
◎2013年6月30日(土)
林道ゲート(7:00)……林道終点(8:02~8:08)……滝入口(8:25)……前衛の滝(9:10)……布引の滝(9:25~9:55)……滝入口(10:53)……子育て地蔵(11:07)……林道終点(11:24)……林道ゲート(12:16)
先日、桃洞の滝に行ってから、滝見も趣向になりつつある。どこか、また、見どころのある滝に行きたい。そんな折、ぶなじろうさんが先週、女峰山を裏から歩かれた記事を拝見した。なかなか、興味をそそられるルートだったが、その記事に、布引の滝が触れられてあった。調べると、落差128mのなかなかの滝のようで、雪田爺さんが「栃木の自薦10選」に入れられていた。富士見峠は後回しにして、布引の滝に行ってこようか。両方、せめて帝釈山くらいまでは行きたいが、体力的に無理なお話。まして、長時間の好天を期待はできない。今回は布引の滝にしぼろう。
(一般車はここまで。この先まで行きたい場合はロープゲートを外す)

土日ともに4時に目が覚めた。昨日は、どうも身体が不調のようで、寝なおした。今日になった。いずれであっても、北関東の山間部の天気ははっきりしない。雨は覚悟している。野門まで自宅から高速利用で2時間半もかかった。ナビを「家康の湯」にセットして、そのまま行ったのだが、今市を抜けてから、わけのわからない有料道路を2か所も通らされ、無駄遣いをしてしまった。途中、蛇王の滝をちらっと見る。帰りに寄ろう。家康の湯の入口を通り過ぎ、5分もかからずに林道ゲート。
ゲートとはいっても、ロープが渡されただけの代物で、よく見ると、端の金具がフックになっていて、簡単に外れる。このまま突っ切ることも考えたが、ぶなじろうさんの言うところの倫理観がちらついた。また、よそ者の群馬ナンバーが無益なトラブルを起こしても仕方あるまい。今日は滝見だけだし、テクテク歩きで行こう。ゲート前の路肩に駐車して出発。
(階段があったのでショートカットをする。いきなりヤブ登りになった)

霧が濃い。やはりか。悪化するのか好転するのやら。舗装林道は濡れて滑る。クネクネ林道だ。しばらくして、地形図に照らして、石段のあるところからショートカットを試みた。かすかな踏み跡があった。大失敗をした。滑る、急、濡れるの3拍子。上の林道に辿り着いた時には、ズボンが汚れ、靴の中はビショビショ。手には泥が付き、さらに、汗だくになっていた。時間も余計にかかってしまったようだ。今日は、ショートカットを二度とするまい。しかし、汗をかいたのはつらかった。無風の中、その後もしばらくは汗がひかなかった。むしろ、これを機に身体が熱くなってしまい、汗を垂らす状態になってしまった。
(鳥居)

(鳥居の先には石祠)

林道の左手に、古ぼけて傾いだ鳥居が目に付いた。その奥に石祠。林道が整備される前から道があったのだろう。石祠の文字は読めない。鳥居の左側に赤テープが目に付いた。大方、ショートカットルートへの誘いか旧道だろうが、もう無視する。ササにはたっぷりと露が付いている。林道に戻ろうとしたら、平たい石で滑り、危うく転びかけた。今日は石の上、気を付けないと。
下から、軽ワゴンが上がって来た。追い抜きざまに、どこに行くのか聞かれた。ただのヒマつぶしからだろう。作業衣を来ている2人組。大事沢か野門沢の工事関係者だろうか。ところで、さっき、国有林の看板を見かけたが、それには「富士見山国有林」とあった。富士見山とはどのピークだろう。工事の残材置き場を通過。傍らに仮設トイレがあり、「一般の方もご利用ください」とあった。今は別に用事はない。今日は大谷PAで処理済だ。
(布引の滝の展望台だろう)

(林道の終点広場)

観瀑台らしき展望台があって、行ってみたが、先は真っ白で何も見えない。沢音がかすかに聞こえるだけ。空がほんの一角、青くなっている。良い兆しならいいが。林道の終点に到着。さっきの車が1台。ベンチもある。滝の説明版を読む。3段128m。以前は「三段の滝」と言われていたそうだ。布を引いたように見えるため「布引の滝」。昨年の夏、神戸に出張に行った際、新神戸の駅から近いところにある「布引の滝」を散歩がてら見に行ったが、確かに、あの滝も布を引いたような風情ではあった。これなら、大方の滝は布引であろう。もっと厳めしい名称でも付ければよかったのにと思う。
(遊歩道。この状態が富士見峠まで続いているようだ)

(布引の滝への分岐)

(滝がかすかに見える)

しばらく休んでスパッツを付ける。手拭いは汗でぐっしょり、さらに泥が付いた。タオルに替える。富士見峠に向かう道に入る。「布引の滝遊歩道」となっている。余談だが、富士見峠とは、富士山が見えるところからの所以だろうが、果たして、周囲は樹林で、展望はまったくなかった。昔は見えたのだろう。それにしても、しっかりした道だ。しかも滝分岐までは少なくとも整備されている。ぶなじろうさんの記載では、この状態が峠まで続くらしい。倒木が一か所邪魔をする。クネクネと登って滝分岐。ここからは滝方面、下り一辺倒のはず。今度は滝がはっきりと見えた。青空ではないが、その奥に高い山が見える。とんがりオッパイ型からして、あれは女峰山か。雪田爺さんのコメントによれば、正午過ぎになると、滝の上に太陽が昇ってまぶしいらしい。苦戦しても、そんな時間に滝にたどり着く事態にはなるまい。
(「遊歩道」は、流れのある沢を2本、涸沢を1本渡る)

(ベンチが数基。ここからが核心部)

(なかなかの地衣類の世界)

(下に小滝が見えてくる。沢も間近)

足幅に合わない階段を下る。一時、流行って整備をしたはいいが、後はそのままといった感じ。木の上も足元も滑る。用心して下る。右から下ってくる沢を渡る。随分と下っているが、ここの下りはさほどのいやらしさはない。ちょっとした平坦があったり、登りも加わったりする。また小沢を渡る。一面が苔の世界だ。こういう世界になるまでには年季が要るものだ。原生林の中の歩きが続く。
休憩スポットを通過。ベンチがある。使うハイカーはいるだろうか。沢に近づくに連れ、踏み跡が不明瞭になってきた。先を見れば、何となくわかるといったレベル。テープもところどころにある。霧に巻かれたら迷うかもしれない。沢も近いし、クマが出てきそうな感じがする。目の前に残骸ワイヤーが渡してある。このワイヤー、どこに続いているのだろう。左下に小ぶりの滝が見えてきた。
(沢に降りた)

(奥に布引の滝の上部が見える)

(前衛の滝)

沢の先に布引の滝の上部が見えた。その下は、まだ緑が深い沢筋のようだ。ロープが張られていて、一気に沢に下りる。さっき見えた小滝の上に着地。高度計を見て引き算をすると、遊歩道の滝分岐から170m下った。布引滝の上部はここからでもまだ見える。大石がゴロゴロした沢を登る。確か、この先で前衛の滝が立ちふさがるはず。と、出てきた。布引の滝はこれで一旦、隠れた。右手には、さっきのワイヤーの続きと滑車。ここが終点らしい。何を運んだものだろうか。それはさておき、この前衛の滝もなかなかのものだ。雪田爺さんによると、10m滝。勢いがある。
(前衛の滝の巻き道)

さて、この滝を巻かないと本望を遂げられない。ロープがあるはず。右手の斜面に垂れていた。このロープ、ネットで見ると、すこぶる評判が悪く、腐りかけたとか、古いといった形容がつく。水場近くのロープはこんなものだろう。自然に湿気も帯びる。乾燥しているよりはマシ。気になるなら頼らなければいいだけのことだが、登ってトラバースする斜面は土もヌルヌルで滑るし、足場が悪い。つい頼ってしまうが、頼りきっても問題はない。さほどの急斜面ではない。トラバース部分も意外と安定している。とはいっても、やはり怖い。どうしても千鳥足になる。滝の全容が見えたところで沢に下る。ここにもロープがある。
(そしてついに布引の滝が現れる)

(雲の隙間から差し込む光を浴びている滝を意識して撮ったりなんかして)

(対岸から眺めると、二段目から三段目にかけて屈曲しているのが分かる)

すごい滝だ。見上げる。嘆息して感嘆した。ガスがまたかかってきて、上部がしかと確認できないが、かすかに見える。確かに三段。しばらく眺めていたら、雲の間から陽がかざして来た。どうもこの時期、滝の上に太陽がくるのは、正午どころか10時過ぎのようだ。晴れていたら撮影もきつかったかも。もっとも、こちらは、バカチョンのデジカメだし、撮れればいい口だから、画像にこだわりはない。沢を危なっかしく渡って、対岸からも眺めた。どういう言葉使いをするのか知らないが、滝の左股というのか右岸というのか、そちらを登攀できないこともないような気がする。これは素人判断で、あくまでもしっかりしたロープが垂れているのが前提。登れと言われたらお断りする。右側の斜面を大きく高巻きして上まで出たとして、そのまますんなりと帝釈山、もしくは女峰山に至ると思えない。ゲジゲジマークが続いている。
(そして滝壺。不思議に水のしぶきがかかってこない)

勢いのある滝だ。滝壺もさぞ深いだろうと思ったが、それほどでもない。これを確認して戻ることにした。滝見は素人だ。数もこなしていない。他の滝との比較なんかできるわけもない。ヘタな感想はやめておこう。
前衛の滝を越える。持参ロープもあったが、何とか使わずに戻れた。沢に下りるとびっくりした。カメラマン氏がいらっしゃる。前衛の滝を撮っていた。カメラ2台と三脚。自分が布引の滝の方から下りて来たものだから、彼も驚いたみたい。「布引の滝に行かないのですか?」と聞くと、行けるのかどうか戸惑っていらっしゃったみたい。ロープ伝いに行けば大丈夫と教えたが、その後、行ったのやら。少なくとも、自分の甘言にその気にはなっていた。ただ、あの重そうな機材ではどうだろうか。
(霧も濃くなってきた)

(もうだれにも会わない。ふだんでも滅多にハイカーは来ないだろう)

沢から上がると、霧がますます濃くなっていた。これでは、布引の滝の上部が隠れてしまうのも時間の問題だ。原生林の中も、じっくりと踏み跡を探しながら歩かないと、たちまちのうちに迷ってしまう。ベンチに着いてほっとした。ここからは濃霧でも明瞭。
(山の神)

(子育て地蔵の石祠)

(中に地蔵さん。ケーキか菓子パンでも食べているように見えなくもない)

滝分岐に戻ってきた。雨が降ってきそうだ。富士見峠方面に「山の神」と「子育て地蔵」があるらしい。せめて、これだけでも拝んでおこうか。まだしっかりした道が続いていた。ほどなく山の神に出会い、ちょっと先に行くと石祠があった。下に案内板があったが、字は消えている。中を覗くと、地蔵さんがいらした。林道で見た鳥居、山の神、この地蔵さんと、この辺に古道があったわけだ。地蔵さんのところから尾根が張り出していた。そこに赤のテープが垂れている。地形図で見る限り、そのまま帝釈山に連なって行く尾根だ。古道は帝釈山に向かったのか、あるいは今の道のままに富士見峠に向かったのか…。
(林道終点)

(駐車地に戻る。律儀にここに駐車している車が1台)

林道終点には、カメラマン氏の軽もちゃっかりと乗り入れていた。何と群馬ナンバー。下に車を置いたことにより、往復2時間の余計歩きをしている。ここに置いていたら、滝を見て、さらに富士見峠までの欲張り歩きもできたであろう。林道を歩いていると、とうとう雨が降り出した。傘を出そうとしたが、大した雨でもないし、むしろ心地よいくらいだ。帽子をぬいでタオルで頬かむりをする。
(蛇王の滝)

(付録。霧降高原最高地点付近で。運転席から。それでも下の高原は車が混んでいた)

着替えを済ませて、車でタバコを吸っていると、脇をカメラマン氏の車が出て行った。布引の滝は撮れたろうか。
帰りがけ、「蛇王の滝歩道」の道標を目にし、傘を持って河原に下りる。これもまたすごい滝なのだが、山中を歩いて見に行った滝とは、やはり感慨も違う。
遊歩道入口脇の食堂でソバを食べ、帰路に着く。高い舞茸ソバであった。今日は無駄な出費が多かった。ナビを金のかからない条件でセットしたら、霧降高原経由で走らされた。フォグランプを点けて走る始末であった。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
林道ゲート(7:00)……林道終点(8:02~8:08)……滝入口(8:25)……前衛の滝(9:10)……布引の滝(9:25~9:55)……滝入口(10:53)……子育て地蔵(11:07)……林道終点(11:24)……林道ゲート(12:16)
先日、桃洞の滝に行ってから、滝見も趣向になりつつある。どこか、また、見どころのある滝に行きたい。そんな折、ぶなじろうさんが先週、女峰山を裏から歩かれた記事を拝見した。なかなか、興味をそそられるルートだったが、その記事に、布引の滝が触れられてあった。調べると、落差128mのなかなかの滝のようで、雪田爺さんが「栃木の自薦10選」に入れられていた。富士見峠は後回しにして、布引の滝に行ってこようか。両方、せめて帝釈山くらいまでは行きたいが、体力的に無理なお話。まして、長時間の好天を期待はできない。今回は布引の滝にしぼろう。
(一般車はここまで。この先まで行きたい場合はロープゲートを外す)

土日ともに4時に目が覚めた。昨日は、どうも身体が不調のようで、寝なおした。今日になった。いずれであっても、北関東の山間部の天気ははっきりしない。雨は覚悟している。野門まで自宅から高速利用で2時間半もかかった。ナビを「家康の湯」にセットして、そのまま行ったのだが、今市を抜けてから、わけのわからない有料道路を2か所も通らされ、無駄遣いをしてしまった。途中、蛇王の滝をちらっと見る。帰りに寄ろう。家康の湯の入口を通り過ぎ、5分もかからずに林道ゲート。
ゲートとはいっても、ロープが渡されただけの代物で、よく見ると、端の金具がフックになっていて、簡単に外れる。このまま突っ切ることも考えたが、ぶなじろうさんの言うところの倫理観がちらついた。また、よそ者の群馬ナンバーが無益なトラブルを起こしても仕方あるまい。今日は滝見だけだし、テクテク歩きで行こう。ゲート前の路肩に駐車して出発。
(階段があったのでショートカットをする。いきなりヤブ登りになった)

霧が濃い。やはりか。悪化するのか好転するのやら。舗装林道は濡れて滑る。クネクネ林道だ。しばらくして、地形図に照らして、石段のあるところからショートカットを試みた。かすかな踏み跡があった。大失敗をした。滑る、急、濡れるの3拍子。上の林道に辿り着いた時には、ズボンが汚れ、靴の中はビショビショ。手には泥が付き、さらに、汗だくになっていた。時間も余計にかかってしまったようだ。今日は、ショートカットを二度とするまい。しかし、汗をかいたのはつらかった。無風の中、その後もしばらくは汗がひかなかった。むしろ、これを機に身体が熱くなってしまい、汗を垂らす状態になってしまった。
(鳥居)

(鳥居の先には石祠)

林道の左手に、古ぼけて傾いだ鳥居が目に付いた。その奥に石祠。林道が整備される前から道があったのだろう。石祠の文字は読めない。鳥居の左側に赤テープが目に付いた。大方、ショートカットルートへの誘いか旧道だろうが、もう無視する。ササにはたっぷりと露が付いている。林道に戻ろうとしたら、平たい石で滑り、危うく転びかけた。今日は石の上、気を付けないと。
下から、軽ワゴンが上がって来た。追い抜きざまに、どこに行くのか聞かれた。ただのヒマつぶしからだろう。作業衣を来ている2人組。大事沢か野門沢の工事関係者だろうか。ところで、さっき、国有林の看板を見かけたが、それには「富士見山国有林」とあった。富士見山とはどのピークだろう。工事の残材置き場を通過。傍らに仮設トイレがあり、「一般の方もご利用ください」とあった。今は別に用事はない。今日は大谷PAで処理済だ。
(布引の滝の展望台だろう)

(林道の終点広場)

観瀑台らしき展望台があって、行ってみたが、先は真っ白で何も見えない。沢音がかすかに聞こえるだけ。空がほんの一角、青くなっている。良い兆しならいいが。林道の終点に到着。さっきの車が1台。ベンチもある。滝の説明版を読む。3段128m。以前は「三段の滝」と言われていたそうだ。布を引いたように見えるため「布引の滝」。昨年の夏、神戸に出張に行った際、新神戸の駅から近いところにある「布引の滝」を散歩がてら見に行ったが、確かに、あの滝も布を引いたような風情ではあった。これなら、大方の滝は布引であろう。もっと厳めしい名称でも付ければよかったのにと思う。
(遊歩道。この状態が富士見峠まで続いているようだ)

(布引の滝への分岐)

(滝がかすかに見える)

しばらく休んでスパッツを付ける。手拭いは汗でぐっしょり、さらに泥が付いた。タオルに替える。富士見峠に向かう道に入る。「布引の滝遊歩道」となっている。余談だが、富士見峠とは、富士山が見えるところからの所以だろうが、果たして、周囲は樹林で、展望はまったくなかった。昔は見えたのだろう。それにしても、しっかりした道だ。しかも滝分岐までは少なくとも整備されている。ぶなじろうさんの記載では、この状態が峠まで続くらしい。倒木が一か所邪魔をする。クネクネと登って滝分岐。ここからは滝方面、下り一辺倒のはず。今度は滝がはっきりと見えた。青空ではないが、その奥に高い山が見える。とんがりオッパイ型からして、あれは女峰山か。雪田爺さんのコメントによれば、正午過ぎになると、滝の上に太陽が昇ってまぶしいらしい。苦戦しても、そんな時間に滝にたどり着く事態にはなるまい。
(「遊歩道」は、流れのある沢を2本、涸沢を1本渡る)

(ベンチが数基。ここからが核心部)

(なかなかの地衣類の世界)

(下に小滝が見えてくる。沢も間近)

足幅に合わない階段を下る。一時、流行って整備をしたはいいが、後はそのままといった感じ。木の上も足元も滑る。用心して下る。右から下ってくる沢を渡る。随分と下っているが、ここの下りはさほどのいやらしさはない。ちょっとした平坦があったり、登りも加わったりする。また小沢を渡る。一面が苔の世界だ。こういう世界になるまでには年季が要るものだ。原生林の中の歩きが続く。
休憩スポットを通過。ベンチがある。使うハイカーはいるだろうか。沢に近づくに連れ、踏み跡が不明瞭になってきた。先を見れば、何となくわかるといったレベル。テープもところどころにある。霧に巻かれたら迷うかもしれない。沢も近いし、クマが出てきそうな感じがする。目の前に残骸ワイヤーが渡してある。このワイヤー、どこに続いているのだろう。左下に小ぶりの滝が見えてきた。
(沢に降りた)

(奥に布引の滝の上部が見える)

(前衛の滝)

沢の先に布引の滝の上部が見えた。その下は、まだ緑が深い沢筋のようだ。ロープが張られていて、一気に沢に下りる。さっき見えた小滝の上に着地。高度計を見て引き算をすると、遊歩道の滝分岐から170m下った。布引滝の上部はここからでもまだ見える。大石がゴロゴロした沢を登る。確か、この先で前衛の滝が立ちふさがるはず。と、出てきた。布引の滝はこれで一旦、隠れた。右手には、さっきのワイヤーの続きと滑車。ここが終点らしい。何を運んだものだろうか。それはさておき、この前衛の滝もなかなかのものだ。雪田爺さんによると、10m滝。勢いがある。
(前衛の滝の巻き道)

さて、この滝を巻かないと本望を遂げられない。ロープがあるはず。右手の斜面に垂れていた。このロープ、ネットで見ると、すこぶる評判が悪く、腐りかけたとか、古いといった形容がつく。水場近くのロープはこんなものだろう。自然に湿気も帯びる。乾燥しているよりはマシ。気になるなら頼らなければいいだけのことだが、登ってトラバースする斜面は土もヌルヌルで滑るし、足場が悪い。つい頼ってしまうが、頼りきっても問題はない。さほどの急斜面ではない。トラバース部分も意外と安定している。とはいっても、やはり怖い。どうしても千鳥足になる。滝の全容が見えたところで沢に下る。ここにもロープがある。
(そしてついに布引の滝が現れる)

(雲の隙間から差し込む光を浴びている滝を意識して撮ったりなんかして)

(対岸から眺めると、二段目から三段目にかけて屈曲しているのが分かる)

すごい滝だ。見上げる。嘆息して感嘆した。ガスがまたかかってきて、上部がしかと確認できないが、かすかに見える。確かに三段。しばらく眺めていたら、雲の間から陽がかざして来た。どうもこの時期、滝の上に太陽がくるのは、正午どころか10時過ぎのようだ。晴れていたら撮影もきつかったかも。もっとも、こちらは、バカチョンのデジカメだし、撮れればいい口だから、画像にこだわりはない。沢を危なっかしく渡って、対岸からも眺めた。どういう言葉使いをするのか知らないが、滝の左股というのか右岸というのか、そちらを登攀できないこともないような気がする。これは素人判断で、あくまでもしっかりしたロープが垂れているのが前提。登れと言われたらお断りする。右側の斜面を大きく高巻きして上まで出たとして、そのまますんなりと帝釈山、もしくは女峰山に至ると思えない。ゲジゲジマークが続いている。
(そして滝壺。不思議に水のしぶきがかかってこない)

勢いのある滝だ。滝壺もさぞ深いだろうと思ったが、それほどでもない。これを確認して戻ることにした。滝見は素人だ。数もこなしていない。他の滝との比較なんかできるわけもない。ヘタな感想はやめておこう。
前衛の滝を越える。持参ロープもあったが、何とか使わずに戻れた。沢に下りるとびっくりした。カメラマン氏がいらっしゃる。前衛の滝を撮っていた。カメラ2台と三脚。自分が布引の滝の方から下りて来たものだから、彼も驚いたみたい。「布引の滝に行かないのですか?」と聞くと、行けるのかどうか戸惑っていらっしゃったみたい。ロープ伝いに行けば大丈夫と教えたが、その後、行ったのやら。少なくとも、自分の甘言にその気にはなっていた。ただ、あの重そうな機材ではどうだろうか。
(霧も濃くなってきた)

(もうだれにも会わない。ふだんでも滅多にハイカーは来ないだろう)

沢から上がると、霧がますます濃くなっていた。これでは、布引の滝の上部が隠れてしまうのも時間の問題だ。原生林の中も、じっくりと踏み跡を探しながら歩かないと、たちまちのうちに迷ってしまう。ベンチに着いてほっとした。ここからは濃霧でも明瞭。
(山の神)

(子育て地蔵の石祠)

(中に地蔵さん。ケーキか菓子パンでも食べているように見えなくもない)

滝分岐に戻ってきた。雨が降ってきそうだ。富士見峠方面に「山の神」と「子育て地蔵」があるらしい。せめて、これだけでも拝んでおこうか。まだしっかりした道が続いていた。ほどなく山の神に出会い、ちょっと先に行くと石祠があった。下に案内板があったが、字は消えている。中を覗くと、地蔵さんがいらした。林道で見た鳥居、山の神、この地蔵さんと、この辺に古道があったわけだ。地蔵さんのところから尾根が張り出していた。そこに赤のテープが垂れている。地形図で見る限り、そのまま帝釈山に連なって行く尾根だ。古道は帝釈山に向かったのか、あるいは今の道のままに富士見峠に向かったのか…。
(林道終点)

(駐車地に戻る。律儀にここに駐車している車が1台)

林道終点には、カメラマン氏の軽もちゃっかりと乗り入れていた。何と群馬ナンバー。下に車を置いたことにより、往復2時間の余計歩きをしている。ここに置いていたら、滝を見て、さらに富士見峠までの欲張り歩きもできたであろう。林道を歩いていると、とうとう雨が降り出した。傘を出そうとしたが、大した雨でもないし、むしろ心地よいくらいだ。帽子をぬいでタオルで頬かむりをする。
(蛇王の滝)

(付録。霧降高原最高地点付近で。運転席から。それでも下の高原は車が混んでいた)

着替えを済ませて、車でタバコを吸っていると、脇をカメラマン氏の車が出て行った。布引の滝は撮れたろうか。
帰りがけ、「蛇王の滝歩道」の道標を目にし、傘を持って河原に下りる。これもまたすごい滝なのだが、山中を歩いて見に行った滝とは、やはり感慨も違う。
遊歩道入口脇の食堂でソバを食べ、帰路に着く。高い舞茸ソバであった。今日は無駄な出費が多かった。ナビを金のかからない条件でセットしたら、霧降高原経由で走らされた。フォグランプを点けて走る始末であった。
(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
布引滝の写真の数々迫力ありですね、あんな写真を撮ってみたい。
先日のぶなじろうさんの記事で、かなり刺激されましたが、今回のたそがれさんの記事で、女峰北側への興味が決定的となりました。あんなにいろいろあるんですね。近くに住んでいて全く知りませんでした。
今後、私も遅ればせながら、この山域に進出してみたいと思いました。
進出なんて、大げさなものでもないでしょう。合併はすれど同じ町内でしょうに。
滝の写真のお褒め、ありがとうございます。あれは、デジカメが撮ったもので、私が撮ったものではありません。傾向として、花やら沢趣向の方は画像にもこだわりがあって、重いカメラを持って歩く形になり、さぞ大変でしょうね。私は、いずれの趣向にもなく、バカチョン様様ですよ。
ななさんは、この布引の滝、見たことないんですか?いい滝です。お薦めですが、ななさんには、帝釈山までの直登を期待しますよ。
布引の滝は、06年7月に林道終点から尾根通しで帝釈山に登った時に、遠くから見ただけです。傍から見るとかなり迫力がありますね。
富士見峠への破線道を往復するよりは、往路は尾根通しで帝釈山に登るのを推奨します。尾根上にはかなり踏跡があり、藪は少ないです。帝釈山直下に薙がありますが、簡単に横断できました。富士見峠からの破線道は、何箇所かで崩落していた記憶がありますが、迷うことなく歩くことができます。
別にはまったわけではないけど、たまには滝見もいいでしょう。私の場合、山歩きとセットになっているような滝にしか、興味はありませんから。
安の滝、いずれは見に行くつもりでいます。周囲の方々が、いろいろと誘うものですから。
桃洞の滝に行った際、森吉山を眺めましたが、雪はありましたね。そんな中、花は満開でしたか。見てみたいものです。
帝釈山の記事は拝見したことがあります。あれから7年ですか。まだしっかりした踏み跡のままであることを期待します。実は、破線路よりも、その尾根直登に興味があって、いずれは行かなきゃと思っています。
布引の滝は、天気と相談した結果でもありますが、富士見峠方面に行かれる方のほとんどが、滝を遠望しただけで終わっているので、間近に見てみたいといったところから気まぐれ的に行きましたが、あれだけの迫力のある滝、なかなかないですよ。
布引の滝を下から見上げた写真、素晴らしい迫力ですね。私もこの滝は、野門沢を下から遡行して来て、同じアングルで眺めたことがあります。もう数十年も前なのですが、空から水が落ちて来るような凄い滝で、今でも強く印象に残っています。布引の滝は右側から巻いたのですが、落口まで1時間もかかりました。上流は源流の雰囲気のある穏やかな沢ですが、女峰山の頂上まで標高差があり、最後は鹿道頼りの森林帯の藪漕ぎで、なかなかきつかったです。
非常に懐かしい場所の写真、ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
実は、布引の滝を見に行くに際して、野門沢を下から詰めてみようかなと思ったのですが、堰堤が結構あるようだし、また、ネット情報も当たり障りのないのを一件見かけただけで、まったくの情報不足でやめました。でも、素人の領域ではなかったと思います。
滝を巻くのは、やはり、かなりの労苦が強いられるようですね。あの切り立った状態ではそうでしょう。かなりの高巻きになるのではないでしょうか。
女峰山に行くにしても、そりゃ、かなりのものでしょう。尾根にでもすぐに出られればともかく、そういった地形ではないようですからね。それにしても、数十年前とはいえ、あにねこさんも、よくやられましたね。感服いたします。
近くに寄ると、すごいもんですねぇ~。圧倒される感じです。
そして、皆様のコメントもすさまじく、圧倒されてしまいました。私ごときが遊べる山域ではなさそうです。
このたびは、ぶなじろうさんの記事で布引の滝に行ってまいりました。ぶなじろうさんの記事がなければ、裏の世界に興味を持つこともなかったでしょう。感謝です。
ななころびさんではないですが、栗山側からの日光連山に、少々、開眼いたしております。
さて、布引の滝の件、さもあらんです。結構、遊べます。「遊歩道」は、無責任にも途中からうっちゃられた感じになってしまいますが、踏み跡もしっかりで、沢も、巻きも危険ではありません。
本当に、すごい滝です。機会がありましたら、ぶなじろうさんも間近に見てみてくださ。