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宮川泰『ヤマト』音楽の思い出(2)

2006年03月25日 | 雑記
5.生の『ヤマト』音楽

 そんな感じで宮川泰の音楽は『ヤマト』と結び付く形で、おもにレコード媒体で親しんでいたわけですが、やはり生で聴く楽しみに勝るものはありません。
 『ヤマト』の音楽はヤマトブームの当時からイベントで生演奏される機会は(恐らく、アニメや映画の劇伴音楽としては例外的なくらいに)多かったものと思いますが、それでも年端の行かない地方のファンとしてはそんな機会に触れることはありませんでしたが……それでも当時のライブ盤が出ていて、その雰囲気を楽しむことが出来ました。
 長じてコンサートなんか気兼ねなく行けるようになった頃にはヤマトブームなんかとっくに去っていて、おそらくもう生でヤマトの音楽なんか聴くことは出来ないだろうななんて悲観的な気分になってたりしましたが。
 それが頻繁では無いにしてもたまに宮川泰の主宰するコンサートで演奏されていることを知ったのは、コンサートのために東京くんだりまで遠征するなんてことまで覚えてからの話です。

 渋谷のオーチャードホールで行われる宮川泰のコンサートで『ヤマト』の音楽が演奏されると聞いたのは90年代半ばの頃。当時は出張続きの仕事で1年の半分ぐらいは関東方面にいたから、そのついでに聴きに行くことが出来たって感じでした。
 選曲はおもに『交響組曲』から。それに「大いなる愛」とかが付いてた感じかな。演奏はレコードどおりじゃなくてコンサート用のアレンジでしたが、生演奏用としてはこれがオーソドックスな形だったのかな。
 ボーカルはささきいさおじゃなかったけど、スキャットも入った本格的なもの。「大いなる愛」にスキャットが入ったバージョンってのを聴いたのはこの時が最初だったと思います。

 90年代の後半には『ヤマト』を含む松本零士作品の音楽を奏でる『幻想軌道』と題したコンサートが2年連続で行われました。もちろん1年目のすみだトリフォニーホールも、2年目の東京芸術劇場にも行ったことはいうまでもありません。
 『ヤマト』はどちらもメインとして、優先的にプログラムが組まれてた感じでしたが、欲を言うなら選曲にもっと冒険心がほしかったところですね。いつもいつも『交響組曲』と『さらば』からの選曲じゃ、後の作品の音楽が蔑ろにされてるように思います。
 それでも、パイプオルガンの生演奏による「白色彗星」なんて、この機会じゃなければ聴けなかっただろうものを聴けたのは感激ものでした。

 2000年代に入ってからは、コロムビアから出ていた『ETERNAL EDITION』のCDシリーズの最初に出た『交響組曲 新・宇宙戦艦ヤマト』絡みの企画で行われたシークレット・ライブを聴きに行きました。これは旧・日本コロムビアの1スタで行われた名匠宮川組によるディスコアレンジ版の演奏でした。
 これは昔ポリドールから出ていたディスコアレンジアルバムに収録されていたものとは別のアレンジでしたが、客席がすぐそばだったこともあって、プレーヤーの名演が肉薄してくるような、素晴らしいライブで、オーケストラ演奏とは別の『ヤマト』の音楽の魅力を体感させてくれました。
 いまのところ『ヤマト』の音楽を生で耳にしたのはこのライブが最後であり、宮川泰の姿を拝見したのもこの時が最後になってしまいました。

 『幻想軌道』は2回ともそれぞれライブ盤CDが出ているので、その演奏の空気を味わえるかと思います。最後のシークレット・ライブの演奏は、後に『ETERNAL EDITION』の全巻購入者特典の抽選で何枚か配布された非売品CDに何曲か収録されているのですが、それこそ激レアなアイテムなので一般には簡単に聴けないのが残念に思います。

6.最後に

 先月亡くなられた伊福部昭の特撮映画音楽は『SF交響ファンタジー』として作曲者自らの手でまとめられたものがあり、この曲は1983年の初演以来、数多くの楽団で繰り返し演奏され、日本のオーケストラコンサートでも馴染みの深い定番ナンバーとなっています。
 それに比べると『ヤマト』の音楽というのは主題歌そのものの演奏を別にすれば、劇伴音楽を元にした演奏というのは宮川泰あるいは宮川彬良の主宰するコンサートであったり、何か特別なイベントでしか演奏されないという特殊な存在になっています。
 思うに、何かというとささきいさおのボーカルなり、川島和子のスキャットなり、羽田健太郎のピアノなり……その都度、その都度、特定の演奏家の存在を前提にしたアレンジが繰り返されていて、演奏家を選ばない、通常の構成ならどんな楽団でも演奏できる、そういう一般演奏を前提にした形にまとめられたものが存在しないわけですね。
 ま、伊福部昭のようにクラシック音楽界の大家として内外に評価されている作曲家の作品でもなければ、何かと右翼の街宣車が流しまわっていて、作品の素材そのものからして右翼的あるいは戦争的なイメージがあるところが敬遠されてたり、日本ではまだまだポップスオーケストラのコンサートというものがクラシックのコンサートと比べて市民権を得ていないとか様々な事情がありますから、今すぐ頻繁に演奏される作品になることは無いでしょうけど、ふと親しみのある音楽が演奏したいとか、アンコールに1曲とか普通のオーケストラが手軽に演奏できる作品として残るものがあってほしいです。
 10周年の記念に後世に残るようなものをと言って作っても、結局は一度演奏したらお蔵入りの『交響曲』のような下手に音楽的完成度の高いものよりも、もっとシンプルで手軽に演奏される曲を何曲がシリーズでまとめたもの、まぁ伊福部昭の『SF交響ファンタジー』が見本ですけど、ああいう形でいつまでも演奏され続ける曲にまとめたものがほしいですね。
 『交響組曲』の「序曲」と「誕生」の組み合わせってのもそんなイメージに近いものがありますけど、コンサート等ではこの2曲が途中でくっつけられたものがよく演奏されていますが、川島和子のスキャットとかささきいさおのボーカルに拘ってるあたりがダメなんで(いや、オリジナルの形で演奏することの価値はそれはそれでありますけど、そんなことに拘ってたら演奏できる機会なんて無くなってしまいますから)、これをオーケストラのインストゥルメンタルだけで演奏できる形にしたものでもスコアとして出版して広く演奏されるようになると良いんですけど……

 ……

 『ヤマト』の宮川泰の音楽というのは例えシンフォニーと呼ばれることがあっても、それはクラシック的な音楽の作りとは違う、あくまでもメロディーを中心にしたポピュラー音楽の範疇に入るものでした。
 しかし、プロデューサーの西崎義展の意向もあってのことか『交響組曲』以降はクラシック的なイメージの志向を持った音楽として(少なくともサントラ盤として発売されたアルバムは)作られていたことは確かであり、それは学校の音楽の授業なんかよりもずっと効果的に本物のクラシック音楽への関心をファンに呼び寄せてくれました。
 もっとも、あすか自身は『ヤマト』以外のアニメや特撮の劇伴音楽への関心の方がそれを上回ってしまい、その挙句の果てに伊福部昭の音楽に傾倒してしまうまでに至ったわけですから、けっして素直なファンだったとは言えないでしょうけど、『ヤマト』の音楽無くして今の自分が無いのは間違いありません。

 アニメ作品が作られたらサントラ盤が商品化されるというのも『ヤマト』の音楽の成功があってこそ定着したものであり、これが無ければ世の中の音楽はずいぶん寂しいものになっていたかも知れません。
 あの特撮映画音楽から始まる伊福部音楽の再評価も、そんな流れの中で商品化されたレコードがきっかけであるわけだから、『ヤマト』が無ければそっちの方だってずいぶん今とは事情が違ってきたはずです。
 世間一般では宮川泰の代表作が『宇宙戦艦ヤマト』だと言っても、まず主題歌しか意識しないものなんでしょうけど、主題歌がヒットしてもそれは単なるヒット曲が1つ生まれただけに過ぎません。本当に大きな影響力を与えたのは劇伴音楽の世界なんですね。
 『ヤマト』の音楽的成功が示したのは劇伴音楽そのものがファンが作品を楽しむ上での有効なアイテムであり、それが商品として売れること。そして商品として売るからにはそれなりのクォリティが求められるということです。アニメのサントラ盤というそれ以前にはけっして考えられなかった商品が『ヤマト』の後では当たり前のものになってしまったのです。
 現在、多くの才能あふれる作曲家がアニメの劇伴を手掛け、その大半がサントラ盤として発売され手軽に楽しめることが出来ますが、それはすべて『ヤマト』の音楽的成功から始まったことです。その影響力を思うと、宮川泰という音楽家の偉大さを深く感じざるを得ません。

交響曲 宇宙戦艦ヤマト COBC-4425
交響曲 宇宙戦艦ヤマト COBC-4425

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