たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

恐る恐るの有笠山だったが…。

2021年03月02日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2021年2月27日(土)

 群馬百名山を改めて意識したのは、コロナ禍で県内からあまり出ない方がいいだろうと、考えるのが嫌で、気安く歩きの基準にしただけのことだが、実際に歩いた残りの山はやはり魅力に乏しく、ことに藤岡市周辺の山は、地元には失礼ながら、自分の主観では歩いて良かったレベルには程遠かった。まだそちら方面に残っている山もあるから気が重いところがある。行ったのが相応の時期に合っていなかったからなのかもしれないが、やり出した以上は仕方がない。春になってからでいい長野県境を除けば数山だ。すぐに終わる。
 残っている山が一概につまらなそうな山ばかりとも言えない。先日の嵩山は楽しめた。短時間歩きでもそんな山もある。
 この山だけは自分には縁がないなと思っていた山があった。中之条町にある有笠山。軽井沢から一般道で帰る途中でその山容を見ての印象は、ストレートの岩峰。こんな山には登りたくもないと思った。調べると、クライマーの練習場らしい。道路傍の有笠山の標識を見て、山の名前は知った。群馬百名山の一つであることも後でわかった。
 積極的にはなれず、恐いもの見たさの気分もまったくなかったが、藤岡、安中方面の山は後回しにすることにして、行きたくもない有笠山を先行することにした。嵩山に引き続き、また中之条町に向かうことになった。

(駐車場から有笠山。反対側の暮坂峠側からは鋭峰に見える)


(右から行って、左から戻る予定)


 嵩山よりもさらに西の暮坂峠方面に向かう。駐車地は沢渡温泉アウトドアパークということだが、現地はそんなアウトドア園地の雰囲気はなく、まして看板もない。広い砂利敷きの駐車場があるだけ。有笠山の標識だけはあった。予定は、西登山口から有笠山に登り、東登山口に下るという裾野だけは周回ということになる。滑落でもしなければ一時間半もあれば戻って来られるはずだが、駐車場には車が一台もなく、どうも心細くなる。携帯が通じればいいが。今日はヘルメットをかぶって出発。靴もいつもながらのワークマンズック。

(林道を行くと)


(西登山口)


(この辺は、ありふれた山の景色と変わらない)


(東屋があったりする。使われている形跡はなかった)


 林道をしばらく行くと、左手に登山口。林道はそのまま先に続いている。地図上では612m付近になろうか。すぐに岩場歩きになるかと思ったら、林の中の登りから始まった。早速、右手に岩が見えた。登山道にはステップが敷かれ、さも普通の山歩きの風情だ。逆光だが、左手に有笠山の山頂らしきピークが見えている。大回りしているから、まだ遠く感じる。
 朽ちかけた東屋があった。それを見て、この山、群馬百名山だからか東屋を設置しているようではあるが、山頂まで気軽に行くハイカーがそんなにいるのかと不思議に思った。
 山頂まで0.8kmの標識があった。文字は消えかけている。この辺から標識は多くなったが、登山道というか、踏み跡があちこちに拡散するようになっていて、これでいいのかと思うところがあちこちにある。太いところを選ぼうとしても幅はほぼ同じだ。山仕事、ハイカー、クライマーが入り乱れて歩けばこうもなる。無意識のうちに、遠回りをして岩峰直下に回り込もうとしているから、外側、外側と選んで踏み跡を選んで先に進む。実は、これは正解だったようで、岩峰への登り口、つまりは東西登山口の合流部になるわけだが、そこに至るまで、大方の有笠山レポに記された、狭隘なクサリ付きの岩間を通過して岩場を登ったりすることはなかった。もっとも、そんなことは後で知ったこと。へーぇ、そんなところがあったのか。自分は通らなかったなぁ。ただ、これは自分の勘違いかもしれない。東登山口から登れば、正規に歩いている限り、岩間の通過になるようだが、自分は、その肝心な正規ルートから外れて下っている。

(西石門)


(ツツジ科ホツツジとあった)


 標識の上半分が欠け、5文字で「何とか門」らしく読める。先に行くと「西石門」の標識が倒れていたから、おそらく、先の標識には「有笠西石門」とあったのだろう。分岐になっていたのでそちらに行くと、大石が倒れたのか飛んできたのか、蓋状になっていて、確かに門のようになっている。近づいて、見に行くまでもないと、さっさと引き返した。これからの登攀のことが気になって、そんな気分的な余裕はなかったし、徐々にノドが渇きはじめていた。事前に緊張するのは珍しい。
 この先、相変わらずの林の中の登りながらも、この山はツツジがきれいなのか、ツツジの種類を明示した札をよく目にするようになった。

(クライマーが集まるらしきスポットの岩壁)


(チェーンが垂れていた。よくは知らないが、練習場だから指導者が上に登ってロープを垂らすのだろうか)


(奇岩が目に付く。これも平たい岩が上から落ちてきたのだろうか)


(小尾根を行くと)


(いよいよ登攀開始の東西合流点)


 山頂まで500m標識。これまた朽ちたベンチが置かれ、正面に大岩。これは有笠山の一角だろう。ここがクライマーの練習場らしく、10mほど見上げると、30cmほどのチェーンが5本ほど垂れていた。あれにロープでも引っかけて攀じ登るのだろうか。よくやるもんだと、興味もないので写真だけ撮ってスルー。まだクライマーの時期ではないのだろう。この山域にいるのは自分一人だけのようだ。さて、ここから踏み跡があちこちに飛んでいて、どこを歩くか悩むところで、本来なら、左の岩場の方に行って、前述の岩場登りになるようだが、この時点ではそんなことは知らず、正解ルートもわからずのままに右手に回った。上に尾根らしいのが見えたから、あそこまで行けば、岩峰の真下には行けるだろう。
 やはりそうだった。尾根に出るとからっと明るくなり、山頂方面の標識が置かれ、尾根筋に行くと、またツツジ名のプレート。その先にはベンチがあって、東西登山口の標識が置かれた所に出た。ここが岩峰の登り口になるようだ。
 陽が出ているし、冷や汗もかくだろうと、上着を脱いでベンチにデポ。こんなことはこれまでにはないが、水を飲んでノドの渇きをいやした。ここに至っても有笠山は登りたくもない山である気分は消えない。登らざるを得ないならさっさと済ませたい。

(こんな所を歩かされ)


(ここでクサリとハシゴが目に入った)


 いきなりのハシゴ場、クサリ場と思っていたら、じらされた。岩の下をうろちょろと歩かされた。落葉で滑る。そして、目の前にクサリが垂れ、ハシゴが設えられているのが見えた、見上げると随分と急で、狭い岩の間を登るようだ。先はカーブしていて、二本目のハシゴが続いている様子。ちょっとしんどそうだなと思ったのが第一印象。さりとて、戻るかといった気分まで落ち込みはしない。
 最初のハシゴで失敗登りをした。ハシゴの右手にクサリがあり、このクサリがやけに長い。ここはクサリは無視しても登れるが、ついクサリに手をかけてしまったら、クサリに頼る比重が大きくなり、ハシゴの終わりで、今度はハシゴから抜けづらくなってしまった。クサリが長い分、身体が振られる。その上は狭い庇状の空間。クサリを離し、立ち木をつかみ、わずかな岩のステップでハシゴの上に出られたが、よく見ると、クサリの脇には頼り気ないようにロープもあり、クサリよりもロープに手をかければ苦労することもなかったようだ。

(最初のハシゴを上がって。余裕はあった)


(二つ目)


(これでもしかして終わり? 後で思えば、ド緊張して登った山だったが、それに応じて構えて登ったのは最初のハシゴだけだったかもしれない)


 ハシゴガ続いている。ここで一息ついている場合ではなく、すぐに次のハシゴに移る。今度は先ほどの教訓もあったので、ハシゴ頼りで、クサリは手を添える程度にしてクリア。この先にこんなところがいくつもあるのだろうか。先を見ると、しばらくはハシゴもクサリも見えない。だが、考えてみれば、ハシゴ登りも、これまでの経験では八幡平の茶釜の滝を見に行った際に使ったハシゴが恐怖だった。ほぼ垂直で長く、細いハシゴで、ずっと足がガクガクしていた。それに比べたらかなり楽なものだ。

(岩壁下のトラバース道)


(三つ目。この先、特に水を欲しい感じはなかった)


 岩壁を巻きながら先に行く。部分的に、ずり落ちたらそのまま転落しかねないようなトラバースもあった。下は見ないようにして歩いたが、縁から覗き込む下の斜面はまったく見えず、見えるのはかなり下の岩峰基部の平地だけ。つまり垂直になっているということ。
 登山道エリアが少し広く平らになったところで三番目のハシゴ。このハシゴは、あったら安全程度のもので、なければないで登れなくもない。ただ、下りではないと厳しい。続きのハシゴはなかった。急な登りだけで、両サイド切れ落ちの中を登るわけでもなく、わりに広い道が続いている。

(この先にはハシゴがない気配)


(登り切ったところから)


(真下を撮ってみる)


(有笠山山頂)


(ここの山名板だが、板には873mとあり、支えの柱には888mとあった)


 ここがピークかと思ったところは展望地で、山名板のある山頂はこの先にあった。小広い台地で雑木に囲まれ、明るくはあるが、展望はない。ここからヘリに行って展望を見ようとしたり、見下ろしたりはしない方がいいだろう。ここに三角点はない。
 こんなところでの長居は無用。セルフ写真を撮り、水を飲んでさっさと下る。一番下のハシゴを降りてしまわない限り、この山からは開放されない。

(下る)


(三番目のハシゴ)


(大岩が迫っている)


(そして、二番、一番目のハシゴ)


 最初のハシゴを難なく下り、慎重にトラバースし、下二つのハシゴの上に出た。それでも足は震えた。もうクサリには頼らずに下る。ハシゴの間の区間のみ手を添えたが、頼りにはせず、立ち木につかんで乗り換えた。ここに強固な立ち木があったので助かるが、これがなかったら、かなりしんどいだろう。
 無事に着地した。後は落葉に滑らないように注意して下った。ほっとした。これで有笠山も「済」になった。この山には、いくらツツジがきれいでも、二度と来ることはあり得ない。

(東西登山口の分岐標識。東に向かう)


 上着をデポした東西登山口の分岐に出ると、3人組が登って来た。これから山頂に向かうらしい。やはり気になるのか、どうでしたか? と聞かれた。こんなところで冗談やうそを言うわけにもいかず、自分の思った注意点は伝えた。もしかしたら、自分のヘルメット姿にたじろいだかもしれない。
 率直に記せば、ここまでの記載とは矛盾するかもしれないが、ハシゴ登りも下りも注意万全であれば、何も問題はない。ある程度、岩場を歩いた経験があれば、例えば、ザックやら衣類をハシゴの角にでも引っかけない限りは厳しいものはない。あくまでも、岩場で滑落して骨折した経験があるだけに、自分が嫌いなだけのことだ。主観が先行して出過ぎたかもしれない。

(この辺はまだわかるが)


(もう、コースから外れ、安全なところを適当に下っている)


 東登山口に下る。こちらは大半が林道歩きになる。すんなりは行かなかった。最初は道型もわかったが、落葉で隠れ出してからわけがわからなくなり、右往左往しても登山道には出ない。むしろ離れていっているようだ。こうなったら腹を括るしかなく、東に下れば林道に出ることは地図で明白なので、薄いヤブ漕ぎで、あっさりと林道に出た。だから、東登山口側からのコースの様子はまったく知らないことになる。ハイトスさんも同じようなことをやっていた。

(林道に出て)


(間もなくゲート)


(ゲートのところに東登山口があった。突きあたりが有笠山)


(無事に戻った。見た目と違って、なんだこんなものだったのかで終わりになった)


 林道を歩いてほどなく通行止めのゲートが現れ、ここに東口登山口の標識が立っていた。先を見ると、どうも沢型沿いに登るようだ。ここに数台の車があり、新潟県ナンバーの車が置かれていて、あの3人組は新潟から来たのかなと思ったが、自分と同じく西登山口の方から登って来ていたから、彼らの車ではないだろう。
 さらに林道を歩き、駐車場に到着。出発から帰着まで2時間もかからなかった。駐車場には他にもう一台置かれていた。関西のナンバーだったが、これが彼らの車だろうか。そちらからわざわざやって来るほどの山ではないと思うが。ともいえないか。こちらで勤めているということもある。
 まぁこれで嫌な山は済んだ。時間はまだ昼を過ぎたばかりだ。ドライブがてら、四万温泉の方に行き、桃太郎の滝と甌穴でも見に行くことにしよう。

(今回の軌跡。下りのミス歩きはこれではわからない。ただ、等高線を見る限り、山頂から北にちょっと下ってみてもよかったかもしれない)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

(桃太郎の滝。上の赤い橋に行きたかったが通行止めになっていた)


(同じく。氷瀑ではない普通の滝)


(無粋なダムが目に入るが水はブルーで深い。ただ、印象として、沢に入り込んで見られる滝ではない、ただの観光滝では物足りない。まして、正面にも出られる滝ではなかった)


(甌穴)


(あの階段も通行止めになっていたのだが)


(やらかしてしまった)


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