南斗屋のブログ

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懲罰的賠償

2006年11月28日 | 交通事故民事
 四国新聞社のホームページで、被害者側が交通事故で111億円の損害賠償請求をしたという記事が載っていました(末尾に記事を一部引用しています)。

 このケースは、 国内で交通事故に遭った米国人女性が富士火災海上保険などに対し、懲罰的賠償を含む約111億円の賠償を求める訴訟を米国ニューメキシコ州の連邦地裁に起こしたというもの。

 日本では交通事故で認められた損害賠償の最高額は4億円を下回っていますので、まさにけた外れの請求額です。

 このような巨額な請求となったのは、アメリカの制度である
  「懲罰的賠償」制度。
 これは、加害者の悪質性がはなはだしいときに、将来の加害行為を抑止するため賠償金を課すというものです。

 アメリカの大手製薬会社に対して、同社の薬の副作用で死亡した男性の遺族が、起こした損害賠償請求で
 遺族の精神的苦痛や経済的損失に対する損害賠償
             =2400万ドル(1ドル110円として、26億4000万円)
 懲罰的賠償金 2億2900万ドル(251億9000万円)
をアメリカの裁判所が認めたことがあります。

 日本の慰謝料算定額とはけた外れの金額です。
 なお、日本の民事上は、懲罰的賠償制度は導入されておりません。
 また、アメリカで懲罰的賠償の判決をとっても、日本でもその判決で強制執行はできません(最高裁の判例があります)。

 しかし、アメリカに財産がある人に対しては、強制執行が可能ですから、訴えられた損害保険会社がアメリカに財産があるとなれば(一部上場企業であれば、その可能性は高いでしょうが)、どのような判決がでるかにもよりますが、この訴訟によりかなりのリスクを負担しているとはいえるでしょう。

(四国新聞社からの記事の一部引用)
111億円の賠償請求/函館の女性が米国で提訴

 国内で交通事故に遭った北海道函館市の米国人女性(39)が富士火災海上保険(大阪市)などに対し、懲罰的賠償を含む約111億円の賠償を求める訴訟を米国ニューメキシコ州の連邦地裁に起こしたことが22日、分かった。保険会社が虚偽の説明をしたため、懲罰的賠償を求め米国で提訴したとしている。
 女性の家族によると、女性は2004年1月、札幌市南区で江別市の男性の車に追突され、首や腰を痛めた。男性は富士火災の保険で対応すると話したが、同社は当初「男性は加入していない」と虚偽の回答をした。10日後に加入を認めたが、虚偽説明に関する回答は拒否した。
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