
◎2013年7月13日(土)
日足トンネル足尾側出入り口(7:11)……手焼沢・長手沢二股分岐(7:18)……(手焼沢溯行)……ハイキング道合流(10:37)……茶ノ木平展望地(11:05~11:30)……長手沢分岐(11:43)……長手沢取り付き(11:52)……(長手沢下り)……二股分岐(15:11)……駐車地(15:24)
4月末に細尾峠下の林道から夕日岳に登った際に、林道から眺める景色の中にちょっとした違和感があった。男体山が見えたのはともかく、半月山が間近に見えたことだ。もしかしたら、日足トンネルあたりからでも半月山に行けるのではないのか。帰ってから地形図を広げて見ると、手焼沢(ケヤキ沢とも言うらしい)と長手沢との合流部に地蔵滝があって、そこから1155m、1575m標高点のある尾根を経由して、半月山方面に行けるかもしれない。問題は、地蔵滝周辺の取り付きだ。一応、課題にしておいた。
ネットで調べると、この尾根を登った記録はないようだが、手焼沢と長手沢の歩きをいくつか見ることはできた。最近、滝の良さを知るようになり、尾根でなくとも、これまで縁のない沢登りでもいいのではないのか。釣り師が入る沢のようでもあるが、今、足尾の釣り場は規制されていて、基本的には釣り師は入らないはず。だったら沢にも入りやすい。だが、本格的な沢登りというのは未体験。これまでの経験で、松木沢の溯行は「沢歩き」レベルだった。巣神山の下りで熊に遭い、わけも分からなく、結果的に巣神沢を下ったことはあるが、ヘルメットをかぶるような沢歩きをしたことはない。かなり不安で、連れ、つまり相棒が欲しかった。ダメモトでハイトスさんを誘ってみたら、何と、土曜日はフリーらしく、快諾をいただいた。少なくも、ハイトスさんはその筋の達人のM氏に連れられて何度かは沢経験があるはず。心強い助っ人でもある。ちなみに、両沢とも、いわゆる沢屋さんには面白みがないらしく不人気のようだ。「いやし系」と形容された記事もあった。ど素人でも問題はないだろう。
沢用のグッズをある程度は持っていた。それ用のスパッツがあれば便利らしい。モンベルネットで購入した。あくまでも「濡らさない」という前提で考えていた。後で考えると、これは無意味な買い物だったかもしれない。ガチャガチャの金具類は不要。大それた滝登りをするつもりはない。
かなり前置きが長くなった。ということで、日足トンネルの足尾側出入り口でハイトスさんと7時の待ち合わせ。本当は6時でもよかったのだが、朝に弱いハイトスさんに悪いだろう。あくまでも、こちらはお誘い立場だ。ハイトスさんは、腰の周りにガチャガチャを結わえていた。これなら安心。いざとなったら助けていただけるだろう。ザックの中には、トレッキング用の靴も入れていたが、要らないじゃないのかとのご指摘で取り出す。念のため20mロープを持参して、いざ出発。
(日足トンネル足尾側。橋を渡って左手に)

(すぐに地蔵滝が見える)

橋を渡って、トンネル施設の脇に入る。見えた。地蔵滝。落差は8mとか。自分には20mに見える。素人判断はこんなもの。この落差は、サイン、コサイン、タンゼントで計算するのかね。まさか、メジャーを上から垂らすわけでもあるまい。いつも、この脇を車で通ってはちらっと見るだけの滝だが、正面から見るのは初めて。なかなかの滝じゃないの。ここも氷瀑になれば見事だろうな。アルミ歩道を歩き、滝の上に出る。滝の上にはさらに堰堤があり、ここのスダレ状の流れも見応えはある。真下はちょっとした渓谷。
(二股。左が手焼沢、右は長手沢)

(確かにいやし系の沢かも)

(石組み)

(まさに清流といった感じ)

(石積みの滝)

すぐに沢の二股に出た。右は長手沢、左は手焼沢。長手沢は阿世潟峠の南にもあるが、これは別物。左の手焼沢に入る。下りは長手沢を下る予定。二股の間に尾根の張り出しがあって、当初はここを登ることを想定していたのだが、かなり急である。今回は無視した。いずれまたの機会だ。沢に入ると、すぐにワイヤーと滑車があったり、右に石積みがあったりと、工事の残骸を垣間見る。いい感じの、確かにいやし系の沢のようだ。石積みの小滝を見る。この辺はすんなりと通過。セミがうるさいほど鳴いている。もうこの時期だから春ゼミでもあるまいが、こんな雰囲気がすこぶる良い。
「大イワナ三浦」のペンキ書き。どこかで何度か見かけたことがある。この語彙でネットを検索すると、栃木県在住の三浦さんなる方の釣り師のブログに行きあたる。同一人物かどうかは知らないが、釣り歴3年ということだから、この方とは違うようだ。しかし、わざわざ、ペンキなりスプレーを持参して渓流釣りを楽しむお気持ちはどんなものか。自己満足で留めず発露しないと気が済まない性格の方らしい。
(あそこをへつって、どうすんのか)

(結局、ドボン)

(もうこうなったら…といった感じのようです)

きれいな小滝が続く。危なげなく通過する。沢靴の中はすでに水浸しだが、ズボンの濡れは今のところない。やはり沢スパッツの恩恵か。両側が岩壁になった小滝が現れた。先導のハイトスさんはどうするつもりだろう。しばらくその様子を眺めていた。岩のヘリをきわどく進み、先を眺めている。先に行けると判断したのか、一歩へつってドボン。やったー。首下浸水。笑ってらっしゃる。こちらもゲラゲラ。その後はどうするのだろう。3mばかりの小滝を、水を浴びながら登って行く。とてもとても、ど素人はそんなことはできませんと、岩の上を巻く。しかし、この岩、とんでもなく急で滑る。岩の上から下を眺めた。ハイトスさんはなおも流れの急な沢を全身に水を浴びながらジャボジャボと進んでいく。凛々しいというか、勇ましいというか、よくやるよというか。沢登りはああでないといけないのか。結構、マニアックできつい世界だねぇ。沢に下りてインタビューすると、もう濡れたら開き直りとのこと。なるほど、これが極意か。
(ここは下が深い。巻くしかあるまい)

(この辺で、自分もシャワークライミングの体験でもしておこうか)

(そして、ドボン。ハイトスさん提供)

続いて5mほどの滝。滝壺は深い。足が着きそうにもない。これはさすがにハイトスさんもあきらめて巻く。こちらはさっきから巻きの一辺倒。ズボンの裾が濡れはじめたのを気にしている。一旦、ナメ沢になる。ここなら大丈夫だろうと、下りてナメ沢歩き。ちょっとした小滝。この辺で水をある程度かぶるのも趣向かとハイトスさんに続く。手が滑った。背中からドボン。やってしまった。どこも打たなかった。正直のところ、気持ちが良かった。確かに、こうなると、濡れなんか気にならなくなる。大胆にもなれるわけだ。ただ、ザックの中はあらかじめポリ袋で二重にしているから問題はないが、首から吊ったポシェットに入れていたカメラがこのままではダメになる。同じポシェットに入れていた地図はもう見えない状態。カメラは、ザックのポリ袋に入れる。ハイトスさんのカメラは完全防水とのこと。あれ、欲しいなと、この時点ではそう思ったが、仕上がり写真を送っていただき、買う気は失せた。それにしても、ハイトスさんは地図まで防水にされていらした。こうでないといかんか。やはり初心者。欠如だらけ。
(きれいな滝が続く。この辺で本流から離れる。左に本流だが水量が少ない)

小滝がしばらく連続する。濡れを気にしていた頃の出始めと違って、沢登りもおもしろいものだと実感する。ただ、カメラをその都度ザックから取り出すのがうっとうしい。仕方がない。ズボンのポケットはすでに水浸しだ。左に二重の石積みが見える。足場のなさそうな6mほどの滝。ハイトスさんが無理に取り付いて、またドボン。下は浅瀬だから、半端なところから落ちたらケガをする。巻く。まぁ、こんなことの繰り返しで、おもしろおかしく着実に上に登って行く。
ここまで、ほぼ地形図に記された沢に沿って歩いている。途中、沢もいくつか分岐はするが、ほとんどが涸れ沢か中洲状態になっていて、紛らわしいところはない。ただ、地形図の本流をそのまま行ってしまえば、上で車道に出てしまうので、これだけは避けたい。1100m過ぎあたりで本流から離れて北上。むしろ、こちらが本流のようで水量が多い。
(次第に細くなり…)

(炭焼き跡)

(水も消えた)

(ハイキング道に合流)

炭焼き跡のようなところを通過。水が伏流になりかけてくる。上が稜線らしき感じになるが、まだまだ先がありそうだ。チョロチョロ滝を越えると、とうとう伏流になって、荒れた窪みを進むと、やがて狭まって、ハイキング道に出た。お疲れさんでした。ここまで、ど素人なりに楽しい沢遊びであった。休む。衣類は生乾きの状態。雪田爺さんがこの辺だか本流の源泉付近でオロクさんを見つけたらしいが、倒木が転がっているだけ。タバコを1本。幸いにもこれだけは濡らすとまずいと思って、梱包には気を配っていた。
(長手沢には、ここから左手に入り込む)

ハイトスさんが寒い寒いとおっしゃるので歩き出す。最低2回はドボンをやっていらしたから、こちらの生乾き以前の状態だろう。ハイキング道に出ると風が出てきた。雨もポツリポツリ。濡れた身体には気にかかることでもないので、土砂降りになったとて、これはこれで先を急ぐ必要もない。下りの長手沢入口を確認して茶ノ木平に向かう。
(茶ノ木平の展望地でランチタイム)

茶ノ木平で展望を楽しみながらランチといきたいところではあったが、はっきり見えるのは男体山だけ。あとはシルエット。食事をしていると、2人連れハイカーがやってきた。ヘルメットなんか結わえているから、どう思われたことやら。小粒の雨を気にしながら、そそくさと下って行かれた。
(長手沢に下る。正面に薬師岳か?)

(長手沢の源流ポイント)

(一連の手続きを下から見ていた。勉強になりました)

長手沢への下り。ここには「半月峠→」の標識がある。下はササの急斜面で、どこに沢があるのかは分からない。周囲の地形を地形図に照らして適当に下るだけ。正面奥に見えるのは薬師岳だろうか。ササをつかんで下る。下りきったところに沢型が見えた。左からも沢が合わさっている。かなり荒れていて歩きづらい。水はまだない。そのうちに水が出てくる。しかし、ここからが、延々といった感じで長かった。
4mほどの垂壁に出る。素手でそのまま下るのは不可能。自分は倒木のある脇を巻いて下ったが、ハイトスさんは木にロープを結わえて器用に下りた。このロープは購入してから15年は経つだろうか。未だかって使ったことはない。ここで初めて使うことになった。耐用年数がどんなものかは知らないが、無事に下りてきたので安心した。まだまだ使えそうだ。
(こんな木があった。大石と共生している)

この沢もまた小滝が続く。釣り師は手焼沢よりも長手沢に入る方が多いのか、脇に釣り師ルートらしき踏み跡がある。何とも残念なのはペットボトルの残骸。こんな軽いもの、持ち帰ればいいのに。無神経さに腹立たしくなる。その他、ワイヤーやらドラム缶が放置されている。
大方の滝は巻いて下る。身体が濡れているとはいえ、登りはともかく、下れる自信はない。ハイトスさんは器用に下る。やはり、場数の違いか、天性のものだろう。いつしか、自分も腰程度の深みはわざわざ水に入って漕いで歩くようになっていた。その方が楽なのである。釣り師が入るくらいだから、あちこちで魚影を見かける。ハイトスさんは手焼沢で尺級のイワナを見かけてもいた。
(ウォータースライダーで楽しめそうだ)

(長手沢も小滝が続いているが、ほとんどが巻き)

地形図では、長手沢の青い実線が1130mあたりから出ているが、実際は1500mあたりから流れていて、細尾峠の西側にある林道だか作業道の先端部間近を通過することになっている。おそらくその付近だと思うが、赤テープが垂れていた。行って確認まではしなかったが、その林道に沿うようになってから、ところどころでテープを見かけた。釣り師のマーキングかもしれない。不思議なことに、その上に踏み跡はない。釣り師といえば、釣り師が設置したと思われるトラロープがあって、使わせていただいた。
(カエルを無理に泳がす)

(ハイトスさんが期待していた大釜)

(沢の合流に到着)

(堰堤の釜)

(ここまでやるとは…)

ところどころで休む。実は次第に疲れ、飽きてきていた。こう、沢ばかり続くと嫌気もでてくる。まだかまだかの状態になっていた。やはり往路、復路、いずれかは尾根にした方が、自分には見合ったスタイルだ。足も痛い。トレッキングシューズに比べると、やはり石にぶつける脇が痛くなる。
次第に終点に近づいた。沢の合流部手前に大釜があるらしい。そこでハイトスさんは水浴びをするとおっしゃっていたが、大釜どころかちょっとした淀みであった。これでは…だ。しかし、我慢しかねるハイトスさん。合流を過ぎ、堰堤下の釜でそのままの格好で泳ぎ出した。潜ったりもしている。こちらは傍観していたが、よくやるわといった心境。さぞ気持ちいいだろうなと思いもしたが、マネする気分にはなれなかった。
(駐車地に向かう。お疲れさん。靴跡が何とも印象的)

地蔵滝を改めて見て、トンネル出口に立つ。すごい排気ガスの臭いがした。いままでマイナスイオンの世界に浸っていたかのような気分が一変して悪くなった。車の脇ですべて着替える。沢靴が足にへばりついてなかなか脱げない。
今日の沢登り、後半は苦渋が混じりはしたが、至って楽しかった。未体験ゾーンを体験もした。一人だったら歩けやしなかった。ハイトスさん、お付き合いありがとうだ。先に着替えを終え、ハイトスさんにお先にと挨拶をしに行ったら、腰にタオルを巻き、パンツを片足にはさんで履いているところであった。失礼しました。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
※沢登りは超初心者です。専門用語もろくに知りません。おかしな使い方をしているようでしたら、その程度のものとお察しください。
日足トンネル足尾側出入り口(7:11)……手焼沢・長手沢二股分岐(7:18)……(手焼沢溯行)……ハイキング道合流(10:37)……茶ノ木平展望地(11:05~11:30)……長手沢分岐(11:43)……長手沢取り付き(11:52)……(長手沢下り)……二股分岐(15:11)……駐車地(15:24)
4月末に細尾峠下の林道から夕日岳に登った際に、林道から眺める景色の中にちょっとした違和感があった。男体山が見えたのはともかく、半月山が間近に見えたことだ。もしかしたら、日足トンネルあたりからでも半月山に行けるのではないのか。帰ってから地形図を広げて見ると、手焼沢(ケヤキ沢とも言うらしい)と長手沢との合流部に地蔵滝があって、そこから1155m、1575m標高点のある尾根を経由して、半月山方面に行けるかもしれない。問題は、地蔵滝周辺の取り付きだ。一応、課題にしておいた。
ネットで調べると、この尾根を登った記録はないようだが、手焼沢と長手沢の歩きをいくつか見ることはできた。最近、滝の良さを知るようになり、尾根でなくとも、これまで縁のない沢登りでもいいのではないのか。釣り師が入る沢のようでもあるが、今、足尾の釣り場は規制されていて、基本的には釣り師は入らないはず。だったら沢にも入りやすい。だが、本格的な沢登りというのは未体験。これまでの経験で、松木沢の溯行は「沢歩き」レベルだった。巣神山の下りで熊に遭い、わけも分からなく、結果的に巣神沢を下ったことはあるが、ヘルメットをかぶるような沢歩きをしたことはない。かなり不安で、連れ、つまり相棒が欲しかった。ダメモトでハイトスさんを誘ってみたら、何と、土曜日はフリーらしく、快諾をいただいた。少なくも、ハイトスさんはその筋の達人のM氏に連れられて何度かは沢経験があるはず。心強い助っ人でもある。ちなみに、両沢とも、いわゆる沢屋さんには面白みがないらしく不人気のようだ。「いやし系」と形容された記事もあった。ど素人でも問題はないだろう。
沢用のグッズをある程度は持っていた。それ用のスパッツがあれば便利らしい。モンベルネットで購入した。あくまでも「濡らさない」という前提で考えていた。後で考えると、これは無意味な買い物だったかもしれない。ガチャガチャの金具類は不要。大それた滝登りをするつもりはない。
かなり前置きが長くなった。ということで、日足トンネルの足尾側出入り口でハイトスさんと7時の待ち合わせ。本当は6時でもよかったのだが、朝に弱いハイトスさんに悪いだろう。あくまでも、こちらはお誘い立場だ。ハイトスさんは、腰の周りにガチャガチャを結わえていた。これなら安心。いざとなったら助けていただけるだろう。ザックの中には、トレッキング用の靴も入れていたが、要らないじゃないのかとのご指摘で取り出す。念のため20mロープを持参して、いざ出発。
(日足トンネル足尾側。橋を渡って左手に)

(すぐに地蔵滝が見える)

橋を渡って、トンネル施設の脇に入る。見えた。地蔵滝。落差は8mとか。自分には20mに見える。素人判断はこんなもの。この落差は、サイン、コサイン、タンゼントで計算するのかね。まさか、メジャーを上から垂らすわけでもあるまい。いつも、この脇を車で通ってはちらっと見るだけの滝だが、正面から見るのは初めて。なかなかの滝じゃないの。ここも氷瀑になれば見事だろうな。アルミ歩道を歩き、滝の上に出る。滝の上にはさらに堰堤があり、ここのスダレ状の流れも見応えはある。真下はちょっとした渓谷。
(二股。左が手焼沢、右は長手沢)

(確かにいやし系の沢かも)

(石組み)

(まさに清流といった感じ)

(石積みの滝)

すぐに沢の二股に出た。右は長手沢、左は手焼沢。長手沢は阿世潟峠の南にもあるが、これは別物。左の手焼沢に入る。下りは長手沢を下る予定。二股の間に尾根の張り出しがあって、当初はここを登ることを想定していたのだが、かなり急である。今回は無視した。いずれまたの機会だ。沢に入ると、すぐにワイヤーと滑車があったり、右に石積みがあったりと、工事の残骸を垣間見る。いい感じの、確かにいやし系の沢のようだ。石積みの小滝を見る。この辺はすんなりと通過。セミがうるさいほど鳴いている。もうこの時期だから春ゼミでもあるまいが、こんな雰囲気がすこぶる良い。
「大イワナ三浦」のペンキ書き。どこかで何度か見かけたことがある。この語彙でネットを検索すると、栃木県在住の三浦さんなる方の釣り師のブログに行きあたる。同一人物かどうかは知らないが、釣り歴3年ということだから、この方とは違うようだ。しかし、わざわざ、ペンキなりスプレーを持参して渓流釣りを楽しむお気持ちはどんなものか。自己満足で留めず発露しないと気が済まない性格の方らしい。
(あそこをへつって、どうすんのか)

(結局、ドボン)

(もうこうなったら…といった感じのようです)

きれいな小滝が続く。危なげなく通過する。沢靴の中はすでに水浸しだが、ズボンの濡れは今のところない。やはり沢スパッツの恩恵か。両側が岩壁になった小滝が現れた。先導のハイトスさんはどうするつもりだろう。しばらくその様子を眺めていた。岩のヘリをきわどく進み、先を眺めている。先に行けると判断したのか、一歩へつってドボン。やったー。首下浸水。笑ってらっしゃる。こちらもゲラゲラ。その後はどうするのだろう。3mばかりの小滝を、水を浴びながら登って行く。とてもとても、ど素人はそんなことはできませんと、岩の上を巻く。しかし、この岩、とんでもなく急で滑る。岩の上から下を眺めた。ハイトスさんはなおも流れの急な沢を全身に水を浴びながらジャボジャボと進んでいく。凛々しいというか、勇ましいというか、よくやるよというか。沢登りはああでないといけないのか。結構、マニアックできつい世界だねぇ。沢に下りてインタビューすると、もう濡れたら開き直りとのこと。なるほど、これが極意か。
(ここは下が深い。巻くしかあるまい)

(この辺で、自分もシャワークライミングの体験でもしておこうか)

(そして、ドボン。ハイトスさん提供)

続いて5mほどの滝。滝壺は深い。足が着きそうにもない。これはさすがにハイトスさんもあきらめて巻く。こちらはさっきから巻きの一辺倒。ズボンの裾が濡れはじめたのを気にしている。一旦、ナメ沢になる。ここなら大丈夫だろうと、下りてナメ沢歩き。ちょっとした小滝。この辺で水をある程度かぶるのも趣向かとハイトスさんに続く。手が滑った。背中からドボン。やってしまった。どこも打たなかった。正直のところ、気持ちが良かった。確かに、こうなると、濡れなんか気にならなくなる。大胆にもなれるわけだ。ただ、ザックの中はあらかじめポリ袋で二重にしているから問題はないが、首から吊ったポシェットに入れていたカメラがこのままではダメになる。同じポシェットに入れていた地図はもう見えない状態。カメラは、ザックのポリ袋に入れる。ハイトスさんのカメラは完全防水とのこと。あれ、欲しいなと、この時点ではそう思ったが、仕上がり写真を送っていただき、買う気は失せた。それにしても、ハイトスさんは地図まで防水にされていらした。こうでないといかんか。やはり初心者。欠如だらけ。
(きれいな滝が続く。この辺で本流から離れる。左に本流だが水量が少ない)

小滝がしばらく連続する。濡れを気にしていた頃の出始めと違って、沢登りもおもしろいものだと実感する。ただ、カメラをその都度ザックから取り出すのがうっとうしい。仕方がない。ズボンのポケットはすでに水浸しだ。左に二重の石積みが見える。足場のなさそうな6mほどの滝。ハイトスさんが無理に取り付いて、またドボン。下は浅瀬だから、半端なところから落ちたらケガをする。巻く。まぁ、こんなことの繰り返しで、おもしろおかしく着実に上に登って行く。
ここまで、ほぼ地形図に記された沢に沿って歩いている。途中、沢もいくつか分岐はするが、ほとんどが涸れ沢か中洲状態になっていて、紛らわしいところはない。ただ、地形図の本流をそのまま行ってしまえば、上で車道に出てしまうので、これだけは避けたい。1100m過ぎあたりで本流から離れて北上。むしろ、こちらが本流のようで水量が多い。
(次第に細くなり…)

(炭焼き跡)

(水も消えた)

(ハイキング道に合流)

炭焼き跡のようなところを通過。水が伏流になりかけてくる。上が稜線らしき感じになるが、まだまだ先がありそうだ。チョロチョロ滝を越えると、とうとう伏流になって、荒れた窪みを進むと、やがて狭まって、ハイキング道に出た。お疲れさんでした。ここまで、ど素人なりに楽しい沢遊びであった。休む。衣類は生乾きの状態。雪田爺さんがこの辺だか本流の源泉付近でオロクさんを見つけたらしいが、倒木が転がっているだけ。タバコを1本。幸いにもこれだけは濡らすとまずいと思って、梱包には気を配っていた。
(長手沢には、ここから左手に入り込む)

ハイトスさんが寒い寒いとおっしゃるので歩き出す。最低2回はドボンをやっていらしたから、こちらの生乾き以前の状態だろう。ハイキング道に出ると風が出てきた。雨もポツリポツリ。濡れた身体には気にかかることでもないので、土砂降りになったとて、これはこれで先を急ぐ必要もない。下りの長手沢入口を確認して茶ノ木平に向かう。
(茶ノ木平の展望地でランチタイム)

茶ノ木平で展望を楽しみながらランチといきたいところではあったが、はっきり見えるのは男体山だけ。あとはシルエット。食事をしていると、2人連れハイカーがやってきた。ヘルメットなんか結わえているから、どう思われたことやら。小粒の雨を気にしながら、そそくさと下って行かれた。
(長手沢に下る。正面に薬師岳か?)

(長手沢の源流ポイント)

(一連の手続きを下から見ていた。勉強になりました)

長手沢への下り。ここには「半月峠→」の標識がある。下はササの急斜面で、どこに沢があるのかは分からない。周囲の地形を地形図に照らして適当に下るだけ。正面奥に見えるのは薬師岳だろうか。ササをつかんで下る。下りきったところに沢型が見えた。左からも沢が合わさっている。かなり荒れていて歩きづらい。水はまだない。そのうちに水が出てくる。しかし、ここからが、延々といった感じで長かった。
4mほどの垂壁に出る。素手でそのまま下るのは不可能。自分は倒木のある脇を巻いて下ったが、ハイトスさんは木にロープを結わえて器用に下りた。このロープは購入してから15年は経つだろうか。未だかって使ったことはない。ここで初めて使うことになった。耐用年数がどんなものかは知らないが、無事に下りてきたので安心した。まだまだ使えそうだ。
(こんな木があった。大石と共生している)

この沢もまた小滝が続く。釣り師は手焼沢よりも長手沢に入る方が多いのか、脇に釣り師ルートらしき踏み跡がある。何とも残念なのはペットボトルの残骸。こんな軽いもの、持ち帰ればいいのに。無神経さに腹立たしくなる。その他、ワイヤーやらドラム缶が放置されている。
大方の滝は巻いて下る。身体が濡れているとはいえ、登りはともかく、下れる自信はない。ハイトスさんは器用に下る。やはり、場数の違いか、天性のものだろう。いつしか、自分も腰程度の深みはわざわざ水に入って漕いで歩くようになっていた。その方が楽なのである。釣り師が入るくらいだから、あちこちで魚影を見かける。ハイトスさんは手焼沢で尺級のイワナを見かけてもいた。
(ウォータースライダーで楽しめそうだ)

(長手沢も小滝が続いているが、ほとんどが巻き)

地形図では、長手沢の青い実線が1130mあたりから出ているが、実際は1500mあたりから流れていて、細尾峠の西側にある林道だか作業道の先端部間近を通過することになっている。おそらくその付近だと思うが、赤テープが垂れていた。行って確認まではしなかったが、その林道に沿うようになってから、ところどころでテープを見かけた。釣り師のマーキングかもしれない。不思議なことに、その上に踏み跡はない。釣り師といえば、釣り師が設置したと思われるトラロープがあって、使わせていただいた。
(カエルを無理に泳がす)

(ハイトスさんが期待していた大釜)

(沢の合流に到着)

(堰堤の釜)

(ここまでやるとは…)

ところどころで休む。実は次第に疲れ、飽きてきていた。こう、沢ばかり続くと嫌気もでてくる。まだかまだかの状態になっていた。やはり往路、復路、いずれかは尾根にした方が、自分には見合ったスタイルだ。足も痛い。トレッキングシューズに比べると、やはり石にぶつける脇が痛くなる。
次第に終点に近づいた。沢の合流部手前に大釜があるらしい。そこでハイトスさんは水浴びをするとおっしゃっていたが、大釜どころかちょっとした淀みであった。これでは…だ。しかし、我慢しかねるハイトスさん。合流を過ぎ、堰堤下の釜でそのままの格好で泳ぎ出した。潜ったりもしている。こちらは傍観していたが、よくやるわといった心境。さぞ気持ちいいだろうなと思いもしたが、マネする気分にはなれなかった。
(駐車地に向かう。お疲れさん。靴跡が何とも印象的)

地蔵滝を改めて見て、トンネル出口に立つ。すごい排気ガスの臭いがした。いままでマイナスイオンの世界に浸っていたかのような気分が一変して悪くなった。車の脇ですべて着替える。沢靴が足にへばりついてなかなか脱げない。
今日の沢登り、後半は苦渋が混じりはしたが、至って楽しかった。未体験ゾーンを体験もした。一人だったら歩けやしなかった。ハイトスさん、お付き合いありがとうだ。先に着替えを終え、ハイトスさんにお先にと挨拶をしに行ったら、腰にタオルを巻き、パンツを片足にはさんで履いているところであった。失礼しました。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
※沢登りは超初心者です。専門用語もろくに知りません。おかしな使い方をしているようでしたら、その程度のものとお察しください。
川が最後には無くなってしまうなんて、なんだか地理の授業を思い出しました。
濡れてからも、山頂に向かって歩いたりと、疲れを感じそうですね。濡れた岩、ヘルメットは必需品なのが、すごく分かりました。
連日の猛暑、滝にうたれたい気持ちの人は多いけど、二人はいいな
画像を見て驚きました。これはどうみても本格的ですよ。ハイトスさんの泳ぎが見れるとは・・・自分もここまでやれるよう精進せねばと思いましたです。蛇足ですが帰りを尾根道にでもしたほうがよいかと思います。たいへんお疲れ様でした。自分はこれからようやく出かけますが、どうなることやら。
涼しげでしたか?それほどでもなかったのですが。
ハイキングコースに出るまで風がなくて、かなり汗をかきましたよ。
この日は薄ぼんやりの天気でしたから、かんかん照りの陽気だったら、沢筋も涼しかったでしょうか。結局、気分的な問題でしょうね。
ヘルメットはとにかく暑い。汗がポタポタと落ちてきましたよ。風通しの良いヘルメットがあれば欲しいものです。
みー猫さんはこれからお出かけですか。またマニアックなところに行かれるのじゃないですか。
やはりね。帰りは尾根道ですよね。往復ともに沢では、身体に無理がいってしまいますし、本当に飽きます。
ハイトスさんて、結構、泳ぎが上手ですよ。スイスイでした。写真では見づらいのですが、ヘルメットもかぶって泳いでいるんですよ。
先日、沢屋さんとお話しして、その魅力に触れ、記憶に新しくタイムリーなレポ、ついつい引き込まれてしまいました。
沢登りは未知の世界ですが、これからの季節、最高でしょうか。
たそがれさんの疲れて飽きたと言われるのも、少し分かる気がしますが、それにしてもハイトスさん、気持ち良さそうですね。。
うらやましいです。
HIDEJIさん、沢にも興味を傾けつつありましたか。知っていれば、お誘いして素人衆で面白く歩けたのに。残念。
私、今回が初めてですから、偉そうなことは申せませんが、参考までに初心者の心がけをいくつか。
①最初は決して一人で行ってはいけません。
②一人で行くようでしたら、沢沿いのハイキング道のあるルートを無理して沢を歩いてみてください。
③濡れることを躊躇してはいけません。積極的に水に浸かってください。ハッピーな気分になれます。
④カメラが濡れない工夫をしてください。完全防水のカメラをわざわざ買う必要はありません。
⑤泳いでみてください。これもまた人によってはハッピーです。
⑥着替えはお忘れなく。
⑦無理をせず、巻けるところは巻く。
参考まで。相方がいらっしゃらないようでしたら、私なりハイトスさんにお気軽にお声かけくださいな。
「でん」と言います。
いつも文章が面白いのもさることながら
興味ある山域の歩きに感心しています。
失礼ながら今回も笑わせていただきましたので一言コメントさせていただきました。
色々参考になることが多いのでこれからもヨロシクお願いしますm(_ _)m
私、でんさんの<季節を感じて>をよく拝見いたしますよ。
なかなかのお歩きをされているじゃないですか。谷川馬蹄の日帰りなんざ、夢のまた夢ですわ。
こんなドタバタの山行記、お目にふれるだけでもうれしい限りです。これからもよろしくです。
ところで、でんさんは館林にお住まいのようですね。夏と言ったら館林といったところですが、あの館林のアメダス観測所はインチキで、わざと高い記録が出やすいようにセッティングされているといったデマをだれかのブログで読んだことがあるのですが…。
私の住む太田もメチャ暑いです。観測所があれば、館林を凌ぐのではと思っているのですがね。
集合時間にご配慮いただき恐縮です。(笑)
実は沢の水温が低いのであまり早い時間は良くないなぁ等と勝手に思っていたところです。
7時が丁度折衷案で良い塩梅でしたね。
事前に記録を読んでいてとても楽しみにしていたのですが、その通り楽しめました。
でも下りはみー猫さんご指摘のように尾根がよりベターでしたかね。
登山靴をザックに放り込んでおかなくちゃぁなりませんが。
それと写真をたくさん有り難うございました。
反面自分の撮った写真はいまいちが多くて申し訳ない気持ち。
とにかく面白かった!!。
このたびは、楽しい思いをさせていただき、ありがとうございました。おかげさまで、これからの歩きに意外な展開を期待できそうです。
しかし、ハイトスさんもお疲れとのことですが、尾根歩きと違って、何が待ち受けているか、まして、沢沿いですから熊が出てきても不思議ではない。これでは、精神的にも、確かに参りますよね。毎週やってたのではおかしくなりますよ。
ハイトスさんの河童ぶり、なかなかの評判になりそうですよ。私も、アルコールが一滴でも入っていたら、やったかもです。帰りの車の中でちらっと後悔していた次第です。
いずれまたやりましょう。沢は、しばらくは引率よろしくですよ。