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アニメ及び周辺文化に関する雑感

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宮川泰『ヤマト』音楽の思い出(1)

2006年03月25日 | 雑記
 『宇宙戦艦ヤマト』の音楽を手掛けられた宮川泰先生がお亡くなりになられました。先月、伊福部先生の訃報を耳にしたばかりですが、ジャンルは違うとはいえ、あすかの人生に大きな影響を与えてくれた2人の偉大なる音楽家が相次いでこの世を去ったことは悲しみにたえません。
 もっとも、伊福部先生のようにその手掛けられた作品すべてを追っ掛けの対象としてるわけではなく、宮川先生の場合は『宇宙戦艦ヤマト』とその周辺に限られてしまうわけですけど、『ヤマト』で劇伴音楽に目覚めた身としては、それが無ければ伊福部先生の作品との出会いも無かったと思うと、その影響力の大きさは計り知れません。
(以下、敬称略)

1.『宇宙戦艦ヤマト』の音楽

 初めて『ヤマト』の音楽に出会った時のこと、そのインパクト、『ヤマト』の音楽が日本のアニメ界に与えた影響などは以前にニフティで書いてた『アニメ音楽年代記』の連載記事の最初に触れているのでそちらを参照……とか言ってもすでに参照する先がありませんね。(いずれどこかで連載再開&旧記事の再掲載をやろうかとは思ってるのですが、貧乏暇なしで現在のところ手が付けられません)
 仕方が無いので内容が重複するだろうけど、書いておきます。

 あすかの場合、初めてアニメについてる劇伴音楽というものに意識が向いたのが『宇宙戦艦ヤマト』だったわけです。
 そりゃ最初から劇伴に目が向いたわけではありません。最初はオーソドックスに主題歌がカッコイイというところから音楽に関心が向くわけですが、本放送当時は家庭用のビデオなんてものもなく家に1台しかないテレビで『ヤマト』が見られたのは僅か数本。本格的に見たのは再放送からです。
 『ヤマト』の主題歌というのは、シリーズの最初はスローテンポのコーラスから始まる形で、現在のイントロ付きでアップテンポに始まるバージョンは途中から変わったわけですけど、そのイントロがめちゃくちゃカッコよく思えて、ヤマトの歌はイントロから歌う(もちろん当時はカラオケなんてものは存在しないからアカペラオンリーですが)というのが当たり前になっていました。
 そんな中で小学生の僅かな小遣いをはたいて買った『ヤマト』のレコード。当時は本放送から何年か経っていてので売っていたのは33回転盤でA面に主題歌2曲、B面にドラマ入りというものでしたが、それを聴き込んでいました。
 で、それに飽きた頃、『ヤマト』のLPレコードを買ったわけですが、当時はアニメのサントラ盤なんて売られているわけもなく、これは『ヤマト』の全26話のストーリーをLP1枚に収めたというめちゃくちゃダイジェストなドラマ編でした。当時ビデオも何も無い時代でしたから、アニメを手元に保存して楽しむというのはこういったドラマ編のアルバムを聴くか、あるいはまだ高価だったカセットテープにテレビの音声を録音するか、あるいはテレビの画面そのものをカメラで撮影するとかいう以外にはありませんでした。いわゆるアニメのムック本も『ヤマト』の劇場版の後に出たロマンアルバムが最初でしたからね。
 当時の児童向けレコードは物品税(いわゆる贅沢品に掛けられた税金。消費税導入時に廃止)が掛からなかったとは言え、物価から考えればそれなりに高い買物でしたが、それでも録音用のカセットテープを全話分揃えるとか、テレビ画面を録った写真を毎回プリントに出すとかのコストを考えたら、相対的には手頃だったかと思います。
 ところが、このアルバム、実は相当な曲者で、物語がダイジェストなのは仕方が無いにしても、アニメの名場面をそのまま集めて収録した物ではなく、むしろ名音楽場面集って感じでドラマを劇伴で繋いで再構成したって感じで、音楽的にどうでもいいようなところは重要なところでもナレーションで割愛されてるとかいう感じのアルバムだったわけですね。
 当時は他に繰り返し『ヤマト』を楽しむというメディアがありませんから、このアルバムばかりを繰り返し聴くことになりますが、そうするとドラマ編を聴いてるつもりでも頭の中に刻まれていくのは劇伴の印象ばかり。そんな風に『ヤマト』の劇伴はファンの心に植えつけられて行ったのです。

2.『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』

 そんな感じで『ヤマト』の劇伴が染み付いてくると、今度は純粋に(セリフやSEの入っていない)劇伴だけを聴きたいという欲求が出てきます。そんな中で発売されたのが『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』というアルバムでした。
 宮川泰という作曲家は、レコーディングが終われば楽譜はポイポイ捨ててしまう人だったようで、『ヤマト』のブームで再び楽譜を使いたいということになったときに困ったらしいです。で、仕方なく作曲家本人が以前の録音を聴いて耳コピしたとか……
 そんな苦労もされて新たにレコーディングされたアルバムがこの『交響組曲』ですが、これはいわゆるシンフォニー・アレンジ・アルバムの奔りであって、ファンが望んでいた劇伴そのままを収録したアルバムとは似ても似つかないものでした。ま、作り手としてはあくまで映像作品に付加するために作った劇伴そのものより、最初から聴き手を意識した純粋な音楽作品として出した方が親切だと考えたのかもしれませんが、コアなファンにとっては欲求が満たされたアルバムではなかったですね。
 本来はピアノ伴奏付きで奏でられる「無限に広がる大宇宙」はスキャットとストリングスを主体にした「序曲」に作りかえられてるし、雄雄しいヤマトの旅立ちを告げる「地球を飛び立つヤマト」は後半のカノンがしつこい「出発」に成り代わってるし。ヤマトの浮上やドメル艦隊の出撃シーンに使われた「艦隊終結」はどこにもはいってないし、「真赤なスカーフ」はおもいっきしアレンジされまくり……
 いや、『交響組曲』はそれ単独のアルバムとしてはやはり金字塔に輝く名盤であることには代わりは無いのですが、ファンが聴きたかったのは序曲でなく「無限に広がる大宇宙」であり、「出発」ではなく「地球を飛び立つヤマト」であり、「艦隊終結」であり、物悲しいアコースティックな「真赤なスカーフ」のテーマだったのです。

 それでも「序曲」はLPの帯に『白鳥の湖』を引き合いに出す意気込みがあるぐらい音楽としえてはうまくアレンジされていますし、「誕生」のヤマト発進へのシークエンスは後に『さらば宇宙戦艦ヤマト』や『宇宙戦艦ヤマト完結編』の発進シーンでほとんどそのまま再利用されているくらい完成度の高いものです。とくに「誕生」のクライマックスの『ヤマト』のメインテーマは、インストゥルメンタルで奏でられたメインテーマでこれに匹敵するものは他には無いくらいに素晴らしいものです。
(『ヤマト』のコンサートというとどういうわけだかいつでもご丁寧にささきいさおを呼んできてボーカル入りになってしまうんですけど、一度ぐらいはボーカル抜きで『交響組曲』のインストゥルメンタルを再現するような演奏が聴いてみたいものです)
 ま、ともあれ『交響組曲』は『交響組曲』として純粋な劇伴とは別の形で『ヤマト』の音楽の魅力をファンに知らしめてくれたことは確かです。でも、結果としてファンが純粋な劇伴をレコードで聞けるようになるのは、それから数年後まで待たなくてはなりませんでしたけど……

3.『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降

 『ヤマト』の音楽はシンフォニックだといわれるけど、それは『交響組曲』等のレコードで出た音楽集や『ヤマトよ永遠に』以降の劇伴の話で、『さらば宇宙戦艦ヤマト』までは実際に使われる劇伴はオーケストラ録音ではあるもののそれほど大編成でもなく、アレンジも比較的地味なものでした。この辺は今なら作品自体もDVD化されてるし、BGM集のCD等が出てるので容易に聞き比べられますが、当時はビデオも珍しく、シンフォニックにアレンジされたレコードしか出ていない状況ですから、レコードの音楽しか頭にないとそのイメージが固まってしまうのは致し方ありません。
 それでも『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の作品では『交響組曲』等のレコード用音楽が使われてたりしますし、後にステレオ化収録されたビデオなんかはオリジナルのモノラル版よりもその傾向が大きくなってるので、劇伴の音楽自体もスケールアップして感じられるのもけっして間違いではありません。

 『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の音楽というと、もっとも特徴的だったのは毎回、敵側のテーマが異なる音楽世界で作られていたということですね。
 『さらば宇宙戦艦ヤマト』の白色彗星帝国は荘厳なパイプオルガン。現在ではバロック音楽や宗教音楽のイメージしかなく、劇伴に使われることはあってもそういうイメージを出すための現実音楽という使用法が多かったパイプオルガンですが、それを純粋な劇伴楽器として使ってしまったのがこの作品です。もっとも、そういうパイプオルガンにまつわる古典的・宗教的な絶対権威のイメージに白色彗星帝国の権勢のイメージを仮託しようという目的であることは確かですが。そして、今では白色彗星的な絶対的強大さを示す敵を示す時の劇伴にしばしばパイプオルガン(PCM等による代替音源を含む)が使われるようになっています。
 続く暗黒星団帝国。『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』での自動惑星ゴルバに用いられたのがピアノコンチェルト。いや、暗黒星団帝国そのもののイメージにはゴルバ登場時の電子的エフェクトや、FM音源的シンセサイザーの効果を当て込んでいたようですが、音楽的に一番印象に残ってるのは中盤のピアノコンチェルトの部分なんですね。
 その次回作『ヤマトよ永遠に』で全貌を現した暗黒星団帝国は、より電子音楽的な一面を強調しています。冒頭で地球に奇襲してくる重核子爆弾、無人艦隊を破り地球を制圧した黒色第3艦隊。さらに敵母星デザリアムがその本体を現してからは音楽なのか効果音なのかも判然しないスクラッチ的なサウンドまで投入されています。
 まぁ、SFでシンセサイザー等の電子音楽というのは(往年の伊福部音楽や『ヤマト』や『スターウォーズ』以降の作品を除けば)ある意味で定番だったのですが、ここで試みられているのは電子音楽単体による表現ではなく、オーケストラとの融合でもあり対比でもあるわけです。実際、暗黒星団帝国の音楽も電子音楽だけで表現されているものは極めて少なく、多くはオーケストラによっても表現されているわけです。
 『宇宙戦艦ヤマト3』のボラー連邦はスラブ系のダンス曲をイメージさせる音楽、『宇宙戦艦ヤマト完結編』のディンギル帝国は『カルメン組曲』を髣髴させるスパニッシュ・ギターの響く音楽。ボラー連邦のスラブ音楽はその設定自体が旧ソ連をイメージした国家だからベタなイメージなんですが、ディンギル帝国のスペイン風音楽というのはメソポタミアのシュメール文明を意識した設定とは本来何の関係も無いのに、これが絶妙に決まってるのが劇伴の醍醐味です。

 宮川泰による『ヤマト』の劇伴音楽というのは、いわゆる邦画の映画音楽を担ってきた現代音楽作家の人たちが好んで用いる、そのキャラクターとか情景ごとライトモチーフを組み合わせたり、アレンジ展開させたりして重ねていく作り方よりも、個々にテーマメロディーを組み立てていくように作り上げられたものが多いんですね。
 これは宮川泰が天才的なメロディーメーカーだったことも手伝ってることは確かですが、クラシック音楽の本格的な作曲法を身に付けていなかったということによるものが大きいと思います。このことは現実に『ヤマト』の音楽の総決算ともいえる『交響曲 宇宙戦艦ヤマト』の作曲が宮川泰自身でなく、羽田健太郎の手に委ねられたことにも繋がってきます。
 つまり宮川泰はあくまでポピュラー音楽の世界の作曲家であり、それを超えるものは作り得なかったといえるでしょう。しかしながら、それだからこそ宮川泰は『ヤマト』の音楽に出来る限りの心血を注ぎ、持てるだけのメロディーを投入してくれたのでした。10年間に及ぶ『ヤマト』のための作曲活動が終わったとき、(確かかどうかはわかりませんが)宮川泰はそのメロディーの創作能力をほとんど使い果たしていたと言います。
 白色彗星のパイプオルガンも、自動惑星ゴルバのピアノコンチェルトも、ボラー連邦のスラブ音楽も、ディンギル帝国のスパニッシュ・ギターも、捻りが無いといえば捻りが無く、直球的といえば直球的で、いま聴き返してみればそのまんまのベタな作りの音楽なのですが、でも、そこに使われているメロディーは宮川泰が渾身をこめて書き上げた愛情溢れるメロディーなのです。
 こうして『ヤマト』の音楽を聴き返せば、宮川泰が『ヤマト』に携わらなかったら歌謡曲の大ヒット曲をあと何曲も生み出せたという話には信憑性があるように感じられます。

4.その他の作品

 アニメの劇伴作家としての宮川泰は『ヤマト』以外にはあまり多くの作品を手掛けていません。『ワンサくん』や『アローエンブレム グランプリの鷹』などがありますが、やはり音楽性を考えれば『オーディーン 光子帆船スターライト』が見逃せませんが、現在CDで聴くことが出来ないのは如何ともしがたいものです。
(羽田健太郎の『ハネケンランド』にも入ってなかったところを見ると、権利関係で問題があるのか、音源そのものが行方不明って可能性もありますが、ぜひともCDで復刻して欲しいものです。映画冒頭で使われてる「大航海時代」は宮川音楽のひとつの極点ともいうべき傑作ですから)

 アニメ以外といえばやはり歌謡曲での活動がメインなわけですが、この方面については詳しくないので割愛します。
 ただ、宮川泰がヒットメーカーとして認識されたきっかけが『恋のバカンス』等のザ・ピーナッツの曲だったことは見逃すことが出来ません。ザ・ピーナッツというと『モスラ』で登場する小美人役として忘れられませんが、そこで宮川泰と特撮怪獣映画の接点が出てくるわけです。
 1作目の『モスラ』で使われた「モスラの歌」は古関祐而の作品であり、2作目『モスラ対ゴジラ』で使われた「聖なる泉」と「マハラモスラ」は伊福部昭の作品ですが、3作目『三大怪獣 地球最大の決戦』で使われた「幸せを呼ぼう」が宮川泰の作品になってます。小美人も3作目になれば日本語で歌を歌ってるって感じですが、キングギドラの襲来にモスラを呼ぶシーンで効果的に使われている曲です。この映画の劇伴は言うまでもなく伊福部昭の作品ですから、奇しくも相次いで亡くなられたジャンルの違う2人の音楽家の作品が同じ映画で使われていたことで、何か感慨深いものがあります。
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