た。7時36分。標高1,250mあたり。展望も開けた。この尾根もすっきりした尾根ではなく、合流したところには大きな岩があり、見下ろすと、尾根らしくない薄暗い急斜面。どこを歩いても同じというところか。休憩し、靴を脱ぎ、靴下の水をしぼる。靴下はよれよれになり、一回り伸びた感じ。何だか、靴も水を含んできつくなり、靴下も靴も足にフィットしない。足が大きくなったわけではあるまい。真正面に見えるはずの石塔尾根、上はガスでまったく見えない。
(塔の峰への本尾根に合流)

ヤセ尾根じみた尾根を登る。それでもようやく歩きやすくなった。傾斜も緩やいだ。ヤブ尾根ではない。それでいて、人が歩いた気配を全く感じない。シカの糞だらけ。それでも気分は違う。自分がいる位置も分かった。ここからは早かった。8時、見覚えのある尾根に合流した。4月に舟石新道から塔の峰に登った際、この本尾根に上がったが、その時は、この尾根のかなり下で合流したものだが、今日はかなり上になっている。予定では、もっと下で本尾根に乗ることになっていた。だからといって、今日の歩き、決してショートカットとも言えまい。労苦の多い歩きをしたことだけは否めないようだ。
(気持ちのいい歩き)

(塔の峰・1,738m)

(山頂から皇海山)

4月の時に比べ、笹が一気に濃くなっていた。踏み跡とはいってもシカ道だろうが、それも覆われている。まだ膝下の高さ。2週間前、ここをハイトスルームの好漢氏が歩かれたようだ。心なし、足跡が残っているような感じがする。ようやく晴れ、青空も出たが、ちょっと気になった。塔の峰から先は笹ヤブの天国らしい。濡れていると、全身ずぶ濡れかなぁ、なんて。それまでの間に乾いてくれていればいいが。一回とはいえ、記憶有りの風景が続く。樹間から男体山が見えた。身体をよじると、何とか、中倉山もようやく見えるようになった。セミの鳴き声は意外にも聞こえず、ウグイスのさえずりがしきりに聞こえてくる。笹と陽射しを避け、樹林の中を歩く。風通しはいい。もう汗はたんまりとかいた。疲労度もかなりのもの。樹林が終わり、笹ヤブの中の歩きに移る。ところによって背丈になる。だが、ヤブもまだ疎の状態で、目標地点もはっきりしているから、迷うことはない。4月の時は、このあたり、まだ雪だった。したがって、笹は意外に感じた。塔の峰に到着。大休止。緑が繁り、オロ山はかなり見づらくなっていた。相変わらず、皇海山だけは正面にドーンと鎮座している。物悲しいながらも、緑と紅葉のなくなった晩秋の季節が一番似合っているところかもしれない。ただ、こんなに緑があふれているのでは、紅葉も絶品だろう。その時期に来ることがあるだろうか。ハイトスさんの山名板を改めて探した。やはりなかった。北風に吹かれて、はるかに飛ばされてしまったか。
(なかなか幻想的な風景が北側の木の間から広がる)

(手前が石塔尾根。あそこを歩けるのも体調次第)

(鞍部のヌタ場)

塔の峰から庚申山までのルートが本日のメインとなる。一種の恐い物見たさにも似たあふれる期待感。舞台効果の笹は、心配にも及ばすもう乾ききっている。皇海山を正面に、庚申山をその左手に据えながら下る。しばらくは対戦相手となる笹の様子をうかがいながら、樹林の中を歩く。ぶなじろうさん風に記せば、ジャブの応酬といったところか。いや、それ以前だな。右奥に大平山、左には袈裟丸山が見えてくる。下りきったところはヌタ場になっていた。シカ道が縦横に走り、野生の広場といった感じ。地形図上の1,662m下の鞍部だ。ここで注意。ガイドブック風に記すと、樹林の中をボーッとして下っていくと、つい北西尾根に引き込まれそうになる。ここは、常に左手に笹原を見ながら下るようにしたい。して、いよいよ笹ヤブに突入。景色そのものは地上の楽園風情だが、ヤブこぎが楽しく感じるのは、ほんのさわり部分だけの話。これまでに比べて密になっている。時たま、背丈を超すのもある。シカ道らしき窪みを見つけて歩くと楽だが、すぐに消えたり、方向違いに向かったりする。ただ、ここのヤブ、下に倒木がないからまだいい。後半の石塔尾根の笹ヤブではえらい目に遭った。於呂倶羅山直下の笹ヤブを思い出した。靴下が濡れたまま、靴の中でよじれてくる。気になって歩きづらい。木の周りのヤブは浅いから、出来るだけ、目標を木から木に移しながら歩いた。
<銅親水公園(5:25)……スリットダム(6:19)……取り付き(6:50)……塔の峰(9:14~9:35)……石塔尾根からの合流点(10:57)…庚申山(11:18~11:40)…オロ山(12:48~12:53)…沢入山(14:02~14:11)~中倉山(14:48~15:00)~林道(16:02)~親水公園(16:40)>計11時間15分
石塔尾根は過去に庚申山まで歩いたことがあったが、塔の峰尾根(正式な名称は知らない。便宜的にこう記す)は中途半端な状態になっている。例のスリットダムから塔の峰に登り、庚申山に至る。さらに、帰りは石塔尾根で下る。これは、今年の足尾の山歩きの目標の一つに据えていた。ネットで調べると、両尾根の通し歩きはstarion氏の「日光稜線紀行」の記事(http://mountaintrail.web.fc2.com/kousin-oro1/1.html)等数件で、ポピュラーなコースとはきわめて言い難い。好き者のコース。ちなみにstarion氏の記事はよく活用させていただいているが、今回もまた勝手にやっかいになった。
金曜日は夏季休暇をとっていた。台風一過とはいえ、それほど高温に達しない予想のようで、この時期の歩きは断念していが、前日に思い立って行ってみることにした。子供のようなもので、欲しがったら、すぐに手に入れたくなる性分だ。銅親水公園に車を置くと、途中で断念した場合、舟石新道か庚申山の林道ルートから逃げることになる。となると、かじか荘からタクシーを呼ぶか、1時間半ほど歩くことになる。塔の峰尾根の途中か終点の庚申山であきらめた場合はまだ始末もいいが、石塔尾根に入ってから放棄することは出来ない。どこにもエスケープルートはない。その見極めの判断と覚悟が必要だろう。そして、最大の問題は仁田元沢のスリットダムの通過である。右手から高巻いて越えるのはいいが、今のダムの状況や沢の水量がよく把握できないし、その先の取り付きが今ひとつ分からないのが不安のまま残っている。
(当初、地形図で考えていた取り付き付近。スリットダムの手前にあった。)

家を4時前に出る。草木ダムのトイレに寄り、親水公園の駐車場に着いたのは5時20分。平日だけあって、釣り人が2人、準備しているのみ。小型のバイクを下ろしていたから、松木沢の奥にでも入るのだろう。空はどんよりとしている。終日、雨は降らない予想だが、この空がどの程度まで晴れるかだな。長時間歩きになるのは必至だから、カンカン照りになったらつらいし、どんよりのままというのも困る。近道の導水菅橋を渡り、林道歩き。導水菅橋を渡ることを思いついた方は偉い。岩峰群への長距離ルートを眺めながら歩いた。取り付きは難しくもなさそうだが、なかなかのロングコースに見える。さぞ眺めもいいだろう。中倉山への通常の入口を通りすぎると道は大きく迂回し、スリットダム手前のダムが見えてくる。実は、このダムがスリットダムとばかり思っていたから、あれっと思った。このダムを過ぎると、道は途端に荒れ、車の通行は無理になる。ここで注意が必要だ。最近までの25,000分の1地形図には、スリットダムのマークが付いていない。林道の線も先まで延びているし、地形図上の林道の終点付近も、こんな迂回の態にはなっていない。道沿いにずっと歩いて行けば、道も終わり、スリットダムが正面に聳え建っている。古い地形図では荒れ地のマークのあるところだ。市販されている25,000分の1の新地形図がどうなっているかは知らないが、少なくとも、「ウォッちず」では訂正されている。
(スリットダム表側。梯子持参でないと下には降りられない)

自分で「注意」と言っておきながらおかしなことだが、実は、旧地形図に記載された一つだけのダムマーク(実際は手前のダム)がスリットダムとばかり思い込み、そのダムマークのちょっと先の河原から尾根、または沢伝いに行くつもりでいた。確かに、スリットダム手前に尾根状になり、取り付けそうなところがあった。ところが、実際のスリットダムはその先で、スリットダム越えがきつかったら、ここに戻って入ろう思ったが、その先、ダム越え作業のことだけが頭にあり、すぐに忘れてしまった。あとで考えれば、確かに何もスリットダムに行かずとも、予定通りに手前の尾根から取り付けば、自然に塔の峰への尾根に至る。「スリットダムを経由しないと行けない」といった固定観念が、現地で支障を来すことになってしまったいい例を実証した。実際、スリットダムを越えてから、沢の様相は狭谷になり、取り付きの目印となるような河原などなく、どこから入ろうと急斜面になっていた。ちなみに、後で調べると自分とはレベルが違いすぎるが、「高原山探訪」氏の記事にも、同じようなミスをされた記載があった。
(スリットダム裏側)

スリットダムは二重構造になっていた。手前が通常のダム。その奥5~6m先にスリット式のダムがある。右岸は絶壁で、取りあえず、左岸に渡らないといけないが、台風の影響か、水量は半端ではない。しばらく思案し、靴を脱いで渡る。ガレ場を高巻き、スリットダムに出る。見下ろすと、スリットダムの左岸側の端の空間は水もなくくぐれる。ただ、2m以上のコンクリート壁を下りないといけない。ほぼ垂直で足場はなく、ここもそのまま高巻く。「平成18年完成 国土交通省」の碑が置かれていた。何とかスリットダムを越えた。沢はさらに水も多く急流になっていた。とにかく右岸側に戻らないといけない。しばらく先へとうろうろしたが、濡れずに渡れそうなところはない。何とか、ここならと見つけ、石に足を置いてみたら滑る。時間が徒に経っていく。また靴を脱ぐのももどかしく、意を決して、そのまま水に入る。さっと渡ったつもりだが、膝まで濡れてしまった。この濡れが、後で足裏のマメをつくる遠因にもなった。過去に、このスリットダムの写真をネットで何度も見たが、完成の平成18年以前のものが多く、その当時(つまり工事中の時期)とダムの様相が大分違っている。
(沢の様子)

(この左脇から入った)

スリットダムの50mほど先、最初の沢から取り付こうとしたら、水がかなり流れている。その先の沢には水がないがかなり悪相だ。まだこの時点で、机上計画が頭の中にあるからお目出度い。スリットダムが手前のダムの位置のままだ。地形図と見比べてもまったく違う。もうここまできたらと、この沢の左脇の斜面から取り付いた。もっとも、さらに沢を遡上するのは無理な状態になっている。水が多すぎる。スリットダムに入ってから30分ももたついてしまった。
(こんな案配)

すぐに「砂防指定地」と記されたコンクリートの石柱を見つける。人の手も加わり、このまま行けばいいのだろうと暢気な解釈。この先、石柱に出会うことはなかった。とにかく急斜面である。おまけに、地面が水分を大量に含み、滑る。そして薄暗い。生木をつかみながらよじ登った。尾根に出ることだけが取りあえずの目標とした登り。左手に、上が切れた尾根と思しきところが見え、トラバースしながら向かったら、すぐに空も消えた。やがて大岩。なかなか、開けたところに出ない。悪戦苦闘40分、ようやく、右下から来る尾根に出た。7時36分。標高1,250mあたり。展望も開けた。この尾根もすっきりした尾根ではなく、合流したところには大きな岩があり、見下ろすと、尾根らしくない薄暗い急斜面。どこを歩いても同じというところか。休憩し、靴を脱ぎ、靴下の水をしぼる。靴下はよれよれになり、一回り伸びた感じ。何だか、靴も水を含んできつくなり、靴下も靴も足にフィットしない。足が大きくなったわけではあるまい。真正面に見えるはずの石塔尾根、上はガスでまったく見えない。
(塔の峰への本尾根に合流)

ヤセ尾根じみた尾根を登る。それでもようやく歩きやすくなった。傾斜も緩やいだ。ヤブ尾根ではない。それでいて、人が歩いた気配を全く感じない。シカの糞だらけ。それでも気分は違う。自分がいる位置も分かった。ここからは早かった。8時、見覚えのある尾根に合流した。4月に舟石新道から塔の峰に登った際、この本尾根に上がったが、その時は、この尾根のかなり下で合流したものだが、今日はかなり上になっている。予定では、もっと下で本尾根に乗ることになっていた。だからといって、今日の歩き、決してショートカットとも言えまい。労苦の多い歩きをしたことだけは否めないようだ。
(気持ちのいい歩き)

(塔の峰・1,738m)

(山頂から皇海山)

4月の時に比べ、笹が一気に濃くなっていた。踏み跡とはいってもシカ道だろうが、それも覆われている。まだ膝下の高さ。2週間前、ここをハイトスルームの好漢氏が歩かれたようだ。心なし、足跡が残っているような感じがする。ようやく晴れ、青空も出たが、ちょっと気になった。塔の峰から先は笹ヤブの天国らしい。濡れていると、全身ずぶ濡れかなぁ、なんて。それまでの間に乾いてくれていればいいが。一回とはいえ、記憶有りの風景が続く。樹間から男体山が見えた。身体をよじると、何とか、中倉山もようやく見えるようになった。セミの鳴き声は意外にも聞こえず、ウグイスのさえずりがしきりに聞こえてくる。笹と陽射しを避け、樹林の中を歩く。風通しはいい。もう汗はたんまりとかいた。疲労度もかなりのもの。樹林が終わり、笹ヤブの中の歩きに移る。ところによって背丈になる。だが、ヤブもまだ疎の状態で、目標地点もはっきりしているから、迷うことはない。4月の時は、このあたり、まだ雪だった。したがって、笹は意外に感じた。塔の峰に到着。大休止。緑が繁り、オロ山はかなり見づらくなっていた。相変わらず、皇海山だけは正面にドーンと鎮座している。物悲しいながらも、緑と紅葉のなくなった晩秋の季節が一番似合っているところかもしれない。ただ、こんなに緑があふれているのでは、紅葉も絶品だろう。その時期に来ることがあるだろうか。ハイトスさんの山名板を改めて探した。やはりなかった。北風に吹かれて、はるかに飛ばされてしまったか。
(なかなか幻想的な風景が北側の木の間から広がる)

(手前が石塔尾根。あそこを歩けるのも体調次第)

(鞍部のヌタ場)

塔の峰から庚申山までのルートが本日のメインとなる。一種の恐い物見たさにも似たあふれる期待感。舞台効果の笹は、心配にも及ばすもう乾ききっている。皇海山を正面に、庚申山をその左手に据えながら下る。しばらくは対戦相手となる笹の様子をうかがいながら、樹林の中を歩く。ぶなじろうさん風に記せば、ジャブの応酬といったところか。いや、それ以前だな。右奥に大平山、左には袈裟丸山が見えてくる。下りきったところはヌタ場になっていた。シカ道が縦横に走り、野生の広場といった感じ。地形図上の1,662m下の鞍部だ。ここで注意。ガイドブック風に記すと、樹林の中をボーッとして下っていくと、つい北西尾根に引き込まれそうになる。ここは、常に左手に笹原を見ながら下るようにしたい。して、いよいよ笹ヤブに突入。景色そのものは地上の楽園風情だが、ヤブこぎが楽しく感じるのは、ほんのさわり部分だけの話。これまでに比べて密になっている。時たま、背丈を超すのもある。シカ道らしき窪みを見つけて歩くと楽だが、すぐに消えたり、方向違いに向かったりする。ただ、ここのヤブ、下に倒木がないからまだいい。後半の石塔尾根の笹ヤブではえらい目に遭った。於呂倶羅山直下の笹ヤブを思い出した。靴下が濡れたまま、靴の中でよじれてくる。気になって歩きづらい。木の周りのヤブは浅いから、出来るだけ、目標を木から木に移しながら歩いた。
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