たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

西上州の山で控えめに咲いたアカヤシオを楽しむ。桧沢岳と笠丸山。(ただし10日前の山行報告)

2020年05月10日 | 近所じゃない群馬県の山
 西上州の山は改めて記すまでもなく岩峰だらけだ。上がるに連れて険しくなる岩稜帯の狭い回廊は左右が切れ落ち、恐怖を伴う高度感があり過ぎで、高所恐怖症の自分には苦手というよりも積極的には行きたくないエリアだ。二月に行った黒滝山も例外ではなかった。こういうところの歩きを好む人もいるが、かつてならともかく今の自分は敬遠したい。だが、群馬県内でアカヤシオ目当てとなると、赤城はまだ早いだろうし、見頃らしい1000mクラスの山は、自分には西上州の山しか思い浮かばなかった。当初は鳴神山にマニアックルートでと考えていたが、肝心の鳴神山のアカヤシオが不作のようでは行きようがない。鳴神山プランは早々に捨てた。とにかく、まだ今季は接していない、まともに咲いているアカヤシオを見ておきたかった。

 不要不急の外出、3密、営業自粛、外出自粛、都道府県をまたぐな、緊急事態宣言と続き、最近はStay Homeと次々にキャンペーンが出されるが、こちらは7日から通常の仕事に戻っている。在宅勤務やらテレワークとは無縁な職場だ。30日、1日、2日と急遽、休暇を取らされることになったようだが、その連絡もないままに29日の休み明けの30日は出勤し、せっかく出社したのだからと定時まで仕事をしていた。こんな状況の中で、今や盛りのアカヤシオ見物の誘惑には勝てず、Stay Homeで外出を控えている人もいるというのに、だれもいなけりゃいいだろうと、身勝手と後ろめたさを感じながらも出かけた。
 さすがに、自分にはブログアップはできなかった。自分の記事を読んで出かける人がいるとは思えないが、一応は掲載を自粛した。だが、もういいだろう。西上州の低山のアカヤシオはすでに終わっている。
 すっきりした気分で山の空気を吸いたいものだが、緊急事態の期限は長引きそうで、終焉が見えないのではどうにもならない。ため息が出てしまう。自粛、自重の中、2日に日光男体山で救助要請をした川崎に住む25歳の単独歩きの男性がいたらしい。こっそり歩いている立場の身にとっては、こういうのは本当に困ったもの。氏名を公表した方がいいのではといった意見も出ているようで、あるいはすでにSNSでは出回っているかもしれない。これでは、地元の金山のハイキングコースをマスクをつけて歩くしかなくなってしまう。金山か八王子の山なら「散歩だよ」で済ませられるもするし。


【もう終わりかけながらも十分に楽しめたアカヤシオ。南牧村の桧沢岳】



◎2020年4月29日(水)

大森橋付近路肩駐車(7:27)……登山口(7:36)……西のコル(8:37)……西峰?(8:40~8:46)……桧沢岳山頂(8:55~9:05)……桧沢岳神社(9:12)……沢渉り・林道(9:57)……駐車地(10:17)

 西上州のアカヤシオ、地元では「ひとつばな」と言われているらしいが、今は(四月末時点で)見頃らしい。情報ではもしかして終わっているかもと思ったりもしたが、桧沢岳はこれまで行こうとして行かずのままだったので、アカヤシオに出会えたらラッキー、ダメなら登れただけの満足感もあるだろうとこの山にした。
 実は、桧沢岳の後に三ツ岩岳にも行くつもりでいたが、結果として桧沢岳でアカヤシオは満足し、標高が桧沢岳よりも100m低い三ツ岩岳は短時間で登れる山ながらも、行っても終わっているだろうなと、体の良い理由付けで行かなかった。決して自粛したわけではない。
 この桧沢岳は、『なんもくトレッキングガイド』によれば、西峰立ち寄りでコースタイム175分になっている。今日は西峰に寄ったつもりでいたが、そこは西峰手前のただのピークだったようでもあり、西峰だったかどうかははっきりしない。それでも休憩込みの2時間50分で歩けた。アカヤシオ見物にかなり時間をかけたことを考えれば、短時間ながらも上出来な歩きだったろう。

(大森橋の駐車地から入る)


(右手の道から下ることになる。)


(登山口の標識)


 西上州の岩峰をマニアックルートで歩くつもりはない。一般道ですら岩場歩きになる。定番駐車地の大森橋の路肩に車を置いた。出発時点で他に車はない。橋の欄干には<檜沢岳登山口→>と分岐した舗装林道沿いを促す標識が置かれているだけだ。久方ぶりに歩いたというわけでもないのに、早速、息切れを起こした。この体たらくではコロナに感染したら即アウトだ。この先に民家は何軒かあるようだ。林道が分岐した。標識はない。直進はさらに急坂になっていて、山中でならともかくいきなりこれではたまらないなと、本林道に合わせて左にカーブ。その先に登山口の標識があった。つまりは、時計回りの周回がオーソドックスのようで、帰路はさっきの急坂経由だった。早速、ストックをダブルで出す。

(いまは廃屋だが、人が住んでいた頃はどこを通って行ったのだろう)


(植林の中の石垣)


(ジグザグに登って行く)


 廃屋の庭先を通って杉の植林に入り込む。テープがあって道は明瞭。ところどころにある石垣の間をジグザグに登る。植林の急斜面はこことて例外ではない。たまに振り返って見下ろしてはほっとする。だれにも会いたくなかった。いつの間にか杉から檜の植林になっていた。確かに、桧沢岳(檜沢岳)に杉では合わないかも。どうでもいいことを考えて息を切らせて登っている。

(そろそろ岩峰の景色になるようだ)


(ここでミツバツツジ)


(この時点では、左が西峰で右が本峰と思っていた)


 裸岩が目に付くようになると植林は消えて自然林になった。樹間の左にピークのコブが二つ見えている。この時点では、左が西峰で、右が本峰とばかりに思っているが、ここから本峰が見えるはずはない。そんなことよりも、そろそろひとつばなにお会いできると期待しているが、見かけたのは、終わったのかこれからなのかわからないみすぼらしいミツバツツジと、地面に落ちたアカヤシオの花の残骸、やはり遅かったかとがっかりする。結局、群馬百名山一つクリアだけで終わりかも。

(ようやく顔を出してくれた)


(いいんだけど、みずみずしいとは言い難い)


(右手側の景色)


(ヤマザクラかと思うが、下って見に行くことができない)


(賑やかになってきた)


(枝がうるさくてすっきりしない)


 あきらめ心境で登っていくと、ピンクの花が見えた。本当にチラホラの花付きになってはいるがラッキーとばかりに、歩きが徐々に遅くなる。チラホラの密度は上がるに連れて高まっていき、そのうちに、立ち止まっては写真に収める回数も増えてくる。数日前ならもっと見頃だったかなぁ。

(そろそろこんなところを歩くようになった)


(やはり岩場の登り)


(見晴台)


(山頂は真上)


(見晴台から)


 左の視界が広がって展望地。もちろん、危い岩場でまともに下は見られない。ここに檜澤村の黒澤某氏が建立した石碑があった。「龍徳不違天」と彫られている。この語句は何を意味するのか。ヘタな解説よりあにねこさんの記事をご覧になった方がわかりやすい。自分も調べようとして、あにねこさんの記事でなるほどで済ませている。黒澤某氏は文人趣味もあったのだろう。ついでに、ここにある岩は髭摺岩ということも知った。『なんもくガイド』には「見晴台」とあるだけだ(『山と高原地図』にはヒゲスリイワとあったが)。

(復活して)


(消えた)


(鞍部。西峰は左)


 終わりかけながらもまだ数日は楽しめそうなひとつばなをゆっくり見ながら登って行くと、アカヤシオが消えた。やはり、そううまくはいかないかと思っていると、目の前に岩場の複雑な地形が入り込んだ。西峰と本峰の鞍部らしい。右の本峰側にはロープが垂れている。こんなところを何度も往来したくはない。先ずは西峰に行き、ここに戻って本峰に向かうのが筋というものだろう。ストックを納める。

(西峰への登り)


(途中で本峰)


(西峰山頂)


(浅間山)


(小沢岳)


(西峰から)


(あれが西峰かなと思ったりしたが)


(これが限界)


 西峰側にも山頂に向けてロープが張られていた。使うまでもなく山頂に到着。そして再びアカヤシオ。山頂には明治の石祠が一基あり、展望は良好。だが、自分にはっきりわかるのはいまだに白い浅間山だけ。あまり山頂部の端の方までは行きたくもない。
 ふと気になった。ここの西峰は北西に細長い。奥に行くと、目の前にもう一つピークがあった。西峰よりは若干高いようだ。もしかしてあれが西峰か? 少し下って様子を見に行く。衝立状の一枚岩が立ちはだかり、ストレートに行けそうもない。迂回するにせよ、ロープが垂れているようには見えない。あのピークまで行ってみたいが自分には無理のようだというよりも無理。すごすごと引き返し、石祠の前に座って山と高原地図を広げる。どうもここが西峰のようではある。来る途中でコブが二つ見えたが、左が先のピークだったらしい。まぁいいか。

(本峰へ)


(ロープ場登りを終えて)


(桧沢岳山頂)


(山頂のアカヤシオ)


(同じく。アングルを変えただけ)


 本峰に向かう。さすがに鞍部に下るまでにロープに手を添えてしまった。こんなところで足を踏み外したら、どこで止まってくれるかわかりゃしない。その前に意識が消える。本峰側は岩峰といったイメージなく登れたが、あまりぱっとした山頂ではなかった。山名板と三角点標石、何という神社か知らないが、トタン屋根の神社と石灯籠一基。山頂は狭い。展望は西峰よりは劣る。
 ここまでだれにも会わずに来られたのはラッキーだった。大方が時計回りだとすれば、追い越されない限りはだれにも会わずに済ませられる。おにぎりを食べて一服する。ここの山頂のアカヤシオは小粒だがきれいだ。群れて咲いているというほどでもない。上手な咲き具合の表現が浮かばない。後ろの風景を加えれば、さも西上州のひとつばなだ。群れているのもそれなりに圧巻だろうが、自分にはこれで十分。賑やかなのは性格的に向いていない。ここで一眼レフに交換してみたが、結果を見た限りは変わらなかった。

(下る)


(こっちがまだ見頃だったか)


(ただ、アップではきつい)


(小沢岳を入れてみた)


(結構、急だ)


(東屋と)


(檜沢神社)


 下りにかかると、花も少し大粒になったが、一時的で、全体としては終わりかけだ。周囲の景色の中、あちこちにピンクの花の塊が遠望できる。本峰の垂直の岩肌にも見える。いつもながら、よくもあんな岩の隙間から株が出るものだと感心する。健気なものだ。
 アカヤシオが消えかかると、行く手は鋭角的に戻るように右手になった。その先には岩を穿ったのか、自然のままかは知らないが、そこに東屋があり、その隣には神社。神社は檜沢神社とある。周りには奉納されたらしきいくつかの石灯籠。ということは、山頂の神社はこの檜沢神社の奥社といったところか。神社そのものは岩穴に納められているものの、ちょっと手をかければバラバラになりそうで、かろうじてトタン屋根が支えているといった感じだ。石灯籠の年代は文化、安政、明治の字が読める。新しい供え物は見あたらない。今でも地元の方の信仰がは続いているのだろうか。

(こんなところを歩かされる)


(対岸のポツンポツン)


(桧沢岳の岩肌)


(寂しくなりかけてはいるが自分には好みの咲きぶり)


(真向いの岩峰)


 下り道が急になり、見た目危うげな岩の縁を歩くようになる。またアカヤシオが出てきた。やはり上に比べれば花は落ち、花数は少なくなっている。谷間を挟んだ対岸の山肌にピンク色がポツリポツリと見える。ただピンクがあるのは下の方だけで、上部は針葉樹だからなのかまったくピンクがない。むしろ、ここを下り切った先にあるピーク(956mかと思うが)にピンクが上まで続いている。残念ながら、そこは通らない。そこも岩峰だ。

(まだ続く)


(これもいい)


(青空と)


(アカヤシオはそろそろ遠ざかっていく)


(ミツバツツジ)


(コラボといえばそうではあるが)


(もうミツバが主体)


 残り少なくなったアカヤシオをキョロキョロ眺めながら下る。標高が1000mを切ったところで賑やかなアカヤシオを見かけたのを最後にミツバツツジに交代した。そしてミツバもきれいなものだなと思いながら眺めているうちに、ほどなく植林に入り込む。ここもまた上は檜、下は杉といった構成になっていた。

(植林に入ってツツジは終わり)


(ここは右を巻く)


(紅葉期はきれいだろう)


(沢を渉って、あの道に出る)


 クネクネと下る。まさかあの切れ落ちていそうなところを下るんじゃないだろうなと構えていると、うまく巻いてくれた。やがて水の流れる音が聞こえてくると、下に沢が見えた。その沢の向こうには作業道のような歩道がまっすぐに通っている。まさかと思ったが、沢にはオジサンがいて、沢の写真を撮っている。きれいな景色の沢でもない。最初、自分の先行者かと思ったが、それはあり得ない。登山口の間までに車を見かけなかったし、だれにも追い越されていない。こちらから登るつもりなのか。いや、どうみても沢の写真目的にしか見えない。
 この桧沢岳に登るにあたり、ハイトスさん記事を探してみたが見あたらなかった。「檜沢岳」とあったから気づかなかっただけのことだが、後で改めて拝見すると、ハイトス隊は、この沢の上の明瞭に窺える歩道に気づかず、そのまま右岸側を下り、窮地に陥りそうになったようだ。

(荒れている)


(出発時の道に合流)


(里の花も満開)


(帰着)


 作業道は荒れた林道になり、民家が見えてきた。そして、林道の本道にぶつかった。オジサンが道の掃除をしている。ご苦労様ですと声をかける。その先には車が一台。路上に半端に駐まっている。群馬ナンバー。カメラマンのか? 大森橋に到着。路肩には自分の車以外に同県ナンバーが二台。大森橋のさらに上の、登山口近くに駐車する方もいるようだが、ここに至ってハイカーにはだれとも会うことはなくてほっとした。

(付録。桧沢岳)


 冒頭に記したが、予定ではこのまま三ツ岩岳に行くつもりでいた。結局、何やかや理由を探してやめにした。単に暑くなって汗をかくのが嫌になっただけのこと。短時間ながらも緊張感もあって疲れもした。ドライブして帰途に就いた。おかげで、二日後に、この大森橋の脇をまた通ることになる。
 余談だが、帰路は高速を使わずにナビ任せで一般道を使った。結局、埼玉の本庄経由になり、群馬県からは出るまいといった思いはふいになった。これは二日後もまた同じ。通過しただけのことだから問題はあるまい。

(桧沢岳の歩き)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」


【そして上野村。笠丸山のアカヤシオ見物】



◎2020年5月1日(金)

登山口駐車場(7:32)……地蔵峠(8:18)……稜線のコル(8:52)……西峰(8:57)……東峰(9:08~9:13)……林道(9:43)……駐車場(9:49)

 笠丸山には1986年の11月に行っていた。記憶はまったくない。自分の山行記録にはしっかりと記されているが、メモにはただ「晴れ」の一言。写真もバカチョンカメラで何枚かは撮りはしたろうが、残っているものはない。ネガは探せばあるだろう。そもそも写真撮りは結果が高価ということで、貧乏人には関心も向かなかった。1986年は日航機が御巣鷹の尾根に墜落した翌年で、当時は埼玉に住んでいて、墜落の前後、上野村の山には足繁く通っていた。笠丸山はその一連の上野村通いの一山だった。こんなことを記すのも、後になって、何となく登ったことがある山のような気がして調べたら、34年前に行っていたことがわかったということで、登ってみようと思ったこの時点では、単に、改めて三ツ岩岳に行くよりも、桧沢岳より50mは高い笠丸山の方がアカヤシオも裏切りはしないだろうという思いからでしかなく、笠丸山は初めて行く山のような気がしていた。最近の記憶がすぐに忘れるのならともかく、古い記憶まで遠のいていくのはかなりまずい症候になりつつあるようだ。山名同様に印象の薄い山だったとしたらそれはそれで正当化もできようが。

(笠丸山登山口)


(林道風の道)


(すぐにこうなる。歩きやすい)


(左にずっと沢)


 笠丸山も例外にもれずに岩峰。名前のイメージからは程遠い。今回もまた定番のコース歩きだ。一昨日の大森橋を通過して上野村に入り、登山口の駐車場に車を入れた。他に車が一台。ハイカーかと思ったが、この車の主が近くをうろついていて、山菜採りだとわかった。先行するハイカーはいないようだ。
 ガードレールのある沢沿いの林道風の道を行くと、やがて林道の型は消えて細い道になった。沢沿いは続いていて、徐々に標高を上げていく。ここでまたとぼけたことに首をかしげていた。この山もまた時計回りの周回のつもりでいて、地図を見ると、すでに尾根歩きになっているはずなのに、ずっと沢沿いに歩いている。先に尾根が見え、あれを登るのかと思ったら、尾根を避け、すでに水が涸れだした沢にこだわった道を歩いている。ここで地図を見てようやく気づいた。反時計回りに歩いている。それでは、往路が谷、復路が尾根になっていてもあたりまえ。どちらから歩いても損得ということではないが、つまりはボーッとして歩いている。しかしのどかだ。花の色づきは確認できないものの、低い谷間に差し込む明るい木漏れ日、涼しい微風。何といってもウグイスの鳴き声が聞こえているのが最高の気分だ。時々、振り返る。だれもいない。このままだれにも会うことがなければありがたい。

(右手に大きな岩)


(良い雰囲気)


(あちこちに咲いていた)


(沢は消えた)


(小尾根を巻いて)


(地蔵峠)


(峠の真下に林道だか作業道)


(地蔵さん)


(峠から笠丸山。決して丸くはない)


(林道にわざわざ見に行き)


(尾根に上がる)


 何度も見ているのに、名前を調べてはすぐに忘れる花を見て、尾根に同化した谷の丸い窪みが先に見え、ようやく沢筋から離れた。道は小尾根を巻きその窪みに出た。尾根鞍部の峠だった。地蔵があるところからしてここが地蔵峠のようだ。標識には左手に笠丸山、右手は楢原・楢沢とある。生憎、自分の刷り出し地図には楢原・楢沢ともにないが、『山と高原地図』を見ると、楢沢峠という峠からの破線路がここに至っている。ちょっと気になったのが、反対側の真下に林道のような道があったこと。右から上がってきて、笠山に向かう尾根の真下を尾根沿いに通っているが、ここから見る限り先は崩れているようで、廃林道なのだろう。尾根の先には双耳峰らしき山が見えている。あれが笠丸山のようだ。
 その林道沿いの斜面にピンクの花が見えた。林道に下り、わざわざ見に行く。ひとつばなではなかった。元気のないミツバツツジ。一応、確認したからそれまで。峠に戻るのも面倒で、林道斜面を強引に尾根道に這い上がった。

(笠丸山への道)


(途中で)


(屹立した西峰。北峰、南峰と記す方もいるが、地図上は東西のピークになっている)


(なかなかきれいだ)


(痛みかけのもある)


(ぜいたくは言わずに見頃と思いたい)


(角度を変えて)


 明瞭な登山道を双耳峰に向かう。緑はあってもピンクはない。自分にはわからないが、花が開いていないのか、それとも別の花なのか、長い外皮らしきのに包まれたのが枝に連なって続いている。アカヤシオが終わりということはあるまい。一昨日の同じエリアの桧沢岳よりは高い山なのだし。
 手前の耳は笠丸山の西峰のようだ。近づくと岩が出てきて足場は悪くなる。そして左右は次第に急斜面になっていく。西上州の山のパターンだ。ここでようやくアカヤシオに出会った。が、咲いているのは下の斜面。ぎりぎりのところまで下り、樹につかまって写真を撮っていると、背後で人の気配を感じた。元に戻って先を見ると、単独ハイカーが歩いていた。
 こんなところで盛りの過ぎたアカヤシオを危うげに撮るまでもなく、先に行くと、登山道沿いに結構咲いていた。笠丸山に来て正解だったか。少なくとも桧沢岳より状態は良い。花数も多く、傷んでいるのはそんなにない。あっちを見て、こっちを見てはゆっくり歩いて行く。

(西峰を巻いて)


(ここを登り上げればコルに着く)


 西峰の真下に来た。登山道から外れた上の斜面で彼が休んでいた。ここで挨拶。青年とオッサンの中間。強いて言えばパパといったところか。休んでいる場所が場所だっただけに、登山道から外れて西峰に直登するのかと思い、そちらから行けるのかと聞くと、イヤと口を濁して登山道に下り、先に行った。残った自分は、行けなくもないかと見上げたが、垂直に近い岩を素手で登れるわけがない。
 登山道に復帰すると、上までロープが張り巡らされた岩場。ロープに頼らずとも登れるが、視界に入るひとつばなばかりに目が向き、集中して登れない。フーッとため息をついて鞍部に出た。ここが稜線のコルらしい。いよいよ西上州山の絶景だ。コルの先はすでに切れ落ちている。

(西峰へ)


(西峰への登り)


(前掲のアカヤシオに近づいて)


(色が濃いと終わりかけ?)


(三角点)


(三角点から)


(これを越えて先に行く)


(この先は無理)


(南西方向だから八ヶ岳かと思うが)


(東峰へ)


(しつこく)


 右手のピークにアカヤシオが群れていた。こんなところを歩く人もいるんだなと思いながら行くと、まだ先に乗り越える岩があった。花が見えるからには先まで行くしかなく、行ってみると三角点があった。ここだけは小さな広場だ。薄々気づいてはいたが、やはりこちらが西峰のようだ。展望は良好だが、周囲は低い枝に囲まれている。そのため、恐怖心は少しは薄らぐ。ただ、自分には、ここで一服したり、食事をとったりする度胸はない。ここでふと思ったが、先行のパパはどこに行ったのか。アカヤシオを眺めて登っている間に、さっさと西峰から東峰に行ったのか。まぁいい。先にまだ行けるので行くと、今度は下生えの枝木は消え、平らな岩の先はストーンと落ちていた。足が震え出す前に退散したが、ここで白い八ヶ岳だけは確認した。そして、特定もできない山の景色を何枚か撮った。後で考えると、笠丸山からの展望は、このスポットからが最高だろうが、西上州ファンの方には失礼だが、自分にはどこの岩峰からも同じ景色だ。登ったことのある山の位置すらつかめない。

(高反山かと思う)


(東峰への登り)


(両神山と左に二子山)


(東峰)


(アカヤシオは見あたらない)


(山頂)


 そそくさとコルに戻り、今度は東峰。西峰から見る限りは山頂に樹木があって、景色はあまり良さそうではなかった。東峰の右後ろに鋭峰が見えるので気になった。山と高原地図を見ると高反山とある。この山、基本は破線路だらけだが、一本のコースだけは実線になっていて、「電柱」なんて記されているところがあるから、これは巡視路だろうか。両神山も見え、左側には二子山。これくらいはわかる。
 肝心のアカヤシオ、こちら側は花が大分落ちていて、西峰の比ではない。山頂に到着。山名板には「笠丸山山頂」と書かれている。そして神社。奥にパパがいた。ラーメンを食べようと湯を沸かしている。コロナの話が出る。コソコソ来ている。山に行くことはだれにも話をしていない。皆な同じだ。アカヤシオはたいしたことがなかったと言うので、相当に手厳しいなと思ったが、よく聞くと、コルからそのまま東峰に来ていて、西峰の存在には気づかなかったそうだ。食べたら、空身で行ってみると言っていた。ツツジはともかく、三角点があるからには行くだろう。それ以前に、三角点がどこにあるのか気になるようなものだが。
 ここに長居していてもタバコを吸えないのでは意味がない。予想通りに展望を楽しめない山頂だ。樹間から覗くだけ。ラーメンをすすっているパパにお先にとあいさつして下る。この下ろうとした一瞬のこと、何だか記憶にある風景だなと頭をよぎった。そのことはすぐに忘れ、家に帰ってからそれを思い出して調べて34年前に登った山だと知った。11月の冬枯れでは印象もなかったに違いないと思いたい。まして、その頃はJAL機墜落の冥福祈りの気分で西上州の山を歩いている気持ちが強かった。

(標識)


(下りは尾根通し)


(ミツバツツジになって)


 これでいいのかと思いながら、斜面をジグザグに下って行くと標識が出てきた。往路でもそうだったが、駐車場のある地区は「住居附」というところらしく、地図にも「すまいづく」とルビ付きで記されている。広葉樹の広い尾根通しの歩きだ。こちらはたまにツツジを見かける程度で、いつの間にかチラ見するツツジはミツバツツジになってしまった。やはり、西上州のひとつばなは岩場で咲くのが主流のようだ。岩峰に登らないと楽しめないということなのか。確かに桧沢岳でもそうだった。山腹で見かけるアカヤシオはあっても少ない。

(山中ではこれが最後)


(ガードレールが見えた)


(反対側の登山口)


 それでもツツジを見ながらの下りは、からっとした明るさの中で危険個所もなくのんびり気分だ。そしてやがて植林に入り込む。植林の中は見る物もないが、疎らになると、先に林道のガードレールが見えた。
 こちらの登山口入口には石灯篭が二基あって、看板もある。こっちから歩いた場合、駐車地は路肩になるだろう。舗装道を駐車場に戻る。舗装された林道の左右には人が住んでいるのか定かではないが民家が数軒。道沿いと山の斜面は花盛りだ。ひっそりと石仏があったりする。道路脇には細い住居附沢川が流れている。ここは山に登らずともに山際の陽春を楽しめる。

(車道歩きの風景1)


(車道歩きの風景2)


(車道歩きの風景3)


(車道歩きの風景4)


(駐車場到着。2時間15分。ツツジも紅葉もなければ2時間もかかるまい)


 埼玉ナンバーの新型ジムニーが先に行っては戻ってきて、またやって来る。どうやら駐車場を探しているようだ。やはりそうだった。ようやく駐車場を見つけたようで、中から男女が出て来た。ハイカーだ。
 駐車場には7台の車。山菜採りのオッサンの車はすでにない。この山もあっけなく終わった。まだ10時前だ。時間つぶしの目当てはあった。せっかく上野村まで来ている。いくつか滝を見て行こう。着替えて車を出すと、山中でいっしょになったパパが戻って来た。今日も暑くなりそうだ。
 ふと思う。西上州の山はアカヤシオのメッカだ。考えてみたこともなかったがようやく気付いた。アカヤシオは岩峰に似合っているからだろう。「西上州にはアカヤシオがよく似合う」か。

(笠丸岳の歩き)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」


【滝をいくつか見て帰る】

◎中止の滝(上野村)
 「なかどめのたき」と思ったが、入口の解説看板を読む限りは「ちゅうしのたき」のようだ。観光滝のつもりだったが、結構、険しい登りを強いられてようやく見ることができた。汗だくになった。途中、肉付きのシカ骨が腐臭を放って転がっていたのにはまいった。スニーカーでは行かない方がよいだろう。





















◎龍神の滝(上野村)
 この滝は簡単に行ける。休業中の竜神の滝キャンプ場を横切って行くと突き当りに見える。













◎蛇木の滝(上野村)
 この滝はあまりお薦めしない。見ようによっては、堰堤から水があふれて滝状になっているといった具合で、滝本体にも用水路が入り込んでいる。勘違いされる方もいるだろうが、滝の本体は左の白い塊りだ。堰堤から落ちる水流ではない。



◎逢瀬の滝(神流町)
 観光滝の気分で行くと失敗する。看板はあっても上からでは見えない。川に下りようとしたが、長い擁壁になっていて、かなり下流から遡行しないと見られない。上流部から下りられなくもないが、その場合、落ち口を見て終わりになるだろう。












 帰り道は神流町から小鹿野経由で秩父に入った。秩父の6市町村長が「秩父には来ないで」と声明を出している。コンビニに寄って冷たいものでも欲しかったが我慢した。笠丸山の登山口には、群馬よりも埼玉県ナンバーの方が多かった。それもそのはず。上野村あたりなら、高速を使う県内の自分よりも、ずっと一般道で来られる秩父からのアクセスの方がより近い。

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4 コメント

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Unknown (ふみふみぃ)
2020-05-12 23:46:43
"西上州ファンの方には失礼だが、自分にはどこの岩峰からも同じ景色だ。登ったことのある山の位置すらつかめない"、たぶん私が行っても同じような感想になると思いますが、それでいてどこかにピンク色に染まった山があればそれで覚えたりもするのかなと。
先日赤城で出会った群馬の方はまさに西上州ファンで逆に栃木はさっぱり詳しくないと群馬県民といえどもホームは色々あるのだなと思いましたが、その方が言うには今年は西上州はさっぱりだと。(ぜいたくは言わずに見頃と思いたい)、の辺りは悪くないと思うのですがやはりいい時を知っている方が見ると今年は外れなのか。
赤城東面のアカヤシオくらいのレベルであちこち咲いているなら私も西上州に行くのですが。どうも岩稜ばかりで自由度が低そうなのであまり行く気が起きません。笠丸山の記事を拝見しても下部は以外にのどかな地味尾根だなとう感じですが肝心のアカヤシオスポットはこれ勝手な動きをしたら死ぬなと。周辺も破線路が通っていない山にゲジゲシマークが見え隠れして藪岩魂な人にとっては居心地のいい山域なんでしょうが。
ふみふみぃさん (たそがれオヤジ)
2020-05-13 19:02:51
ふみふみぃさん、引き続きありがとうございます。
私、西上州ファンではないので(笑)、軽々しい発言はできませんが、あのエリアのアカヤシオは、やはり岩場に咲くアカヤシオであって、たまにある広葉樹の尾根には見るほどのツツジはないような気がします。半分好奇心で岩稜帯を歩いてアカヤシオを愛でるというのも、危険な行動といった感じがしますよ。
そうですか。今年の西上州のアカヤシオも不作ですかね。通の方がおっしゃるからには本当なのでしょう。ただ、この後に、赤城山に行き、ふみふみぃさんとダブりのところもありましたが、あれを見たら、笠丸山のアカヤシオなんて…といった気にはなります。タイミングといったところもあるでしょうけどね。
結果として、今年は去年よりは不作ということで、これは、おそらくはどこに行っても同じでしょう。足尾の奥にでも行こうかなと思ったりもしたのですが、徒労に終わりそうなのでその気は捨てました。
コロナの自粛も、何となくうやむやの中で終わりそうですね。
Unknown (瀑泉)
2020-05-15 22:10:22
笠丸山のアカヤシオ,画像を拝見していて,此れは中々と思いましたが,赤城山のあれより見劣りしましたか。それを聞いて安心しました。自分も4日後に訪問したものですから。
ところで,「ひとつばな」は,西上州の方言だったのですネ。以前,山で「ひとつばな」を連呼していたオッちゃんと会ったことがあって,てっきり群馬では,一般的な呼称だと思っていたモノですから。
それはさておき,中止の滝は,やはり良いですね。この中では,ぶどう峠越えで,唯一,蛇木の滝は見てるけど,大したこと無いしぃ。なんにせよ,行きたくとも高速の休日割が適用にならなければ,遠すぎて足を運べませんワ。
瀑泉さん (たそがれオヤジ)
2020-05-18 06:47:10
瀑泉さん、おはようございます。
「ひとつばな」については、『山と高原地図』の西上州を見て、山のあちこちに「ひつとばな」と記されていて、何の花かと思い調べると、あちらの方ではアカヤシオを「ひとつばな」と言うようで、限定した地区の呼び名かと思います。それを他の山でも広げようとしても、あまり流行らないと思いますよ。
この後に赤城のアカヤシオになるわけですが、多くの方が行っているようだし、ありきたりなコースを歩きましたから、記事にしても面白みもなかろうと、敢えてアップはしませんが、赤城を先行していたら、おそらく、笠丸山のひとつばなにはがっかりしていたかと思います。
今月中は高速代の割引もないようですが、私のところからも上野村はかなり遠く、高速利用をしても不便です。むしろ、秩父に出て、長い国道を行った方が近いようですが、同じ群馬県内とはいえ、めったには行けないエリアであることは確かです。下仁田、南牧村ならともかく、上野村は足繁く通えるところではありません。
さて、中止の滝は水量がある時なら見ごたえはあるでしょう。まして、車から降りてすぐに行ける滝ではなく、その点は他の観光滝よりはありがたい思いになります。落差20mはあるでしょうか。写真撮りには失敗しました。露出調整もせず、全体に明るくなり過ぎでした。中止の滝だけは、上野村に行く機会があったらもう一度行きたいと思っています。
蛇木の滝は、滝の名前が付いていますが、果たして滝と言えるものなのか、疑問です。
瀑泉さんは赤城の三段の滝に行かれたようですが、その記事を待っているのですが…。あにねこさんの記事を読む限り、自分には下段の滝を見ておしまいといった感じがしていましたから。

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